それでもやっぱりグランパスが好きなんだ! - ある元クラブスタッフがサポーターへ復帰するまでの軌跡と奇跡 -
2023年12月30日に、それまで勤めていた名古屋グランパスの退職エントリをアップさせていただきました。
そのエントリと合わせて3本、Jクラブスタッフとして感じたことを文章にさせていただき、以降は好き勝手なことを書いておりました。
しかし、先週末に私の身に起こったいくつかの奇跡と、昨日2月4日にJリーグがアップした動画をきっかけに、ある衝動を抑え切れなくなりました。
“グラサポの皆さんに、このタイミングで本当のことをお伝えせずに、謝らなくて良いのか
そして、私が再び愛せるようになったグランパスとJリーグに、今だからこそ伝えられることがあるのではないだろうか”
このような想いをお伝えさせていただきたく、もう元グランパススタッフとしての立場では文章は書かない、という宣言を反故にする形になることを、先ずはお詫び申し上げます。
それでも、グランパスとJリーグを愛する方々に、少しでも私の失敗談と、そこから取り戻すことができた宝物について、私と同じように感じていただくことができるのでしたら、それに勝る喜びは私にございません。
とある動画との邂逅
昨日2024年2月4日(日)、寝る前に最後と開いたXの「おすすめ」タイムラインに、下記ポストが表示されました。
先月までの約8年間に渡り「見る専」であった各々のSNSのなかで、退職後、X(旧Twitter)については、私が親しみを持っていたり信頼を置いているアカウントによる「フォロー中」タイムラインだけでなく、XのAIによりレコメンドされる「おすすめ」タイムラインも積極的に閲覧するようになりました。
私にとって、仕事から趣味へと転換したサッカー系情報については、「サッカー系」リストに登録している100を超えるアカウントの、私がXに接している時間帯以外に発信されるポストを時系列に遡ることは、仕事を辞めてからはほとんど無くなりました。それに伴い、Xに接することのない時間帯に発信されたサッカー情報はどうしても、私の日々の情報摂取行動から抜け落ちるようになりました。
そういったこともあり、Jリーグ公式によるこのプロモーション動画に関するポストが抜け落ちていた私にとって、このクリエイターの方のポストが「おすすめ」に載ったことは、邂逅とも呼べるものでした。
そして、その方のテキストにワクワクしながら、引用元の動画の再生ボタンをタップしました。
私のその動画の閲覧中に浮かんだ感想は、以下のようなものでした。
翌日の天気、悪い予報が良い方に変わる可能性は低いのについ何度も祈ってしまうの、分かる(00:10)
家族連れサポさんは、こうやって準備するのか(00:16)
中の人辞めてから、私も他クラブサポの方のポストについ「いいね」してしまうもんな(00:19)
クラブグランパスで撮影したいとJリーグからあった依頼、このシーンだったんだ(00:29)
吹田に遠征すると、チャリに乗ったガンバサポさんの多さにびっくりするんだよね(00:35)
5/6の広島遠征の時は、こんな光景が目の前に広がり、こんな気分になるんだろうか(00:40)
豊スタの西広場でくつろいでいるグラサポの皆さんを見るたびに、今日の運営頑張ろうと思ったんだよ(00:50)
2017のジェフ千葉戦、喜作のソーセージ食べられるかなと思ったけど、全然その余裕なかったっけ(00:57)
川崎遠征の帰り道、等々力迷宮で彷徨うグラサポの方に何度か道を教えたことあったな(01:05)
試合に負けてしまうと、いつもやり切れなさの行き場を見つけることはできなかったし、来場者の皆さんには忍びなさで一杯だったんだ(01:21)
2021にルヴァン獲れたけど、試合後に泣いてしまったのは、2018最終節に残留が決まった時だけだったな(01:23)
私のグランパススタッフ生活における様々なシーンが蘇り、その時々の感情を思い出してしまい、胸が苦しくなりました。
と同時に、クラブを退職してから一ヶ月、主催者側の視点も未だ私から消えていませんでした。
“インサイトは確かに素晴らしいが、開幕前のプロモーション動画にしてはターゲットが狭過ぎはしないか
いや、アフターコロナ2年目を迎える2024シーズン、Jリーグは何より「スタジアムに足を運んでくれる」可能性が高い、既存・経験済みサポーターに舵を切ったのだろう”
