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創造と神秘のサグラダ・ファミリア

2016年2月の記録。

忘れないうちに、映画「創造と神秘のサグラダ・ファミリア」感想(写真は自分で撮ったサグラダ・ファミリアで、映画とは関係ありません)
映画公式サイト http://www.uplink.co.jp/sagrada/
監督:ステファン・ハウプト。ドイツ人か! 冒頭のナレーションがドイツ語っぽくてあれれ?、と思ったら、地のナレーションはずっとドイツ語で、関係者へのインタビューはスペイン語や英語中心でした。彫刻家外尾悦郎へのインタビューもスペイン語でした。現場監督さん、建築責任者等の話。ガウディから後継者として指定されていた建築家の子どもたちが、ガウディの思い出を語る。
外尾さんの、石にのみを当て、正しく叩けば正しい音がする、という発言が印象的。夏目漱石『夢十夜』で、運慶が、木の中から仏を掘り出していた様子を思い出す。
1936年にスペイン内戦が始まり、多くの図面が焼かれ、ガウディが作った石膏模型が破壊され、それの復旧に手間取った話は、実際にサグラダ・ファミリアに行った時に色々読んだ。
フランコ独裁政権下では遅々として進まなかった建設、1975年にフランコが死に、これから、というタイミングで、今度は建設続行反対論が出る。ル=コルビジェ、グロピウスといった一流建築家も含め、多くの賛同者が、今できている状態のサグラダ・ファミリアを、博物館的意味合いで保存するのがいい、と主張した。それでも、人々からの喜捨で、建設は続行された(今や観光収入で財源には困らなくなり、建設のスピードも上がっている)。
ガウディが足繁く通ったというモンセラットの様子も映った。黒い聖母とか、少年合唱団とかも。
ステンドグラスのデザイナーが、水彩絵の具をにじませた紙に、ステンドグラスの窓の形の穴をあて、それぞれのガラスのデザインを決め、それを元にステンドグラス職人が、適した色のガラス板を選び出し、切り出してあわせていく。実際に窓に当てるシーンなど実に印象的。
受難のファサードの、現代アートっぽい輪郭のキリストをはじめとする像の彫刻家、スビラックス、生誕のファサードと全然違って衝撃的(本人も彫刻の依頼を受けたときは驚いたとのことだった)だが、それもまた、ガウディの意志を反映させる、ひとつの表現だった、と思われるに至っているようだ。
映画では、内陣、身廊部分がまだかなり建築現場っぽかったのだが、撮影したのは、2010年のベネディクト16世のミサより前のことだったようだ(映画自体は2012年の映画)。ベネディクト16世が、ガラス張りの大きな車でサグラダ・ファミリアにやって来るのを沿道の人が歓迎する光景も感動的だった。
鉄筋の柱をクレーンで持ち上げ、高いところに据え付ける様子とか、自分では見られない光景も沢山見られた。
本当は栄光のファサード(これから建設する)の前は、ランブラス通りまで続く広場として、ガウディはデザインしたのだが、反対派が土地を住宅用地として取得して、今や高い建物が建ってしまっていることとか(実際、通りを隔てて建物があってせせこましい感じだった)、地下に特急の線路が掘られていることとか、災難はまだまだ続く。
それぞれの従事者の宗教観とか、映画では色々なことが語られる。そして、語り手以外に、合間合間で、物言わぬ少年が、塔の上から遠くを眺めたり、回廊を歩いたり、らせん階段を降りてきたりする。
完成予想モデルは明示されなかったが、少しずつ変容していくサグラダ・ファミリアを実感させてくれる映画だった。
マニアックではあるが、どの光景も印象的で、とても好きな映画だった。

#映画 #創造と神秘のサグラダファミリア #サグラダファミリア #ガウディ #外尾悦郎 #バルセロナ #ステファンハウプト

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