おかえりモネ:わたしが一番印象に残ったポイント
連続テレビ小説「おかえりモネ」本日最終回。在宅勤務の日が引き続き多く、仕事前に「おかえりモネ」を見ることが多かった。朝ドラは時計代わり、と言われていたが、「おかえりモネ」はささやくような声で大切なセリフが語られることが多く、朝食の片づけをしたり、仕事の準備をしながらテレビを漫然と眺めていると、あれっ、今なんか大事なこと言いませんでしたか、なに、なに、ということが結構あった。高木正勝の音楽の入れ方も絶妙。
放映修了を前に、脚本家安達奈緒子のインタビューなども出ていたし、菅波先生の、「あなたの痛みは僕には分かりません。でも、分かりたいと思っています」という決めセリフはこのドラマを象徴する言葉として、色々な場所で引用されていた。今日最終回のりょーちんの「おかえり、モネ」等も含め、数々の染み入ることばたち。
わたし個人が一番印象に残ったのは、百音や菅波先生や気仙沼関連の人々の言動ではなく、東京時代の、下宿先汐見湯の、井上菜津(マイコ)のセリフだった。気象キャスターとして行き詰まっていた神野マリアンヌ莉子(今田美桜)が、百音と自身を比較し「傷ついた経験。そういうのがある人はやっぱり強い。私にはない」とつぶやいたのに対し、菜津が、強い口調で「傷ついている人の方が強いなんてそんなことは言っちゃダメ。傷ついて良いことなんてない」と言ったところ。バックグラウンドにより、人は含蓄を持つことが出来る、と思いがちだけれど、傷つかなければ人は深みを持てない、と思ってしまうことの危険性を菜津は訴える。「傷ついて本当に動けなくなってしまう人もいるから」。
人はみな大小の傷を抱えて生きているし、それを正の方向性に転換して生きていければそれは素晴らしいことだが、自ら傷つきに行くことは出来ないし、勿論してはならないことだ。「おかえりモネ」は、他者には理解しきれない大きな傷を抱えた人たちの物語だったが、その中の、もう一つの大事な視点だったな、と思っている。