「語彙」という言葉の解像度が低かった(メモ)
今井むつみ話
単純に「語彙」が豊富なほうが良いと思っていた。
「語彙」という言葉の解像度が低かった。
「抽象度」を加味する必要があった。
『ちくまQブックス『AIにはない「思考力」の身につけ方』今井むつみ 「9歳の壁」ってなんだろう?』
「ことばの力」には、2つの大きな誤解があります。
ひとつは、日常生活において日本語を自由に話していれば、ことばの力に問題はないと思われている点。
もうひとつは、ことばや漢字をたくさん知っていれば、ことばの力が高いと思われている点です。
学力を伸ばすために必要なのは「抽象的なことば」です。
(略)
小学3年生から4年生頃の時期、勉強がわからなくなり、嫌いになる子が増えます。これは「9歳の壁」といわれる現象です。3年生から4年生の時期は、いろいろな教科で抽象度の高い内容が出てくるようになります。
(略)
「食物連鎖」「消化器官」「飽和水蒸気量」「密度」「溶解度」などは、いずれも小学校の理科で習うことばですが、ぱっとイメージが浮かぶことばではありません。「食物連鎖」を目で見ることはできませんし、日常生活で聞いて自然と覚えることばでもありません。こういった抽象的なことばが、次々と教科書にでてくるようになることで、勉強がわからなくなり、嫌いになってしまうのです。
みなさんの中には、外国にルーツをもつ方がいると思います。
日本で生まれ育ち、お父さん、お母さんの話す言語があまり話せない方もいるかもしれません。そういうみなさんの日本語の発音は、周りの人と変わらず、日本語が得意でないお父さん、お母さんはすっかり安心しているかもしれません。それは学校の先生も同じです。みなさんの日本語力に、まったく問題がないと感じていると思います。
しかしみなさんの中には、勉強が難しいと感じている方がいるかもしれません。もしかするとその原因は、抽象的なことばかもしれません。困っているのであれば、ぜひ周りに相談してください。
勉強につまずいている子、外国にルーツのある子が、抽象的なことばの獲得に困っていないか。学校の先生には、その部分に注意していただければと思います。
ああ、なるほど。
「いくら子供が英語がペラペラ話せても、商談はできない」
と言われているけど、その中身がやっと理解できた。
抽象度の高い言葉、難解な用語、仕組みやルールの理解が子供ではできないわけだ。
この前ネットで読んだ「英語がつたなくても、内容があれば、相手は熱心に話を聞く」というのにも通じた話かも知れない。
綺麗な英語を話せることを私も理想と思っていたが、内容のある英語が話させているかの問題もある。
「語彙」の多さは意識したことがあったし、noteにも書いたことはあったけども、その内容、抽象度は意識していなかった。
そうやって見ると、リンゴは実物があるけども、果物や果実となると抽象度が増す。リンゴの糖分やその組成に話が及ぶと、その背景には多くの知識が必要となってくる。
抽象度以外にも、その単語の背景の数や難解さも意識する必要がありそうだ。
「量子チェシャ猫」という単語を使うには、その前提として「量子力学」と「不思議の国のアリス」の二つを知っている必要が出てくる。知ったかぶりをして単語を使うにも、ある程度の理解の積み重ねが必要になる。
勉強になったのでメモ。
英語の話もあったので、その部分引用追記
『ちくまQブックス『AIにはない「思考力」の身につけ方』今井むつみ 英語学習の考え方』
小さい子どもは大人よりも外国語を覚えやすい。これは大方間違いではありません。しかし、(略)「9歳の壁」は、実は英語学習にも当てはまります。
グローバルな社会になり、世界的に問題になっているのが「母語でも第二言語でも思考できない子ども」の増加です。例えば日本語を話す両親のもとアメリカに生まれて、小学校まで現地で過ごしたとします。日本語も英語もネイティブなみにペラペラです。うらやましいですね。
でも、本人は非常に苦労することが多いのです。
家で話す言語と、暮らす国の言語の2つを同時に学ばなければならないというのは、ただでさえ子どもにとっては負担です。そのような中で、子どもは抽象的なことばを獲得していかなければなりません。しかし、それはかなり難しい。すると言語習得が日常会話レベルにとどまり、ペラペラなのに、深い話ができなくなってしまうのです。
子どもの言語発達を専門にしている私のもとには、海外で子どもを育てる日本人の親御さんから、たくさんの相談がきます。その時には、「日本語でも現地のことばでもいいので、片方の言語学習に力を入れて、少なくとも一つの言語では抽象的なことばを使って深い思考ができるようになる」ことが大事だとお伝えしています。
もしみなさんが、日本で育ち日本語を母語としているのであれば、日本語で抽象的な概念を扱い、思考を深めることができるまでしっかりと国語の勉強をすることです。外国語は、国語の能力の伸びに寄りそうように伸びていきます。小さい頃から英語を習っていなくても、まったく心配ありません。
英検やTOEICの点数などが最終ゴールだと思っていた。
英語の勉強の先には、英語での抽象思考ができるかが問われている。
以前に、「二言語話者は頭脳の働きが衰えない」という話をどこかで読んだような気がするのだが、この場合の二言語話者とは各々の言語で抽象度の高い思考のできる人ではないかと想像してしまった。
英語がまるきりダメな私にとっては遠い話。