今シーズンにかけるJリーグの本気度を垣間見るのと同時に、絶対に開幕に行かねば、と決意を新たにしました。
愛した選手の移籍報道
残り数試合で2023シーズンが終わろうとしていた昨年10月のある日、前年の異動から一年が経とうとしていた私の視界にかかった靄は、一年経っても消えることはなく、その先の世界を見通すことが全くできていませんでした。グランパスのために、この地域のためにと願い、東京から名古屋へ越してから9年目、自分自身の実力と心身の限界を悟りました。
クラブへ12月末での退職の意思を伝えたその後の2ヶ月は、名古屋へ来てから一番空疎な時間でした。何も手をつけられず、何も考えることができませんでした。
11月末の某日、あるスポーツ新聞がある選手の他クラブへの移籍報道を行いました。
数年前、火の車状態であった当時のグランパスへ人生最大の覚悟を持って移籍してくれたその選手の、グランパスへの貢献と献身を否定できる人間は誰一人もいないと、私は信じていました。
報道直後に沸き起こったグランパスサポーターの皆さんの反応も、○○選手は残ってくれるはずだ、信じない、そういったものがほとんどだったと記憶しています。
ですので、実際に12月下旬にクラブから発信されたリリースに対する反応の数々には驚きはしませんでしたし、それらはその選手がグラサポの皆さんにとってかけがえのない存在であったことの何よりの証左であると感じていました。
しかし、目に余るポストが多く目についたのも、また否定できない事実でした。それまでの選手の貢献を無に等しいものにし、その選手へ届くような形での罵詈雑言としか表現できないものも、その中にはありました。
クラブはリリース後、事前準備していたであろうその選手のインタビュー記事を時間差で発信しました。しかし、そのメッセージは一番届いて欲しい方々に届くことはなく、更なるネガティブな言説を生み出すきっかけにしかなりませんでした。
クラブのそういったコミュニケーションプランを私は否定したいのではありません。その原型を作ったのも私でした。
悲しい報道にまみれた2016シーズンを二度と誰にも経験して欲しくないと願い、2018年に立ち上げたINSIDE GRAMPUS、その存在意義とその時の願いが否定されたように感じてしまっただけです。
私の望んだ選手とサポーターとの関係性は、結局は築ける訳がなかったんだなと、達観してしまったのでした。
そのように身勝手に傷ついた私は、同情を求めたのでしょう、その選手へLINEを送ってしまいました。
しかし、その選手からの機知に溢れた返信内容とは裏腹に、選手へ同情するフリをして、自分の傷を癒してもらい慰め合いたかったという私のその浅はかな行動が、ただただ最低なものだけだったということに、気付かされただけでした。
自己保身だけを願った退職エントリ
退職まで残り一週間と迫った12月24日(日)、私はテレビで漫才の日本一を決める『M-1グランプリ2023』を観ていました。
私はお笑いが好きですが、売れている方々のYouTubeチャンネルを眺める程度、毎年のM-1を積極的にウォッチすることもなく、久しぶりのリアルタイムでの視聴を気楽な気持ちで楽しんでいました。
そこで繰り広げられた10組の漫才の中で、特に令和ロマンとヤーレンズの演目に引き込まれました。そしてその番組が22時に終了してからも、その後にTVerで配信された記者会見の様子や、千鳥のお二人がMCを担当された打ち上げ番組も追い続けてしまい、気づけば深夜の2時を回っていました。
久しぶりに心揺さぶられるエンターテイメントに触れた私は突然、自らのこれまでのグランパスにおける仕事に恐怖を感じてしまいました。果たして私のこれまでの8年半で、このように心を揺さぶる瞬間を創ることができたのであろうか。その全力を注いだその時間に、意味はあったのだろうかと。
退職日が目前に迫り、怖くなってしまった私は、自らの仕事を正当化しようと、気付いた時にはPCを開き、必死にそれまでの仕事について、殴り書きをしていました。
