
『オデッセイ』映画レビュー:科学とユーモアが織りなす壮大な感動の物語
映画『オデッセイ』は、壮大なSFアドベンチャーの形をとりながらも、実は孤立無援の遭難劇だ。火星に取り残された宇宙飛行士が、自らの知恵と工夫で生き抜こうと奮闘する様は、過去の名作『ロビンソン・クルーソー』や『キャスト・アウェイ』を彷彿とさせる。しかし、この映画には、誰もが予想する展開を超えた、ある特別な魅力が隠されている。
それは、絶望を希望へと変えるユーモアと「現実感」だ。主人公マークは、植物学者としての知識を駆使し、火星の不毛な地でジャガイモを育て始める。NASAが救出計画を練る間、彼は孤独や危機をユーモアで乗り越え、次々と課題を解決していく。その過程で観客は、命を繋ぐ努力が「非日常」の中でもどこか「日常」的であることに気づくのだ。
監督リドリー・スコットは、絶望的な状況を明るくも力強く描く。ディスコミュージックが流れる火星の赤茶けた風景、NASAの熱意溢れる議論、そしてマークの奮闘。この映画は、単なるサバイバルではなく、希望と絆を祝う物語だ。エモーショナルなラストまで、観る者の心に勇気を宿す。