岩崎家のお雛さま(2021年、静嘉堂文庫美術館)
注:これは2021年2月20日~3月28日に開催されていた美術展の記録です。今年ではないです。
静嘉堂文庫美術館。
世田谷区の不便な場所にある、という先入観が強く、なんだか行かずにいた静嘉堂文庫美術館、もうすぐ丸の内に引っ越してきてしまうことになり、逆に、じゃあ行っとかなくちゃスイッチが入り、行ってきた。用賀駅から徒歩25分、なーんだそんなに遠くないじゃん<って、23区内にどこの駅からも25分以上かかるポイントがあるというのはまぁ驚きだな。
用賀からは世田谷美術館とかは行ったことあるが、静嘉堂文庫はちょっと方角が違うので初めての道。住宅街の中てくてく。旧小坂家住宅、という施設のある公園のところで急にぎゅーっと下り坂、一気に多摩川の河岸段丘を降りた感じ。坂を下ったら静嘉堂の門があり、雑木林の中を少し登っていくと静嘉堂(古典籍のいっぱいある図書館。研究者に公開しているらしい)と美術館があった。
「岩崎家のお雛さま」展。新聞で広告を見て、変な顔のお雛さま、と思ったのだが、なんか凄いものでしたよ。
まず、江戸時代~昭和初期のの雛人形が何体かあり、メインのお雛さまは、昭和初期に岩崎小彌太が妻孝子のために、京都の丸平大木人形店で作らせたもので、鳥居坂の岩崎家(って国際文化会館のところか)で居間に飾られていた写真なども残っているが、戦後散逸していたのを、福知山の人形コレクターの方が根気よく蒐集し、その方の家で飾り、公開などもされていたものを、このたび静嘉堂文庫に寄贈されたというもの(由来が長いな)。
男雛が30センチ、女雛が25センチ、まぁ一般的な雛人形よりは心持ち大きいかな、という感じだが、着物も調度品も豪奢に作られていて、見飽きない。幼児の姿に作られたお雛さま、ということで、顔立ちのバランスが不思議な感じ。チラシ等では女雛は金の冠をかぶっているが、展示では、冠は脇に置かれている。冠を載せるためか、女雛の頭は巨大で上が平。
三人官女、五人囃子、随身、仕丁、それぞれに丁寧な解説がついていて、一人ずつしげしげと眺める。仕丁は鍋を囲んでいて、一人ずつ笑った顔、泣いた顔、怒った顔をしているのが面白い。道具類も勿論みごとな出来で、岩崎家の花菱の紋が入っている。これは全部は集めきれなかったのか、写真に残っている牛車や駕籠などはなかった。
犬筥という、はりこの2匹一対の人形(色んなサイズがあり、ぱかっと開くようなのでまるでマトリョーシカのようだった)とか、市松人形などの展示もあり、あとは春らしいものとして、岩崎小彌太が描いた梅の絵とか、小彌太に絵を教えた平福百穂の絵、琳派の襖絵、そして中国と日本の陶磁器のかずかず(桃モチーフのもの色々)、そして、野々村仁清の色絵吉野山図茶壷(重文)、曜変天目(国宝)。前述のようになかなか静嘉堂まで来られず、今まで曜変天目を見たことがなかったので、初めて実物を見て大感激、上から覗き込むと透明な器に模様が入っているように見える曜変。青い色が思っていたより鮮やかで明るくて驚く。
会場に置いてあった図録を見たら、孝子が小彌太の還暦を祝って作らせたという木彫彩色御所人形58点の写真が出ていて、え、これ見てないよと思ったら展示はなく図録で紹介されているだけ。これもすごく面白かったのでついつい図録を買ってしまう。お金持ちのお金の使い方の小気味よさを感じたお雛さまと御所人形である。
静嘉堂文庫美術館は国分寺崖線の斜面の上に建っていて、南に向かって急に下っているのだが、その斜面に梅の木と水仙が植えられていてどちらも満開で、美術館を出た後、庭の中を散策、そして出口に向かって歩いて行くと、ジョサイア・コンドル設計の岩崎家聖廟というのも見られて、面白かった。
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