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舘野泉バースデーコンサート2018~彼のための音楽を彼が弾く~

昨年の11月、舘野泉のピアノが聴いてみたいと思って、バースデーコンサートに行ってみたらすごく楽しかったので、今年も早々にチケット買って行ってみた。昨年は手元が見える席だったのだが、今年は1列目だけれど右端の方で、鍵盤全く見えず。ちょっと残念。手元が見えないと、とても舘野さんが左手だけであの音楽を奏でているとは思えない、重厚な音の響きに驚かされる。

昨年はすごく尖った曲目、と思ったのだが、今年のコンサートはアンコールまで含めすごく抒情的な印象。

昨年の曲目

Y.ゴトリボヴィチ:ヴィオラ・ソナタ ★ (世界初演) 共演:今井信子(ヴィオラ)

Y.ゴトリボヴィチ:舞踊組曲 ★

J.ティエンスー:EGEIRO ★

池辺晋一郎:1枚の紙と5本のペン ~ 左手ピアノのために ★ (世界初演)

間宮芳生:風のしるし-オッフェルトリウム(舘野泉に捧ぐ)

アンコールはシサスク「エイヴェレの惑星」

今年の曲目

末吉保雄「土の歌・風の声」舘野泉に捧げる(2006)

末吉保雄「いっぱいのこどもたち」左手のためのピアノ小前奏曲集 舘野泉に捧げる(2008)

P.H.ノルドグレン:振袖火事~小泉八雲「怪談」によるバラードIIより 舘野泉に捧げる(2004)

一柳慧「FANTASIA 左手のために」(委嘱作品世界初演)

吉松隆「金魚によせる2つの雨の歌~伴奏音を伴う左手のピアノのための」(委嘱作品世界初演)

coba「謝肉祭 左手のピアノとフルートのために」(委嘱作品世界初演)フルート:藤井香織

アンコール「赤とんぼ」山田耕筰(梶谷修編)

「アヴェ・マリア」カッチーニ(吉松隆編)

自ら名乗っているのかはわからないが、プログラムに「クラシック界のレジェンド」と明記され、まさにその通り、と、思わせるだけの存在感を舞台上で見せてくれる。静かにピアノの前に座り、確かめるようにそっと足をペダル上に乗せ、動かない右手は膝の上に乗せ、左手だけで圧倒的な音をわたしたちの前に提示する。「左手の文庫」という募金活動を展開し、作曲家に、左手だけで弾くピアノ曲の委嘱を行っている。今年のプログラムの後半(一柳、吉松、coba)は、「左手の文庫」委嘱作品で世界初演、作曲家皆会場にいらしていて、演奏後、拍手を浴びていた。前半は、当初委嘱作品の初演を予定していたが、作曲家末吉保雄の急逝を受け、末吉作品とノルドグレン(没後10年)作品の演奏になった。

若い頃、舘野泉はシベリウスとか、北欧音楽の紹介者として、精力的に活動していたのだが、2002年に脳溢血で右半身不随となり、ピアノも左手だけでしか弾けなくなった。しかし、ラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」(第1次世界大戦で右腕を失ったパウル・ヴィトゲンシュタインのために書かれた)(パウル・ヴィトゲンシュタインの委嘱で、プロコフィエフ、コルンゴルト、ブリテン、リヒャルト・シュトラウスも左手のピアノ協奏曲を書いている)だけをレパートリーとするのでなく、自ら作曲家に左手ピアノのための曲を委嘱し、楽譜も出版し、様々な事情で片手でしかピアノを弾けない人のための曲目を増やしている。そして、11月10日には82歳の誕生日。先週、ポール・マッカートニー(76歳)を聴き、先々週ヘルベルト・ブロムシュテット(91歳)を聴き、だから、別に舘野泉だけがレジェンドじゃないよ、という感覚もあるが、人生100歳時代は、こういう時代なのか、と、彼らの力強い現役感に感謝し、また、感銘を受ける。

東京文化会館小ホールの、ほぼ満席の観客は固唾を飲んで舞台のピアニストを見つめ、演奏が終わって、余韻が消え、ピアニストが観客の方を向いてから拍手。脚を引きずりながら袖と舞台を行き来するピアニストを気遣うように、不必要に拍手は長引かせない。アンコールだけは拍手がややフライイング気味だったが(拍手がなかなか出なかったのは、知らない曲だから、単にどこで拍手していいのかわからなかったからなのか?)暖かい空気がホールを包んでいた。そうだよね。誕生日だもの。藤井香織のフルートも、様々な奏法を絶え間なく繰り出し、ピアノと融和し、聴いたことのない響きを提示してくれた。

来年のバースデーコンサートにも行けますように(出来れば手元の見える席で)、と強く願って会場を後にした。

【昨年のバースデーコンサートの感想を発掘】2017.11.10

東京文化の小ホールで舘野泉さんのバースデーコンサート。今日で81歳。昔から、まだ彼が両手のピアニストだった頃から聴きたかったのが、機会を逸していて、ようやくチケットが買えました。2002年に脳溢血で倒れ、右半身不随になったが、2004年に左手のピアニストとして復帰、左手ピアノの曲を委嘱しては演奏している。今日は、全曲委嘱作品で、ティエンスー、ゴトリボヴィチ、間宮芳生の旧作、そして池辺晋一郎とゴトリボヴィチの新作の世界初演。ゴトリボヴィチは、今井信子さんのヴィオラと一緒のソナタです。
どの曲も緊張半端ない、美しい作品で、左手とペダルでこんなに豊かな音が出るのかと感嘆。ペダルは右足で踏んでいた。アンコールのシサスクという人の曲も素晴らしかった。プログラムのプロフィールに「クラシック界のレジェンド」と、ばーんと書いてあるのに笑ったが、自ら名乗って恥じることない81歳。既に、舘野泉の左手のために書かれた曲は80曲に及ぶそうです。

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