倫理学は社会で役に立ちません 東北大学文学部倫理学教室准教授「キモいは権力のないものの言葉、私たち女性から奪わないで」編

倫理学は社会で役に立たないことを、活動家で東北大学文学部准教授である小松原織香先生の発言から示します。小松原先生は、オープンレター「女性差別的な文化を脱するために」の署名者であり、その問題点を見つけられない読解力の持ち主として知られています。

オープンレター「女性差別的な文化を脱するために」が話題になっているようです。私も署名しているので、改めて読み返したのですが、問題点がどこにあるのかわからないので困惑しています。

小松原織香 (font-da) オープンレター「女性差別的な文化を脱するために」について

小松原先生は、「キモい」という言葉を奪わないで、と訴えています。

しかしその言葉を使うことは、少なくとも次の3つを意味します。

  • 言った人は「まともに取り上げる必要のない哀れな人」扱い

  • 言われた人を深く傷つけ絶望に追いやる

  • 言った人は報いを受ける

つまりこの言葉を使うことで、その人の意見は聞く価値がないと社会で扱われる一方、人を傷つけ、自分も損失を被ることになり、社会で使わないほうが良い言葉であることがわかります。さらに大学教員が好んで使っていることから、小松原先生の訴えが現実を反映していない誤りであることがわかります。そのような言葉を「奪わないで」と訴えるという結論を導いた、倫理学は社会と乖離した役に立たないものだ、ということがわかります。

学生などが倫理学を信じて、その言葉を使い、被害を被ったとしても、小松原先生も倫理学も責任を取りませんが、それでもかまわない人は倫理学を勉強するとよいでしょう。

以下では、人文学の教員やフェミニストが好んで、このリスクのある言葉を使っていることや、リスクの詳細を示します。

「キモい」は人文学者、フェミニストがよく使う言葉

人文学者、フェミニストによる「キモい」の使用例を列挙します。

活動家、東京大学名誉教授 上野千鶴子先生

娘の夫を「パパ」と呼ぶ母。キモい。

DV夫だが母は「パパ」とお気に入り 上野千鶴子さん「キモいです」

小松原先生の訴えとは逆に、大学教授という権力のある者が市井の人に、その言葉を使っています。

東京大学史料編纂所准教授 岡美穂子先生

この世界だけで生きている人には分からないかも知れないな、リアル世界の真のカラクリが。キモいオジサンに絡まれるのはお断りなので、ブロックしました。回答はいずれ『サイゾー』が掲載してくれるでしょう。ただし、『サイゾー』はカラーグラビア満載の月刊誌ですので、ちと高いですぞ。

https://x.com/mei_gang30266/status/1817889713916957091 アーカイブ

これも同様に、大学教授という権力のある者が市井の人に、その言葉を使っています。

活動家、明治学院大学国際平和研究所研究員 仁藤夢乃さん

仁藤さんに話を聞くなかで、彼女が差別的なものを感じると瞬時に、「キモイ」と言ってスッと心を閉ざす瞬間を何度か見てきた。それはまるでサバイブするための本能のように、仁藤さんのなかにあるセンサーなのだと思う。そのセンサーがあるからこそ、仁藤さんは女性たちを守れ、そして女性自身にあるそのセンサーを、鈍らせなくていいんだよ、と言い続けているのだ。女の子が「キモイ」と感じられる感性は、自分を守るための大切な直感だから。

北原みのり Colabo仁藤夢乃さんの「キモイ」は女性を守るセンサー 少しでもマシな世界になりますように

活動家 石川優実さん

話してるのは「きもい」おじさんの話であって「おじさん」の話じゃないのに。
そしてきもいおじさんをきもいと感じるのは自由だし実際それ相当のことをする人をきもいって話してるんだしね。
身に覚えがあるから怒ってんのかな。

https://twitter.com/ishikawa_yumi/status/1257919711506862081 アーカイブ

「キモい」を使った結果 1 「まともに取り上げる必要のない哀れな人」扱い

「キモい」とか「死ね」とか「バカ!」とか言う人がいるんですよ。
(略)
悪口を言う人間を分解してみると、どういう人間かわかるでしょう。コンプレックスのかたまり、語彙が少ない……。語彙が少ないということは、それだけの言葉しか知らなくて、それで全人格をあらわしてるんだから、その程度の人間であることを証明している。まともに取り上げる必要はないでしょう。学校でも職場でも、悪口を言ったり意地悪をする人はコンプレックスのかたまりで、自分を優位に立たせようとしてそういうことをする哀れな人間なんだということ。「悪口を言う人の人格に問題があるんだ」と思っていれば、気にしないですむんです。

