熊本市の審理員はまともか:ChatGPT、Bardを活用しての山﨑広信、山内光博による意見書の検証
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はじめに
人工知能チャットサービスであるChatGPTは以下のように回答している。
tips_1(ChatGPT)
問:
行政不服審査法に基づく審査請求において、審査請求人の主張を無視した審理員の判断はまともなものになっているか。
回答:
行政不服審査法に基づく審査請求において、審査請求人の主張を無視した審理員の判断はまともなものにはなりません。行政不服審査法は、行政庁による不利益な行政処分に対して、市民や企業などの対象者が異議を唱える権利を保障するものです。そのため、審査請求人が主張する理由や証拠を適切に審査し、その根拠を明確に考慮することが求められます。
審理員が審査請求人の主張を無視すると、審査請求人にとって不利益な結果が出る可能性があります。また、行政不服審査法に基づく審査請求は、行政手続きに対する市民の信頼を高めるためにも重要な手段の一つであるため、審理員が審査請求人の主張を無視することは、行政手続きの透明性や公正性に影響を与えることになります。
したがって、審理員は審査請求人が提出した理由や証拠を適切に評価し、その根拠を明確に考慮することが必要です。審査請求人の主張を無視した判断は、行政不服審査法の趣旨に反するものであり、まともなものにはなりません。
さて、本書では熊本市への審査請求である、令和3年市行審第9号 住民基本台帳事務における支援措置取消請求事件の審理員であった、山﨑広信、山内光博の判断がまともなものであったかについて検討する。元々の請求は審査請求人が二男の戸籍附票の交付を求めたものであり、それを熊本市が不交付にしたため、審査請求が申し立てられた。当然のことながら、審理員であった山﨑広信、山内光博の判断がまともでなかった場合、山﨑広信、山内光博が作成した意見書もまともなものではないことになる。しかしそのようなまともでない意見書であっても審査庁に提出されるのだから、まともでない意見書が決裁に影響を与える可能性は否定できない。
そうすると、審理員には相応の能力や倫理観が求められることになるのだが、熊本市の審理員という責任ある立場にあった山﨑広信、山内光博に、それらがあったと言えるだろうか。それを本書では検討していく。
なお、ChatGPTが回答しているように、審査請求人の主張を無視していては、審理員の判断はまともなものだとはいえない。そのため本書では、審査請求人が実際に提出した書面と、山﨑広信、山内光博が作成した意見書を掲載することで、山﨑広信、山内光博が必要な審理を怠っていないかを読者も確認することができるようにしている。本書の内容に疑問があれば一次資料にあたることで自ら確認をしてもらいたい。
ところで、詳しくは後述するが今回の審査請求において、熊本市はどのような審査請求人の具体的行為を元に不交付処分を決定したのかを明らかにしていない。このような態度について、人工知能チャットサービスであるBardは以下のように回答している。
tips_2(Bard)
問:
行政不服審査法に基づく審査請求において、処分庁が処分の根拠となる審査請求人の具体的行為を明らかにしないことは適切か。
回答:
行政不服審査法に基づく審査請求において、処分庁が処分の根拠となる審査請求人の具体的行為を明らかにしないことは、適切ではありません。
行政不服審査法は、行政庁の処分が違法又は不当であると認める場合に、その処分を取り消すための手続を定めた法律です。審査請求を行うためには、処分の内容、審査請求の趣旨及び理由を記載した審査請求書を処分庁に提出する必要があります。
処分庁は、審査請求書の記載に基づいて、審査請求が適法に行われているのか、審査請求の内容が理解できるのか、審査請求の理由が合理的なものなのかを判断する必要があります。処分庁が処分の根拠となる審査請求人の具体的行為を明らかにしない場合には、審査請求人は、審査請求の理由を理解することができず、適切な審査請求を行うことができません。
したがって、行政不服審査法に基づく審査請求において、処分庁は、処分の根拠となる審査請求人の具体的行為を明らかにする必要があります。
