内視鏡で行う、早期胃がん切除術の不安にお答えします
こんにちは、内視鏡技師エンドーです
年間1万件ほど内視鏡検査をしている総合病院の看護師・内視鏡技師です
私の主な仕事は、内視鏡の管理とスタッフ教育です
今回は、内視鏡の胃の手術について書きたいと思います
胃カメラをして、早期の胃がんが見つかったら、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という治療をします
早期がんの部分を内視鏡と内視鏡用の電気メスを使って、切り取る手術のことで、基本的には入院で治療をします
内視鏡治療は、イメージがつきにくいので、不安も大きいと思います
消化器内科の4病棟の看護師に、患者さんの治療への質問の内容をアンケートで回答してもらいました
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)のオリエンテーション時に患者さんから多い質問はなんですか?
1位:治療時間
2位:食事開始時期
3位:痛みの程度
4位:眠れるのか
5位:安静時間
これらの疑問にお答えしていこうと思いますが、長くなるので、2回に分けています。今回は「治療時間・痛みの程度・眠れるのか」についてお答えします。
今回は、主に内視鏡の手術について知りたい方に向けてですが、内視鏡で勤務されているスタッフの方にも参考になるように頑張って書きます!
そもそもESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)とは?
内視鏡粘膜剥離術は、ESD(イー・エス・ディー)と呼ばれます
早期の胃がんができた部分を内視鏡から、内視鏡用の電気メスを入れて、切除していく手術です
「早期胃がん」と書きましたが、「早期食道がん」「早期大腸がん」でもされる治療です
早期胃がんとは、簡単にいうと「リンパ節への転移の心配がない状態」です
その状態で、見つかれば、内視鏡治療の適応になります
ESDは、早期の病変の下に薬液を注入します。切除中に胃が破れないように安全に治療するためです。切除する範囲にマークを入れて、病変を少しづつ切除していきます。
手術中の状態
治療時間は、病変ができた場所や、サイズで大きく変わってきます
2時間程度で終了することが多いですが、あくまで目安です。長いときは4時間以上になるときもあります。
手術中は、左横向きに寝て、点滴をします。手術が始まる前に血圧計、心電図モニター、指先に酸素の量を測る機械をつけます。マウスピースをくわえます。そして、点滴から鎮静剤(眠たくなる注射)を入れていきます。
当院では、鎮静剤にミダゾラム、鎮痛剤にソセゴンを使用します
鎮静が効きにくい方には、他にプレセデックスを使用します
通常の胃カメラ検査と大きく違うのは、寝たままの状態で治療されることです
通常の検査は、少しウトウトした状態(医師の指示を聞ける状態)の鎮静剤の量を目指しています
しかし、内視鏡手術になると、鎮静剤の量を増やし、鎮痛剤も足して、眠ってしまった状態になります。(全身麻酔とは異なります)
なので、基本的に痛みもわからないような薬剤の量に調整します
「胃カメラで起きていたから、手術中が心配」と思われる方も、鎮静剤を通常より多く投与しますので、検査は覚えていても、手術中のことは覚えていないという状態になります
手術中の看護師の役割
看護師は、2人で介助に着くようにしています。「患者さんの頭側」と、「医師の後ろ」にいます
「頭側にいる看護師」は手術中のバイタルサインの変動に注意し、内視鏡で誤嚥性肺炎が起きないように頻回に、口腔内吸引をします。吸引によるむせで、体動が起きないように、切除中は吸引をできるだけ避けて、デバイスの交換時や、胃内の吸引時に行います。
「医師の後ろの看護師」は、主に手術記録と、手術に使用する道具(処置具)を介助の医師に渡します。当院では、医師も術者と介助者の2人で行います。ESDな流れを把握し、先読みした介助ができるようになれば、1人前です!
褥瘡予防にも注意して、腰部にボアマットを敷いています。酸素が必要になった時は、カヌラによる褥瘡を作らないように定期的に観察します。術後は、発赤の有無を記録に残すようにしています。
鎮静剤を多めに使用するので、ESDをする部屋に救急カートも置いています。急激なバイタルの変動に備えて、常に使用できる状態にしています。
次回は、ESD後の生活の注意点について書きたいと思います
この記事が、皆さんのお役に立てば嬉しいです