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ふわしゅわお嬢様はご執心 5

◯◯ちゃんとの初デートの日から約5日

私は◯◯ちゃんに、明日お花見しに行かない?ってLINEをした


◯◯ちゃんパパはお花の仕事してて、そういうことがあってか◯◯ちゃんも小さい頃からお花が好きだった


桜:絶対喜んでくれる、はず!


私は部屋で一人、思っていたことを口に出す


言葉にするとそのことが叶う可能性が高くなる、ってよく言うけれど

私もその経験があって、そういう体験をしてから私はできるだけ願い事は声に出すようにしてる


桜:あ!そうだ◯◯ちゃんに好きなお惣菜聞いちゃお
 それで作っていってあげたら、大喜びだよね


名案を思いついて、一層ワクワクしてきたから

テンション高めで追加のLINEを◯◯ちゃんに送った



◯:あ、また桜ちゃんからだ


僕はさくらちゃんからお花見しに行こうという提案に、どうゆう風に返信したらいいのかを悩んでいた

そんな時、立て続けに桜ちゃんからLINEがきた


◯:お惣菜?
 …お花見の時の軽食にってことなのかな


とりあえず僕は、喜んで参加する旨とお惣菜はお稲荷さんがいいということを返した

お惣菜という言葉には引っかかりを覚えたけど…


ワクワクとドキドキが返信してから一気に込み上げてきて落ち着かなくなってきた僕は

とりあえずいつもやってるゲームをして気分を落ち着かせるため、机の一番下の引き出しからゲーム機を取り出した


しかし、いざやろうという時に

“◯◯〜!ご飯できたよ”

という母の声が聞こえてしまい、僕はすぐ返事をしてリビングへと向かった

あまり気になっていなかったけれど、かれこれ20分くらい桜ちゃんへの返信を悩んでいたらしい


リビングには、もうすでに祖父が来ていて

あとは僕を待つのみという状況だった

“春休みだっていうのに、ずっと勉強してたの?”


母が僕にハヤシライスを盛りながら聞いた


◯:ん、まあそうだね
 この前の学年末は、少しいつもより納得いかなかったから

“そう…、勉強だけじゃなくて少しは外に出なさいよ?”

◯:あぁ、そのことなら…
 明日友達とお花見行くことになったから


桜ちゃんと行くのを友達、とわざわざ言ったのは

母も勿論桜ちゃんと僕が許嫁であることを知っているため

桜ちゃん、というワードを出せば穏やかに進むであろうお花見に母がついてきてしまって楽しさが減るかもしれない


そういう思いが僕にあったからだ


“あぁ、そうだったの、気をつけて行ってきなさいよ”

◯:わかってますよ
 じゃ、いただきます


僕はそれ以上の話はせずに、晩ご飯を食べ始めた

いつも以上に、母の料理が美味しく感じた



桜:んぅ…和が遅いなぁ


翌朝、私は場所取りをしていないといい場所が取られるということに気付いて

5:30に家を出た

楽しみすぎて4:00くらいには目が冴えていたから、ある意味好都合だったのかもしれない


とりあえず準備していたブルーシートと、重しになる重いもの

あとスリッパとかブランケットなんかを大っきなカバンに入れて公園に向かう


美空は朝起きるの遅そうだから今のところ声はかけてない

和は弓道部だし、朝から勉強するタイプだって言ってたから真っ先に連絡してヘルプを頼んだ


桜:既読は付いてるのに、返信が来ないなぁ


ヤキモキしながら公園の入口に着くと

そこには


美:おはよ、桜

和:ふわぁ…流石に眠い
  

ぱっちり目の空いた美空と、すごく眠そうな和が入口の木の幹に寄りかかっていた


桜:和は呼んだけど、美空まで…
 何で?

美:えっと、それはね…

和:あー、話長くなるから場所取ってからゆっくりその話をしよ


美空が語りだそうとすると、和が止めた

まあ、時間が惜しいのはそのとおりだから和の意見に従った


桜:どこがいいと思う?

和:こういうのはファーストシンキングで決めなよ
 迷ってるとどんどん埋まってっちゃうから


和にカバンの半分を持ってもらって、場所を選ぶ

◯◯ちゃんが来るわけだし、ちゃんと綺麗なところを選ばないと…


私がじっくり一個一個見ていると、美空が


美:桜、ここいいんじゃない?
 大っきな木の下だし、道と近いからトイレとか行きやすいよ

和:…一番目が冴えてるだけあって、こういう時は頼りになるね

美:一言余計
 でも、なかなか良くない?


美空は誇らしげに言った

確かに、景色的にも機能的にもいい場所っぽい


ブルーシートを仮置きして、私は座って桜を見上げる

まだ少し暗い紺色の空と、暗がりに揺れる桜の枝が凄く綺麗に映った


桜:よーし、ここに決めた!

和:よしっ、じゃあちゃんとブルーシート引いて確保しちゃおう


私の一言に和はすぐ次の指示を出してテキパキと動き始めた

最初眠そうだった顔は、少しいつもの通りの

キリッとした表情になりだしていた


美:私のセンスがすごくいいっていうことがわかったね

桜:だね〜、美空に感謝しなきゃ
 
美:じゃあ今日、和とか美空も一緒にお花見していい?


美空がニッコリしたまま言ってきた

何となく美空が早起きして、私の手伝いをしに来たのがわかった気がする


私は少し考えて


桜:まあ、手伝ってもらったし…
 で、も!◯◯ちゃんにあんまりちょっかい出さないでよ?