つまり本書は、説明を果たしていない熊本市に対して、山﨑広信、山内光博がどのような判断をしたのか、それがまともなものだったのかということも検証対象である。
人生の使い方は人ぞれぞれだろうが、世の中に害悪を撒き散らすことに人生での時間を使っているような者も存在する。そしてなぜそのようなことができるのかといえば、当然、そのような選択を敢えてする人格の持ち主だからであろう。さて、山﨑広信、山内光博はどうであろうか。
1 審査請求について
本書の内容を簡潔に言えば、行政不服審査法に基づく審査請求が適正な手続きで審査されたかであり、その審理の手続きの1つが審理員による意見書作成である。
この審査請求について、処分庁である熊本市のウェブサイトでは以下のように説明されている(2023年2月1日閲覧)。
【審査請求の概要
審査請求とは、行政不服審査法に基づく不服申立ての一類型であり、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為によって不利益を受けた国民が不服を申し立て、これを行政庁が審査する手続です。
国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的としています。】
そうすると、当然、山﨑広信、山内光博も上記を念頭に適正な審理をする必要があった。そして、山﨑広信、山内光博の判断が適正なものでなければ、山﨑広信、山内光博が作成した意見書はまともでなかったことになり、そのような意見書を作成した山﨑広信、山内光博自身のまともさにも疑義が生じることになる。
2 支援措置について
(1)支援措置の概要
今回の審査請求には支援措置という制度が関係している。これがどのような制度であるかは、以下に令和2年9月24日名古屋地方裁判所判決の判決を引用することで説明する。
【支援措置制度の内容は、次のとおりである。
ア 制度の目的
DV等の加害者が、住民基本台帳の一部の写しの閲覧及び住民票の写し等の交付並びに戸籍の附票の写しの交付(以下「住民基本台帳の閲覧等」という。)の制度を不当に利用して被害者の住所を探索することを防止し、もってDV等の被害者の保護を図る。
イ 支援の必要性の要件
(ア)申出者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第1条第2項に規定する被害者であること
(イ)申出者が、加害者からの更なる暴力により生命又は身体に危害を受けるおそれがあること
(ウ)加害者が、被害者の住所を探索する目的で、住民基本台帳の閲覧等を行うおそれがあること
ウ 支援の必要性の確認
申出を受けた市町村長は、支援の必要性があるかについて、警察等の意見を聴き、確認する。警察等の意見を聴く以外の適切な方法がある場合には、その方法による確認をする。
エ 支援措置の内容
DVの加害者から、DV被害者に係る住民基本台帳の閲覧等の請求・申出がされた場合、不当な目的によるものとして閲覧・交付を制限(拒否する)措置が講じられる。ただし、不当な目的によるものでないこととされた請求まで拒否するものではない。
オ 支援措置の期間
1年間
カ 支援措置の延長
支援措置の期間満了の1か月前から、支援措置の延長の申出があった場合には、支援措置の申出と同様に処理される。
キ 支援措置の終了
(ア)支援対象者から支援の終了を求める旨の申出を受けたとき
(イ)支援措置の期間を経過し、延長がされなかったとき。
(ウ)その他市町村長が支援の必要がなくなったと認めるとき】
これが支援措置制度の概要である。そして本書でまな板に上げるのは、支援措置制度でDV等の加害者とされた審査請求人が、我が子の戸籍附票の取得を熊本市から拒否されたことに対して行政不服審査法に基づく取り消し請求をしたものであり、これに山﨑広信、山内光博がまともな意見書を作成したかということである。
なお、上記の判決では、支援措置の要件を欠く支援措置の申出をしたことを不法行為として、支援措置の申出者に損害賠償を命じており、このことは控訴審(名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決)でも維持されている。この裁判例ついても審査請求人は引用した主張をしているので、それに対する山﨑広信、山内光博の判断がどのようなものであったかにも注目してもらいたい。
(2)支援措置の申出書