その文章を書き終わった私は、それでも心身ともに落ち着きを取り戻すことができず、そのようにして書き綴った文章を、否定はできない大きな承認欲求と、グランパスに関わる皆さんへの少しの感謝と共に、9年間「見る専」であったnoteへ「退職エントリ」という形で、退職前日の12月30日にアップしたのでした。そして同じく9年間見る専であったXのプライベートアカウントにて、そのnoteをアップした旨をポストしたのでした。
想定外の反応の数々
退職エントリのタイトルに「名古屋グランパス」というワードを入れ込んだこともあり、9年間全く稼働していなかった私のXアカウントによるポストであっても、ポツリポツリといくつかの反応がありました。そのリアクションに少し安心をし、何人かには伝わるといいなと思いながら、疲れ果てた私は眠りに就きました。
翌朝、スマートフォンのアラームを止め、いくつかのニュースメディアをブラウジングした後、Xのアプリを開きました。そこには、目にしたことのない数字のポップが表示されていました。
恐る恐るそのポップをタップすると、見慣れた、それまでの仕事において日々目にしていたアイコンの方々によるリアクションやコメントが、次から次へと目に飛び込んで来ました。
そしてそのまま通知のタイムラインを遡ると、前の晩に私がポストしてから約一時間経った頃に、私が在職中に何度もそのSNSに勇気を頂いていたグラぽさんが、私のポストをリポストしてくださったことを知りました。私のプライベートアカウントなどご存知なはずはないのに…。そのリポストをきっかけに、たくさんのグラサポの皆さんに届いたのでした。
その刹那、私の目から涙が溢れ出ました。
グラサポの皆さんへの懺悔
その退職エントリの中で、一箇所だけ、偽りと自分の意思とは反する記述をしてしまいました。
グラサポの皆さんの気持ちに寄り添おうと、上記の準備リストを最後に追記し、これからもグランパスを応援すると、偽りの宣誓をしてしまいました。
私はこの時、「INSIDE GRAMPUS」は新規契約しておらずに、シーズンチケットはハナから熟慮せず、ユニフォームも購入する意思を持ってはいなかったのです。
退職エントリをアップした2023年12月30日時点において、先の章の通り、私のグランパスへの愛は、ほぼゼロに等しいものでした。
初めて知った“別れ”の辛さ
そのような退職エントリにも関わらず、タイトル詐欺が奏功したのでしょう、年が明けてもリアクションは途切れることがなく、そのコメントの一つひとつが、私の心の傷を癒してくれたのでした。
と同時に、8年半に渡るグランパススタッフの生活にも、少しは意味があったのだと感じることができ、私の自己保身という目的は無事に達成されたのでした。
そういった温かいリアクションについ応えたくなるのが人の常、しかし私は眺めるばかりで「いいね」等で返すこともできずに、ただただ皆さまから頂く反応に甘える、そんな年明けの日々を送っていました。
退職エントリの公開から2週間経った1月13日、名古屋グランパス公式LINEアカウントからメッセージが届きました。2024シーズンのトップチーム体制とアカデミー体制を伝えるリリースでした。
先日「グラぽ.net」へ寄稿させていただいた古賀聡 前U-18監督へのトリビュートで書かせていただいたように、古賀さんのお名前がそこに無いことは直ぐに気付きました。
と同時に、グランパススタッフ時代はこういったリリースは事前に自分の手で準備していたので、心の準備もできていました。
しかし、初めてサポーター目線でのリリースを目の当たりにし、皆さんはこんな気持ちにでリリースに接しているのか、と私は知ることとなったのでした。2週間前のある選手への罵詈雑言の嵐を見る私の目が変わった瞬間でした。
サポーターの皆さんは決して、選手自身の決断を理解していないのではなく、愛しているからこそ、一つや二つ、最後に言いたくなってしまうのだなと、そのことにようやく理解が及びました。
退職エントリの中で、偉そうに「選手へ愛を」と講釈を垂れた自分が恥ずかしくなりました。
グラサポの皆さんへのお詫び行脚の日々
そのように考えると、好意的に皆さんへ迎えていただいた偽装に満ちた私の退職エントリに、ケジメを付ける必要性があると私は感じました。ですので、2本目のnoteをアップすることを隠れ蓑に、私自身のプライベートSNSを復活させ、グラサポの皆さんと交流することに決めたのでした。
