ENGINE - 久保田徹朗

ENGINE CREATIVE DIRECTOR / COPYWRITER 社会課題の解決に本気で挑む組織の戦略からクリエイティブ制作まで一貫した「統合クリエイティブ」を提供。夜間 feat.グッナイ小形 (作詞・作曲) / 短編映画『夜間』(企画・プロデュース)

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4話 11月25日(土) 【短編映画『夜間(企画・プロデュース 久保田徹朗)』公開中】

「有終の美を飾る」とはこういうことだろう。引越しの準備をする私の元に、元同僚からLINEが届いた。 「最後に夏実が配信したメルマガからアポが3件取れた。ほんとありがとう」 AIが書きそうな定型文を返そうと思った瞬間、予想だにしない言葉が視界に入り込んでくる。 「でね、エースタッグっていうIT企業にアポ行ったんだけど、中村優太さんって人に会ったよ。夏実、知り合いなんだって?」 私は、彼女に返信をしたらそのまま荷造りに戻るつもりだった。まだまだダンボールに詰めきれていない

    • 3話 3月9日(水) 【短編映画『夜間(企画・プロデュース 久保田徹朗)』公開中】

      「歓迎会、余興どうします?」 「恋ダンスでいんじゃない?」 「いや、ブーム去ってません?」 全面ガラス張りの窓から東京タワーが見える高層ビルの25階は、定時の18時を過ぎると雰囲気がガラッと変わる。 引き出しの中から食べかけのお菓子を取り出し、今にも床に滑り落ちるんじゃないかと心配になるほど椅子に深く腰掛け、パソコンの画面をジッと見つめる者が繁殖する。 僕のデスクがある島は、来月に迫っている会社の歓迎会トークで盛り上がっていた。 僕が十年以上も前から推していた源さんは

      • 2話 3月11日(金) 【短編映画『夜間(企画・プロデュース 久保田徹朗)』公開中】

        剥がれても削れてもいない「金井夏実」と名前シールの付いた下駄箱から上履きを取ると、私はいつもの癖で少し離れた下駄箱の中を一瞥した。確認するのが日課になっている下駄箱には、踵がすり減ったNIKEのスニーカーが入っている。 そっか。一つ下の学年は、卒業式の準備で早めに登校するんだっけ。残念に思いながらも、私は妙に日の差した大階段を登っていく。 今日は曇りのち晴れ。 それは今日の空模様ではない。今日の私の気分は “曇りのち晴れ ”なのだ。 私は本日をもって、一年も通っていな

        • 1話 9月1日(水) 【短編映画『夜間(企画・プロデュース 久保田徹朗)』公開中】

          「……好きなの?」 隣、いや隣とも言い難い絶妙な距離に座っていた少女が、空いたレモンスカッシュの缶を片手に、僕に視線を送っていた。本当に僕を見ているのだろうか?確認してみたが、後ろには誰もいない。僕は観念して、そっと耳からイヤホンを外した。 「星野源……好きなの?」 「……え?」 「ほらこれ」 彼女はシリコンケースに入った僕のiPodを指差す。確かに画面には「星野源 ばかのうた」と表示されていた。 「えっ。源さん……源さん、知ってるんですか?」 「うん、知ってる!」