次に総務省がウェブサイトで公開している、支援措置の申出書を掲載する。今回の処分庁である熊本市もほぼこれをそのまま使っている。支援措置はこれに記入して申し出ることになるが、この裏面にあるように(先に引用した裁判例にもあるように)、支援措置は単に申し出れば無条件に認められる制度ではなく、裏面に記載されているA~Dのいずれかに該当していることを前提に、それを証明する添付資料か、相談機関等の意見が必要な制度となっている。
(1) 当初受付市町村が支援措置が必要と判断し、処分庁は当初受付市町村が支援措置が必要と判断したことを根拠に本件支援措置を決定したこと。
本書は行政不服審査法に基づく審査請求に関するものであるが、もし審査請求をしても、「理由は説明しないが、とにかく処分庁は正しい。だから審査請求は棄却する」とされたら、それがまともな判断といえるだろうか。何ら検討することなく無条件に処分庁が正しいとするならば、公平性や正当性はなく、行政不服審査法が法として存在すること自体が蔑ろにされているということになるだろう。
そして、山﨑広信、山内光博の判断もこれなのである。山﨑広信、山内光博の場合は当初受付市町村だが、山﨑広信、山内光博は何ら検討することなく無条件に当初受付市町村の判断が正しいとしており、このような山﨑広信、山内光博の判断が、合理性にも倫理性にもまともさにも欠けていることは明らかだろう。そして、なぜ山﨑広信、山内光博がこのような判断をしたのかといえば、山﨑広信、山内光博らの人格が合理性にも倫理性にもまともさにも欠けているからではないだろうか。
また、当初受付市町村の決定が正しいのであれば、その説明責任は当初受付市町村の決定を採用した熊本市にある。しかし、熊本市は当初受付市町村の決定がどのような根拠に基づくものなのかについて何ら説明をしていない。行政不服審査法に基づく審査請求では、処分の合理性や適法性が審査対象であるのだが、熊本市は当初受付市町村の決定を受け入れていながら、その当初受付市町村の決定の合理性や適法性について、具体的事実と照らし合わせながらの説明ができていないということは、つまり、熊本市は本件処分の合理性や適法性を説明できていないのである。なお、ここでいう具体的事実とは、加害者とされた者にどのような具体的加害行為があったかや、その行為が申出人の虚言等でない客観的事実であることの確認方法、またその行為が支援措置の要件を満たしているかといったことである。そしてこれらを熊本市が説明できていない以上、本件処分に合理性や適法性があるとは認められないとするのがまともな判断というべきである。
なお、上記した説明責任が熊本市にあることについても審査請求人は主張していたが、これについて山﨑広信、山内光博はどのような態度であっただろうか。なんと、何ら言及していない。なるほど、山﨑広信、山内光博が恣意的に不正な意見書を作成するのには、この審査請求人の主張に言及すると都合が悪かったということだろうか。
ここで本書冒頭で引用したChatGPTの回答を思い出そう。
「行政不服審査法に基づく審査請求において、審査請求人の主張を無視した審理員の判断はまともなものにはなりません。」
つまり、当初受付市町村による支援措置決定の合理性や適法性、それに熊本市の説明責任に関する審査請求人の主張を無視した山﨑広信、山内光博の判断は、まともでないと解するのが妥当だろう。
ちなみに、本書冒頭で引用したBardの回答のように、処分の根拠となる審査請求人の具体的行為を明らかにしない熊本市の態度も適切ではなく、なぜ審査請求人の具体的行為を明らかにしないかといえば、処分が合理的だと言える審査請求人の具体的行為自体が存在しないからだと解するのが妥当である。
(2) 加害者については、申出書の「加害者 (判明している場合)」の欄に審査請求人の氏名が記載されているから明確であること。
次に山﨑広信、山内光博による加害者を判明させる方法について見ていこう。山﨑広信、山内光博は要するに、申出人が加害者欄に記入していれば、それだけを根拠に加害者が判明していることになるとしている。
