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こんな小説との出会いってあるんだ
変な感じで読みたい小説と出会った。それを話そうと思う。
この前、バイトをしてた時に女性のおひとり様が来店してきた。女性のおひとり様はまーまー珍しいから覚えてて、確か何回か店に来たことがある人だった。
その人は、20代後半くらいで、髪はボブがちょっと伸びた長さ、体格は一般的なんだけど、雰囲気としては丸みのある感じで、ほんわかしている印象を持つ人。
17時くらいに来店してきて、まぁ普通に対応したんだけどどうも変な感じがする。喋っててもなんかふにゃふにゃしてる。まーそんな人もいるかーって思ってたんだけど、対応が終わった後もずっと自分の席でふにゃふにゃしてるもんだから、そこで気づいた。
めちゃくちゃ酔ってるわこの人。まだ、17時だったからその選択肢が脳内になかった。ほんわかした感じなのに、この時間でベロベロなのギャップだなーと俺は思った。
そんで忙しくなり始めてその女性から目を離してたんだけど、いつのまにかいなくなってた。多分、何杯か飲んで帰っていったんだと思う。
んで、その人がつかった席のセットをしようと、机に近づくと椅子にカバンがそのまま置いてあった。いや、カバン忘れてるやん。
俺は急いで店の外に行って、その女性を探したんだけどもういなくって、とりあえず店に保管することに。パッと見た感じ、スマホと財布がカバンにない。あんだけ酔ってたら、多分カバンが無くなったって気づかなくて、しばらく店に取りに来ないんじゃないかなと予想した。
やっぱその通りで、待っても待っても例の女性は来ない。どんどんと時は流れ、時刻は21時前に。ほんでも、店にずっと置くわけにもいかないし、マジで申し訳ないんだけど、カバンの中に電話番号が書いてあるものとかあるかもしれないと思って、中身を見ることにした。
人のカバンを見るのって罪悪感やばい。しかも異性なのは余計に。そしたら、手帳が出てきた。これだ!と思ってみてみたんだけど、2025、つまり来年の手帳で、最近買ったものだから2024年の12月のページしか書かれていなかった。
そこには、2日前に「知らない人におごってもらった」とか書いてあって、この人めちゃくちゃ飲んでるなーと思った(勝手に見てほんとごめんなさい)
そしたら、もう1つ手帳らしきものが出てきた。去年のやつちゃうこれと思ってみてみたら、小説だった。表紙には『想像ラジオ』と書いてある。
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なんか変な感じだ。人のカバン漁って、手帳勝手に読んでその人のスケジュール見て、挙句読んでる小説まで見てしまう。いつも、人の読んでる小説はあんまり読もうとは思わないんだけど、この奇妙なシチュエーションにこの小説が読みたくなった。
他にないかとカバンをパッと見たけれど、電話番号とかのめぼしい情報はなかったから、俺は業務に戻った。
時は流れて22時ぐらい、カバンの中を見てから1時間ぐらいしたら、店のドアが開いてあの女性がきた。
女性は明朗に「カバンって忘れてませんか?」と言った。酔いが覚めてる感じだった。俺はカバンを渡したら、女性は「ご迷惑おかけしました」って言って出ていった。めっちゃ酔い覚めてた。
やけど、ちょっとしてまた女性は帰ってきた。そんで、「スマホって知りませんか?」って言った。
いや、それは知らんな。うちの後にもどんだけ飲んだんだよこの人と思った。
あと『想像ラジオ』を読んでみようと思った。