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Naissance et demande

結局、昼過ぎまでわがままな相棒に付き合って


○:そろそろ行くぞ?

沙:ぁーい…


元気が尽きたようです

まあ、ずっとわぁきゃあしてたからね

そりゃあこうなるわ…


現在14時半過ぎ


○:ほら、今日は休んでてもいいから行くよ


強引に手を掴んで、玄関まで引っ張りってくる


沙:流石に、それはできないなぁ 
 一番楽しいんだもん…撃つのが


こういう時の、やばいこと言ってるのに真顔なところ変わらないんだよなぁ


○:はいはい、行きますよ

沙:ねぇ、今適当に返そうって思ったでしょ!?
 めんどくさがったでしょ!?

◯:はい、そうですね


二度目は答えず、扉を開けると光が目を刺す


ほんとに、太陽が嫌いになった

昔は好きだったのに


途中でおぶれと言ったので、相棒をおぶって

単車のところまで連れて行く


○:ほい、ヘルメット

沙:どうも〜


機嫌を直すのも上手くなったな、そう自分でも思うようになった


○:そんじゃ、いきますよ

沙:レッツゴー!


駐車場から出て、黒い単車に反射した

白く眩い光


目を焼きそうなそれは、今の己と真逆で

疎ましい




ボ:てことで、今日から正式に採用なわけだが


数年前に、俺はボスに才能を見出されグループに入った

ただ、提示した条件があり


○:普通の人間は、殺しません
 影に、飲み込まれた人間のみ殺します


というものだ


流石に、罪のない人は殺せない…

ボスはその条件を飲んでくれた

ほんとに有り難いことに


それで、数回仕事をした後

先輩の口から、ある話が出てきた


先:なんかさ、うちに勧誘されてるのに
 ひたすらソロにこだわってる子がいるらしいよ


というものだった


実際、二回ほど

同じターゲットを狙っていたことがある


どっちも最終的に俺が取ってはいるけど

腕は本物で、弾を相打ちにさせるのも至難の技


○:あぁ、知ってますよ
 腕、すごいですよね

先:うちに来てくれりゃ、百人力なんだがな


噂話程度だったけど、その翌日にボスから付き添いの命令が出た


ボスに付いていくと、着いたのは

外壁が剥がれ、柱が剥き出しになった建物だった


その屋根が抜けているところ

よく学校にある朝礼台みたいなもの上に

小柄な人間が、パーカーを着て座っている


ボ:よぉ、まだうちに来る気はないか


ボスがフランクに話しかけると


沙:ないって言ってるじゃん…
 鬱陶しいな…


すごいローテンションで返してきた

声的に、女性だ


この人が、あの話に出ていた

腕利きのスナイパー…か


少し興味を持った


ボ:そうか…
 まあいいや、明日には気が変わってると思うぞ


そう言い、ボスはここを去るようだ

俺は後に続いた


沙:ありえない…


女性はそう返していた


そして、帰りの道中で任務を命じられた

ターゲットは、おそらく彼女も狙うだろうと


ボ:あと、今回は手を焼くぞ
 周りを固められてるからな


珍しくそう注意を言ってくれた


○:気をつけます…


そう返し、グループの仮眠室で時間を待った

その時に、なんとなく胸騒ぎがしたんだが

それはたぶん緊張だと思っていた


だけど…違うっていうこともあるようだ




闇が世界を包んだ頃

俺はターゲットを狙える位置についていた


反対の廃ビルには、昼間の女性


○:にしても多いな…
 これは一人だけ撃つのは難しいぞ


筒を覗きながら独り言を言う

どう計算しても、誰かにかするか

標的を撃ち損じる


○:ボス…
 最悪、全員殺してもいいですか

ボ:できれば避けてほしい
 大事になると困る

○:了解っ…


まあ、思った通りの返事ではあった

さーて、やるか…

失敗すんなよ…


自分に言い聞かせて、筒を再度覗いて

人差し指の重みで、突起を沈める


綺麗にターゲットの頭を貫いたが、すぐ横の人間の足にも当たった


○:あー、しくじった…
 くっそ…


筒を覗いて他の人間の位置を確認する

キョロキョロとしている黒服共の中で、一人がこっちを見つめた

やべぇ、位置特定される…



その時、女性がその一人の腕をぶち抜いた


○:わぁお、グロ…


肩から下が血を吹き出しながら宙を舞う

すぐさま、標的を変え

次は腰をぶち抜き、血がドボドボと溢れ出ている


○:躊躇ないねぇ…


そういう俺は、何をしていたかというと


○:よし、全員黒だ…


呪気を測る護符を使って、影に飲み込まれてるかを判断していた

全員が黒なので、祝詞で片付けても問題ない


○:吹くからに、秋の草木のしをぬれば
 むべ血の雨を、嵐といふらむ


一字決まりの強さは絶大だ、逃さない


バタバタと、血を吹き出しながら

黒服の人間共が倒れていく


○:ふぅ…
 こんなもんか、ね


筒を覗いたが、全員お陀仏している


任務は完了したから片付けを始めた

意外と物を持ってきてしまったために少し時間がかかる

あぁ…後でボスとかに謝らないとな、とか思っていた


そうすると、階下から音が


とりあえず、腰に無音拳銃があるため

それに手をやる


勢いよく開いた扉からは

あの女性が現れた


沙:ねぇ…!
 今のさ、どうやってやったの??
 すごかったよ、バタバタと殺しちゃって


殺されるかと思っていたが

どうやら興奮しているだけのようだ


○:いや、その…


どう説明していいものかと迷っていると


沙:えぇ…教えてくれないのぉ?
 あ…わかった!あの組織に入って君と組めばいい?
 そうしたら、教えてくれる?
 ねぇ、おねがぁ〜い


はぁ… 勢いがすごすぎて圧倒される


○:好きにして…
 俺、疲れたわ


かくして、相棒と出会い

今まで一緒にこの仕事をやってきている




ボ:おぉ、来てくれたか


少し飛ばしたので、ボスとの約束の時間よりも早く着いた

まあ、隣に相棒は居ないんだが


ボ:次の依頼の人間だ…
 頼むぞ…


写真と資料が渡される


○:頭に入れておきます


仮眠室を使って、それを記憶して

やりにいっていいそうなので


それに従う


○:甘いもんばっかだな…


相棒のところに戻ると、シュークリームやら、パウンドケーキやらでまみれていた


沙:みなさんが、くれたの

◯:口にもの入れた状態で喋んな


頭を軽く叩く


沙: うぅ…


俺は仮眠室にいるからな

そう言い残して、別棟へ向かう


廊下を歩いていると、前方から久しぶりに見る先輩たちが


○:お、帰ってきてたんすね


飛鳥さんところ

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