しかし、このような判断基準で冤罪のおそれはないのだろうか。仮に山﨑広信、山内光博が冤罪のおそれを全く考慮せず、冤罪によって審査請求人が不当な不利益を被ってもかまわないことを前提にしているのであれば、それも山﨑広信、山内光博の人格的問題を強く疑わせる根拠となるだろう。なお、審査請求人は自らが支援措置の要件を満たすような加害行為をしていないと主張しているのだから、山﨑広信、山内光博が冤罪のおそれを考慮していないならば、それは敢えてそうしたという故意によるものであり、そのような故意は悪意に基づくものであると解するのが妥当だろう。つまり、山﨑広信、山内光博はこの世に生を受けた生きている時間を、冤罪に加担することに使っていることになる。
そもそも、支援措置制度は申出人が加害者の欄に記載さえすれば、その書かれた人物を加害者扱いする制度なのだろうか。この点について再度、令和2年9月24日名古屋地方裁判所判決を引用しよう。支援の必要性の要件は次の3点である。
(ア)申出者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第1条第2項に規定する被害者であること
(イ)申出者が、加害者からの更なる暴力により生命又は身体に危害を受けるおそれがあること
(ウ)加害者が、被害者の住所を探索する目的で、住民基本台帳の閲覧等を行うおそれがあること
この要件の中で加害者の認定について、「支援措置の申出人が加害者の欄に記載した者であること」とは含まれていない。支援措置の申出人が加害者と思ったかは主観の問題であるが、上記裁判例が示す支援措置の要件は、客観的な被害者、加害者の関係性を必要としているのである。
つまり、申出人が加害者欄に記入していれば、それだけを根拠に加害者が判明していることになるとしている山﨑広信、山内光博の判断は、事実上、冤罪を生み出すことを推奨しているものになっており、これがまともなものでないことは明らかである。
また、「判明」とは「明瞭によくわかること。はっきりわかること」(広辞苑第七版、2018年、岩波書店)という意味である。そして冤罪の可能性を考慮すれば、支援措置の申出者が一方的に加害者扱いしたからといって、加害者とされた者に支援措置の要件を満たす加害行為が明瞭に、はっきりと分かった状態だとはいえない。このような「判明」の日本語としての意味においても、山﨑広信、山内光博の判断がまともでないことが分かるだろう。むしろ、「判明」しているのは、山﨑広信、山内光博のまともさの欠如ということにならないだろうか。
ちなみに、Bardは以下のように回答している。
tips_3(Bard)
問:
加害者を判明させる場合、被害者を自称する者の主張のみを根拠として判断することはまともか。
回答:
いいえ、加害者を特定する場合、被害者を自称する者の主張のみを根拠として判断することは適切ではありません。被害者を自称する者の主張は、真実である可能性が高いですが、必ずしも真実であるとは限りません。加害者を特定するには、被害者を自称する者の主張に加えて、その他の証拠も考慮する必要があります。例えば、加害者と被害者の間のやり取りの記録、加害者の行動の証言、加害者の指紋やDNAなどの物証などです。これらの証拠を総合的に検討することで、加害者を特定することができます。
被害者を自称する者の主張のみを根拠として判断すると、加害者を誤って特定してしまう可能性があります。また、被害者を自称する者の主張が真実であっても、加害者を特定できない可能性があります。そのため、加害者を特定するには、被害者を自称する者の主張に加えて、その他の証拠も考慮することが重要です。
tips_4(Bard)
問:
被害者を自称する者の主張のみを根拠として加害者を判明させることはできるか。
回答:
被害者を自称する者の主張のみを根拠として加害者を判明させることは、一般的には困難です。なぜなら、被害者を自称する者の主張は、真実である可能性が高い一方で、虚偽である可能性もあるからです。加害者を判明させるためには、被害者を自称する者の主張以外にも、加害者の証拠や、被害者を自称する者の証言など、様々な証拠を収集する必要があります。
このようなBardの回答からも、山﨑広信、山内光博にまともな判断能力があるかには強い疑義が生じる。
(3) 支援措置が加害行為の有無そのものを精密に認定する制度ではないこと。
これについては山﨑広信、山内光博の知性や倫理観の程度がよく表れているように思える。山﨑広信、山内光博は支援措置が加害行為の有無そのものを精密に認定する制度ではないと認めている。このことは審査請求人も書面で以下のように述べている。
