死と出会い 17話 LG「B」T
男子も女子も部活をおえたので、僕は麗香先輩をさがした。一緒にかえることになり、おたがい衝撃のカミングアウトをする。
男子バスケ部が練習を終えたあと、女子バスケ部も練習を終えたようだ。
僕は女子バスケ部のほうを気にしながら帰りの支度をし、麗香先輩を探す。あ、いた! 友だちと笑顔で話しながら帰るところを僕は勇気をふりしぼって、
「麗香先輩、おつかれさまです!」
と、声をかけた。心臓が飛び出そうなくらいドキドキした。
「あ、秀一くんじゃない。おつかれさま。おひさ」
「おひさしぶりです。あの……」
「うん?」
言葉を発する勇気がでない。どうしよう。でも、この際だから、
「きょ、今日、僕と一緒に帰りませんか?」
麗香先輩はきょとんとしている。そして、
「うん、いいよ」
僕はてっきり断られるかと思っていたのでとてもうれしかった。僕は麗香先輩によりそい横を歩いている。
二人で校門を出て話しだした。校内では周囲の目があるので。
「うちさー、てっきり秀一くんがバスケ部やめたのかと思ってた」
「あ、そうですね。クラス内で問題がおきまして、それでやすんでいました」
「もしかして、中沼……雄二くんのこと?」
「……はい。親友だったので、かなりショックでした……」
二人のあいだに沈黙が訪れた。そして、次に話しだしたのは、麗香先輩だ。
「どうして、一緒にかえろう、ってさそってくれたの?」
核心にふれる質問だな、と思った。
「それは……」
僕は立ち止まり、意を決した。麗香先輩も立ち止まり見つめあった。つばの飲みこむ音さえ聞こえそうだ。
「麗香先輩は、僕のことどう思ってます?」
目線をそらすことなく言った。
「え? どうって、いい後輩だと思っているけど」
「やっぱ、その程度ですよね……」
麗香先輩は少しのあいだだまって僕の目をみつめたあと、
「もしかして、秀一くん……」
「はい、僕は……僕は、麗香先輩が好きです!」
とうとう言ってしまった。反応をみていると、
「ありがとう。気持ちはうれしい。でもね、うち、好きな人がいるの」
おたがいに目線をずらし、僕は、
「そうですか……。わかりました」
と、言ってにげるように歩きだした。そこに、麗香先輩から声をかけられた。
「うちね、バイセクシャルなの」
「え!」
僕は一瞬、ほんとうだろうかと疑いながら、振りかえった。
「だからね、うち、今女子のことがすきなの」
僕は、そういうのに偏見はないけれど、そういう人だと打ちあけられて多少おどろいた。だまって麗香先輩をみていると、
「そういうに偏見はある?」
僕はそう訊かれて、大きく頭を左右にふった。
「そう。よかった。それでね、秀一くんは男子で、うちにそう言ってくれる人は初めてなの」
「そうなんですか? 僕もっといろんな人に告白されているのかと思いました」
僕と同様に、彼女は大きく頭をふった。
「女子に興味もあるし、男子にも興味があるの。だから、うちでよければ……」
僕はその言葉にべつな意味でおどろいた。
「でも、それって二股じゃないですか」
うつむいた僕をみて、
「でも、もう一人は女の子だよ? それに、まだつきあってるわけじゃないし、その子とね」
と麗香先輩は僕を説得しているのかと思うようなことを言った。
「……少し、考えさせてもらっていいですか?」
麗香先輩はうなずいた。二人でいるのが少し気まずかった。でも、
「かえろうか、お話ししながら」
と、言ってくれて少しだけうれしかった。
「はい」
端的にこたえた。
僕らは徒歩で帰宅している。麗香先輩の家はしらない。
「秀一くんは、うちのどこを気にいってくれたの?」
思わず赤面しそうな質問だった。
「先輩にこういう言い方は失礼かもしれませんが、かわいいところです。それと、部活の練習をみていてけがをした部員にすぐにかけよって、顧問の先生をよんだりと、活発でやさしいところですね」
麗香先輩は笑顔になり、
「へー、ちゃんとみてくれているんだね。ありがとう。かわいいかあ。そんなことはないと思うけど、でも、ありがとう」
と、いってくれた。やさしい口調で。それで僕もやさしい気分になれた気がする。
「いえいえ。麗香先輩は僕に告られて、女子で好きな子がいるって言ってましたけど、どうして僕と付きあおうと思ったんですか? まだ僕は考え中と言いましたけど」
麗香先輩は考えている様子。
「興味かな。秀一くんに告られて興味がわいたの」
「はあ。それって喜んでいいんですか?」
僕は自信なさ気に言った。
「もちろんよ」
「そうですか。わかりました」
「それも加味してどうするか考えてね」
僕は深くうなずいて麗香先輩を見た。
彼女は笑顔だった。とても愛らしい。僕は前向きに彼女のことを考えていこうと思った。