ホキ美術館(千葉市緑区)
ホキ美術館は、千葉市緑区にある、私設の美術館で、写実絵画のコレクションで知られています。
現在は、奥田元宋・小由女美術館「ホキ美術館名品展」を開催中ですが、わたしが訪れた2018年10月の記録を載せておきます。わたしが観覧したのはSPARK-あの時君は若かった-という展覧会でした。
2019年10月、台風21号の通過にともなう豪雨により浸水被害を受け休館していたが、2020年8月から開館、現在は来館予約が必要です。
2024年10月現在、予約は不要そうです。入館料は一般1830円。
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前から行ってみようと思っていた、土気のホキ美術館に行ってみることに。
ホキ美術館は写実芸術の作品だけをコレクションした美術館。写実絵画ってそんなに好きではないのだが、食わず嫌いもいかん。折しも、写実絵画の大家、野田弘志が、天皇皇后両陛下(当時)の肖像画を描いて、宮内庁に御物として納められたばかりである。写実絵画、タイムリー。野田弘志といえば、朝日新聞で加賀乙彦が『湿原』を連載していた時に、挿画を担当していて、それで名前を覚えた。鉛筆画らしいが、その細密さリアルさに驚かされた(小説は当時は読んでおらず、後に文庫になったときに読んだ)。
で、すごいけど、そんなに魅了されないと思っていた写実絵画。とりあえず見るべ、と、電車で土気(外房線)へ。千葉市の東のはずれへの旅です。駅からの2キロ弱は走る(土気駅から路線バスでアクセス可。駅から徒歩だと20分程度)。美術館のすぐ向こうが昭和の森です。
入場料1800円はちょっと高いが、現在活動している画家たちの活動を支え、絶えず更新される美術館でありたい、という方針らしいので、そうした活動の一助になる、ということなのだろう。そう信じておく。
細長い建物。自然光を取り入れたギャラリーで(大半が油彩画なのでなんとかなるのかな)壁の左右の絵を交互に見ながら進んでいく。キャプションを読むだけで、美術館の運営者、そしてキュレーターの思い、みたいなものが伝わってくる感じで、押しつけがましくもなく、ひたすら、写実絵画への愛、が伝わってくる。なので、どの画家の作品も好意的な目で見てしまう訳ですが、最初の展示室で見た青木敏郎と五味文彦の絵が心に残り、階下の別の展示室でも作品を見て、ますます感心。もともと、森本草介の絵を1枚買ったことがきっかけで写実絵画の美術館を作ろう、と運営者(保木さんという人)が思い立ったとのことで、森本作品もたくさんあり、それも素晴らしかったが、茶色がかった画風が、わたしのストライクゾーンからは少し離れていた。野田弘志の絵も、実物を見たのはたぶん初めてで、実物大より大きい肖像画「崇高なるもの」(谷川俊太郎、岩崎淑、野依良治の肖像があった)や、風景画、静物画、どれもよかった。面白かったのは、創刊時の雑誌「パーゴルフ」の表紙を描いていたということで、ほぼ雑誌掲載サイズ通りの樋口久子とかアーノルド・パーマーとかの絵があった。
ラバー床で歩行者の足に加わる衝撃をおさえ、2種類のLED電球が無数に天井にはめこまれ、絵画の色までよく見えるように工夫されていた。最後から2つ目の展示室には、作者自身がその作品について語った内容を再生できるようにしてあり、どんな気持ちで描いているか、分かるようになっていた。カフェやレストラン併設(利用しなかったけれど)。建物も面白く(日建設計:山梨知彦)楽しい時間を過ごせました。お客さんはひっきりなし、というほどではないが、途絶えることなく結構入っていた。
結構満足。(2018/10/7)