【この裁判例(注:令和2年9月24日名古屋地方裁判所判決のこと)では「前件訴訟」として当事者が同じである名古屋地方裁判所平成29年6月22日判決を引用し、「被告が平成27年5月18日に支援措置の申出をしたことに関し、客観的には支援の必要性はなかった」としている。
この裁判例で注目すべきは、客観的に支援の必要性の存在が認められなくても、市区町村は支援措置の決定をしていることである。つまり加害者が「判明」しているとはいえず、客観的に支援の必要性が認められない場合も支援措置が決定されているのは、支援措置制度が加害者の「判明」機能に重大な不備があるからであり、右裁判例はそれを事実認定したものだといえる。しかも右裁判例では、支援措置の申出に加え、その後の4回の延長と、5回にわたって客観的に支援の必要性が認められない支援措置決定がされているのだから、支援措置制度における加害者「判明」機能の不備は深刻であると言わざるをえない。このような支援措置制度によって加害者とされたとしても、それは客観的な支援の必要性を担保していることにはならず、それは本件審査請求においても同様である。あるいは、上記裁判例と本件審査請求では事情が異なるとする場合であっても、既に述べたように不交付には明らかな合理的根拠が必要であるという意味において、審査請求人が支援措置の必要性の要件の加害者に該当していたかの立証責任は熊本市にあり、熊本市がその立証責任を果たしていない以上、審査請求人が支援措置における加害者だと「判明」していたとは言えないのだから、本件不交付決定処分は違法である。】
さて、支援措置制度によって加害行為の有無そのものを精密に認定することができないということは、支援措置の要件を満たす加害行為をした加害者が誰であるかや、そもそもそのような行為をした加害者が存在するのか自体について、支援措置制度は精密に判明させることができる制度設計になっていないということである。なお、判明が「明瞭によくわかること。はっきりわかること」(広辞苑第七版、2018年、岩波書店)という意味であることは既に述べたとおりであるが、当然、冤罪の疑いがある場合は「加害者が判明している」とはいえない。
そうすると山﨑広信、山内光博は、支援措置制度が加害行為の有無そのものを精密に認定する制度ではないと気づいた時点で、支援措置制度で加害者とされたとしても、それは加害者を判明させることにはなっていないとの帰結に至らなければならなかった。また、仮に山﨑広信、山内光博がそのような当然の帰結に至ることさえできないほどの低能だったとしても、審査請求人が支援措置制度には加害者「判明」機能に深刻な不備があることを明瞭に指摘していたのだから、山﨑広信、山内光博がこの支援措置制度の不備について知らなかったとは認められない。つまり山﨑広信、山内光博は支援措置制度の不備について知りながら、敢えてその点についての審査請求人の指摘を無視しているのだから、ここにも山﨑広信、山内光博の人格的問題が示されているのではないだろうか。
つまるところ、支援措置制度は支援措置の要件を満たす加害者が判明している場合に適用できる制度であるが、支援措置制度は加害行為の有無そのものを精密に認定して加害者を判明させる制度になっていない。このことは支援措置制度制度自体に矛盾があるということなのだから、このような矛盾がある制度によって審査請求人が加害者とされていたとしても、そのことは審査請求人が支援措置の要件を満たす加害行為をしたことの根拠になっていない。よって、本件処分は合理的理由が認められないのだから違法である。
tips_5(ChatGPT)
問:
加害行為の有無そのものを精密に認定することができない制度において、その制度の手続きで加害者を判明させることはできるか。
回答:
加害行為そのものを精密に認定することができない制度では、加害者を判明させることは困難です。加害行為を明確に立証するためには、証拠や目撃者の証言などが必要ですが、それらがなければ加害者を特定することは難しいです。
一般的に、加害者を判明させるための手続きは証拠の収集や調査を含みます。証拠や証言がある場合には、それを基にして調査や審理が行われ、加害者を特定することができるかもしれません。しかし、加害行為そのものが明確になっていない場合や、証拠が不十分な場合には、加害者を判明させることは難しいでしょう。
