死と出会い 29話 彼女と女友達
僕と知り合いの先輩は職員室でみっちりと絞られた。どちらかと言えば先輩の方がきつい言い方をされていたかもしれない。なんせ、麗香を殴ったのだから。
先輩は先生に反発していた。すると、余計に先生はヒートアップし先輩を叱りつけた。僕は心の中でざまあみろと思っていた。
その後、僕は麗香のことが心配になり彼女に電話をした。だが、繋がらなかった。どうしたのだろう。殴られたショックで寝ているのかな。
心配しながら僕は独りでトボトボと歩いて帰宅した。
自宅に着いた途端、僕のスマホに着信があった。慌てて自室に行き電話にでた。自室に行くまでに母が不思議そうな顔つきで僕を見ていた。
『もしもし、麗香』
「秀一。今、どこ?」
何だか元気じゃなさそうだ、声にも張りがない。
『今、帰って来たところだよ。大丈夫? 同級生に殴られたんだって? そのことで先輩と二人で先生にがっつり怒られたよ』
「そうなんだ。今から会えないかな?」
『会えるよ、どこで会う?』
「ケンタッキーで会わない?」
『わかった、今から行くね』
こうして僕は彼女と会うことになった。
再び外に出ようと玄関でスニーカーを履いていると母が話しかけてきた。
「秀一、どこに行くの?」
「ちょっと、用事」
いちいち訊かれるのがウザい。
「そう。夕食までには帰ってくるんでしょ?」
「多分ね、でも、僕の分は作らなくていいよ。食べてくるからさ」
母には彼女がいることは伝えていない。伝える必要がないから。
「わかったよ、あんまり遅くなるんじゃないよ」
「それは分かってる」
僕はそう言い残し、家を出た。自転車を小屋から再度出し、鞄を籠に入れ発進した。空は曇っている。雨が降ってくるかなと思ったので、また家に戻り玄関にある傘立てから黒い大人用の傘を持って出た。
ケンタッキーはスーパーの中にあって、食べられるようになっているスペースがある。10席ほどあったはず。
15分くらい自転車で走ってスーパーマーケットに到着した。周りを見渡すが麗香の姿は見当たらない。
僕は店内に入った。彼女の分も含めてペットボトルのコーラを二本買って自転車の所に戻った。店内は空いていた。今は16時30分頃。スマホを見るとそう表示されていた。
麗香はなかなかやって来ない。どうしてだろう。何かあったのかな。心配になってきた。LINEを送ってみよう、そう思い文を打ち込んだ。
<僕はもう店に着いて外で待ってるよ。なかなか来ないからLINE送っちゃった。何かあったのかと思って心配になっちゃって。大丈夫?>
それから30分くらいは待っただろうか。ようやく麗香からLINEが来た。
<ごめんね! おばあちゃんが倒れちゃって今、町立病院にいるの。家にはうちしかいなくて慌てて119番通報してさ、落ち着いたらまたLINEするね。今日会いたかったけどどうなるか分からない。ごめんね>
そうだったんだ、麗香はおばあちゃんのことが大好きだって下校途中に言ってたもんな。おばあちゃん、大丈夫だといいけれど。
<おばあちゃん、心筋梗塞だって。でも、処置が早かったから助かるってお医者さんが言ってた。良かったー。もし、おばあちゃんに何かあったらどうしようかと思ってたの>
<助かって良かったね!>
僕はそう返信するとLINEは止まった。
仕方がないのでケンタッキーを3ピース買って帰ることにした。2ピースは僕の分で残りの1ピースは母親の分。
帰りは予想通り雨が降ってきた。傘をさしながら自転車をこいだ。家に着く頃には土砂降りの雨が降ってきていて、風も強くなって服やズボンはべちゃべちゃになってしまった。
玄関で靴下を脱いで、自室に向かい下着を持って脱衣所で脱いでシャワーを浴びた。上がって来て母がやってきた。
「凄い雨だけど大丈夫だった?」
「ああ、べちゃべちゃになったけど、大丈夫だわ」
「そう、風邪ひくんじゃないよ」
僕は黙っていた。
「ケンタッキー買ってきた。食べよう」
「ご飯食べてきたの?」
「いや、食べてない。すぐに帰ってきたから」
「じゃあ、秀一の分も作るからね」
うん、と頷いた。
料理の匂いがしてきた。良い匂い。今夜は何だろう。スマホを充電器にさした。すると、LINEがきた。麗香からかな? と思って見てみると愛理からだった。
<こんばんは。久しぶりって学校で見てるよね。彼女とは上手くいってるのかな?>
上手くはいってるけど、それ言っていいのかな。そもそも、愛理はどういうつもりでLINEを送ってきたのだろう。暫く放っておくとまたきた。
<えっ、もしかして既読無視?>
以前とは彼女の言い方が違う。ぐいぐいくる。このままにしておくと学校でも会うから返事を送ろう。
<こんばんは。彼女とは上手くいってるよ>
返事はすぐにきた。きっと、スマホを手に持っているのだろう。
<そうなんだ。いいなぁ。私も彼氏欲しいなぁ……。ねえ、こんなこと無理だと思うし怒るかもしれないけれど、彼女はいるのは知ってる。でも、私とも付き合ってよ?>
な、何を言っているんだ!? と僕は動揺した。
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