可愛い子研究部!2
とても変な部活に、半ば強引に加入させられた僕
「可愛い子研究部」だなんて、ほんとよく先生たちが認可したものだ
そんな愚痴を心にしまって
放課後、一ノ瀬に言われた部室という名の集合場所に向かった
二階の階段の上がってすぐの壁に、一ノ瀬はへばりつくように体をくっつけていた
◯:な〜にやってんの?
空:お、律儀に来てくれるんだね!
◯:来なかったらまた追いかけられそうだから…
空:えへへ、陸上部にいた私に勝てないと悟ったわけだ
僕の肩をどついてくる一ノ瀬
全く僕の質問には答えてくれていなくて、不満は残る
◯:で、具体的にこの部活はなにするの
空:よっくぞ聞いてくれました!
壁から体を離し、一回転して一ノ瀬は僕の前で決めポーズをした
…とてもダサいポーズを
空:まず、私が見つけた可愛い子を尾行したりストーキングしたりして、観察します
◯:ちょっと待って、初手から不安なんだけど
僕のそんな声を聞きもしない一ノ瀬は続ける
空:で、その子の魅力をレポートにまとめるわけ
あ、5枚がノルマね
◯:めっちゃ重いノルマ…
空:それで、最終的に何個もレポートを作って
どんな人に可愛いと感じるのかを論文して一躍脚光を浴びる!
◯:…妄想の飛躍がすごい
天井に人差し指を向け
カッコよくキメたつもりなんだろうが、最早変人にしか見えない
◯:退部したくなってきた
空:許しませ〜ん!
やっと手に入れた部員なんだから
僕の前で大きくバツのジェスチャーをする一ノ瀬
そんな一ノ瀬の後ろを、一人の女子生徒が横切っていった
その刹那
僕の方を向いていた一ノ瀬が、くるっと反転してその女子生徒の方を向き
空:彩〜!
待ってたよ〜
と抱きつきに行ってしまった
…まあ、すごい嫌な顔されて拒絶されてるんだけど
◯:ほら、一ノ瀬…嫌がってるから離れなよ
空:彩は、恥ずかしがってるだけで
ほんとは私にデレデレなのぉ
◯:はいはい、そうですね
とりあえず離れなって
一ノ瀬の肩を持って離れさせようとするが、すごい執念で一ノ瀬はびくともしない
◯:困ったな…
すると、被害者である女子生徒が
彩:あの、美空のことは任せてもらって大丈夫ですよ
と言ってきた
その姿は、とても後輩とは思えない大人っぽいもので
◯:え、そう?
じゃあ…
と僕が一瞬その言葉のとおりにしてしまおうかと思うほど
しかし、僕もこんな変人を後輩に任せて放置するわけにもいかず
気を入れ直して
◯:いや、同じ部活の部員として
部長の暴走を止めるのも僕の仕事だから
と改めて一ノ瀬を引っ張る力を強めた
彩:そんな、私のせいなのに申し訳ないです
と引き下がらない後輩に
◯:先輩を頼るのも、時には大事なことだよ
それに、可愛い子はできるだけ可愛い表情のままでいなきゃ
と僕は言い放った
すると、後輩は呆然と立っているだけになり
少しして足早に階段を降りていってしまった
◯:なんか変なこと言ったかな
空:彩は照れると、フリーズしてその場から逃げなくなるっと…
◯:あ、いつから正気に戻ってたのよ
空:最初から正気だよ?
真顔で言う一ノ瀬に怖さを
そして部活自体に不安を再度感じる僕だった
彩:あ、あの先輩…カッコいい
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?