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42万件のデータが示す真実 効率的に学んで〈遠回りな英語学習〉に終止符を

日々忙しいビジネスパーソンにとって、仕事も学習も効率性が大事です。特に英語学習は継続的に行う必要があるので、できる限り効果的かつ効率的にやりたいもの。でも実際には、なかなか仕事で英語が使えるようにならない」と感じている人が多いようです。
それ、実はやり方が間違っているかもしれません…!今回の記事では、のべ42万人分のテストデータの分析結果とビジネスパーソンを対象に行った英語学習に関する調査から得られた事実に加え、有識者2名の学習アドバイスをご紹介します。

英語学習と言えばTOEIC® L&Rから…?

昨今、社会的なトレンドに加えて経済産業省や厚生労働省から支援に関して発表されるなど、リスキリングを後押しする機運がますます高まりつつあります。

ところで、リスキリングで習得したいスキルとして《英語》は非常に注目が高いのですが、実際に英語を学習しようと思った時、「まずは単語を覚えよう」「文法の学び直しからだ…」と思って関連書籍を購入し「TOEIC® L&Rで〇〇点取ろう!」と目標を立てる方は少なくないのではないでしょうか?

TOEIC® L&Rは多くの教育機関や企業で活用されており、一般的に認知度が非常に高い英語テストです。事実、大手書店年間ベストセラーの全ジャンルを含めたランキング上位に“TOEIC®L&R”関連書籍がランクインしています。

紀伊國屋書店 2022年 書籍年間ベストセラー(総合)
:トップ100に3冊がランクイン
日本出版販売株式会社 2022年 年間ベストセラー(総合)
:トップ30に1冊がランクイン
2022年 楽天ブックス 年間ランキング(和書)
:トップ100に3冊がランクイン

なお、同ランキングには他にも英語に関連する書籍がランクインしていたものの、いずれもフレーズ集ないし英語詞の歌を覚えるCD付書籍でした。

そもそも、書籍で学習する(=読む)という手段の性格を考えると、書籍ランキングのベストセラーにTOEIC® L&Rの関連書籍が多いのは自然な結果です。また、書籍を読むというインプット学習は手軽なので、ビジネスパーソンの学習方法として始めるハードルが低いのかもしれません。

一方で「キャリアアップや年収アップなどのために、ビジネスで使える英語を身につけたい」場合、果たしてTOEIC® L&Rだけで十分でしょうか?

もちろん、昇格試験の判定基準にTOEIC® L&Rが設定されている、業務で英文を読む・聞くことが多いといった場合もあるでしょう。
しかし、ビジネスで英語を使うとなれば、それは多くの場合「英語を話せたうえで、〇〇ができる」というシーンが想定されます。

たとえば…

など、英語を話す、つまり英語で意見や説明をアウトプットするシーンが多数あります。

ところが、実際には「話す力」が必要であるにもかかわらず、アウトプットではなくインプットの学習を選ぶ人が意外にも多いようです。海外赴任は現地に移住するので、生活でも業務でも絶対に英語を話せなくてはいけませんが、「英会話スクール / オンライン英会話に通う」を「参考書や問題集で勉強する」が上回る結果となった調査もあります。

(出典:海外赴任予定者の英語学習に関する実態調査結果 セブンシーズ社

また、当社がビジネスパーソンを対象に実施した調査においても、英語4技能(読む・聞く・書く・話す)のうち「話す力(スピーキング力)」を重要視している人が51.3%と過半数を超えた一方で、必要性を感じる英語指標についてはTOEIC® L&Rが34%と最多回答を占める結果になりました。

データが示す〈遠回りな英語学習〉の問題点と効率的な学習のヒント

これらの結果から、レアジョブではとある仮説を立てました。

そして、英語学習者を対象とした調査および英語スピーキングテスト「PROGOS®」のべ42万件におよぶ受験データを分析したところ、そこから英語に関するスキルの実態と、学習の問題点が浮き彫りになりました。

【結果① TOEIC® L&Rスコアが高くても、英語を「話す力」があるとは限らない】

あくまで推測ですが…
「私はTOEIC® L&Rのスコアが900点あります」という人に出会ったら(900点も取れるなんて、きっと英語もペラペラに話せるに違いない)と思ったりしませんか?

