モテる俺、でも本命との行く末は……?第6話 仲間割れ
僕は桑田に声をかけた後、廊下で待つことにした。そして、10分くらい待って彼は出て来た。
「早いな」
声をかけると、
「手抜きだ」
と言っていた。俺は、
「まあ、そんなもんだよな。メンドーだし」
と言った。桑田は、
「まともにやってたら、いつ終わるかわからん」
と答えた。続けて桑田は俺に訊いてきた。
「ところで、おれになんか用か?」俺は、
「アルバイトしたくてさ、桑田の働いているスーパーマーケット紹介してくれないか?」
桑田は、
「あーなるほどな。今日バイトだから一緒に行くか?」
と言ってくれた。いいやつだ。
「急に行って大丈夫かな?」
俺がそう言うと、
「履歴書が必要かもしれんな」
と言う。
「電話してから行くか」
「そうだな、そうしてくれると有難い」
桑田はポケットからスマホを取り出し、電話をしてくれた。
「あ、もしもし。桑田です。店長いますか?」
『どうしたの? 店長は今、発注してるところよ』
「おれの友達が働きたいというので」
『ああ、なるほどね。ちょっと待って、店長と代わるから』
「すみません」
数分待って、低い声が聞えてきた。店長だ。
『お疲れさん、働きたい友人がいるって?』
「はい、そうなんですよ。どうしたらいいですか?」
『履歴書を書いて持ってきてくれ。面接はその後だ』
「わかりました。ありがとうございます。友人にはそう伝えておきます。失礼します』
そう言って電話を切った。桑田は俺の方を見て、
「やっぱり履歴書が必要みたいだ」
「履歴書? 書いたことないな」
「おれが見ててやるよ」
やはり優しい桑田健司。
「サンキュ! 助かる!」
「いや、いいんだ。早速ホームセンターに行って履歴書を買わないとな」
「そうか、一緒に行ってくれるか?」
俺が尋ねると、
「もちろんだ!」
なんていい奴なんだ、こういうやつはなかなかいない。
ホームセンターまで2人で歩いて行って15分後くらいに着いた。店内はそんなに混んではいなかった。
「どこにあるんだ?」
俺がキョロキョロしていると、桑田は、
「こっちだ」
と促してくれた。頼りになるやつだと思った。俺は後をついて行った。
「これがいいぞ。おれもこの履歴書使ったんだ」
「お! じゃあ、これにする。値段は、安いな」
履歴書をレジに持って行き、会計を済ませた。
「バイトは16時からだから、おれは行くわ」
と言い、
「ありがとな」
と礼を言った。
俺は帰宅してから履歴書を書き始めた。わからないところは、明日、昼休みに桑田に教えてもらおう。そのためにメールをしておこう。桑田は昼休みになったらサッカーをしに行ってしまうから。
<さっきはありがとう! 履歴書のことだけど、わからないところがあるから明日の昼休みに教えてくれないか?>
帰宅の時間になり、俺は桑田に呼び止められた。
「鮫島」
「お! 桑田」
「すまない、昼休みに見てやれなくて。メールに気づかなかった」
「帰りに鮫島の家でもよければ、寄って教えるぞ?」
「何だよ、待ってたのによ!」
俺は頭にきてつい、文句を言ってしまった。
「だからこうして謝ってるだろ」
俺は不貞腐れて黙っていた。
「どうするんだよ。教えるのか? それでも教えなくていいのか? おれは今日はバイトないから時間はあるぞ」
桑田がそう言った。
「自分で考えるからいいわ!」
俺は苛々が止まらない。
「あっそ! じゃあ、勝手にしろ! 後で泣きついてきても知らんからな」
桑田が怒鳴った。桑田の働くスーパーマーケットで働くのやめようかな。ムカつく。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?