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着物ができるまでその3

図案のお話し【第3回】

今回は2週に渡って豪華ゲストのや万本遊幾先生と成願義夫先生をお招きして伺いました。いきなり図案とは…ではわかりにくいので、作家の先生にご依頼するというところからお話しは始まります。一般庶民からするとかなりハードルの高そうな“お誂え”ですが、ひと通りの着物が揃うと一枚は欲しくなる世界に一つだけの自分の着物を描いてもらうにはどうしたらいいのでしょう?先ずは作家さんとお会いして、色々なお話しをしながら自分の想いを伝え共有していきます。自分の世界観をお話しする事で先生は想像を膨らませ、どんな絵柄でどのような生地の色味に染めるのかなど要素をまとめながら掘り進めて行きます。

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図案のはじまり

ここで少し図案という仕事のお話しになります。遡ること江戸時代には絵師(浮世絵師)という人がおられました。これらの絵を描くための修練が必要だったため、高価な紙に描く前に枠張りした絹によく描かれていたそうです。順番を説明すると 絵師→彫り師→擦り師という流れで分業していきます。時代の流れと共に進化していく図案制作ですが、パソコン導入前の昭和の頃は絵柄を方眼紙に書き写す作業などがあり、師匠の技を盗み見ては技術を学び取る世界だったそうです。お弟子さんの修行時代には、師匠の絵を問屋さんへ持って回る営業をしながら自分の作品も一緒に顔と腕を覚えてもらい、問屋さん自身売れない若手の図案を買い取り育てる時代でもあったとお聞きしました。そんな現在ではIT化が進み、描いた図案はパソコン入力しデジタルを駆使しながらの細部に渡る作業で、随分時間短縮につながっているのかもしれません。

図案の下書き

お客さまの話を聞いて、縮小した絵を描きながら柄のスケールにより花の大きさや本数を変えてみたり、時にはお客さま予算から柄の足し算、引き算をしながら草稿の図案をお客さまに巻きつけて柄のバランスを見てみたりと、お客さまに白生地を巻き付けての下絵を描く方法などとてもわかりやすい解説付Instagramと動画を拝見させていただきました。中でも、お客さまの体格や肌の色に合わせて、着色した雛形から上前の柄の配置や色見合わせが、とても大切な作業なのだと感心しました。

図案を描く

雛形を元に背、脇、上前の柄が合うように描いてゆく作業です。紫露草から抽出した青花や化学薬品からできる化学青花で下絵を染めて行きます。水に溶けやすい性質のため、手直しがきくということでした。

お話しを聴き終わって

今回図案のお話しは上記のような内容でしたが、成願先生、や万本先生の職人としてのこだわりと仕事への情熱はとても素晴らしかったと思います。エンドユーザーである女性の美しさを引き出すための絵柄のバランスを試行錯誤しながら作品作りに取り組んでおられるお話はとても魅力的でした。「洋服では出会えない自分になれるのが着物で、ユーザーはそれで自分を表現したいんだ。」とおっしゃっていました。業界が儲かる着物を売るのではなく、お客さま目線のお客さまが一番似合う着物を提案する問屋さん、呉服屋さんが増えれば良いのにと思いました。生産者が技術に見合った収入を得られる仕組みができればと心より祈り、この項を閉じさせていただきます。


今回のゲストお二人のプロフィール

成願義夫先生 和装関連企業のコンサルティング、新商品開発アドバイス、呉服店のアドバイザー、和装関連商品のデザイナー、日本画家

や万本遊幾先生  東京早稲田にて“彩密友禅”と称する技法で創作されている友禅作家です。






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