(4) 本件処分は申出書の「加害者 (判明している場合)」の欄に記載された加害者が請者であることから、事務処理要 領第 5-10-コー(イ) (A) に従い、法第12条第6項に規定する「不当な目的」によることが明らかであるとして、不交付とする処分がなされたこと。
既にここまでに述べてきたように、加害者に関する申出人の一方的な自己申告は、加害者とされた者の加害行為を判明していることの根拠にならない。この点に関する審査請求人の主張を無視している山﨑広信、山内光博による意見書は、山﨑広信、山内光博の人格的問題を強く疑わせる根拠となっている。もし、「証拠はないけどお前に貸した1億円を今すぐ返せ」とか、「証拠はないけどあいつに殴られたから警察は逮捕しろ」とかが無条件に認められるとしたら、不正だらけの世界になることは容易に想像ができるだろう。つまり山﨑広信、山内光博の判断は、このような世界を推奨しているのと変わりないことになる。
また、支援措置の申出書には「5 支援措置は、厳格な審査の結果、不当な目的によるものでないこととされた請求まで拒否するものではありません。」との記載があり、審査請求人は自らの請求に不当な目的はなかったと主張している。そして支援措置の申出という過去の時点で、戸籍附票の交付請求という未来の行為に不当な目的があるかを正確に知ることは不可能である。つまり不当な目的の有無の確認という観点からも支援措置制度には不備があるということになる。それにもかかわらず、この点に関する審査請求人の主張を無視している山﨑広信、山内光博による意見書は、山﨑広信、山内光博の人格的問題を強く疑わせる。
なお、支援措置の申出書に「5 支援措置は、厳格な審査の結果、不当な目的によるものでないこととされた請求まで拒否するものではありません。」とあることは、支援措置で加害者とされたことだけを根拠に不交付にすることはできないことを示している。これに関する審査請求人の主張も山﨑広信、山内光博は無視しているのだが、山﨑広信、山内光博が合理的理由をもって排斥することができずに、無視することでしか恣意的な意見書を作成することができなかったとするならば、山﨑広信、山内光博が審査請求人の主張の多くを無視しているという事実が、かえって、審査請求人の主張の正当性、および本件処分の違法性を示す根拠になるともいえるだろう。
tips_6(ChatGPT)
問:
加害行為の有無そのものを精密に認定することができない制度で加害者とされた者は、加害者であることが判明した状態と言えるか。
回答:
加害行為の有無を精密に認定することができない制度において、加害者とされた者が実際に加害者であるかどうかを確定することは難しいでしょう。加害行為を判定するためには、十分な証拠や明確な証言が必要です。もし制度や手続きが加害者とされた者の権利や正当な弁明の機会を提供していない場合、その人が加害者であると判断することは妥当ではありません。
正確な判定を行うためには、適切な調査や証拠収集が必要です。加害者とされた者には、自身の主張を述べる機会や法的な手続きを経る権利が与えられるべきです。これにより、真実を明らかにすることや誤った指摘を排除することができます。
そのため、加害者とされた者が実際に加害者であるかどうかが確定する前に、その人が加害者であると判断することは適切ではありません。公正で透明なプロセスを経て、事実に基づいた判断が下されるべきです。
4 山﨑広信、山内光博が審査請求人の主張に対して合理的理由をもって排斥できずに単に無視をしている点について
何度も指摘しているように、山﨑広信、山内光博は審査請求人の主張の多くを無視している。ここでクズの言い訳を想定すると、検討はしたが記載していないだけだといったことも考えられるが、まともに検討しているのならその内容を記載していないことに正当な理由があるとは認められない。むしろ検討したことを前提にした場合であっても、その結果として審査請求人の主張の正当性を否定できなかったために、不当な恣意的判断をするために敢えて無視したと解するのが妥当だろう。
山﨑広信、山内光博は審査請求人の主張を意見書に記載し、それを採用するか不採用にするかの合理的理由を記載する自由があったはずである。それにもかかわらず、山﨑広信、山内光博が敢えて無視という態度を選択しているのだから、そこに山﨑広信、山内光博の人格的問題が表れていると解するのは当然だろう。そしてこのような無視がまともな態度でないことは、本書の冒頭でChatGPTの回答を引用したとおりである。
