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カナレットとヴェネツィアの輝き(SOMPO美術館)

ヨーロッパの大きな美術館に行くと、どこでも大体、数点はカナレットのヴェネツィアの風景画が展示されていて、カナレットいいよなぁ、と思っていたのだが、とうとう、日本でもカナレットの展覧会が開催されることに!
カナレットが描いたような絵は、景観画(ヴェドゥータ)というらしい。
2024年10月12日~12月28日 SOMPO美術館(新宿) 「カナレットとヴェネツィアの輝き」展、キャッチコピーは「18世紀、景観画ヴェドゥータの巨匠、日本初の展覧会」である。
ちなみに、静岡県立美術館(2024年7月27日〜9月29日・終了)→SOMPO美術館→京都文化博物館(2025年2月15日〜4月13日)→山口県立美術館(2025年4月24日〜6月22日)と巡回あり。

スコットランド国立美術館など、英国コレクションを中心にした展示。出品数とか特に調べずに行ったのだが、う、やはりそんなに沢山、カナレットを貸してくれる美術館はなかったのか、予算の都合か、期待していたよりはカナレットが少ない…油彩13点、素描3点、版画2点。それも、油彩13点のうち、ヴェネツィアの風景を描いたものは7点のみで、残りのうち4点が英国の風景、2点がローマの風景である。ちなみにそのうち3点は東京の富士美術館の収蔵品。

カナレット、本名はジョヴァンニ・アントニオ・カナル。父が舞台芸術家として高名だったので、父に対して小カナル、といった意味合いでカナレットと呼ばれるようになったらしい。

美術館外壁のフォトスポット
外看板
11月2日に行ったのだが、雨だとSOMPO美術館はアプローチが面倒、と認識。地下から直接入れるエントランスがないので、必ず屋外を通らないといけないのだ。


第1部「カナレット以前のヴェネツィア」は写真不可。ヴェネツィアの鳥瞰図、カナレットと同時代で、ギリシャ神話などのモチーフの天井画を描いていたジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロの作品など。ティエポロの天井画も結構好きなので(建物に描いたフレスコ画は日本には持ってこられないが)、小品でもいくつか見られて結構嬉しい。
ちなみにカナレットが1697-1768、ティエポロは1696-1770、画風は全く異なるが、同時代のヴェネツィアで生きた画家だったのだな、と思うと感慨深い。
参考出品として、箱根ガラスの森美術館のヴェネツィアングラスの展示などもあり。

第2部「カナレットのヴェドゥータ」で、カナレットの油彩作品を紹介。一部撮影不可作品もあったが、撮影できた作品を紹介。

昇天祭、モーロ河岸のブチントーロ
昇天祭、モーロ河岸に戻るブチントーロ
サン・マルコ広場


カナル・グランデのレガッタ。これはとても大きい絵だった。


カナル・グランデのレガッタ、色々描きこまれていて面白いので拡大写真も撮った
2人乗りで漕いでいるのがレースをしているレガッタで、あとの船はみんな見物人だ
建物の窓からも見ている人多数

ヴェドゥータは、外国から見聞を広めるため、周遊してきたグランド・ツアー参加の若者たち(主に英国貴族の子女)が、旅の記念に買い求めていくことが多かった。観光客たちの思い出の品として、ヴェドゥータは、厳密に写実的な風景画ではなく、観光名所を、画角をちょっと修正して、一つの絵に組み込んだりという小さな作為が含まれた絵画である。観光絵葉書のような、風景画のイメージが強かったが、実は絵の中には、びっしりと人間が描きこまれていて、チラシを見た家族には「安野光雅の『旅の絵本』みたい」とも言われる。
不況でグランド・ツアーに来る観光客が減ったので、カナレットは起死回生、自分から多くのパトロンのいる英国に乗り込む。1746年から約9年、英国に住んでいたらしい。だから、英国に沢山のカナレットがあり、その画材として英国の風景も描かれているのか。

ロンドン、北側からウェストミンスター橋を望む、金細工師組合マスターの行進
ロンドン、テムズ川、サマセット・ハウスのテラスからロンドンのザ・シティを遠望する

ここまで美術館5階の展示。
4階は「第3章 カナレットの版画と素描ー創造の周辺」


エッチング ドーロ風景
素描 サン・マルコ大聖堂の内部
素描 サン・マルコ広場でのコメディア・デラルテの上演

風景を写し取るのに用いたカメラ・オブスキュラの展示があったり、今回出展されていない素描を紹介する動画画像などもあった。

4階の後半は「第4章 同時代の画家たち、継承者たちーカナレットに連なる系譜の展開」、あ、いきなりカナレット終了しちゃいました…18世紀後半の、カナレットに似た感じのヴェネツィアの風景画がどんどん紹介されてます。写真撮ると混乱しそうだったので、撮影せず。

そして3階に降りて、「第5章 カナレットの遺産」、19世紀の作品で、ちょっとカナレットに通じる部分のある作品もあったが、途中から、これって要するにヴェネツィアを舞台とした風景画、というだけで、そんなにカナレット関係なくね?、という感じの絵が増えてくる。ホイッスラーとか、ブーダンとか、モネとか、最後のシニャックは牽強付会…という印象。テートのモネ「パラッツォ・ダーリオ、ヴェネツィア」は撮影不可だったがなんとなく見覚えがある気も。

ポール・シニャック「ヴェニス、サルーテ教会」1908年 いい絵だけど、カナレット関係ない。
クロード・モネ「サルーテ運河」1908年

最後まで見て、ちょっともやもやした気持ちになったので、エレベーターで5階に戻って、もう一度カナレット見直しました。
それにつけても、ヴェネツィアに行きたいことよ。

それから一番最後に収蔵品、今回は「ひまわり」1点のみ。「ひまわり」が元気でいてくれて嬉しい(何言ってるんだかわかりませんね)。たまには東郷青児やグランドマァ・モーゼスの元気な姿も見たいです。


2階のミュージアムショップをうろうろしてみるが、カナレットの作品数のわりに図録が巨大で高いので購入には至らず。
しかし展覧会としてやや地味なせいか、美術雑誌の特集とかになっておらず、他にあまり参考になる本もなさそうで、ちょっと寂しい。

ちなみに朽木ゆり子が書いた、ゴッホの「ひまわり」全調査、みたいな本は結構面白かったです(絶版かな)。


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