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フレーバーテキストは定食の付け合わせじゃない。ひつまぶしの薬味だ!

ひつまぶしはそのまま食べてももちろん美味しいけれど、薬味をかけてこそ味わいが増す。フレーバーテキストもそれと同じなんだ。

エンマ抄本 フレーバーテキストについて

 皆さんはフレーバーテキストを知っているだろうか?ゲームのアイテムやカードに書いてある短い文のことだ。上記の文もそれっぽく作ってみたが、ど下手くそだ。それに、こんなタイトルで読みにくる人はいるのか?いたらきっと変態だ。

 フレーバーテキストは、ゲームの中のアイテムであったり、はたまたキャラであったり、とにかく何かしらの「モノ」に注釈を付け加えるものだ。その注釈は、皆が知っている情報から、知らない情報、はたまた何かを暗喩するものまで様々だ。このフレーバーテキストなるものが俺は大好きだ。

 元々は短い文でその「モノ」を表現するキャッチコピーが好きだった。短い文でバシッと決める感じがカッコ良い。子供の頃こんなものを読んだ。

追い込んで 高めに浮いた スライダー

「悪魔のコーヒー」 #甘すぎる練乳川柳より

 ローソンのコーヒーで甘さを売りにしている商品があった。それにこのキャッチコーピーが書かれていたのだ。川柳なので5.7.5できちんと作り、しかも「甘い」という言葉は一切書かれていない。それでも甘い!ということが嫌というほどわかる(これを読んだ時の俺は野球少年だった)。ここから俺は短文で爆発力の強い言葉にハマってしまった。そのため、映画のキャッチコピーとかも好きになった。そして時は経ち、ゲームにハマった俺はフレーバーテキストの沼へと沈んでいくことになる。


 フレーバーテキストも往々にして短く、爆発力がある。まずは、ゲームに登場するアイテムのフレーバーテキストを紹介しよう。

匂い立つ血の酒
「投げつけると濃厚な匂いを放つ熟成した血の酒。それは血に飢えた獣を強く惹きつける。生産量はごく少ない貴重なもの。
酒はヤーナムには似合わない。むしろ血に酔うのだ。」

Bloodborneより

 サムネにもなっているフレーバーテキストだが、何だこれは、完璧すぎるだろ...このアイテムがゲーム内でどんな物なのか説明をしつつ、最後の一文に世界観を落とし込んでいる。

 このアイテムの登場するBloodborneというゲームは獣に塗れた古都ヤーナムを舞台に、主人公である狩人が個性豊かな「仕掛け武器」を使って獣を駆除していくゲームである。スタイリッシュな戦闘と独特な世界観が、非常にクセになるゲームだ。一度ハマってしまえば、「血に酔う」という意味がわかる。Bloodborneに限らず、フロムソフトウェアのゲームのフレーバーテキストは良いものばかりだ。いずれは紹介したい。

ダークな世界観がたまらない。装備もなかなかにお洒落。


 次はキャラクターのフレーバーテキストだ。
こんなものがある。

「夜蘭を探しているのか…ふむ、彼女のことは一般人として扱ったほうがいい、と言いたいところだが、そうすると今度は交渉が上手く運ばなくなる。彼女がお前をどう見ているかで、結果は変わってくるだろう。」

夜蘭 人物評

 これは原神というゲームに出てくる、夜蘭(イェラン)というキャラクターの人物評である(人物評であるため少し長いが...)。彼女は璃月(リーユエ)という国の総務司で仕事をしているが、名簿上には存在しない、詰まるところ総務司の極秘任務を担当する人物ということだ。この一文だけで彼女がいかに一筋縄ではいかない人物なのかがわかるだろう。また夜蘭のスキルのフレーバーテキストも良い。

彼女が糸に指を掛け、それを引いた時、陰謀を企てる悪党や賊たちは、初めて自分の定められた運命に気付く。

夜蘭 元素スキル「絡み合う命の糸」

 彼女は「糸」を武器とするキャラクターだ。糸を使い、敵を倒す。また、「裏で糸を引く」なんて言葉がある。何が言いたいかわかるだろうか?このフレーバーテキストの「糸」には2つの意味があるのだ。物理的な武器としての「糸」と、見えない陰謀を動かす「糸」の2つ、「彼女は2つの種類の糸で悪党や賊たちを倒せることができる」という意味を内包しているようにも感じられる。なんて素晴らしいんだ.....。(個人的に原神のフレーバーテキストはマジで過小評価されている気がする。もっとみんな読んでくれー!)

夜蘭。原神のキャラの中でも1、2を争うレベルで好き。


最後にカードのフレーバーテキストだ。
これもまた味わい深い。

落とせぬ砦などない。落とす価値のない砦があるだけだ。

「包囲攻撃」 Gwent:The Wicher Card Gameより

 これはGwent(グウェント)というカードゲームから抜粋。あまり知られていないカードゲームだと思うので、一応簡単な説明をする。
このゲームはウィッチャーというファンタジー小説を元にCD PROJEKT REDが開発したウィッチャー3というゲームから生まれた。そうゲームから新しいゲームが生まれたのだ。というのもウィッチャー3はゲームの中でこのGwentというカードゲームを遊ぶことが出来る。これがかなり面白く、メインクエストをほっぽり出してやる人もいたぐらいだった。その人気ぶりに目を付けたCD PROJEKT REDはGwentを1つの独立したゲームとして開発し、リリースをした。

 ウィッチャーは、中世ヨーロッパを舞台にしている。そのため城を攻める際には、攻城兵器を使う。まさに城を攻め落とす瞬間のカード、これが上記の包囲攻撃だ。このカードは特殊な「シナリオ」カードなので、かなり強い。文字通りの切り札だ。そんな切り札ともいえるカードのフレーバーテキストがこの強気な文!マジでかっこいい!北方諸国の少し野蛮とも取れるほど強気な姿勢が垣間見える良文だ。

脚本:あなたが「攻城兵器」ユニットをプレイするたび、進行する。
序章:自軍間接列に《強化トレビュシェット》1体を生成する。
第一章:自軍間接列に《破城槌》1体を生成する。
第二章:《一斉射》を生成してプレイする。

トレビュシェットで城壁を破壊し、破城槌で城門を破壊、最後に一斉射で城を全体攻撃っていうのが本当に城攻めしてるみたいで好きだ。


フレーバーテキスト紹介、終了


 と言ったふうにフレーバーテキストはたった一文でアイテム、キャラクター、カードの語られることのない背景を示すことができるのだ。「神は細部に宿る」なんて言葉があるが、まさにその通りである。だから、俺は新しいゲームをプレイすると、フレーバーテキストがあるのかワクワクする。別になくても面白いけれども、あると嬉しい。そのゲームの深みが増す。

 まぁこの考えはフレーバーテキストに限ったことでもなくて、何でも当てはめることができる。ゲームであれ、料理であれ、建物であれ、作った人の細部のこだわりに気づけば、普通だと思っていたものが好きになるし、好きなものはもっと好きになれる。俺ももっと大まかでなく、細かい部分まで気づける目を養いたい所存でございます、というところで今回のnoteは締めさせていただきます。

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