美輪明宏「悪口を言う人間は…」 紅白歌唱でネット批判「キモい」に持論

小松原先生の主張を美輪明宏さんの言葉にあてはめれば、「小松原先生を筆頭に女性は、語彙が少ない哀れなコンプレックスのかたまりで、まともに取り上げる必要のない人たちだから、自分を優位に立たせようとして「キモい」を使う」となります。主張しているご自身はよいとしても、小松原先生は女性をまともに取り上げる必要のない人だと侮辱しています。

そしてこの美輪明宏さんの言葉は、自分の意見が聞き入れられないと言葉を知らないので泣き喚くしかない、小松原先生にきれいに当てはまっているでしょう。(強調は引用時に追加)

私はスキルを身につけたのと、年齢と「研究者」の肩書きで優遇されるようになり、冷静っぽく見えることが増えたが、それを持ち上げる人は信用しない。泣き喚くまでなにひとつ聞いて貰えなかった時代を忘れない。

 https://b.hatena.ne.jp/entry/4710643026567084002/comment/font-da

小松原先生は自分が正しいことを言っていて聞き入れられなかったと勘違いしていそうですが、小松原先生の意見は聞く価値がないと、美輪明宏さんの言葉は示しています。

「キモい」を使った結果 2 言われた人を深く傷つける

語彙が少ないコンプレックスのかたまりが、奪われたくない「キモい」という言葉は、人を深く傷つけることが知られています。言われたことで命を絶とうとした人(A1-A8)、自らを守るために不登校や転居、退職を選ばざるを得なかった人(B1-B8)、心の病になった人(C1)が報道されています。概要を次に示し、引用は最後にまとめました。

A1 クラスの女子生徒が(略)「顔がキモい、動きがキモい」と中傷したり、
A2 教諭は(略)2年近く、「キャプテン辞めろ」「もう見たくない」「キモい」と威圧的、侮辱的な言葉を浴びせた
A3 他の生徒から「きしょ」「近づくな」「死ね」「キモい」などと言われた。
A4 木村さんのツイッターに「死ねや、くそが」「きもい」「かす」などと書き込み、木村さんを公然と侮辱した疑いがある。
A5 小学校に1人1台配られたタブレット端末のチャット機能を使って「うざい」「きもい」などの悪口が書き込まれていた
A6 同級生らから「変態」と陰口をたたかれ、「きもい」と言われた。
A7「キモい」などのメッセージを送り合っていた

B1 複数児童から「キモい」と言われた
B2 「きもい」と言われたり
B3 複数の同級生から「きもい」「うざい」などと言われた
B4 部活動が一緒だった同学年の生徒複数から(略)身体的な特徴を「きもい」と言われたり
B5 同級生から「キモイ」などと言われたり
B6 「またオンライン参加かよ」「チクリマン」「きもい」と言ったり
B7 同じ部活動の生徒から「キモい」などと悪口を言われたり、
B8 裁判官は判決理由で「同級生は階段で女児の体を押して尻もちをつかせたり、『きもい』などと言ったりしていた」と女児に対するいじめの違法性を認定

C1 14年春ごろからは「きもい」「がんがうつる」と暴言を浴びるようになり、うつ病を発症。同年10月に退職

「キモい」を使った結果 3 言葉を使った報い

実例で示したように「キモい」を使うことで他人を深く傷つけたとしても、それは「キモい」のが原因なので仕方ないと、小松原先生やその教えを受けた学生は意に介さないかもしれません。先に引用した石川優実さんが「実際それ相当のことをする人をきもいって話してるんだしね。」と正当化しているように。不登校になった生徒に「いじめられる側に原因がある」と発言した大阪府堺市の市立小学校校長のように。