しかし、「PROGOS®」とTOEIC® L&Rの両方を受験した人のレベルとスコアを対照した結果、「読む・聞く力」(=TOEIC® L&Rで測れるスキル)と「話す力」(=「PROGOS®」で測れるスキル)の間には、大きな乖離があることがわかりました。

上記のバブルチャートは、TOEIC® L&Rスコアと「PROGOS®」で測定できるCEFRレベルを比較しています。※TOEIC®スコアは、CEFRレベルに換算することができます。

このチャートでは「TOEIC® L&Rのスコアをベースに考えたら、本来ならCEFR『B1』レベルの話す力を持っているはずの人たちのうち、本当に『B1』レベルの話す力を持っている人はたった4割しかいなくて、残り6割の人たちはTOEIC® L&Rスコアで換算するよりも話す力が低かった」という事実を示しています。
もう1段レベルを上げると「TOEIC® L&Rスコアからすると、グローバルビジネスで通用する最低レベルCEFR『B2』レベルの話す力を持っているはずの人たちのうち、本当に『B2』レベルの話す力を持っている人は、たった1割しかいなかった」という事実が明らかになったのです。

したがって、《TOEIC® L&Rのスコアが高い=英語を話すスキルもある》というイメージは成り立たないことが、5万人以上を対象とした大規模な分析結果から証明されたのです。

【結果② 日本人は英語を「話す」力を高めるためのアウトプット学習が圧倒的に不足している】

では、なぜ日本人の英語を「話す力」はこんなに不足しているのでしょう?
英語学習者を対象に実施した調査結果から、その理由が見えてきました。

「20~50代の社会人」「ビジネス英語の学習経験者」「TOEIC®L&Rスコア700点」の3つを満たす400名を対象に行った調査において、3,000時間以上も英語学習をしているのに「話す」学習はたったの30時間しかしていない——つまり、話す学習時間は全体の1%にも満たない結果が出たのです。

結果①と②から、ビジネスパーソンの「英語を勉強しているよ」とは「参考書や問題集を使ったり、英語の映画やニュースでインプットしたりしているよ」とほぼ同義であること。

そして「英語を使ってビジネスができるようになるために、実際に英語を使ってネイティブスピーカーと話す練習をしているよ」ではない(=アウトプットの学習はほぼ全然やっていない)ことが考えられます。

【結果③ ビジネスで通用するレベルの英語を話せる日本人はかなり少ない】

さらに、ビジネスシーンで英語を話すとなると、実態はさらに深刻です。

AIビジネススピーキングテスト「PROGOS®」は、2020年6月のローンチ以来のべ42万人が受験しているテストです。そのうち、日本人受験者34万人のデータを分析したところ、下記のようなレベル分布が判明しました。

一般的に、ビジネスで英語を使う場合、最低でもCEFR「B1」レベルが必要になると言われています。実際にグローバルビジネスで通用するレベルともなれば、さらにその上の「B2」以上が必要です。
しかしながら、34万人の受験者データは、日本人の英語を「話す力」の最多層が初級レベルにとどまっていることを示しているのです。

また、いわゆる学歴の高さと、自信を持ってビジネスで英語を話すスキルが連動しないことも調査から明らかになりました。旧帝大卒業者であっても「ビジネス英語を自信を持って話せる」と回答したのは11%、約1割だったのです。

なお、一点補足すると、英語を「話す力」が高くない、ビジネスで通用するレベルに至っていないからといって「だから、ネイティブのように話せるようにならなければいけない」という示唆にはなりません。

英語は〈コミュニケーションツール〉であり、裏を返せば、英語を使って問題なくコミュニケーションを取れればそれでよいのです。
現在、世界中で英語を話す人のうち、ノンネイティブスピーカーは全体の約7割。10億人以上もいるのですから、あえてネイティブスピーカーレベルを目指さなくても、英語でのコミュニケーションは十分にできます。

ただ、コミュニケーションを取る(≒話す)練習をせずに「読む・聞く」の練習偏重では、なかなか話せるようにはなりません。なので、遠回りな学習方法はやめて【話せるようになる必要があるなら、話す練習をしましょう】と推奨したいのです。

結局、どうすれば「話す力」を伸ばせるのか?

