難病告知は突然に
「今日、1番最後に診察したいので16時頃にまた来ていただけますか?」
その日、いつも通り妊婦健診のため受付をした産婦人科で突然告げられた。当時妊娠25週。やっと悪阻が落ち着いて、今回の健診で性別がわかったら気分転換にベビー用品を見に行こうとウキウキしていた私に、突然それは訪れた。
お腹の子は第二子。ここは第一子を妊娠出産した時と同じ総合病院の産婦人科だ。予約をしても1時間待ちなんて当たり前なのは承知していたが、突然の診察時間の変更。それもまさか1番最後に変更される事があるとは寝耳に水だ。
え、、あの、何かありましたか?
その予想もしなかった状況に、とてつもない不安感が襲ってきた私は、質問で返してしまった。
何も聞いていませんか?
私の質問に、さらに質問が返ってきた。
何も聞いていませんと答えると、
実はこの週数で一度必要な検査があるのですが、少しお時間が必要になるため今回は1番最後に診察したいと先生が言っていて、申し訳ありません、、と答えてくれた。
その場で一度納得して病院を出たものの、駐車場に停めている車まで歩いているうちに、あっという間に不安感が舞い戻ってきた。完全復活どころかさらにレベルアップしている不安感が。
何かおかしい。
車に乗り、ひと息つく間もなくすぐに友人に電話をかけた。この突然訪れたどこか違和感を感じる状況。とにかく誰かに話したい。
お腹の子に何かあるのではないか。
あわよくば、この1番あってはならない予想の順位を下げてほしい。圧倒的に第1位にランクイン。お願い、せめて3位くらいにしてほしい。
そんな私の気持ちを察してくれたのか本心なのかは分からないが、友人は「病院側の予約ミス」を第1位に押し上げようと励ましてくれた。
一瞬、第1位にランクイン!するものの、すぐに嫌な予想が1位に返り咲く。そんなやりとりを友人と繰り返しているうちに、あっという間に診察時間が近付いてきたため再び産婦人科の待合室へ戻る。結局、第3位までランクダウンするどころかそもそも予想は二択しか思い浮かばなかった。
診察室に入ると、先生からしっかりと謝罪があり「あっ、本当にただの予約ミスだったんだ」と思ったものの、すぐに私の予想が大優勝してしまう。
前回の診察の時のエコー写真でちょっと赤ちゃんに気になるところがありました。
そう話始めた先生。
赤ちゃんの首のあたりに瘤のようなものがある。
そう聞いて、すぐに
ダウン症でしょうか?と私は質問していた。
浮腫ではなく瘤なのでダウン症ではないこと。
後頭部の骨が一部欠損していて、そこから中にあるものが外に出てしまって瘤となっている。
それに伴って頭の中にお水が貯まってしまっている。ここでは赤ちゃんが産まれてから対応できる環境が揃っていないので大学病院での出産になる。予約は今ここから直接とることができる。ここでは診断も難しいので大学病院で改めてエコーで診察をしてそこで診断をしてもらう。
そんな話をしながら気付けばお医者さん2人がかりで1時間もエコーを行っていた。
疑われる病名は、脳瘤と水頭症。
先生、お腹の子は産まれてきてからどうなりますか?
診断は出来ないから正直何も言えることがない。ただ、頑張れる子もいれば頑張れない子もいる。
この1時間ものエコー検査と話の内容にもうお腹も心も限界だ。
やっとエコーが終わりお腹をあたためながら、最短でとれる日に大学病院の予約をお願いした。この日、突然の診察時間変更を告げられてからの約1時間半ですらとても不安定な感情で過ごしていたのだ。お腹の子のためにも私の精神衛生的にも1秒でも早く大学病院に行きたかった。
最短でとれた予約日は5日後。
まずは大学病院で診断をしてもらうこと。
話はそこからだ。何かの間違いかもしれない。
しかしすでにこの日から出産までの2ヶ月半に及ぶ暗黒妊婦期はスタートしていた。