これからの時代のストーリーテラーの新定義とは?
くそくらえ。
そう呟きながら1人の若い作家がパリの小道を歩いていた。
今から約100年前のことだ。
彼は、20世紀を代表する作家ガートルード・スタインに言われた「ある一言」に納得できなかった。
後に歴史に刻まれたその一言とは…
これはスタインが、若かりし日のアーネスト・ヘミングウェイに言った言葉だ。
当時、第一次世界大戦により、今まで信じていた「科学は人類を幸せにする」という物語が崩壊した。
科学によって武器の殺傷能力は高まり、多くの人を死に追いやったからだ。
信じる物語を失い、途方に暮れた世代。
それが若きヘミングウェイたちだった。
そして物語を失ったのは、彼らだけではない。
僕らもだ。
AIなどのテクノロジーは生活を便利にするという物語は、いつの間にか「AIによって仕事が奪われる」という物語に書き換えられている。
現代でも「こうすれば幸福になれる」という共通の物語が失われている。
僕らも失われた世代なのだ。
だからこそ、これからもっとストーリーテラーが求められる。
なぜなら、人々は信じられる物語を渇望しているのだから。
これからの時代のストーリーテラーは、小説や映画などのコンテンツを作る人というだけじゃない。
特定の人々が信じたがる「人生の指針となる物語(生き方)」を物語る人がストーリーテラーなのだ。
これまで僕は「人はそれぞれのフィクション(信念)を生きている」と語ってきた。
ストーリーテラーは、人々のフィクションを肯定し強化する人なのだ。
ブランドはストーリーテラーでなくてはいけない。
そしてハーレーダビッドソンは優れたストーリーテラーだ。
ハーレーは、皆が共有している物語が失われたこの時代で、特定の人が信じれる物語を提供しているのだ。
その物語は、いずれ顧客のアイデンティティにもなる。
ハーレーの顧客には、ロゴをタトゥーにして体に刻み込んでいる人もいる。
ハーレーはそれほど強力なストーリーテラーなのだ。
特定の人々が信じたがる「人生の指針となる物語(生き方)」を物語っているのだから。
さて、あなたは誰に、どんな指針となる物語を提供できるだろうか?
物語を失ったこの時代には、あなたの物語が必要なのだ。