めあてを子どもと立てること
エンチャントです。さて、今回は、よく話題になる授業ににおける「めあて」について書いていきます。以前、算数の校内研究で「めあて」を子どもと共に立てるということを研究していました。なぜ「めあて」を子どもと共に立てることが大事なのか、どうやって子どもと共に立てるのかについて考えていきます。
①「めあて」を子どもと共に立てることの大切さ
「めあて」を子どもと一緒に考えずに、教師が「今日のめあてはこれです。」と一方的に提示してしまう。指導書のねらいをそのまま「めあて」にしてしまってしまう。こんな授業ってありませんか?以前の研究授業で、「めあて」を立てるまでに時間をかけすぎでは?というご意見をいただいたことがあります。私は、そこは大事にすべき場面だと思うのです。
△ 「めあて」を教師が子どもに一方的に提示している
△ 指導書に書いてあるねらいをそのまま「めあて」としている
なぜいけないのか。
昔は、今と比べて不便な世の中でした。身の回りに問題がたくさんあって、それを知恵を出し合って解決してきました。現代は、情報化が進み、便利なものがたくさん生まれました。身の回りにそれほど問題が少なくなってきています。さらにこれからAIの進歩によって、さらに便利な世の中になると思います。しかし、それでも子どもたちは日々、様々な問題と出会います。それを自分の力で解決していく中で成長していきます。この問題と出会ったときに、その問題を乗り越えるために、どう行動していけばいいのかということこそ、「めあてを立てる」ということだと思います。問題を発見してどんな問題なのか捉えることができないと、それを解決する手段は見えてきません。だから、教師が「めあて」を与える形で出してしまっては、問題の発見ができない子になってしまうのではないかと考えます。
そして、たまに見かける失敗として、「問題」と「めあて」の区別がついていない例もあります。私の場合、算数では、基本的に「問題」を提示してそのあと「めあて」を設定いくことが多いです。あとは、子どもの言葉を使いすぎて、「めあて」が授業のねらいとずれてしまうことも避けたいです。
課題・・・教師から課された題
問題・・・解答を求める題
めあて・・・行動目標
先生から出された問題を「モンスター」だとすると、それを倒すために、子どもたちは、そのモンスターの弱点を探したり、今まで倒してきたモンスターとの共通点や相違点を考えたりして、倒す方法を考えます。そして、「こういうモンスターの効果的な倒し方を考えよう」というようなめあてが立てられ、こうやって倒そうというという見通しをもちます。みんなで協力して倒したあとは、「こういうモンスターはこう倒すとよい」というまとめができて、次に同じようなモンスターが出てきても、倒し方を知っているので、簡単に倒せるようになります。
子どもたちが学校の外に出ると、野生のモンスターが出現します。そこで、モンスターと出会ったときに、自分でめあてを立てて、倒し方を考えなくてはいけません。そこに教師はいないので、自分でめあてを立てられるように学校の授業では、子どもと共にめあてを立てて、学び方を学ぶなくてはならないと考えています。
②めあての立て方
以前、私が行った研究授業の中で、めあてを子どもと共に立てる場面がありました。教師が想定していためあては「速さの表し方がちがうとき、速さを比べる方法を考えよう」でした。秒速(100mを9.96秒で走る)・分速・時速というように速さの表し方が違う状況です。子どもに、問題を出した後、前時の問題との違いに目を向けさせ、「このままではできない」「なぜこのままではできないか」を問い、本時のめあての言葉を引き出し、板書をしました。その後「(この問題を解くにあたり)今日のめあてはなんだろう」と問いました。ある子どもが手を挙げて「条件がちがうとき、比べる方法を考えよう」と言いました。全体に問い直すと、「うんうん」とうなづく子もいましたが、「条件」という言葉は少しニュアンスが違うので、「今回は何が違うんだっけ?」と問い直すと「分速や時速!」という子の後に、「速さの言い方かな?」とつぶやいた子を指名すると、「速さの表し方がちがう」という言葉を言いました。さらに全体に返すと、「うんうん」と先ほどよりも強いうなづきがありました。めあては「速さの表し方がバラバラなとき、比べる方法を考えよう」となりました。「バラバラ」は子どもの言葉を採用しました。めあてを立てる前に、今回の問題について「前時との違い」や「この問題の難しさ」についてなどを言わせたことで、子どもの言葉でスムーズに、子どもの言葉で、めあてを立てることができたと分析しています。
①問題に出会う
問題 「速い順に並びかえよう」
②どうやって考えるか、子どものつぶやきを引き出す。
子「このままではできない」
T「なぜできない?」
子「だって、ちがうから。」子「速さがちがう。」
T「今日のめあては何にしよう。」
子「条件がちがうとき、比べる方法を考えよう」
T「ほうほう。前時までの問題との違いはなんだろう?」
子「分速や時速!」子「速さの言い方かな?」子「速さの表し方」
T「よし、じゃあ書いていこう。速さの表し方が?」
子「バラバラ」
T「バラバラね。いい?」
決まった「めあて」
「速さの表し方がバラバラなとき、比べる方法を考えよう」
想定した「めあて」
「速さの表し方がちがうとき、速さを比べる方法を考えよう」
ポイント
今までの問題との違いに注目させる
子どもの言葉のつぶやきから、子どもの実感のともなった言葉を引き出す。
一人の発言ではなく、その言葉を採用する前に、全体に投げかける。
効果
新しい問題に出会ったときに、めあてを自分たちで立てることができるよ うになる。
自分たちでめあてを立てる意識をもつことで、主体的に粘り強く問題に取り組める。
小技
・めあてを途中で進化させる技(吹き出しで加える)
・必ずしも授業の最初にめあてを立てる必要はない。(中出し・後だし)
今回、書いたことは、以前の算数を中心とした校内研究をもとに書いています。「めあて」については様々な考え方があり、教科によっても大きく違います。
以上、エンチャントでした。
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