【連載小説】一途な気持ち 最終話 一途さ
俺は20分くらいして律子のいるアパートに着いてチャイムを鳴らした。中
から、「はーい!」という元気な声が聴こえてきた。
「俺だよ」ちょっと声が小さかったからか律子は、
「大輔?」
と訊かれた。
「そうだよ」
答えた。
開錠する音が聴こえてドアが開いた。そして、中から律子が顔を出した。
俺は、「よう」と小声で言った。
「こんばんは。入って」
律子は中に促してくれた。彼女は心配そうな眼差しで俺を見ている。
「大丈夫?」
声をかけてくれた。
「大丈夫、と言ったら嘘になるな」
俺はそう答えた。
「だよね……」
俺は起きているのが苦痛なので、横になった。
「横になるの珍しいね」
「ああ、起きているのが辛くて……」
彼女は黙っている。そして、こう言った。
「仕事行けそう?」
「それは大丈夫だ。今は疲れているだけだから」
「そうなんだ」
俺は言った。
「まあ、親父との死別の可能性が高いのも辛い原因だけど」
律子は座り直し、正座をした。
「膝枕してあげるからおいで?」
「お、そうか。ありがとう」
俺はそう言いながら彼女の膝に頭を載せた。温かいからか気持ちがいい。これがきっかけになり、電話で言っていることと違うがムラムラしてきた。
俺は訊いてみた。
「抱かせてくれないか?」
「う、うん。いいけど、大輔なら。でも、抱くような気分ではないって言ってなかった?」
「そうなんだけど、膝枕してもらって、律子の温もりを感じたら気分が変わった」
「そっかそっか、好きにしていいよ、わたしを」
こうして俺は田下律子を抱いた。
行為を終えたあと、律子は優しく接してくれるし言ってみようかな、チャンスは今かも。
「なあ、律子」
「うん?」
「俺が律子のこと好きなの気付いていたか?」
「なんとなくね」
「そうか。なら付き合ってくれないか?」
「うん、喜んで」
告白してよかった。今後は喧嘩をするときもあるかもしれないけれど彼女と共に人生を歩んでいこうと思う。
「よろしくな」
「うん、こちらこそよろしく」
1つ律子に質問してみた。
「律子、俺の一途な気持ちは伝わってるか?」
「そうね、意外と一途よね。真面目じゃん! わたし、そういうの好きよ」
「そうか、それはよかった!」
これから付き合っていく中で、いろんなことがあると思う。2人のことや、お互いの親族のこと。友達のこととか。そういうのは乗り越えていきたいと思う。力を合わせて。
終