グランパスに関するポストを積極的に行い、グラサポの皆さんのポストに「いいね」をさせてもらい、守秘義務に反さないレベルで私が持ち得る情報をお伝えさせていただき、少しでもあの退職エントリに相応しい自分になろうと、Xでのポストを続けました。恐らく、私の狂気染みたポストの数々に、そっとミュートしてくれたグラサポの皆さんも多いのではないかと思います。
それでも、そのような私のポストへいくつか温かいリアクションを頂き、X上での心の通ったやり取りに感動し、DM上でこれまでの行き違いを解消することができ、私はどんどんグランパスコミュニティに沼って行きました。
気付けば、上述のケジメという本来の理由はどこかへ飛んで行き、グランパスへとただただ引き込まれ、ただただ魅了されている自分がそこにいました。グラサポの皆さんとの温かい交流と、仕事ではないスタンスで受け取るグランパスからの情報発信の数々が、私の生活に潤いを与えてくれるのでした。
そして、退職エントリに記載した宣誓通りに、INSIDE GRAMPUSに新たに加入し、赤鯱新報の購読を復活させ、No.28 榊原杏太選手のユニフォームを予約し、FC岐阜とのプレシーズンマッチと鹿島アントラーズとの開幕戦のチケットを購入し、グランパスの開幕SNSプロモーションへXで参加したのでした。
サポーター復帰表明にあたっての感知と、訪れたいくつかの奇跡
と、退職エントリへ本心とは異なる記述をしてしまった私は、グラサポの皆さんとの約2週間に渡る交流を経て、本当の意味でサポーターへ戻ることができ、その一員になれたように、今感じています。
そんなサポーターに復帰できたと考えている私が本日ぼーっと感じたことと、先週末に私の身に訪れたいくつかの奇跡を、こちらでご紹介させてください。
◇ Jリーグ以外のエンターテイメントの摂取
グランパススタッフ時代は、私の狭量なキャパの影響により、休日は寝てばかり、笑顔を創り出すエンターテイメント業界に従事しながらも、他のエンタメの摂取が限りなくゼロであった8年半でした。
退職してから、それまでを取り戻すかのごとく、積極的にエンタメの摂取を図っています。
NETFLIXやAmazon Primeに加えU-NEXTへも加入し、そういった配信だけでなく、映画館にも足を運びました。
音楽ライブも今年に入ってから2本参戦、お笑いも生まれて初めて「なんばグランド花月」と「よしもと漫才劇場」に行き、家でもラジオやラジオイベント配信やTVドラマ、読書やnoteコミュニティへの参加など、時間の許す限り摂取しています。
特にTVドラマの面白さが私にとって新鮮で(『SHUT UP』『不適切にもほどがある』『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか! 』)、グランパスのオフィスで毎日のように面白いドラマの話をしてくれていた同僚に「今なら一緒に話せるよ!」と伝えたい気分です…….。
そういったエンタメを摂取する中で、感じたことが三点ありました。
サッカー以外に同時並行的に「推し活」をされている方にとっては自明のことであると思いますが、推し活初心者の戯言として目を通してくださいますと幸いです。
エンタメの本質について
私たちがエンタメに触れるのは、日常では味わえない感情の起伏を求めるためではないかと思います。“推し”にときめき、漫才に涙を流しながら笑い、ライブでアーティストによるパフォーマンスとオーディエンスのレスポンスの融合に身を委ね心身を解放させ、読書で知らない世界を知り心思いを馳せる…。そして、そのような色々な形式がありながら、
最後は楽しい気持ちが約束されている
それがエンタメの本質であり、私たちがエンタメに求めるものなのではないかと思います。
しかし、私たちが愛するサッカーは異なります。一定数の割合で必ず笑顔を奪われるという「敗戦」を避けては通れない道に、私たちは足を踏み入れてしまっているのです。
それでも、サッカー以外のエンタメに久しぶりに触れ続けた私は、他のエンタメにその優位性を感じつつ、サッカーで感じれるカタルシスという魅力もまた、反証的に感じるのでした。
2.好き同士のコミュニティについて
私がこれまで日々のSNSで触れていた情報は、ほぼ100%「グランパス」と「Jリーグ」に関することでした。なので、仕事でなければ、正直SNSから身を離したいと思わない日は無いほどでした。
