文学研究のキホン① ~発表資料(レジュメ)とは~

はじめに

感染症対策で大学に通えないために、立ち話で済んでいた相談がなかなかできないということが起こっていると思います。文系学部だと、ゼミ形式の授業でいきなり発表順が決まり「え!?いきなり発表?何をどんな風にすすめるの!?発表資料(レジュメ)ってどんなの作ればいいの!?」と戸惑う人も少なくないと思います。そこで、いままで私が初めての発表で戸惑う学部生のみなさんにレクチャーしていた内容を公開したいと思います。

①「文学研究」とは?

「文学」という言葉は、歴史、物語、言語、思想、絵画、音楽などなど人為のものを広く包含するキライがあります。まず、何を指して文学というのかをはっきりさせる必要があるでしょう。ここでは「文学研究」を「文学”作品”の研究」という意味でとらえて話を進めていきたいと思います。

「文学研究」が何たるであるかという問いについて、答えの形は多様(であるべき)だと思いますが、まずはじめに参考程度に私の認識を示しておきます。この認識を軸に研究を進めるようにしてから、研究らしい研究ができるようになったと思います。

えなちゃん文庫的「文学」とは? ”「科学」が社会の問題を解決する学問であるなら、「文学」とはすでに社会にある問題を指摘する(あぶり出す・抽出する)学問分野である” と考えます。

文学について、「弱者のために存在する」「驚きを描くものである」、「エターナル化するものである」「カタルシスである」などなど、さまざまな作家や研究者が「文学」の存在意義について語っていますが、私がここで確認したいのは、文学”研究”の意義についてです。この認識を大前提にレジュメの作り方、研究の進め方を紹介しますので、あらかじめご了承ください。

②発表資料(レジュメ)とは?

レジュメは研究概要の”要約”です。発表日までにどんなことを明らかにし、問題視し、分析考察したかということの《大きな流れをまとめたもの》と理解してよいでしょう。言い換えれば、《レジュメの作り方=研究の進め方》とも捉えられます。つまり、レジュメ作成の段取りをマスターすれば、研究の進め方は自然と身につき、見通しの立て方も理解できると思います。

③発表資料(レジュメ)の作り方

ざーっくり言うと、人文学は「人為のもの」を対象に価値を問い、言語化する学問です。人が作ったものを対象にするので、作成した人、時、場所、意図があります。それらをまず調べて整理する作業が必要です。

レジュメの構成例(文学作品を扱う場合のキホンの形)

1)作品タイトル ←作られたモノの正式名称。

2)書誌情報 ←作成された時間(改稿も含む)。

3)作者情報 ←作成した人。

4)あらすじ ←それがどのようなモノか。概要。

5)時代背景 ←それがどういった社会情勢の中で作成されたのか。世に出たのか。

6)語釈・注釈 ←そのモノを構成する要素を分解し詳細を理解する。

7)先行研究 ←そのモノに対する研究史。どのように意味づけられてきたかの確認。

8)考察・結論 ←上記の調査分析を通して考えたこと。作品の解釈(価値)の新たな可能性について考えを披露する。

考察・結論では、その人為のものを後世に受け継いでいくために、廃れさせないための意味づけ(価値の付与)を行うという視点で問題提起し、その問いに対する見解を述べます(私はそうしてきました)。これだけだと具体的なイメージがつきにくいので、私がこれまで作成してきたレジュメや論文を例に別記事に掲載しようと思います。そちらをご参照ください。

ただ、この《問題提起》は非常に難しく、私も「完全な問題提起ができた!」と自信を持って披露していいのか分かりません…。この部分については読者のみなさまからのご意見をいただけたらいいな、議論できたら面白いなと思っています。

論文の書き方や、作品分析と考察方法についてのノウハウについては、役立つ情報を発信できると思いますので、今後の記事をご覧いただき、参考にしていただけたらと思います。

具体的なレジュメ例は別記事にしますので、ひとまず概要のみで失礼いたします。さらに詳細を知りたい方や、質問やご意見、ご要望などあればnoteでもTwitter(えなちゃん文庫@enarina860)のDM等でお声かけいただけると嬉しいです。

それでは。


いいなと思ったら応援しよう!