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真っ赤な星(井樫彩監督)

2018年11月22日、テアトル新宿で井樫彩監督初長編作品「真っ赤な星」の完成披露上映会を見る。知り合いがこの映画に関わっているので、応援がてら伺ったのだが、満席で立ち見も出ていて一安心。

ストーリーだけを見ると、行きつく先のない、破滅的な物語。救いはどこにあるのだろう、と、絶望的な気持ちになる。公式サイト(http://makkanahoshi.com/)に出ている紹介文を読んだだけで、うわっ、暗っ、とうなってしまったし、映画を見ながらストーリーを追ってしまうと救いのなさにくらくらする。スチール写真にも使われていたラストシーンの美しい映像にはっとさせられるが、でも、主人公たちはこの先どこへ向かうのか、ということを考えてしまうと、行きつく先のなさばかり考えてしまい、泣けてくる。小説にせよ映画にせよ、作者自身と作品を同化して論ずるのはNGだと思ってはいるのだが、それでも、若干22歳の(撮影時は21歳?)女の子(というのも差別的表現である)が、このような物語を作ったのは何故だろう、作らざるを得ないだけのモチベーションはどこにあったのだろう、とついつい考えてしまう。

帰りの電車で同行者と感想を言い合うも、どうしても物語の暗さに引きずり込まれ、口が重くなる。身も蓋もない感想は「娘を持つ女性は、再婚については注意深くあるべき」「出てくる男みんなクズ(大祐除く)」といった感じ。

感想書きにくいなぁと思いながら、終電3本前で帰宅し、とりあえずどろどろと寝て一晩寝かして、ネットに出ている感想とか読みながら、反芻してみた。映画を見ていて、主演桜井ユキ演じる弥生ちゃんの美しさにはっとさせられていたのだが、一晩寝ても、彼女の横顔の美しさばかりが蘇る。また、もう一人の主演小松未来の14歳という年齢特有の不安定さ、美しさと醜さの混在、みたいなところも印象に残った。

屋外と室内、というか昼と夜のコントラストの強さも印象的、パラグライダーが浮かぶ青い空、広がる山並み、丘の上の天文台。一方、陽が窓から抜け出す自宅、弥生ちゃんのアパート。スーパーの駐車場で自家用車の中で男と交わるシーン。光と闇。心から笑うということのない登場人物たち。怒ったり泣いたりすがったり、感情の発露があったときの女たちの美しさ(何しろ男たちはクズばっかりですから)。

冒頭、看護婦だった弥生ちゃんに体を清拭して貰いながら、弥生ちゃんの脚にそっと触れようとする陽の爪先。弥生ちゃんとの再会のシーンはストーリー展開上やや無理があるな、と思ったが(たぶん、物語展開をあんまり追及してはいけないのだと思う)すがるように弥生ちゃんを求める陽の衝動、それに徐々に応えていく弥生ちゃん。陽の献身。それには応えられない弥生ちゃん。すれ違い続ける二人。その合間に美しい光景がはさまれる。どこにも行きつけないと諦めているような二人を、周囲の男たちが蝕み、傷つける。物語が破滅に向かえば向かうほど、山が、空が、美しく光る。ネタバレしちゃうと、真っ赤な星は画面には現れない。天文台の望遠鏡を覗く、主人公たちの眼には、真っ赤な星が映っているのだろうか。

関係者手弁当、クラウドファンディング、主題歌(Hump Backという大阪のバンドの「クジラ」)は相互タイアップ、最低限の経費で、映画自体はけちけちした感じなく、悠然と撮られている。映画の美しさを知っている人が撮った作品、ということがわかる。この才能はこの先どこに進むのだろう?

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