そこで、「キモい」を使った側に、就職活動での不採用や賠償、前科という報いがあることを示し、この言葉を使うリスクを確認します。

A1 元同級生8人と県を相手取り、慰謝料など約8340万円の損害賠償を求めて熊本地裁に提訴した。
B2 市が児童側に解決金として50万円を支払い、いじめの防止や早期発見、早期対応に努めることを確約することなどで合意した
B3 市は22日、慰謝料などの解決金177万1千円を支払う方針を明らかにした。
B5 K 生徒側が同市と当時の同級生を相手取り、計約330万円の損害賠償を求め、鹿児島地裁に提訴した
D1 呉区検が県内の女性を侮辱罪で略式起訴し、呉簡裁が7月、罰金10万円の略式命令を出していた

参考資料

A1

同級生からのいじめが原因だったとして、2013年に自殺した熊本県立高校の女子生徒(当時17)の母親ら遺族が17日、元同級生8人と県を相手取り、慰謝料など約8340万円の損害賠償を求めて熊本地裁に提訴した。
訴状で原告側は、3月から4月にクラスの女子生徒が集まってダンス練習をしていた時に、ダンスを教えていた元同級生8人が、うまく踊れない女子生徒に「顔がキモい、動きがキモい」と中傷したり、みんなの前で1人だけ踊らせて「マジうける」と笑ったりして自殺に追い込んだと主張。

娘が残した「もぉ駄目だ」 黒塗りの報告書、母の怒り

A2

訴状によると、教諭は生徒が入部した19年春から2年近く、暴言や必要性を欠く叱責(しっせき)を繰り返した。主将に就いてからエスカレートし、「キャプテン辞めろ」「もう見たくない」「キモい」と威圧的、侮辱的な言葉を浴びせたとしている。

高2男子生徒自殺、要因は「部活顧問のパワハラ」 遺族が沖縄県提訴

A3

市教育委員会などによると、女子生徒は1年生だった昨年10月と12月に自殺を図り、今年2月に転校を余儀なくされている。
いじめと認定したのは昨年6月~10月の計4件の事案。他の生徒からSNS上に誹謗(ひぼう)中傷する内容の投稿をされたり陰口を言われたりしたほか、ぶつかられたり、「きしょ」「近づくな」「死ね」「キモい」などと言われた。

中学生自殺未遂 4件いじめ認定 熊本・荒尾

A4

捜査1課によると、男は昨年4月上旬ごろに計4回、木村さんのツイッターに「死ねや、くそが」「きもい」「かす」などと書き込み、木村さんを公然と侮辱した疑いがある。

木村花さんを侮辱した容疑、男を書類送検 2人目の立件

A5

東京都町田市で昨年11月、市立小学校に通う6年生の女子児童(当時12)が同級生からいじめを受けたという内容の遺書を残して自殺していたことが分かった。(略)
両親らによると、小学校に1人1台配られたタブレット端末のチャット機能を使って「うざい」「きもい」などの悪口が書き込まれていたという。

小6女児自殺、いじめ訴える遺書 配布タブレット端末に悪口か

A6

報告書などによると、男子生徒は1年生の時、同級生らから「変態」と陰口をたたかれ、「きもい」と言われた。

兵庫の中2自死「いじめが主たる要因」 第三者委が36件を認める

A7

自殺を図った女子生徒以外の19人でLINEの「裏グループ」をつくり、女子生徒を隠し撮りした写真や「キモい」などのメッセージを送り合っていた。生徒の1人が「裏グループ」の画面を面白半分で本人に見せたその日に、自殺を図ったとみられている。

「既読スルー」「裏グループ」 追い詰められた女子生徒

B1

市教委や学校によると、男児は理科や社会などの教科を通常学級で学ぶ「交流学級」に参加。2年生の交流学級で複数児童から「キモい」と言われた。

障害児がいじめられて転校 学校は当初認めず、後に謝罪

B2

大阪府枚方市の市立小学校で、いじめが原因で転校を強いられたとして、児童側が市に約180万円の損害賠償を求めた訴訟が大阪地裁で和解した。市が児童側に解決金として50万円を支払い、いじめの防止や早期発見、早期対応に努めることを確約することなどで合意したという。
訴状などによると、児童は小学1年だった2017年、休み時間に同級生に筆箱を蹴られたり、「きもい」と言われたりするなどのいじめを受けたという。18年4月から登校できなくなり、19年夏に転校した。

