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初めて会った日から何周か周って恋をした 9

夏の流れに巻かれて、子供は皮膚を焼く


そして、また寒さと暑さの共存する秋という季節がやってきた




色々と成長した○○は、サッカーにもその伸びしろを見せていた


蓮加:まえよりも、○○くんうまくなってるね


○○:そう?
  ならうれしいな


ただ一人でリフティングしたり、壁に蹴ってみたりしているだけ


それでも、時々父親に見てもらって色々と教えてもらったり

一緒にやったり…


そうしていれば、上達していくわけで


蓮加:れんか、○○くんがクラブでサッカーやるの見たいなぁ…


○○:もうすぐかな〜


クラブとは、勿論クラブチームのことで

そろそろ入るか?

と父親に○○は言われたのだ


○○:でも、クラブでもちゃんとやれることやらないとね
  まだまだだから


蓮加:○○くんって、すなおだよね
  いばってる子たちとちがう


○○の近くにも、サッカーをしている子たちは沢山いる


しかし、まだ小さいということもあってか

技の自慢や、ただ遠くに飛ばせればいいと思って

○○のことをよく馬鹿にしたりする


それに対して、蓮加は毎度毎度怒って追いかけていたりするんだが…



○○:だって、あの子たちにはあのサッカーでせいかいなんだもん
  ぼくのサッカーとはちょっとちがうんだよ


蓮加:○○くんおとな〜!


○○の肩をパンッと、蓮加は叩く

それに○○は微笑みながら、ボールを蹴り回している


蓮母:蓮加!


そんなときに、蓮加の母が来た


○○:こんにちは!


蓮母:あら、こんちには


○○がいたことに、何故か驚きながら

蓮加の母は、○○に挨拶し返す


蓮加:どうしたの?ママ


蓮母:ちょっとね…
  今日は、帰ってきてほしくて…


蓮加:え〜、まだ○○くんの見たかったのに…


と拗ねる蓮加


しかし、どうも母のいつもと表情が違うことを汲み取ってか

すぐに拗ねるのをやめた


○○:またあしたもきてよ
  どうせ、ここでやってるから


蓮加:オッケー


蓮母:じゃあ、行くわよ


蓮加の手を引いて、蓮加の母は足早に公園から出ていった


○○:どうしたんだろうなぁ…
  ま、いいや
  ドリブルのれんしゅうしよ


公園の中で、ただ一人○○のボールを蹴り回す姿が

ずっと夕方まであった



蓮加:ママ、どうしたの?
  そんなこわいかおして


蓮加は焦りとも取れる表情をしている母に聞いた


蓮母:お父さんが…ね


蓮加:おとうさんが、どうしたの?


蓮加がそう聞くと、母は前を向いて家路に急いだ




そのまま蓮加の母は黙ったまま、家まで着いた


蓮加:おとうさんがどうしたの?
  ねぇ、ママ


同じ質問を、蓮加は母に聞いた


その蓮加の質問を聞いた蓮加の母は、蓮加に向き直って

蓮加の顔を持った


蓮母:いい?蓮加
  お父さんはね、足の骨を折っちゃったのよ


そう、蓮加の母は告げた


蓮加:ほねが、おれた?
  それって…まずいんじゃないの?


骨折

そんな言葉を知らなくても、骨を折るという文言だけで

蓮加でもまずいことだということはわかる


蓮母:そう、まずいのよ
  お母さんがお父さんの分も働かなきゃ…


そう、蓮加の母が厳しい顔をしていたのは

そういうことがあったから


パートで働かないといけなくなったからだ


幸い、蓮加の父の骨折はさほど重いものではなく

2ヶ月少しあれば、全治するらしい


しかし、2ヶ月働かないのは家計的に苦しい


そういう相談を受けた蓮加の母が、決めたこと


蓮加:じゃあ、れんかはどうするの?


蓮母:やれることは、自分でやってもらわないと困るわね


蓮加の母は、なんでもなんでも人に頼ることの多い蓮加が

自分でやる

という行動を起こすにもいい機会だと捉えていた



蓮加は、どうも人にやってもらおうとか

人に最初から助けてもらおうとする


それをどうにかして直さないと

と感じていた母は

またとないチャンスの到来だとも思っていたのだ



蓮加:ふくも?


蓮母:そうね


蓮加:おきるのも?


蓮母:えぇ


蓮加:さすがにごはんは…


蓮母:それはやるけれど、お菓子は食べちゃだめよ?


蓮加は、突きつけられた現実に少し恐怖を抱いた


父が、いきなり骨折したのもしかり

自分でやれることをしなくてはならなくなったのもしかり



蓮加:できるかな…


蓮母:蓮加?
  やらないといけないのよ?
  いつかは、蓮加だってやれるようにならないと


淡々と言い聞かせる


蓮母:そうじゃないと、ずっと
  人に迷惑掛けて生きていくことになるんだから
  わかる?


