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Q 開示請求や削除請求が認められるためには、実害が生じることが必要ですか?

A 必ずしも必要ありません。

解説いたします!

たとえば名誉毀損でいうと、名誉とは、「人の品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価」(最大判昭61.6.11民集40巻4号872頁)とされますが、こうした社会的評価が低下するかどうかは、「一般読者の普通の注意と読み方を基準」(最判昭31.7.20民 集10巻8号1059頁)として判断されます。

分かりやすくいうと、①まず、投稿がどのような事実を示しているかが、一般読者の普通の注意と読み方を基準として判断されます。
次に、②そうした事実が示されているとして、社会からの評価が低下するかが、一般読者の普通の注意と読み方を基準として判断されます。

つまり、裁判所は、「世間の人々は、この投稿をどう読むかなあ?」「世間の人々は、こういうことを言われたら、どう考えるかなあ?」という形で、抽象的に判断するということです。

そのため、具体的にその被害者にどういう実害が生じているかは、名誉毀損の成立には必ずしも関係ないということになります。

もっとも、コンテンツプロバイダ・アクセスプロバイダから情報の開示を得た後、いざ、投稿者に損害賠償請求をするという場面では、実害の存在は重要な意味を持ちます。

というのは、この場面では、単に権利侵害があればよいというだけでなく、慰謝料の額も判断する必要がありますが、裁判所が慰謝料の額を判断するにあたっては、具体的にどの程度の被害を被ったのかということも関係してくるからです。

つまり、コンテンツプロバイダ・アクセスプロバイダに対する開示請求・削除請求の段階では、権利侵害の「有無」だけが問題になるのに対して、投稿者に対する損害賠償請求の段階では、権利侵害の「有無」に加えて、「その程度・分量」まで問題になるということです。

このように考えてくると、コンテンツプロバイダ・アクセスプロバイダに対する開示請求の段階では、IPアドレスの保管期限の問題があるため、実害に関する証拠などを収集せずとも、とにかく開示請求を行って情報を取得することを優先すべきでしょう。

これに対して、投降者本人に対する損害賠償請求の段階では、実害に関する証拠もしっかりと収集して訴訟を提起すべきと思われます。


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