ここでは、山﨑広信、山内光博が敢えて無視した審査請求人の主張を整理することで、再度、山﨑広信、山内光博による意見書がいかにまともさに欠如しているものであるかを検討していく。
(1) 名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決(原審:名古屋地方裁判所令和2年9月24日判決) について
まず山﨑広信、山内光博の無視でもっとも悪質なのが、この裁判例の無視だろう。これについてChatGPTは以下のように回答している。
tips_7(ChatGPT)
問:
行政不服審査法に基づく審査請求において、審査請求人が引用した裁判例を審理員が無視することは適切か。
回答:
行政不服審査法に基づく審査請求において、審査請求人が引用した裁判例を審理員が無視することは適切ではありません。
審査請求は、行政機関の決定に対して異議を唱え、その決定の取り消しや変更を求める手続きです。この手続きにおいては、審査請求人が自身の主張を支持するために、法的根拠となる裁判例を引用することができます。
審査請求人が引用した裁判例は、その主張を支持する法的根拠として審査員によって考慮されるべきものです。審査員は、引用された裁判例の内容や法的意義を正確に理解し、審査請求人の主張に適用する必要があります。
したがって、審査請求人が引用した裁判例を無視することは、正当な理由がない限り適切ではありません。審査員は、引用された裁判例が審査請求人の主張に影響を与える可能性がある場合には、適切な評価を行う必要があります。
さすがChatGPTの回答はよくまとまっており、山﨑広信、山内光博による意見書のの異常性がよく示すものとなっている。
なお、裁判例にしろChatGPTやBardにしろ、それらが絶対に正しいとは限らない。しかし審査請求人が引用している以上、山﨑広信、山内光博がその裁判例を正しくないというのならその理由を具体的に説明しなければならなかった。
山﨑広信、山内光博が裁判例を無視したことは、事実上、山﨑広信、山内光博は裁判所の判断は言及する価値もないものだとの態度をとったということになる。このような態度は山﨑広信、山内光博が三権分立を理解しているのかという疑念を生じさせるが、それを措くとしても、類似した事例での裁判例の判断を本件で適用しないというのなら、その裁判例がどのように誤っているかや、なぜ本件で適用できないかを具体的に説明しなければならず、それをしていないことは不当な恣意的判断をするために都合が悪い裁判例だったので無視したとの疑念が強く生じる。それにもかかわらず、山﨑広信、山内光博は何の説明もなく単に無視するとの挙に出ている。そのような山﨑広信、山内光博の動機を検討すれば、やはり、山﨑広信、山内光博が不合理な恣意的判断をするのに審査請求人が引用した裁判例が都合が悪いため、故意に無視するという悪質な態度に出たと解するのが妥当だろう。
この山﨑広信、山内光博による裁判例の無視は、山﨑広信、山内光博の人格的問題を特によく表しているのではないだろうか。
(2) 支援の必要性の要件について
審査請求人は事務処理要領や、前記の裁判例にあった「支援の必要性の要件」について何度も言及している。これに関して審査請求人が書面全体で「要件」との文字を使った回数は67回にも及んでいた。念のためにその要件をもう一度確認しておこう。
事務処理要領での要件は以下のとおりである。なお、支援措置の申出人は申出書で「ア」にチェックを入れているため、本件での支援の必要性は以下のうちの「ア」の条件を満たしていたかが争点になる。
ア 配偶者暴力防止法第1条第2項に規定する被害者であり,かつ,暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがある方。
イ ストーカー規制法第7条に規定するストーカー行為等の被害者であり,かつ,更に反復してつきまとい等をされるおそれがある方。
ウ 児童虐待防止法第2条に規定する児童虐待を受けた児童である被害者であり,かつ,再び児童虐待を受けるおそれがあるもの又は監護等を受けることに支障が生じるおそれがある方。
エ その他アからウまでに掲げる方に準ずる方。
令和2年9月24日名古屋地方裁判所判決が示した支援措置の必要性の要件は以下のとおりである。
