向こう三軒両隣
引っ越しをした場合などは、向こう三軒両隣くらいは、ご挨拶をしておきましょう。
向こう三軒両隣とは、自宅から見て、お向かいの三軒と自宅の両サイドの二軒。
戸建てでしたら、理解しやすいですが、マンションやアパートの場合はどのように考えるのでしょう。
それでなのか「向こう三軒両隣」という言葉は死語に近くなっているのかもしれません。
向こう三軒両隣くらいは、仲良くしておきたい。せめてご挨拶くらいはしておくべき。
向こう三軒両隣の話ではございません。
桜の話でして。
こちらもやっと桜が開花しまして、殺風景だった景色にところどころ桜色が見えるようになり心華やぐようになりました。
北海道は、ソメイヨシノより、色が濃く鮮やかな桜色のエゾヤマザクラが主流です。
日本人は桜が好きで、椿や彼岸花は苦手という人はいますが、桜が嫌いという人に出会ったことはありません。実は私は椿が苦手ですが、春の象徴、日本の象徴のような桜は大好きです。
我が家にとっての向こう三軒両隣のお宅に高校生のお嬢さんがいまして、昨年の秋頃から、このお嬢さんに仕事帰りによく地下鉄で一緒になるようになり、沢山お話をするようになったのですが。つい先日、返答に困る質問を頂きまして、
「桜って、開花宣言されると、ほぼ同時期に咲くでしょう! でも、私達のご近所の桜、一斉に咲くことってありませんよね、、どうしてでしょうか?」
えっ?
そうなの?
そうかしら?
えっ?
なぜ?
我が家にとっての向こう三軒両隣は、どのお宅も、門の辺りだったり、裏だったり、庭だったり、お勝手口だったり、場所は違いますが、桜の木が数本はあります。我が家はお向かいより地勢的にやや高台に位置するので、2階の私の部屋のベランダに出ると、皆さんのお宅の桜がよく見えるのです。よーく思い出してみると、お嬢さんが仰有るように、一斉に咲いた姿は見たことがないのですね。一斉に咲くとすると、それはそれは見事な景色になるはずです。想像しただけでも素晴らしい。
当たり前のように見慣れてしまっていた姿で、疑問をもったことはなかったのですが、私こそが知りたいことでして。
義母に実母に姉にと訊いても明確な答えは得られず、祖父に訊いてみてやっと、納得できたのですが。
ソメイヨシノは接ぎ木をして増やされたクローン種。エゾヤマザクラは野性種。
祖父がこの土地を気に入って買った当時は、エゾヤマザクラが自生していたとか。
家の図面をひくときに、自生している見事な桜の木を数本でも生かしておきたいと考えたのですね。
向こう三軒両隣の家々は、祖父と同じように考え桜の木を生かして図面をひいたとか。
エゾヤマザクラは野性種なので、全てが同じではない、同じ土地にあっても、1本1本がそれぞれの人間でいうところの遺伝子を持っているというのです。
それで開花する温度も少しずつ違うのではないかということで。
花弁の色もソメイヨシノより濃いピンクといってもその濃さが、それぞれ違うのでしょう。
寒冷地なので、ピンク色もぎゅっと凝縮されて濃いピンク色になった。
お嬢さんのおかげで、今年はまた違う桜の楽しみ方が出来そうです。
自生していたエゾヤマザクラですが、
痩せてきているものもあり、太ってきているものもあります。そこに住む人の扱いや手入れの違いが、
40年、50年、60年経った現在、桜の木に姿の違いとして出てきているのかもしれないと考えると、樹木は長い年月をかけて人間に何をかを知らせたいのでしょう。