初めて会った日から何周か回って恋をした 16
飯ごう炊さんの始まりが告げられ
肉やなんやら、小学生じゃまだ調理できないものを除いて
白米を炊くこと、前菜のゆで卵を使ったサラダを作るのが生徒たちのやれること
どうやら、メインの料理はすいとんになるらしい…
昌輝:じゃ、俺は鍋取ってくる!
道具は基本的に揃っているのだが、鍋と包丁だけは先生に貰いに行かなければならない
○○:んじゃ、俺は包丁を取ってくるかなぁ
なんとなく、 俺はそう思い立って智也を残して
先生に包丁を貰いに行こうとした
智也:まあ、待てよ
俺が行くから、米の準備しといてくれ
智也が俺の肩に手を置き言った後
さっと包丁を取りに行った
○○:なんだかなぁ…
ま、いいか
智也の少しだけ見慣れない顔に、不信感を覚えながらも
とりあえずやるべきことをやろうと、水を炊く用に計量しておく
すると
先生:林藤〜!
食事係なんだから、人にやらせないで自分で道具取りにこ〜い
と先生に言われた
○○:あ、すみませ〜ん!
駆け足で先生のもとに向かって、すれ違った智也に
○○:だから行くって言ったのに
智也:すまん
と会話した
先生:…ったく
あの二人が積極的なのはわかるけど、頼むぞ?
○○:わかってますって
包丁を受け取り
慎重に机に戻る
○○:米は?
智也:研いでる
智也が今やってくれているみたいだ
○○:んじゃ、サラダか…
昌輝、小鍋
昌輝:水はどんくらいだ?
○○:卵がもぐるくらいだな
多めに入れろ〜
昌輝:了解〜!
女1:サッカー男子組は楽しそうだね〜
女2:ね、
蓮加もそう思わない?
蓮加:まあ、昔からあんなんだからね
あの3人
少し離れたところで、蓮加たちの班は
○○の班を見て話をしていた
女2:それより、そろそろゆで卵やらないと
サラダが遅くなっちゃうって
女1:あ、そうだね!
まず、水だ水!
蓮加は少しだけ動くのが遅れた
理由は、○○のエプロン姿を見たことがなく
少しだけ見惚れていたから…
蓮加:…はっ
蓮加はなにやればいい?
女1:とりあえず、お米の方やっておいて
蓮加:オッケー
滑り出しは上々…
~~~~~
○○:よしっ、そろそろサラダの野菜取ってこようぜ?
智也:お、そうだな
昌輝:智也〜、お前行ってこいよ
○○に米を見るの手伝ってほしいし
昌輝は、あまり料理を手伝ったことがないため
ぶっきらぼうな物言いを時々する智也より
○○のことを、こういうときばかりは信頼しているらしい
智也:おうよ
ゆで卵がちゃんと出来上がったら、野菜を取りに行って
卵を切って、野菜と和える
その野菜は、サニーレタスとかなんだろうけど…
○○:ドレッシングほしくね?
昌輝:まあ、しょうがねぇんじゃね?
米を見ながら、二人は話している
少しして、智也が帰ってきたときくらい
米がいい匂いになってきた
○○:そろそろだな
蒸らさねぇとだから、火止めるなよ?
昌輝:おう!
○○の指示に昌輝は強く返事して、米の入った鍋を見つめている
智也:はぁ…
どこまで無邪気だよ
智也はその姿が、キャンプに初めてきた子供に見えた
○○:切っちゃう?
智也:だな…
ラップは貰ってるし
○○:んじゃ、切るか
○○は一旦コンロから離れて
智也と一緒に野菜と卵を切って
皿に盛り付けていく
○○:…あ、
そして、ある程度やったとき
○○は何かを思い出した
○○:智也、あとやっていてくれるか?
すいとん作るの手伝わねぇと…
智也:食事係か…
行って来い
智也にことわって、先生たちのいる方に走っていった
○○:先生〜、何すればいいですか?
