死と出会い 6話 共有
僕も愛理も、親友の死を思い出す度辛くなる。同じ気持ちを共有できる大きな存在。
今日も僕は雄二のいない張り合いのない気持ちで登校した。
愛理も親友だけれど、男同士の話となると雄二の存在は大きかったのだと改めて思う。
八時二十分頃、教室に着いて先に来ていた愛理に呼び止められた。
「秀一、おはよう」
「お、愛理。おはよう」
彼女の今日の髪型はポニーテールでいつもと印象が違うなと感じた。もちろん、服装は制服。
「あのね。絵里からの伝言なんだけど……今、話していい?」
愛理はなんだか言いにくそうにしていた。
「うん、いいよ。大丈夫だよ」
「……あの子、秀一の気持ちが落ち着くまで待つって。純情よねえ」
彼女は嘲笑しているかのように感じられた。
「そうなんだ。いつになるかわからないんだけどね」
僕は、麗香先輩のことは口にしなかった。このことは、愛理も知らないはず。
「だよねえ。それでも待つみたいだからそのままにしておいたら?」
愛理は絵里という子を敵視しているようにも思えた。なぜだろう。
「まあ、そうするしかないよな」
「うん」
彼女は今度は、悪意のなさそうな笑みを浮かべていた。
「もうすぐ、ホームルームが始まるな。あとで話したいことがあるんだ」
「話し? わかった。一時限目が終わった休憩時間でもいい?」
愛理は不思議そうな表情を浮かべていた。
面倒な一時限目の国語の授業が終わり、僕は愛理の席に向かった。ちなみに彼女の席は壁側で、僕は窓側だ。
「愛理、今いいか?」
彼女は笑みを浮かべながらこちらを向いた。
「うん、いいよ。大丈夫」
「雄二の四十九日の法要は行けそうか?」
「あ、うん。行けると思うけどいつだか知ってる?」
「いや、雄二の親に聞いてみないとわからないんだ」
愛理は、目線を僕からずらして下を向いた。
「うーん、じゃあ、悪いけど秀一が雄二の親に聞いて、教えてくれない?」
「ああ、わかった。そうするわ」
「ありがと」
僕は、今の会話にひとつ疑問をもった。
それは、なぜ雄二の親に連絡することを僕に任せたのか。
雄二の親が、愛理から連絡が来たらもしかしたら雄二に特別な感情を抱いていたかもしれないと誤解されると思ったからなのか。
それとも単に、言い出しっぺが僕だからなのか。
理由を訊くのはまずいかな、と思ったので僕の心の中にしまっておくことにした。
それにしても雄二が亡くなって日が浅いせいもあるんだろうけど、ふと彼のことを思い出すと、悲痛な気持ちになる。
いずれは薄れていくのかもしれないけど、中沼雄二という親友がいたという事実は一生忘れないと思う。
そんな感傷に浸っていると、愛理が話し掛けてきた。
「どうしたの? 浮かない顔して。考えごと?」
「うん。雄二のこと考えてた」
「そうなんだ。私もたまに思い出すよ。その度に辛くなる……。秀一はどう?」
「僕も同じだよ。思い出す度、辛いよ……」
彼女も同じことを感じていたんだと思った。唯一、雄二のことを共有できるのは愛理だけだ。だから、彼女の存在は大きい。でも、恋愛感情はないけれど。
愛理はどうなんだろう。僕に対して一度でも恋愛感情を抱いたことはあるのだろうか。