蓮加:うん…


蓮母:少しは、大人になりなさい?


その一言が、さっき○○に言った自分の言葉と重なって

蓮加の胸に、重く突き刺さっていく…


蓮加:がん…ばります…


やらなきゃ…


蓮加も少し、大人になり始めるようだ



そこから数日経って…


○○がまたサッカーを公園でしている


○○:さいきん、れんかちゃんこないなぁ


蓮加が来ないことに、○○は少し残念がりながらも毎日の日課となっている練習をしていた


そんなとき


男1:お、あれりんどうじゃね?


男2:こんなとこでサッカーしてたのかよ


○○のことを馬鹿にしているサッカー経験者二人が、通りかかった


○○:よし、あと10回…


リフティングを30回、できれば連続で

まずそれをやることが、○○の日課なんだが


男1:ほら、そんなこわざ
  いみねぇんだよ!


一人の男子が、○○の顔めがけてボールを蹴った


○○:ん?
  

○○がその声と音に気付いた


終わりそうなときに放たれたそのボール


○○:…あぶないな


落ちてきた自分のボールを、ピンと伸ばした足のつま先に当て

大きく蹴り上げて飛んできたボールを避けた


コロコロと、転がっていく○○目掛けて飛んできたボール

それとは対象的に、綺麗に上がった○○のボール



男2:は?


蹴らなかった方は、その芸当に度肝を抜かれた


しかも、その蹴り上げたボールは○○の頭上に返ってくるというのだから度肝を抜かれるのもよくわかる



男1:おい、そのボール返せよ!


蹴った方が、大声で○○に叫ぶ

○○から少し離れた所にぽつんと立っていた


○○:これ?
  …はい


軽く蹴り出して、そのボールを男子の足元まで返してあげた


○○:人のじゃましないでよ?


笑顔で○○は二人に言う


しかし、その二人は笑顔が怖く感じて逃げていった


○○:あぶないことしてほしくないんだよなぁ


○○は集中してるのに邪魔をされるのが昔から嫌いだから

表情が笑顔でも、意外と自分で気が付いていないが嫌悪感を示していることが多い



少し経つと、珍しく


蓮加:○○くん!


○○:れんかちゃん!
  こうやって学校おわってあうのひさしぶりだね


蓮加:ちょっと、いろんなことがあってね
  ○○くんのサッカーまた見たくなってきたの!


○○:うれしいな、ありがと!


満面の笑顔で○○は答えて、ボールを左右の足でドリブルしなからぐるぐる回り出した



○○:あ、そうだ
  クラブ入れることになったよ〜


蓮加:ほんと!?
  おめでとう!


○○:それをね、伝えたくてさ
  学校だとほかの人にもいろいろいわれちゃうから
  ここでいいたくてさ


と、○○は蓮加をの方を向いて言う


蓮加:ぜったい、見にいくね!


○○:なら、もっとがんばらないと!


○○は、蓮加に見守られながら
前よりも増えたバリエーションの練習をする


久しぶりの二人のこの時間は
とても有意義なものになった…




蓮加:○○さ?
  赤ちゃんにさ、サッカーやらせるの?


唐突に、○○に蓮加は聞いた

そろそろ寝よっか

とベッドメイキングし始めた辺りだった


○○:え?
  蓮加が嫌っていうならやらせないよ?
  

蓮加:れんかは、別に嫌とは言わないけど
  怪我はしてほしくないんだよね


○○の顔を見ながら蓮加は答えた


○○:それは親バカじゃないの?


蓮加:親なら怪我は嫌だよ
  ○○もそうでしょ?


○○:ん…まあ…
  そりゃあそうだな  
  クラブでの初試合ですっ転んで泣きそうだったしな


蓮加:あれ面白かったよ〜?


○○:めっちゃ慰めてくれたのに?



蓮加:今思えばね?
  あれは、面白かったなって



頬杖をつく蓮加を見て、それ以上は何も言えなくなる○○


○○:はぁ…
  蓮加のそういうところ好きだよ


蓮加:れんかは、寝るときにちゃんとエスコートしてくれて  
  あまり動かなくていいように下にベッド持ってきてくれた○○の優しさが好き


○○:面と向かって言うな〜
  恥ずいから


顔をそむける○○


蓮加:お顔を見せて〜
  ○○くぅ〜ん


○○:やめろ…
  色々な意味で、死ぬ…


蓮加:ぎゅー


お構いなしに蓮加は○○に抱きつき

○○は言葉を失うのだった

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