英語(語学)学習に関わる脳の部位

プライベートで色々と考えないと行けないことがあり間が空いてしまったのですが、テクノロジーを駆使した英語学習方法について考えていきたいと思います。

仕組みを考えて行くにあたり、「原理の理解」として関連する脳の部位を整理していきたいと思います。

最初に
私は脳や言語学の専門家ではないため、正確でない情報を含む可能性があります。脳のどの部位がどんな処理を行っているかは、解明されていないところが多いです。そして、「分かっている」と思われていた事が、新しい実験パラダイムによって、覆されたりすることもあります。

この文章では、新しい語学学習の仕組みを検討するための基礎として、語学学習に関わる脳の部位を整理することを趣旨としています。科学的な正確さよりも、道具としての実用性を選び、説明として短くなるように文章を記述します。誤った点にお気づきの方がいらっしゃいましたら、コメントで教えていただければと思います。

まずは全体像として、言語中枢から。

言語中枢(全体像)

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(引用資料 記憶力を正しく理解する)

言葉には「音」「文字」の2つの形があります。(手話などもあります)

「音声として聞いた言葉」は一次聴覚野から、「文章として読んだ言葉」は一次視覚野からスタートします。このnote では、音声を中心に説明していきます。

聴覚野

鼓膜で受け付けた音声信号を最初に処理するところです。1次から3次までの3領域に分けられています。

一次聴覚野は特定の周波数の音に対して反応すると言われています。工学的にはフーリエ変換のような処理に対応していると思われます。

よく「絶対音感は○歳までじゃないと身につかない(クリティカルエイジ)」という話がありますが、一次聴覚野の発達が一定の年齢で止まるためだと考えられます。

二次三次聴覚野はより高次で統合された音声認識を取り扱います。

ウェルニッケ野

知覚性言語中枢とも呼ばれ、他人の音声を言葉として理解するのに重要な部位です。三次聴覚野からウェルニッケ野の間で音素の抽出がなされていると考えられます。

言語によって異なる音素


「音素」とは「話し言葉」を分解した時の最小単位です。書き言葉では「文字」が最小要素となります。音素のリストは英語や日本語など言語によって異なります。日本人は英語の「L」と「R」の発音を区別するのが苦手ですが、対応した音素が日本語には存在しないからです。

日本人の英語がカタカナ英語と言われてしまうのは、「日本語の持つ音素」の範囲で英語を発話しようとするからです。

「LとRを聞き分けられる」いわゆる英語耳についても、絶対音感と同じくクリティカルエイジがあると言われることがあります

自分の予想としては、「若年の方が獲得しやすいが絶対音感ほどはクリティカルでない(大人になってからも獲得しうる」ものじゃないかなと考えています。

話はそれますが、音素についてはソシュールの音素の弁別性の話はとても好きです。

手元になくて定かでないのですが、この本で読んだと思います。


左角回と縁上回

右利きの人は左脳にある左角回において「意味を持った単語」を扱っていると言われています。左角回は左縁上回と密に接しており統合して意味を取り扱う働きをしています。

角回が面白いのは視覚野との繋がりも持っている点です。

シンボルグラウンディングを解決する角回

人工知能の分野ではシンボルグラウンディング問題というものがあります。


音声刺激としての「ネコ」と、視覚刺激としての「猫」という漢字や、画像としての 😺 はあくまで異なる刺激です。これらを「同一の意味」として捉えるために重要な役割を果たしていると言われています。

角回は人間の脳においてシンボルグラウンディング問題を解決するのに、重要な役割を果たしていると考えられます。

ブローカ野

ブローカは1860年代に失語症患者の脳損傷部位から、ブロードマンの44野から45野にかけて発話運動に関する中枢があると推定しました。そのため運動性言語中枢とも呼ばれます。

しかし近年の研究で、ブローカ野の役割は発話運動だけでないことが分かってきました。

併合度(文の複雑さの度合い)によって選択的に活動が変化する領域は,ブローカ野(BA44 と BA45 の両方にわたる領域)と左縁上回のみであった。(ブローカ野における文法処理、より)

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これは予測なのですが、各部位はメインとなる役割はもちつつも機能としてオーバーラップしていると思います。例えば、再帰的な文節構造の処理は、左縁上回とブローカ野で重複して持っている。素朴なものは左縁上回で処理するが、複雑なものはブローカ野で処理しているのではないかと考えています。

つづけて、日本の英語教育で育った人が「英語でコミュニケーションし英語で思考する」ためにどこを鍛える必要があるのか考えていきたいと思います。

日本の英語教育で育った人にとっての課題

現象面から捉えると、以下の3点が課題だと思います。

1. 英語の音素を弁別(識別、認知)することが出来ず、英語音声の中の単語を「意味として捉えられる確率が低い」こと

2. 英語の音素を弁別出来ていないため、英語の音素を使って発話が出来ない。ブローカ野以降で、正しい音素で発話運動を生成することが出来ない。音素がわからないから発話出来ないのか、発話出来ないから音素が分からないのか、は鶏卵だと思います。

3. 正しく単語として認識できていないまま英語音声を聞いているため、入力エラーのような状況になっており、文章を紐解くブローカ野での学習がうまく進まない

音素を弁別出来ないことが一番ネックになっていると思います。ここからアプローチできれば良いのですが、音素弁別能力の獲得効率は子供と比べて大人は大きく劣ると考えられます。

音素が勝手に獲得されるのは幼年期まで

聴覚野の可塑性(変化しやすさ、学習のしやすさ)はある年齢で低くなるためです。幼年期ではオートエンコーダ自己組織化マップのようなメカニズムで、刺激(データ)のみから音素弁別能力を獲得出来るのですが、そのよな学習の働きが止まってしまう

蛇足ですが、他の哺乳類と比べて、人間の赤ちゃんは非常に未熟な状態で生まれます。馬の赤ちゃんは生まれてすぐ立ち上がる事ができますが、人間の赤ちゃんはほとんど何も出来ません。これによって生後の環境への柔軟性を高めていると言われています

運動能力は大人になってからでも獲得しやすい

聴覚野などセンサー的な部位と違って、運動能力は大人になってからでも獲得しやすいです。定年後にテニスやゴルフを初めてもある程度フォームを身につける事ができます。

音素が識別出来ているかどうかはさておき、「音素の発話練習」を行うことで、音素の弁別能力も合わせて高められるのではないかと考えています。(ほんとかな。。)

発音法 フォニックス

発音訓練をするフォニックスという分野があります。

正しい口のフォームで発声することで、正しい発音を獲得する学習方法です。フォニックスの訓練をテクノロジーを駆使してどうやるかを、次回以降考えていきたいと思います。

ここまで調べて思いついたことのメモ

・単音でなく複数音素を扱うbi-phonix
・練習した音素認識のバイオフィードバック
・練習した表情のバイオフィードバック(ARKitのFaceTrackingで)



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