先生:お、きたか
じゃあ、林藤は火加減をまずを調節して置いてくれ
材料は、先生たちが調理したのを使うから
先生にそう言われて、おそらくこういう大きな料理を作る時に使うような
どデカいコンロの所に向かう
そこには…
高橋:すごく久しぶりね
○○くん
○○:高橋先生!
産休終わったんですか?
高橋:そうよ
また、○○くんを見られて嬉しいよ
産休で長らく学校に姿を見せていなかった
1.2年生のときにお世話になった高橋先生がいた
そうなると、結構やりやすい
火加減も、最初は大きなコンロに戸惑ったけど
慣れるとただ大きいだけだから、難しくははい
そこに…
男1:林藤〜!
悪い遅れた
女3:なにすればいい?
と他の食事係の面々が集まり始めていた
○○:とりあえず、一回豊島先生のとこに聞きに行って
高橋:いや〜ほんと、みんな大きくなったわ
と高橋先生が、他の面々が遠くなった時に言った
高橋:さっきさ、蓮加ちゃんも見たんだけど…
今も仲いい?
○○:…んまあ、まずまずですかね…
いくら高橋先生とはいえ、本当のことは言えなかった
けど、何かを察したようで…
高橋:へぇ〜そっか…
お、具材きたよ
話しているうちに、食事係の面々が
すいとんの玉や肉、きのこ、根菜類なんかをバットに入れて持ってきた
○○:よ〜し!
みんなのために早めに仕上げるぞ!
“お〜!”
高橋:昔っから、気づいたらリーダーになってるのは変わらないのね
ほんと、いい意味でまだ子供らしさが残ってて安心かな
豊島:え〜、急いで食べなくてもすいとんは沢山あるので
この林間学校で食べる料理ということを感じて食べましょう
学年主任の豊島先生がマイクでみんなに言った
豊島:それでは、手を合わせて…
いただきます
“いただきま〜す!”
智也:…話なげぇよ
昌輝:いつものことだろ?
そんなことより、俺たちの白米うまくね?
○○:あんまりガツガツ白米食べるなよ?
すいとんにも炭水化物あんだから、腹壊すぞ?
まあ、そんな沢山米は炊いてないんだけど…
昌輝:わかってるよ
周りを見てみると、みんな美味しそうに食べているので
食事係のリーダーとして、誇らしい気持ちになった
そんな折、すいとんを取りに行っているのか
歩いている蓮加の姿が目に入る
そして、その途中で高橋先生に声をかけられた蓮加は
少しだけ驚いた顔をして、その後顔を少しだけ下に下げながら
また歩き出した
智也:ん?
どした○○
○○:あ、いや…
みんな美味しそうに食べてるな…ってね
昌輝:いや、○○
お前はほんとにいい仕事したよ
智也:お前は誰目線だよ
やっぱりこの二人といると楽しいなと
改めて感じた
飯ごう炊さんが終わり
ちょっとしたレクリエーションをして、今は各部屋で自由時間
と言っても、基本他の部屋の友達と話に行っているか
トランプでなにかゲームしているかだろう
かくいう俺達は、
○○:リバース
智也:じゃ、スキップ
昌輝:おい飛ばすなよ!
男1:げ、色がねぇ
男2:はい、地獄引き!
地獄引き!
六人部屋の内、五人でUNOをしているんだけど
昌輝のカードが全然減らない…
まあ、俺と智也から意地悪されてるからなんだけど…
そして、やっと回ってきた昌輝の番
昌輝:こっから一気に逆転だ!
とリバースを4枚出しした
男1:俺か…
ん〜
と、悩む素振りを見せといて
三枚出して残り二枚
男:2俺はリバース
…からのリバース
こちらも残り二枚
○○:そうだな…
ドロフォー二枚
で、UNO
俺は隠し持っていたドロフォー二枚を出した
智也:お、おい○○!
と智也は怒る
…が、俺は知っている
智也もドロフォーを持っていることを…
智也:…ったくしょうがないな…
ドロフォー!
