結局そういうの平気だったんだ
友達が親になった。
大学生のとき、一緒にひどいメンヘラをしていた子が親になった。
友達だと思えなくなった。
31にもなって何を言ってるんだという感じだが、親になる、子を持つ、産む、生み出す、という全てが受け入れられない。
いや受け入れられることもあるし、子どもはかわいい。
友達の子ども、副業先の子ども、道端で見かける子ども。
みんなかわいいけれど、それをできる人たちが、時々ひどく奇妙に思えてしまう。
なんでそんなことできるんだろう。
あんなに死にたがっていたあの子が別の命を生み出すなんて。そんなことできるタイプだったんだ、え、やっぱり大丈夫なんだ、そういうの。うわ、あ、なんかごめん。いや、私はやっぱり無理。なんで、、?となってしまって、Facebookをそっと閉じた。
子どもが欲しくない、産みたくないって言ってる/た多くの女友達は、妊娠悪阻出産キャリアの中断、あるいは自分の遺伝子残したくない、とかいう詰まるところes geht nur um sich selbstな理由でそういう意見を持っていて、まあそれも確かに嫌なんだけど、ていうかめちゃくちゃ嫌。身体が女オンナするの気持ち悪いなって思ってるのに、これ以上オンナみたいな要素が増えるの、、吐きそう…という感じ。乳と卵の緑子と同じ。なんで卵子と精子をくっつけてしまうのだろう。それでも産めない理由はそれだけじゃなくて、というかそれよりももっと大きな産めない理由っていうのが私にはある。
それはやっぱり、人間を育てる自信がないのと、別人格の人間というものを生み出すなんて畏れ多い、ということ。自分の子どもがどういう感じか見てみたい、会ってみたい、という好奇心なんて、当たり前にある。夏子の気持ちはわからなくもないのだ。ただ、自分より小さな人間に対し、常にお手本のような態度で余裕をもった接し方をできるかなんて、そんな自信はない。イライラしてたら絶対に手をあげてしまうし、怒鳴ったり叫んだり、金切声をあげながらわざと傷つけるような言葉を選んで投げつけると思う。奇跡的にそうじゃなかったとしても、経済的にずっと豊かに何不自由なく過ごさせてあげられる気なんてしない。幼稚園に行けばいじめられるかもしれないし、いじめの加害者になる可能性だってある。自分の子どもには幸せになってほしいに決まってるけど、嫌われちゃったら本当に死ぬほど悲しくて生きていけないし、とはいえ幸せそうすぎたら嫉妬してまた殴ったりしちゃいそう。はぁ。そしていくら私や私のパートナーがその子に会いたいと思って生み出したとしても、その子が生まれてきてよかったと思えるかどうかなんてわからない。生まれてきたくなかった、なんて思わせちゃったら申し訳なくて、じゃあ産まないでそのリスクをゼロにしちゃおっか、ということ。その上、自分の遺伝子、つまり私の両親の遺伝子を他人に与える、、?その遺伝子で人生をやらせる、、?無理です。私なら私の遺伝子で生まれて私に子育てなんてされたくないもん。
将来後悔するかもしれないなんて、言われても。自分が後悔するだけならいいけど、産んだらその子どもも後悔するかもしれないのだ。リスクとして、産まなければ自分とそのパートナーでマックス−2だけど、産んだ子どもも不幸だったら−3だ。もちろん3人くらい産んでパートナーも私もみんな超ミラクルハッピーだったら+5だけど、そんな賭けみたいなことはできないよ。子どもに申し訳ないもん。ごめんねこんな親で、って謝る未来は見えてるし、見えているから必死で避けるのだ。いや謝らずにふんぞり返って罵倒して殴ってるかな。「私が産んであげたのよ!」とか怒鳴りながら。コンドームも避妊リングも堕胎手術もあるこの文明社会において、人間を産むって行為は全部エゴなのにねぇ。
つまるところ私は産まれてきたことを「良いこと」と思えない善百合子側の人間で、どうしたって人生を肯定できないのだ。産まれてきてよかった人はいるかもしれないけれど、全員がそうではないのなら、産まなくてもいいよね、って。
夏物語での緑子は、小さな反出生主義者でいることをやめてしまったみたいだけれど、この10年で何があったのだろう。普通に普通の人生を受け入れる、ということが彼女にはできたのだろうか。
そんなことを言っておきながら、産みたいと思える人を少し羨ましく思い、子どもはかわいくて、どんな理由があろうと、いや理由なんてなくても、出生は当たり前に行われるべきことなのではないだろうか、などと考える。
産むとか産まないとか、こんなに真面目に考えているのは何故だろう。もう考えなくてよくなりたい。美人でずっとパートナーのいる45歳の知人が、産めないだろうなって歳になってすごく楽になった、と言っていた。私もはやくそうなりたい。産めなくなってしまいたい。なんて、贅沢だろうか。不謹慎だろうか。私は産みたくないだけなのに。
真面目に税金払うから、産みたい人はどうぞご自由に、できるだけ健康に子育てしてね。