脳科学が語る「人間と物語の知られざる真実」とは?
人間と物語は深い仲にある。
ただ、その事実を脳科学的に理解している人は少ない。
「僕らにとって物語とは何か」を知らなければ、真のストーリーテラーにはなれないはずです。
今回は脳科学の視点で、人間と物語のラブストーリーをお届けします。
最新の脳科学によれば、人間の基本的な脳機能としてストーリーテリングが備わっています。
しかし、ここで言うストーリーテリングとは、一般的にイメージされる「他者に向けてストーリーを語る」こととは違う。
脳のストーリーテリングとは、「自分自身へのストーリーテリング」なのです。
僕らは自分自身に物語を「自動的に」語っています。
これは脳の構造によるものなので、無意識に行われているのです。
「自分に語る物語ってどういうこと?」
…とあなたは思うかもしれませんね。
脳のストーリーテリングは、一言で表現するなら「解釈」です。
例えば、あなたはこんな経験をしたことはありませんか?
あなたは近所の道を歩いています。
すると前から1人の男性が、あなたの方に手を振っているのが見えました。
でも顔に見覚えがない気がする。
無視するのも気が引けるので、あなたはとりあえず手を振り返そうとしました。
そのとき、あなたの後ろに手を振りかえす女性がいたことに気づくのです…。
僕らはどうして向かいの男性が「友人かもしれない」と思ってしまうのか?
それも客観的な証拠もないのに。
犯人は脳のストーリーテリングなのです。
脳は目の前の出来事に説明や原因を求めています。
なぜなら状況を把握できなければ、危険を回避できないから。
だから脳は無理矢理でも、目の前の出来事に原因や説明を捏造するのです。
あなたは「向かいの見知らぬ男性が手を振ってきた」という状況に「彼は友人なのだ」という物語を自分に語ったのです。
世界的な脳科学者であるマイケル・ガザニガは、この脳のストーリーテリングをインタープリター(解釈装置)と呼びました。
そしてインタープリターは、左脳で行われていることも発見したのです。
左脳は、原因と結果を結ぶ論理的な営みを得意としています。
つまり、目の前の状況に原因と結果を見出し、特定の意味として解釈するのが脳のストーリーテリングなのです。
僕は以前から「人は皆フィクションを生きている」と言っています。
そのフィクションを語っているのが、左脳のインタープリターなのです。
インタープリターのおかげで、僕らは世界を秩序立って認識できます。
一方、誤ったフィクションによって失敗することも。(手を振り返さなくてよかった…)
その事実を理解することが、物語と良き関係を結ぶ第一歩なのです。
僕らは、脳のストーリーと生まれたときから結婚しているようなものです。
だとしたら良い関係を築きたいと思いませんか?
なぜなら脳のストーリーとは、死が2人を分つまで、別れることができないのだから。
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