(97) 犬目のどんど焼き
目ざまし時計が5分も鳴り続けて、やっと広志は目をさましました。
やだな、この寒いのに。でも、今年で最後だもんな、ようし!
勢いをつけて着替えをすませ、真っ暗な庭へ出ました。「歳の神ですが、 だるまやお札がありますか」と叫びながら、子ども会の篤たちと、4,5日前、町内を集めてまわった物が、リヤカーに積んでありました。
その時もらった寄付金で、まきや荒縄も用意してあります。
「会長、行こうぜ」
篤と豊が誘いにきました。
懐中電灯で照らしながら、3人はリヤカーを引いて、川口川の中州へ向かいました。空き地に穴をほり、長い竹を立て、正月飾りやだるまを、なわで竹にしばります。そのまわりに紙や薪を山と積んで、火をつけました。
勢いよく燃え出すころ、小学生たちがやって来ました。書き初めや団子をさした枝を、持ってきています。
「団子焼きはあとでね。おいのりしてから、習字を焼くんだよ」
広志は、みんなの世話をやきます。
「おれたち、あんなチビのときから、子ども会でやってたんだね」
と、篤がぽつりといいました。この春で2人とも、役員は引退の中3でした。つぎの会長は中1の豊です。
4時起きはつらかったけれど、役目が終るのは惜しい気もします。後を頼むね。思いをこめて、広志は小さくなった火に、団子をかざしました。
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