ノヴァセン〈超知能〉が地球を更新する(NHK出版)
ガイア理論の提唱者であるジェームズ・ラブロックの新著であり、WIREDの編集長である松島倫明さんが訳していて、そしてこの本を紹介してもらったのがHuman Potential Labというこれまた全力で面白い境地を開拓している山下悠一さん。想定通りに、色々と既存の思考の枠組みを超えてくれた。
タイトルにある「ノヴァセン」とは、時代の区切りの名前(正しくいうと「地質年代」かな)。始生代とか、古生代とか。
本書の中から引用すると、
人類が地球(ガイア)に君臨し、地球環境に大きな影響を及ぼしてきた産業革命以来の時代(=アントロポセン)
〈超知能〉と人類が地球に共存する時代(=ノヴァセン)
となる。今はアントロポセンの終わり/ノヴァセンの始まり、という転換点に居る。
この本で最も面白かったのは、これから勃興すると思われるロボットやAIなどの電子的生命体を、人類を始めとする有機的生命体の「次」の進化の形として位置づけていること。
そのロボットやAIというものも、ガイアにとってはこれまでと等しく「進化」である、と言っている。
また、人類が地球に最も影響を及ぼせる種であった時代から明け渡すことでもある。それは「人が植物を見るのと同じように、ロボット/AIが人を見るようになる」ことであり、「犬が人の世界をわからないように、人はロボット/AIの世界がわからない」ことである。
これをホラーストーリーとして書いているのでは全く無い。むしろ、それが健全でまっとうである、と伝え続けている。(ロボットの合理的な判断として、人との共存の道を選ぶはずだ、とも)
この主張の妥当性や蓋然性は私には分からない、というか誰にも分かりようがない。ただ、この「人類」と「機械」を二分しない、一直線上に捉えるような世界の見立て方は非常に共感を覚えたし、またそういうガイア(地球)の時間軸でここまで事細かに世界を捉える体験がとにかく愉快だった。