夢で逢えたら
世界は進歩し続けている。昔とは比べ物にならないほど、世界は進化した。
自分もそんな風に思っていた。
でもそんなことない。
この世にはわかっていないことが多すぎる。
コーヒーは体にいいのか。酒は本当に体に悪いのか。なぜ地球は温暖化しているのか。宇宙人はいるのか。人はなぜ夢を見るのか。
夜遅くまで勉強していた。就活で忙しく、学校の課題に手がつけられていなかった。
そんな中彼女が急に喚き出した。駆け寄ると寝ぼけていた。
どんな夢を見ていたんだろう、悲しい夢じゃなければいいな、そう思うと同時に自分の兄のことを思い出した。
母が言っていた。
小さい頃、自分は寝ているときよく笑っているが、兄はずっと泣いていたという。
外交的な性格で、端からみれば順風満帆な人生の自分。
内向的な性格で、日々つまらなさそうに過ごしている兄。
母は私たち兄弟のことをそんなふうに捉えてきた。
自分でもそれほど間違っていないと思う。だけど兄にも幸せになってほしい。
中学生になると、早く高校生になりたいと言い、高校生になると早く大学生になりたいと言い、大学生になると早く社会人になりたいと言っていた。
現在、早く会社を辞めたいと言っている。
自分の環境を好きになれない、そんな兄はとても不憫だ。
彼の内向的な性格に原因があると思う。
兄の性格を作ってしまったのは自分かもしれない。
自分は幼い頃からうるさく、よく母親から叱られていた。
優しく、人のことを考えてしまう兄は母に迷惑をかけまいと良い子になっていた。
気付けば周りに人はいなかった。
剣道と卓球という、内向的な人が集まりやすい習い事しかやっていなかったのも大きいかもしれない。
院に進まなかったのは、研究室の中で兄1人だけだったらしい。
院に進めば、もっと良い人生を歩めたのではないか。
兄に対してこうした方がいいんじゃない、とアドバイスしたいことはいくらでもあった。
しかし、兄弟とは言っても、赤の他人。人の選択には口は出さなかった。
いや、出せなかった。上から目線で成功者の口ぶりをしてアドバイスするなんてできなかった。
そして、それを兄に伝えもせず、こんなところに書く弱い自分。情けない。