「サイハテキッズの学校に行かない理由」 vol.29
よく聞かれるのが、サイハテ村の子供達は小学校に行くのか?ってこと。それは大人が決めることではなく子供が決めることだと思っているのですが、心配なのは、枠にはまりきった小学校は窮屈なのではないか?日本特有の詰め込み式の学習スタイルでは、〝自分で考える力〟が失われてしまうのではないか?ってこと。
ただ、サイハテ村という特殊な環境下だけで育てると言うのも、しっくり来ていませんでした。と言うのも、フリースクール出身の子やホームスクーリングの子が成⻑し社会に出た時、世界観やコミュニケーションの仕様が違いすぎて、対応しきれないという子を何人も見てきたからでした。
なので、僕個人としてはいわゆる一般的な社会も知ってもらおうと、試しに小学校に行ってみることを勧めてみることにしました。
子供たちにしても、小学校に行くと言うことは不安もあれど、期待に胸を膨らます事であり、緊張した面持ちで小学校に入学しました。
たくさんの生徒、威厳に満ちた教師、整然と並べられた椅子と机、戶惑いながらも毎日小学校に通っていたのですが、彼らはすぐに「学校に行きたくない」と言い出したのです。僕らも首根っこを掴んででも小学校に行かせるつもりはなかったので、しばらく彼らを見守ることにしました。
そして、小学校に行かない日が多くなり半年が過ぎた頃、たびたびサイハテ村まで様子を見に来てくれる担任の先生が、いつものように学校へ来ないかと誘ってくれていました。「明日は虫を採りに行くんだよ」とか「勉強は嫌いかな?」と語りかけるも、子供は黙ったままでした。
なんで黙っているんだろうと思い、僕は先生が帰ってから、なんで小学校に行きたくないのか聞いてみることにしました。
「勉強嫌い?」
「ううん」
「友達がイジメてくる?」
「ううん」
「先生が嫌い?」
「ううん」
「じゃあなんで小学校行きたくないの?」
「……わかんない。」
どうやら、小学校に行きたくない明白な理由があるわけではなく、なぜ行きたくないと感じるているのかが、自分でも分からなかったから黙っていたようでした。
気になった僕は、小学校にいるときに何を感じているか、モヤモヤする時はどんな時か、などを聞き出し整理していくうちに、その子は急にひらめいたように言いました。
「分かった!学校に行きたくないのは、自分らしくいられないからだ!!」
大人でもその答えに辿り着かないのに、小学校1年生がその感覚を理解したことにとても驚きました。と同時に、僕は込み上げてくるものを感じました。
それは小学生だけじゃなく、高校生や大学生、言ってしまえば社会の大人たちでさえ意識できずにもがき苦しんでいる〝問題の根っこ〟のように感じたからです。僕たちは学校でも会社でも家庭の中でさえ、息苦しさや不安にさいなまれています。
これは実体のない大きな社会の闇のようなものです。徹底した集団行動、威圧的な態度、成績で評価され味わう劣等感。実際の行動として現れずとも、常識や雰囲気として確かにそこにあると感じる重苦しい空気。
小学校に行かない理由が、自分らしくいられないから。という事実は、ルールもリーダーもいない「お好きにどうぞ」という環境で育ってきたサイハテの子供たちだからこそ感じ取れた事でありましたが、それはある意味、僕ら大人が子供たちに対してどう寄り添うかという出発点でもあったのです。
次回は、vol.30「発達障害が世界を変える」です。フォロー、スキ、シェアしていただけると励みになります!^ ^
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