【連載小説】一途な気持ち 12話 親父がいない家族の会話
親父の病院に面会に行くメンバーは、母さんとじいちゃん、ばあちゃんと弟と俺だ。弟の名前は大山誠二といい、24歳。職業はサラリーマン。大学を22歳で卒業し、今年で就職して2年目。まだ、下っ端だ。弟のアパートに迎えに行く予定。礼儀正しく、
「悪いな」
と、言っていた。そこが誠二のいいところだ。つんけんしているからなかなかそういった言葉は出ないと思うがやつは違う。きちんと言う。それが身内であっても。大抵、身内には素直になれず言えないものだけど。
4人を車に乗せて、誠二のアパートへと向かう。10分ほど走らせ到着した。弟の車が所定の駐車場に停まっているから、すぐ出発するという理由で隣に停めた。エンジン音が聴こえたのか、誠二は部屋から出て来て鍵をかった。後部座席に乗り、定員となった。
「サンキューな」
「いや、いいんだ。気にするな」
時刻は17時30分頃。この時間じゃないと誠二は仕事があるからお見舞いに行けない。
早速、出発した。誠二がしゃべった。
「親父の顔見るの何年ぶりだろう」
僕も話した。
「しばらく会ってないよな」
そこに母が話しに割って入ってきた。
「誠二、たまには実家に顔出しに来なさい。あまりにも来ないから、じいちゃんやばあちゃんが寂しがってるんだよ」
彼は驚いた様子で言った。
「え! そうなの? じいちゃん、ばあちゃん、ごめんよ。これからは暇な時来るから」
母は続けざまに言った。
「あんた、じいちゃん、ばあちゃんが寂しがってるって言ったら、態度をコロッと変えたわね。なんでよ?」
誠二は少し間を空けてから言った。
「そりゃ、寂しがってるって聞いたら、放っておけないよ」
母は笑み浮かべた。
「誠二。あんたも優しいところあるじゃない。お父さんと仲悪くて実家に顔出さないから優しいとは思わなかったのよ」
弟はすぐに言葉を返した。
「ひどいなー、母さんも。それは誤解だよ。オレだって優しいところはあるよ」
母は苦笑いを浮かべた。
「そっか、ごめんごめん」
今度は僕が話しの合間に入った。
「ついたぞー」
言ってはいないが、弟も母もよくしゃべるなぁ。
全員、車から降りてから僕は車の鍵をかけた。誠二は言った。
「初めて入るな、この病院。それにしてもデカイ」
ばあちゃんが話しだした、珍しい。
「大輔も誠二もここで産まれたのよ。二人とも三千グラム以上あって、健康体だったの。だから、お医者さんにも健康体だと思いますと言われて安心したものよ」
母も話しに入ってきた。
「そうなのよー、2人ともやんちゃでやんちゃで、大変だったんだから。それが今ではこんなにたくましくなって。たのもしいわよ。ただ、お父さんがこんな状態だから心配だけどね」
そのような話しをしながら院内に入った。
つづく……