三枚目のドロフォー
それが、昌輝に襲いかかる
昌輝:ほんとお前らさ…
俺にどんだけ負けてほしいんだよ…
と、うなだれる昌輝
しかし、勢いよく起き上がって
昌輝:俺もドロフォー!
ドロフォーが四枚揃ってしまった…
男1:はっ!?
おい、俺もう少しだったのに…
昌輝:色は赤な!
結果UNOで勝ったのは智也だった…
そんな自由時間が終わり、風呂の時間に…
俺のクラスが入る時間になる少し前
昌輝と一緒にサッカークラブに入ってる他クラスのやつに会いに行く途中
高橋先生とすれ違った
すれ違いざま…
高橋:8時前に、食堂前
と言われた
○○:…なんだ?
昌輝:おい、○○早くしないと風呂の時間になるぞ!
○○:あ、わりわり
昌輝に少しだけ怒られてしまい、通路を小走りした
風呂の時間も、高橋先生の言っていた意味を考えていて
あまり智也とか昌輝の話が入ってこなかった
そして、言われた8時前…
昌輝たちには、食事係で先生に呼ばれた
と言って部屋を抜け出した
2階にある各生徒たちの部屋から
1階にある食堂の前へ
そこにいたのは、高橋先生と…
蓮加:…っ
○○:え、蓮加?
高橋先生の背中に隠れるように、蓮加もそこにいた
高橋:ちゃんと破らずに来たこと
○○くん、偉いよ
先生側から褒められるような行為ではないけど…
と思いながら、高橋先生の言葉を聞いた
高橋:それでね?
先生、蓮加ちゃんと○○くんのコンビほんとに好きだっんだ
なんか、息ぴったりでね
先生は訴えかけるように言葉を繋げていく
高橋:でも、なんかわだかまりというか
そういうのが見て取れるんだけど…
違う?
今度は俺ではなく蓮加の方を見て言う
高橋:思春期っていうのは難しいから
そうなるのもわかるよ?
でも…
“お互い好きなのに、今の関係じゃ気持ち悪いままじゃない?”
○○:え?
お互い、好き?
高橋:…ふふ
そんなに先生の服強く握らないでよ
後は、二人で話した方がいいかな?
と高橋先生は蓮加に言って
蓮加を俺に向かわせるように背中を押した
蓮加:えっと…
その…
む、昔から言ってるけど…
○○:う、うん…
お互い、さっきの先生の話があって緊張している
蓮加:その…
蓮加は、○○のことがさ
い、今でも好き…
○○:…え…っ?
空耳を疑った
だって、あの
あんなに冷たい感じだった蓮加が…
蓮加:だ、だから!
蓮加はぁ、○○のことがぁ
今も昔も、大好きなの!!
聞こえていないのかと思ったのか
蓮加は2度
顔を赤くしながら告白してくれた
○○:えっ…と
俺も、昔から蓮加のこと…
好きだよ
蓮加:…知ってる
保健室で、聞いたもん
○○:えっ…
あ、あのときいたの蓮加だったの!?
衝撃の事実に、俺はとても驚いた
けど、それ以上に
蓮加からの告白が嬉しかった…
高橋:ふふ、よかったよかった
蓮加ちゃん、よく頑張ったねぇ
と高橋先生は蓮加を抱きしめて
頭をポンポンとした
俺は、蓮加の泣きそうな目をみて
不意に、また
可愛い姿に、胸がドキッとした
林間学校、夜の出来事だった
林間学校で、大きな一歩があって
○○と蓮加の関係は
元に戻った
…まあ、昔のようにベタベタというわけではなさそうだけど…
智也:なんだかなぁ…
俺の計画うまくいかなかった…
昌輝:あ?どうしたんだ、智也?
智也:あ、いやなんでもねぇよ…
智也は、高橋先生に自分の計画を阻まれるような形になったが
○○は、智也にも後々感謝した
さぁ、心のもやもやが無くなって
林間学校も終わり
向かうは、秋のクラブサッカー大会