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上野リチ ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展@三菱一号館美術館

1月末に、『マイ・ファースト・リチ 上野リチのデザイン』を買って以来、楽しみにしていた上野リチ展、2月18日より三菱一号館美術館で始まったので、早速行ってきた。日時指定券もあるが、当日券で入場可能。お客さんは99%まで女性だった。もっともっといろんな人に見て貰いたいなーと思った。
展示されている数にまず圧倒される。ウィーン工芸学校での学びの部分から面白い。ウィーン分離派(ゼセッション)の影響の色濃い時代に、学び始めているフェリーツェ・リックス。ウィーン工芸学校の展示作品は、本当にクリムトとかと近い世界にある。器のデザインやテキスタイルのデザイン、また、彼女がモチーフを描いたテキスタイルを用いてのファッション。どのデザイン画も極めて独自で、かたちも色づかいも魅力的。デザイン画として額装されているモチーフも美しいが、それぞれが工業作品として再生産されていたということに驚きを覚える。1929年に日本の建築家上野伊三郎と結婚して京都に住むようになってからもウィーンと行き来して、オーストリアでも彼女の作品が発表されている。来日した建築家ブルーノ・タウト(というと坂口安吾を思い出すが)と共に群馬で工芸デザインに取り組んだり(でもタウトとは方向性が違ってあんまり気が合わなかったとか)、戦時下でもずっと南洋に輸出するテキスタイルのデザインを続け(戦中の日本で外国生まれの女性が暮らすのはさぞや辛かったろうと推察するが、その辺の言及はなし)、戦後はテキスタイル以外に美しい七宝作品を作ったり、また、後進への指導にも注力していたとのこと。戦中に満州に行ったときに描いた巻物の絵も美しい。日生劇場の地下にかつてあったレストラン、「アクトレス」の壁画もリチがデザインし、弟子たちに描かせたものとのことだが、はがしてきた壁が一部展示されており、ステンレス箔にグワッシュで描いた花鳥の完成度にも驚かされる。1987年に小池一子がプロデュースした展覧会のために再度織られたプリント柄の服地の巻物とか、来客に配られたリチデザインのグラスなども、手近で見て使いたくなる好もしさ。
花とかキャンディとか鳥とか、水辺の街の光景とか、何もかもが多色づかいなのに品が悪くならないバランスで可愛く構成されている。ある意味、葛藤が見えないというか、展示されている作品だけ見ると、何の苦労もせず、自分が表現したいものを描き続けていたら、それを誰もが受けとめてくれていた、みたいに見えるけれど、白人として戦中の日本を生きることへの苦労とかなかったのかな、とか思ってしまう。その時代に発表された作品も、節約とか欲しがりません勝つまではみたいなテーゼと全く相いれない美しさ愉しさで、それだけ卓越していたってことなのか、と驚かされたり。
展覧会は原則撮影禁止。でも三菱一号館美術館は、必ず撮影ゾーンを作ってくれるので、今回は展覧会の巨大パネル(トップ画像)と、そこにあしらわれた幾つかのモチーフたち。

泳げたいやきくんじゃないよ。
リチの描く鳥たちは時としてアマビエっぽい。

色々な鳥たち(クジャクが印象的)以外にもゾウのモチーフとかが可愛い。色々な花、サーカス、クリスマスオーナメント。
事前に買った『マイ・ファースト・リチ』が、この展覧会の公式図録なんだと思っていたら、今日会場に行ったら、これとは別にもっと充実した図録も売られていた(2,800円)…展覧会見終わってから『マイ・ファースト・リチ』見ると、出ていない作品も沢山あった。これから展覧会を見に行く人には、展覧会図録の方が充実しているかも、と一応お知らせしておく。絵ハガキやマスキングテープ、クリアファイルなども充実していて、財布の紐がゆるくなること必至。七宝の箱のデザインをモチーフにした紙箱に入れたキャンディとか、派生商品も色々。
展覧会場にいる間にずっと心躍る、好感度高い展覧会だった。

https://mimt.jp/lizzi/

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