ボテロ展 ふくよかな魔法 Bunkamuraザ・ミュージアム
Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「ボテロ展 ふくよかな魔法」を見てきた。
絵画だけの展示で、彫刻作品はないのか、と寂しく思っていたら、中庭に「小さな鳥」(広島市現代美術館所蔵)があった。小さくないけど!
ボテロが初めて日本に紹介されたのは1980年代に初めての個展が日本で開催された時で、この時に、こういう画風の画家がいる、ということは認識したのだが、展覧会は行けず、海外で彫刻作品などを見かけたことはあったが、ボテロの絵画作品と対峙するのは今回が初めてだった。ボテロは1932年生まれで、今日に至るまで、創作活動を続けている、というのも今回初めて知った。1980年代のボテロはつまり、まだまだ道半ばだったということだ。21世紀に入っても旺盛な創作意欲を持って、新しい作品を作り続けていたことに感嘆する。
以下、撮影可能ゾーンにあった作品たち。
全体的な傾向として、モデルとなるものを何割か膨らませ、逆に、そのモデルの中の構成要素(マンドリンだったらオーバルホール、人の肖像なら目鼻口など)を極力小さくする。
途中に、キャンバスに鉛筆と水彩で描いたデッサン的な絵画のコーナーがあり、迷いのない線で描かれた淡い色合いの絵はちょっと山本容子の版画に似た風合いもあり、おもいがけないあっさりぶりが美しい。そして淡い色合いで描かれた人物像の瞳の美しさに心打たれる。
ベッドで眠る自画像の上に覆いかぶさるような肉感的な守護天使の絵は、ちょっと有元利夫のフレスコ画のようでもあった。
コロンビアに生まれ、カトリックの教えの影響を深く受けているので、ボテロの絵は色んな角度からカトリック的である、と思った。
人物画が印象的、と思っていたが、静物画もよかった。黄・青・赤の花の3点組の絵は何かに似ている、と思ったら横浜市のゆるキャラ、ガーデンベアの頭部みたいなのであった。
不思議な無表情さ、時として飛び散る汗、滂沱の涙、振られるコロンビア国旗、ベラスケスやピエロ・デ・フランチェスカ、クラーナハ他多くの先人への敬意。フラットに塗られた絵の具の奥で、美しい背景画があったり(ヌーディスト・ビーチの絵の背後の波が妙に気持ちをざわつかせる)、女たちのハイヒールなど、気になる小道具。
作品が時系列ではなかったので、作家の作風の変化、見たいのを感じるところはあまりなかったが、ある意味、伝えたいことは、50年以上変わっていないのかもしれない。
色々な意味で心に残る展覧会だった。
次回は是非もっと彫刻作品も!
Bunkamuraザ・ミュージアムでは2022年7月3日まで。その後7月16日~9月25日は名古屋市美術館に巡回。
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