学術会議でグタグタと思ったこと
『学術会議の「一斉辞任」危惧、改革法案の提出見送り…岸田首相が対立回避で決断』
「このまま突っ込んだ場合、学術界との間に大きな亀裂や混乱が生じてしまいます」
4月18日夕、首相官邸の首相執務室。学術会議改革を担当する後藤経済再生相は首相にこう切り出した。
首相は「分かった。今後は法案提出と『民間化』の二つを俎上に載せてほしい」と注文。「丁寧に議論しつつ、早期に結論を得ることが大事だ」と語り、20日に法案提出の見送りを発表することを了承した。
定員210人の学術会議会員は特別職の国家公務員(非常勤)で、手当が支給される。政府は人件費などを含む経費として年間約10億円を計上している。
現在は会員の推薦に基づき、学術会議が候補者を選び、首相が任命する仕組みとなっているが、政府は透明性を高めるべきだとして改革を求めた。法案の柱は、選考過程に第三者でつくる新設の「選考諮問委員会」を関与させることだ。
一方、学術会議側は「独立性が脅かされる」などと強く反発した。会長でノーベル賞受賞者の梶田隆章氏は昨年12月の総会では、「重大な決意をもって再考を求めていく」と明言した。
「梶田氏を含め、学術会議の役員が一斉に辞任することもあり得るのではないか」
後藤氏や政府高官の脳裏には「最悪のシナリオ」もよぎった。騒動が広がれば、政府と学術界全体との対立に発展し、世論の反発も招く――。衆参5補欠選挙や統一地方選後半戦の投票日が4月23日に迫る中、学術会議の改革を重視していた自民党幹部も法案提出の見送りを受け入れた。
2020年に学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人の任命を菅首相が拒否したことからこの問題は始まっています。
これは、2004年に組織内部からの推薦を受けて会員に任命される制度となって以降、初めての出来事でした。
それで『しんぶん赤旗』のスクープが契機となり、学術会議の独立性や学問の自由が損なわれるとの批判が巻き起こります。
今年のニュース
『ノーベル賞受賞者など8人 日本学術会議の法改正 再考求める』
『世界のノーベル賞受賞者61人「憂慮を共有」 日本学術会議問題巡り』
ここで日本学術会議の説明
日本学術会議(にほんがくじゅつかいぎ、英: Science Council of Japan 略称: SCJ)は、日本の国立アカデミーで、内閣府の特別の機関の一つ。日本の科学者の内外に対する代表機関であり、(以下略)
学術研究会議を前身とし、学術体制刷新委員会の議論を経て1949年に発足。研究者による直接選挙を実施し、当時は「学者の国会」と呼ばれた。
理念
内閣総理大臣が所轄し、その経費は国の予算で負担されるが、活動は政府から独立して行われる(日本学術会議法 第1章の第1条・第3条[4])。「科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること」「科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること」を職務としている(同法 第2章の第3条)。
一方で国際学術会議など40を超える国際学術団体に日本を代表して加盟しており、各団体の国際分担金も日本学術会議予算で賄われている。国際科学会議 (ICSU)(現在の国際学術会議)では14万ドルを支出し世界3位の地位を占め、日本から吉川弘之会長、黒田玲子副会長を輩出した。また、日本学術会議はアジア学術会議をリードし、事務局、事務局長を担っている。
以下も参考になります。
独立性に関してですが、
アメリカとイギリスが「政府から独立した民間の団体」で、
ドイツが「政府から独立した公益法人」、
中国が 国務院(日本の内閣にあたる)の直属機関で独立しておらず。
日本は政府機関となっています。
財源はどこの国も政府がある程度出しているようです(ドイツは全部、アメリカやイギリスは寄付が含まれる)。
年間予算や人数は世界に比べると少ないです。桁が違います。
予算は日本約10億、ドイツ21億近く、イギリス約134億、アメリカ約277億、中国1兆(ただし中国は政府から独立せず。またほとんどが研究費)。
財源は、日本は国費、ドイツは政府(連邦政府と州政府が8対2で)が支出、イギリスは政府からの助成金と寄付、アメリカは助言に対する対価、政府からの助成金と寄付、中国は国が出しています。
会員数は、日本210人、ドイツ1500人以上、イギリス約1600人、アメリカ7000人以上。
またアメリカ・イギリス・ドイツでは会員の投票で会員を決めており、内閣総理大臣が任命するのは日本だけです。ちなみに中国は政府が選任しているので、日本は中国になろうとしているようです。
これに関して思ったことが3つあります。
一つ目
学者の世界はエニアグラムの『思考者』タイプ5的なものなので、
最近書いた
エニアグラムのタイプ5チェック項目
「政治問題は私の心を奪う。私はことのほか、自分にいかなる種類の権力を振るう人間も信用できないからである」
との関係を考えてしまいました。
タイプ5な人たちの集まりに、あえて権力を振るおうとしたら、それは反発を生むのも当然なのかも知れません。
二つ目
過去に私は『日本発のイノベーションが起きる条件』の中において、
「周りを気にせず自由に振る舞えるとき、(また、周りが気にせず、その行動を許容するとき)日本人の創造性は花開く」
と書きました。
学術会議に権力介入しようだなんて、政府は日本の学術の芽をつぶすつもりなんですかね。
もっと自由にさせないとイノベーションを含む日本の学術の発展はあり得ないのに。
三つ目
今回の話は
2020年に学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人の任命を菅首相が拒否したことから始まりました。
ならば、
天皇が
内閣総理大臣や最高裁判所長官の任命を拒否するのもアリなんですかね。
「統一教会問題に本気で対応しようとしない内閣総理大臣は任命できません」と断ることはアリなんでしょうかね。
周りがなんと言おうと菅首相のように天皇が拒否する限り任命もされないわけです。
政府は1983年の時点で「学会からの推薦者は拒否しない」と言っていて、
2004年の総務省内部文書でも「内閣総理大臣が任命を拒否 想定されていない」と書かれていました。
それが2018年に政府内でまとめた文書においては「内閣総理大臣に学術会議の推薦のとおり任命すべき義務があるとまでは言えない」に変わってしまいました。
ならば、天皇の任命も、指名のとおり任命すべき義務があるとまでは言えない、となったらどうなるのでしょうか。
そんなことも考えました。