退職後してからは、他エンタメのSNSコミュニティに参加することでその熱量と温かさにすぐに魅了され、SNSへの熱も取り戻すことができました。
しかし、そのような温かい他のエンタメコミュニティにおいても、ポジティブな側面だけでないことに気付きつつあります。
音楽コミュニティでは、ツアーの各々の会場に参戦したオーディエンス同士が「○○公演が一番良かった」と言い張り合っていたり、映画でも批評とは呼べない他の観客者の気持ちを損なうようなレビューを敢えて投稿する人がいたり、平和に見えるラジオコミュニティにおいても、「メールが読まれた」というポストに対して「なぜ私は読まれないのか」という妬みが発生するなど、どのコミュニティにもすれ違いと分断はあるのだなと、勉強させていただいています。推し活初心者の私には、それらの様子は滑稽にすら、正直感じてしまいます。
翻ってJリーグにおいては、ピッチ上の結果には最大限のリスペクトを示し、ピッチ外においても相手クラブへのリスペクトを忘れずに、グラサポの皆さんとも、他クラブサポの皆さんとも、Jリーグを愛するもの同士、コミュニティでやり取りしていきたいなと感じています。
3.とあるグッズについて
こちらは前の2つとは異なり、いきなりの近視眼的な考察です。次に紹介する事例に、他エンタメとJリーグの間の差分が現れているような気がしているのですが、どうしても私自身言語化できず、事例の紹介に留めさせてください。
吉本興業はただただがめついだけですし、グランパスはもっともっと稼いでいいのではないかと…。こういったディテールに、エンタメとしての胆力が表れているように感じてなりません。
◇とあるアパレルショップでの奇跡
名古屋に越してくる前、自分が好きなアパレルのショップは全てチェック済みでした。東京で通っていたショップのほとんどが、名古屋にもあったためでした。
しかし、名古屋へ越してみると、前述の通り仕事に忙殺され(あくまで私の実力不足です。グランパスはホワイト企業です)、チェックしていたショップを訪れることはほとんどなく、購入はオンラインで済ませていました。
一昨日2月3日の土曜日、お気に入りのアパレルの新アイテム発売日であることをインスタで知り、店頭にも並ぶということで、久々にショップへ足を運びました。
これまでの新アイテムの発売においては、オンラインにおいて瞬殺なことも多かったのですが、店舗ではゆっくりモノを吟味し、購入することができました。店舗購入の良さを感じることができました。
少し歩いて、これまで一度も訪れたことのなかった、もう一つのお気に入りのアパレルのショップへ足を運びました。SNS等ではよく目にしていたショップの内観が目の前に広がっていました。
ただそこは小ロットの展示が基本で、すぐに購入したいものはありませんでした。そこで店員さんに春夏の展開について質問してみました。とても丁寧に教えてくれました。またまた店舗の良さを感じることになりました。
その帰り際、出口へ向かおうと後ろに踵を返した私に、店員さんが声をかけてくれました。
“グランパスお好きなんですか?”
私のリュックには、その日クラブグランパスで購入した新エンブレムのキーホルダーがぶら下がっていました。
「好きなんですけど、なかなか観に行けなくて」店員さんを慮りそう返すと、その店員さんも「僕もですよ(笑)」と返してくれました。こんなやり取りするのは、名古屋へ来た8年半の間で初めてのことでした。私にもリアルのサポーター友だちができた、そう感じることができました。
◇とある美容室での奇跡
昨日の2月4日の日曜日、名古屋に越してきてからずっとカットをお願いしている美容師さんが念願の独立を2月にされたということで、お祝いに足を運びました。
それまでの8年半、私は自分が何の仕事をしているか、その美容師さんに話をしておりませんでした。それどころか、仕事すらしていないと思われていたかもしれません。それほどカット中に美容師さんと私の間には会話が無く、カット中はお店から渡される雑誌やiPadから私は目を離すことはありませんでした。
独立のおめでとうをお伝えするタイミングで「私は前の会社を辞めてしまったんですよ」と美容師さんに伝え、初めてその時グランパスで働いていたことをカミングアウトしました。
すると美容師さんが言いました。
“もっと早く教えてくださいよ!