美:はーい


美空の声がどことなく嫌な予感を私の胸に呼んだ気がした



◯:いやー、桜ちゃん早いな…


僕は朝起きて、朝ご飯を取る前に一旦LINEの確認をした

なにか連絡が来ているかも…

という勘が働いたからだった


すると、案の定6:00くらいに桜ちゃんからLINEが来ていて


『場所取り完了〜』

『スリッパと必要だったらブランケット持ってきてね』

『待ってるよ〜』


と桜ちゃんのメッセージと共に

フードコートにいた他の二人と一緒に写った写真が添付されていた


◯:…おっと、これは


僕は何となく思うことがあった

そこで母に早く食べろと呼ばれたので、ひとまず了解とスタンプを送った




朝ご飯を食べ終わって、何となく心の準備をする時間を取って


◯:じゃあ、行ってきます

“はーい、気をつけていってらっしゃい”


母に言って、僕はお花見の場所に向かう

そして桜ちゃんたちと合流する


…前に、僕はある人と待ち合わせをしていた

朝ご飯を食べ終えてすぐに連絡していたのだ


◯:そろそろ着いてる頃だと思うんだけど…


集合場所である駅前の喫茶店前をウロウロしていると

後ろから肩に手が置かれた


秀:やあ、数日ぶりだね

◯:うん、そうだな
 悪いね急に呼び出して


僕の頼れる、そしてこういう時にすぐ予定の合わせられる友達なんて

この友人を置いて他にいない


女子数人とお花見すると言っただけで場所をすぐに聞いてくる始末だった


秀:なーに、女の子とのそういう場にはできるだけ顔を出したい性分だから心配ないさ

◯:そういうと思ったよ、天性のナンパ師さん


僕はそういうと、踵を返して来た道を戻る

途中で左に曲がると、桜ちゃんたちのいる公園だ


秀:ちょっと!
 何も言わ先にいかないでくれよ

◯:下手に桜ちゃんを待たせたくなくてね

秀:やっぱり、女子数人っていうのはあの子たちのことだったのか


歩きながら友人は僕を見ながら言った

その目は、何となく妬みを含んでいるようにも感じる目だった


◯:僕は桜ちゃんと二人きりだと思ったんだけど
 実は他に二人いたみたいで

秀:肩透かしを食らった感じかな?


言い方が妙にムカつくけれど

まあ、そんな感じだと返した


ここで色々と問答していても、時間の無駄だと思ったし

友人にはつい先日の桜ちゃんとのデートの話をしていないので、そこまで口が滑りそうになるのを防ぐ意味もあった


◯:でもなあ、あのLINEの字面だと二人きりだと思ったんだけど

秀:まだ言うかい…
 いいじゃないか、人が多いほうがワイワイして楽しいだろ

◯:んまあ、そりゃそうだけどさ


個人的にはゆっくりと静かに、桜を見るっていうのが好きだから

桜ちゃんとそういうお花見がしたかったな…


そんなこんなで友人と話しながら歩いていると、合流場所である公園に着いた



桜:お、きたきた!
 ◯◯ちゃ〜ん!


私はLINEで◯◯ちゃんに場所を教えながら◯◯ちゃんの姿を探し

見つけたので声を張って呼びかけた


和:ちょっと、桜
 こういう場所で男の人をちゃん付けって、まずいよ

桜:え〜、だって今更◯◯ちゃんを◯◯くんだなんて恥ずかしくて言えないもん


和の注意をなんとなく躱して、通路側の方を見ると

◯◯ちゃんがお友達と一緒に現れた


◯:桜ちゃん、今日はありがとね


◯◯ちゃんはすごい笑顔で、私に挨拶してくれた

 

桜:いいえ〜
 久しぶりのお花見だから、さくらすごく楽しみにしてたんだ

◯:そっかそっか
 じゃあ楽しまないとね


入って、と言うと靴を脱いでスリッパを取り出して◯◯ちゃんとお友達はブルーシートに上がった


◯◯ちゃんは一息つくと、和と美空の方を向いて


◯:ほぼ初めまして、なのかな
 葉山◯◯と言います、桜ちゃんとは昔からの幼馴染で、一応許婚なんですけど…
 これからもどうぞよろしくお願いします


と丁寧に挨拶した

その後、◯◯ちゃんはご友人にも挨拶を促した


秀:えぇ、一度会ってますが改めまして
 瀧山秀悟と言います、◯◯とは中学からの友人で仲良くさせてもらってます!
 よろしくお願いします


ご友人の挨拶は和、美空だけじゃなくて

私にもされていて、私も二人同様頭を軽く下げた



桜:えっと、じゃあ次は私かな
 川﨑桜です、◯◯ちゃんの許婚で◯◯ちゃんのこと大好きです あとは、フィギュアスケートやってます?ました? よろしくね〜


私が隣の美空に目配せすると


美:何か新郎新婦と両家の顔合わせみたいになってない?


と笑って言ってから


美:一ノ瀬美空です
 和とは中学から同じ学校で、高校では桜と和と三人でよく色んなところ行ってます
 あざといとかよく言われんですけど、天然なのでよくわからないです
 よろしくお願いします

和:茶番だよ…


和がふざけた美空のことを冷たい目で見ながら言った

そんな冷たい視線を受けながら、美空の目配せに和はため息を一つついて


和:井上和です
 美空のおもり役を中学の頃からしてます
 そうだな、弓道部と美術部掛け持ちしてます
 よろしく、お願いします


桜:じゃあ、一通り挨拶が済んだところで
 お花見会スタートとしますか

美:え、桜が司会するの?

桜:だって、さくらが主催者だも〜ん


私は立ち上がって、一回転して


桜:じゃあ、飲み物を持ってもらって


◯◯ちゃんとお友達が紙コップに烏龍茶を注ぎ終わったのを見て

私は咳払いをした


桜:ひとまず今日を交流の場として、みんな仲良くなりましょ〜
 乾杯〜


10:30過ぎ

私たちのお花見会は始まった 

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