外国人生徒とダブルリミテッド(double limited)
こんにちは、公立高校で英語教員をしているHIPPOと申します。
今回は、特に外国人生徒が抱えるダブルリミテッドの問題について書いていこうと思います。ポイントは以下の6点です。
ダブルリミテッドとは
ダブルリミテッドを知ったきっかけ
どうしてダブルリミテッドになってしまうのか
ダブルリミテッドの問題点
高校の現状
できること
ダブルリミテッドとは
大辞林のでは以下のように定義されいます。
「2か国語(以上)の話者であるが,その双方とも年齢相応に使いこなせない状態のこと。また,そのような人のこと。〔既存の同義語セミリンガルについて否定的ニュアンスがあるとする立場から用いる語〕」
つまり、母語も外国語も上手く使えない状態のことを言います。ダブルリミテッドを知ったきっかけ
私は4年ほど前までこの言葉の存在さえも知りませんでしたが、ある外国人学校での研修会で、そこの校長先生の話を聞く中で初めてダブルリミテッドという言葉を知りました。その言葉の意味を知った時の衝撃は今でも鮮明に覚えています。私は当時夜間定時制に勤務していたため、特に外国人生徒の割合も多く、当時抱えていた生徒の関する様々な問題の原因のひつとがこのダブルリミテッドなのではないかと思いました。まだまだ知られていない言葉だと思いますが、少なくとも外国人生徒が在籍する学校の先生方には知っておいてほしい言葉だと思っています。どうしてダブルリミテッドになってしまうのか
当時研修を受けた外国人学校で聞いた説明によると、言語使用は大きく分けて2種類に分けられる。一つは家庭で使われるような「生活言語」と学校の勉強で使われる「学習言語」である。そして、言語の発達は生活言語の上に学習言語が積み上げられるため、生活言語なくして学習言語の習得は困難である。もし外国人生徒が家庭では母語を使い、小学校に入学してから初めて日本語を学ぶ場合、生活言語は母語、学習言語は日本語(外国語)ということになり、結果として母語は生活言語止まり、日本語も生活言語という基礎がない不安定な学習言語という状態になってしまう。さらに、基本的に外国語が母語よりも堪能になることはないと言われており、母語が生活言語で止まっている限り日本語(外国語)の習得にも早い段階で限界がきてしまう。ダブルリミテッドの問題点
言語は書いたり話したりするコミュニケーションツールという側面だけでなく、思考を深めるためのツールでもある。私達は何かを考えているときも無意識に母語を使っている。基本的に母語を十分に獲得している場合、自分の意見や感情を言語化することに不自由はしない。しかし、母語の獲得が不十分の場合、自分が考えていることや感じていることを自分自身で表現できない。こうしたモヤモヤした状態が続くと、精神的に不安定になり問題行動につながると言われている。もちろん、日本語も不自由なため学校の学習にもついていけなくなる点も大きな問題である。高校の現状
私が勤務していた夜間定時制高校は生徒の4~5割が外国籍の生徒だった。たとえ日本生まれ日本育ちであっても、いわゆる片言の日本語しかしゃべれない生徒も少なくなかった。その高校では国語の教員が始業前に日本語講座を行ったり、行政の日本語講座を活用したりしていたが、頻度も週1〜2回程度であり効果はそれほどなかったと感じている。しかし、公立高校ができる対応はこれが限界だったのだとも感じている。そもそも十分な日本語教育をする人員も予算もない。さらに言えば、仮に十分な人員と予算があったとしても先に述べたように、ダブルリミテッドに陥ってしまっている場合、いくら外国語をトレーニングしても飛躍的なレベルアップにはつながらない可能性が高い。できること
実際ダブルリミテッドとなってしまった生徒に対し、根本的な解決のためにできることはほぼ無いのではないか。できるとしたら、これ以上ダブルリミテッドで苦しむ子どもが増えないように行政等が、出稼ぎに来る外国人にダブルリミテッドについて説明し、「家庭で母語を使い続けるなら、こどもは外国人学校へ入学させてください」と促すことぐらいだと思っている。せっかく日本に住んでいるんだから日本の小学校に入れてバイリンガルにしよう、と安易に考えないように大人を教育するということである。ただし、外国人学校の多くは多額の費用がかかるため、現状裕福な家庭の子どもしか通えていないという問題点もある。
言語の習得は個人差が大きく、同じような環境で育ってもダブルリミテッドにならない子どももいる。しかし、一旦陥ってしまったら抜け出すことが非常に困難な問題だからこそ、もっと多くの人に知っておいてほしい。尚、私はダブルリミテッドについての専門家では無いため、詳しくは専門書等を参照してください。この記事をきっかけに、少しでも多くの人にダブルリミテッドについて関心を持ってもらえたらうれしいです。
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