僕、豊スタよく行きますよ”
嬉しいより、信じられない、というのがその時に感じた私の本音でした。
土日は美容師さんにとって稼ぎ時、決して休める曜日ではないと思っていました。美容師さんはグランパスの試合に来れるわけはない、そう考えていました。
しかし、話を聞くと、今はホットペッパーなど予約システムの機能がとても高度で、スケジュール管理はもちろん、売上予測も見通せるということでした。つまりは、美容師さんは腕のある人ほど、自らの裁量で休みを自由に決められるということでした。
ですので、名古屋の美容室は基本的に月曜定休ですが、実力のある美容師さんは、その他の曜日も休みを取ることができるそうです。しかもお客さんの割合では女性が多い業種、その多くの方が一ヶ月先、二ヶ月先に予約されるそうで、美容師さんもスケジューリングがし易いとのことでした。目から鱗が落ちるのと同時に、8年半に渡り前日予約をし続けた自分を殴りたくなりました。
もう一点、教えてくれたことがありました。美容師さんは多くの店が設定する定休日の前日の夜に、美容師さん同士でパーティーを実施されるそうです。名古屋では栄や錦で行われているそうで、「そこでグランパス普及できますよ」と。もっと早く、自分の仕事をお伝えするべきでした。
◇とあるクラフトビール屋さんでの奇跡
その美容室の帰り道、私の名古屋生活で欠かせないクラフトビール屋さんを訪れました。名古屋へ引っ越したその日に初めて訪れてからずっと、コトある毎に足を運ばせていただいている大切なお店です。
ビールと料理が届いてから嬉しくて、写真を撮り自分のXとインスタにポストしました。
店内のお客さんが私ともう一組になりお店が落ち着いた頃、店員さんから「インスタへのアップありがとうございます」と話しかけられました。
お店をタグ付けしてポストをしていた私は、お店に失礼なこと書いてないよなと頭をフル回転させながら、このお店での思い出をお話しさせてもらいました。
すると店員さんが、
“私、土日は難しいんですけど、
水曜の試合は行くようにしてるんですよ”
ここ2日間での3度目の奇跡に、頭がクラクラしました。
そして嬉しさと同時に、この2日間に起こった3人のグラサポとのやり取りに、私の8年半に渡る仕事にも少しは意味があったのではないかと、涙が出てきそうになりました。私はその涙を堪え、「今度グラサポの友人と伺います」と言葉を残し、お店を後にしました。
2.23 グラサポ デビューへ - クラブスタッフからサポーターへ復帰するにあたっての“再”宣誓
退職を決意した10月、私は一刻も早くグランパスから身と心を切り離し、もうグランパスについて考えることはないだろうと考えていました。
私の人生において決して短くはない8年半を捧げたグランパスにしても、です。
そんな私が、ただ身勝手に自己保身のためにアップした退職エントリをきっかけに、たくさんのグランパスサポーターの皆さんとやり取りを行うこととなり、その温かさを通じて再びグランパスへの愛を取り戻せるとは、つい一ヶ月前には露程にも思っていませんでした。
退職エントリを読んでくださった皆さん、それに対しリアクションしてくださった皆さん、この2週間やりとりをしてくださった皆さんに、心よりお礼をお伝えさせていただきたく思います。
“私に宝物を取り戻させてくれてありがとう”
2月23日(金・祝)、初めて私は、グランパスサポーターとして豊田スタジアムに足を運びます。そして、初めて自分のために買ったユニフォームを着て、自分のできる範囲の精一杯の声と拍手で、選手を後押ししたいと思います。
12月にみんなで喜びあうために…
そのための最高の開幕戦にするために…