忙しいビジネスパーソンが知りたいのは「結局のところ、どうすれば効果的かつ効率的に英語を『話す力』を伸ばせるんですか?」に尽きるでしょう。

答えは「インプットとアウトプットをバランスよく学習すること」です。

先にご紹介した分析データが示す通り、日本人は英語を「読む・聞く力」と「話す力」の間に大きなギャップがあり、特に「話す」力が不足しています。なぜなら、英語を「話す力」を高めるための学習が圧倒的に不足しているからである、と示す調査結果もご紹介しました。

インプット学習ばかりでは「話す力」はなかなか上がらないし、コミュニケーションに必要な知識や語彙のインプットがなければアウトプットは難しい。なので、どちらかだけに偏ることなく、バランスの良いインプット・アウトプット学習が、実は最も効率的なのです。

日本の英語研究の第一人者で、NHK英語講座などでもおなじみの東京外国語大学 大学院教授/言語学博士の投野 由紀夫氏のアドバイスをご紹介します。

「インプットとアウトプットはバランスよく両方必要」であり、インプットでしっかり英語の形と意味を、頭でプロセスして理解した後、それをアウトプットの活動を介して練習を多く積む…という方法です。それによって、自分が発信したい内容を英語で形にする英語回路を頭のなかに作っていきます。
その状態をつくるには、アウトプットに必要な量の数倍はインプットします。そして、適宜日本語などの説明を介して英語の形と意味に対する理解を深めます。常に、目的・場面・状況などを想定して英語で表現したい内容をイメージしながら、頭で何度もプロセスして英語でアウトプットする経験を積む。その循環を効果的に作ることが、何よりも大事です。このようなバランスのとれたプログラムによってこそ【本当に使える英語力】が身につくのです。

さらに、より効率的に英語を「話す力」を伸ばすには「定期的に実力を測定し、成長度合いを定量的に把握すること」が有用です。
企業のグローバル人事戦略/人材育成・英語コミュニケーション分野にて25年以上の経験を有する株式会社プロゴスの取締役会長 安藤のアドバイスもご紹介します。

インプット・アウトプットの練習とともに、自分が到達すべきスピーキング力レベルのゴールを定めて、定期的にテストを受けて実力チェックすることをお勧めします。ゴールと現地点を把握していないのは、山登りするのに地図やGPSがないのと同じです。スピーキング学習者も、道に迷ったり、遠回りしていることには案外気が付かないものです。

ただ、スピーキング力のゴールときいて、パッとレベルやスコアが頭に浮かばない方もいるかもしれません。そのくらいスピーキング力測定はこれまでおろそかにされてきたのです。またスピーキング力は、聞かれたことに対して自分で答えを考えて英語で表現するという、自由発話形式でないと本当の実力が測れませんので本当の実力がわかるテストを受けましょう。

ゴール設定や現地点の実力把握には、グローバルにも通用するCEFR基準を用いるのがいいですね。毎日みっちり学習している人なら1~2カ月に1回はテストを受けてチェックしてほしいと思います。

インプット学習に偏って遠回りすることなく、効果的かつ効率的な英語学習を実践されてみてはいかがでしょうか?

「英語で話す」トレーニングとしての「レアジョブ英会話」に加え、より短期で成果を出す英語コーチングサービス「スマートメソッド®」などで、バランスよくインプットとアウトプット学習が可能です。また、定期的に英語スピーキング力の実力を測定するには、AIビジネ英語ススピーキングテスト「PROGOS®」の活用をおすすめします。

(有識者プロフィール)

東京外国語大学ワールド・ランゲージ・センター長
大学院総合国際学研究院 教授
投野 由紀夫(とうの ゆきお)氏

英国ランカスター大学でPh.D.(コーパス言語学)を取得。専門はコーパス言語学を応用した英語教育、英語辞書学、外国語教育学など。 NHKの「100語でスタート!英会話」」(2003-2005年度)、「コーパス100! で英会話」(2009年度)、NHKラジオ・テレビ「基礎英語」(2016-2020年度)の講師を歴任。 現在はEテレ「英会話フィーリングリッシュ」の講師を務めている。 日本の英語教育の改革に関して、「CEFR-J」という新しい英語の汎用枠の構築プロジェクトを牽引している。

株式会社プロゴス 取締役会長
安藤 益代(あんどう ますよ)

野村総合研究所、ドイツ系製薬会社を経て、渡米し滞米7年半の大学院/企業勤務経験を経て帰国。企業のグローバル人事戦略/人材育成・英語コミュニケーション分野にて25年以上の経験を有する。グローバルな視点から人的資本経営、リスキリングを分析。人的資本開示ISO30414リードコンサルタント・アセッサー、早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招へい研究員。 国際ビジネスコミュニケーション協会ならびにEdTech企業を経て 2020年より株式会社レアジョブに参画し、同グループで法人事業を担当するプロゴス社にて 2022年4月より現職。講演、執筆多数。


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メール:press@rarejob.co.jp

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