「いじめで転校」訴訟、解決金50万円で和解 枚方市が支払い

B3

埼玉県北本市立小学校で2019年、当時高学年の男子児童が複数の同級生に言葉の暴力を受けて登校できなくなる事案があった。外部有識者による市の調査委員会はいじめと認定。市は22日、慰謝料などの解決金177万1千円を支払う方針を明らかにした。29日から開かれる市議会の定例会に議案を提案する。
市教育委員会によると、男子児童は19年9月に転入した直後から、複数の同級生から「きもい」「うざい」などと言われた。同年11月から登校できなくなりその後市外に転校した。

埼玉の小学校でいじめ、調査委が認定 市が解決金177万円支払いへ

B4

保護者によると、生徒は、当時、部活動が一緒だった同学年の生徒複数から、蹴られたり身体的な特徴を「きもい」と言われたりするなどのいじめを受け、17年10月下旬から学校を休み始めた。

蹴られたり「きもい」と言われ半年間不登校…学校側は「重大事態」として対応せず

B5

鹿児島県いちき串木野市内の中学校で2020年、当時の男子生徒が同級生からいじめを受けたとして転校した問題で、生徒側が同市と当時の同級生を相手取り、計約330万円の損害賠償を求め、鹿児島地裁に提訴したことがわかった。
訴状によると、男子生徒は、18年4月の入学以降、同級生から「キモイ」などと言われたり、ほうきの金属製の柄で殴られたりするなど、継続的ないじめを受けた。

同級生から「キモイ」と言われ、ほうきの柄で殴られるいじめ受け転校…損害賠償求め提訴

B6

保護者が23年1月に再びいじめを訴えたため、学校は医師や弁護士ら外部の専門家を含む調査委員会を設置。22年9月~23年1月、児童に「またオンライン参加かよ」「チクリマン」「きもい」と言ったり、別の児童の体を押してこの児童にぶつけたりしたことなど10件のいじめがあったと認定した。

いじめの訴え小学校5カ月対応せず、その間も「きもい」 教委報告書

B7

市教委によると、女子生徒は同じ部活動の生徒から「キモい」などと悪口を言われたり、癖を馬鹿にされたりするなどされ、2022年12月から不登校となり、23年7月に市外に転校した。

女子生徒がいじめ受け転校 釧路の中学校 重大事態として調査

B8

石川県加賀市の小学生の女児が同級生からいじめを受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとして、女児と保護者が市と同級生の保護者16人に約4800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、金沢地裁小松支部は9日、いじめとの因果関係を認め、市と保護者6人に約700万円の支払いを命じた。
小野瀬昭裁判官は判決理由で「同級生は階段で女児の体を押して尻もちをつかせたり、『きもい』などと言ったりしていた」と女児に対するいじめの違法性を認定。「担任教師はいじめを把握しており、防止措置を講じるべきだった」と指摘した上で、「いじめによってPTSDを発症したとする(女児の)医師の診断が誤っているとはいえない」とした。

いじめでPTSD認定、同級生側などに賠償命令

C1 

「おまえみたいながんウイルスがいると会社の雰囲気が悪くなる」などの暴言でうつ病になったとして、兵庫県川西市の40代の男性が勤務していたマンション建設会社「東建コーポレーション」(名古屋市)と元上司に計約750万円の損害賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁は5日、パワハラを認定し、計約160万円の賠償を命じた。(略)
14年春ごろからは「きもい」「がんがうつる」と暴言を浴びるようになり、うつ病を発症。同年10月に退職した。
退職後、西宮労働基準監督署が男性のうつ病をパワハラによる労災と認定していた。

東建コーポに賠償命令 名古屋地裁、パワハラ認定

D1

広島県呉市内の女性をインターネット上で誹謗中傷したとして、呉区検が県内の女性を侮辱罪で略式起訴し、呉簡裁が7月、罰金10万円の略式命令を出していたことが4日、分かった。
被害女性によると、5年前から交流サイト(SNS)のフェイスブックなどにうそを含む内容が投稿され始めたという。「尻は軽い」「顔がキモい」などとエスカレートしたため、昨年、広島県警に相談し告訴した。呉区検は投稿の一部が誹謗中傷に当たるとして、略式起訴したとみられる。

「尻は軽い」「顔がキモい」とエスカレート SNSで誹謗中傷、侮辱罪に 広島