(ア)申出者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第1条第2項に規定する被害者であること
(イ)申出者が、加害者からの更なる暴力により生命又は身体に危害を受けるおそれがあること
(ウ)加害者が、被害者の住所を探索する目的で、住民基本台帳の閲覧等を行うおそれがあること
さて、審査請求人が事務処理要領や裁判例を根拠として繰り返し主張した支援の必要性の要件について、山﨑広信、山内光博はどのような判断をしているだろうか。その答えは山﨑広信、山内光博による意見書で「要件」との文字が使われた回数に示されている。その数、「0」。ゼロなのである。つまり、山﨑広信、山内光博による意見書は支援措置を適用できる要件については全く言及できていないのだから、これがまともでないことはいうまでもない。
このような山﨑広信、山内光博の態度は、本件が支援措置の必要性の要件を満たしておらずに不当に審査請求人の権利を侵害している可能性があっても、それを確認することなく放置する選択をしているということなのだから、冤罪があってもかまわないとの態度である山﨑広信、山内光博には、倫理観など人格上の重大な問題があるのではとの疑念を抱かざるをえないのは当然だろう。
tips_8(Bard)
問:
特定の事実が判明していることを条件として適用できる制度において、これをその特定の事実が判明しているかを1名のみの虚言である可能性を排除できていない主張を根拠として、適用することはまともか。
回答:
特定の事実が判明していることを条件として適用できる制度において、これをその特定の事実が判明しているかを1名のみの虚言である可能性を排除できていない主張を根拠として、適用することはまともではありません。
制度の適用には、特定の事実が判明していることが前提となります。しかし、1名のみの虚言である可能性を排除できていない主張を根拠とした場合、特定の事実が判明しているとは言い切れません。そのため、制度を適用することはできません。
例えば、A氏がB氏がC罪を犯したと主張したとします。しかし、A氏の主張を裏付ける証拠はなく、B氏はC罪を犯していないと主張しています。この場合、B氏がC罪を犯したかどうかは不明です。そのため、A氏の主張を根拠として制度を適用することはできません。
制度を適用するかどうかは、特定の事実が判明していることを前提に判断する必要があります。1名のみの虚言である可能性を排除できていない主張を根拠とした場合、特定の事実が判明しているとは言い切れません。そのため、制度を適用することはできません。
(3) 支援措置の加害者判明機能の不備、および、熊本市の立証責任について
既に述べたように、山﨑広信、山内光博でさえも支援措置が加害行為の有無そのものを精密に認定する制度ではないと認めている。また、令和2年9月24日名古屋地方裁判所判決が判示しているように、支援措置はその必要性の要件を満たしているものでなければ適用できない制度である。事実、この裁判例でも支援措置の必要性を満たしていないにもかかわらず支援措置の決定がされ、それが裁判所によって誤りであったと認定されているのだから、支援措置制度が加害者の判明機能に不備があるのは明らかである。つまり、支援措置制度は加害者判明機能に不備があるにも関わらず、加害者が判明している場合にしか適用できないという点で、支援措置制度は不合理であり、矛盾している。少なくとも、支援措置制度の適用は加害者の判明が担保されている、保護命令の決定が確定している場合等に限定すべきだろう。
そして、この点について山﨑広信、山内光博が意見書において何ら言及できていないという事実が、審査請求人の主張が正当であったこと、および、山﨑広信、山内光博が恣意的判断をするため合理的理由を持って排斥できなかった審査請求人の主張に対して無視に及んだことを強く疑わせる。
また、支援措置制度自体の合理性とは別に、本件事件において加害者の認定が適切に行われたのかという問題もある。そもそも支援措置制度では加害者とされた者に支援措置の必要性の要件を満たす加害行為があったかについて、適切な事実確認ができる制度になっていないのだが、それを措くとしても、加害者とされた者に支援措置の必要性の要件を満たす加害行為があったかの判断をした者が、人為的ミスで判断を誤った可能性もある。この可能性については審査請求人が立証する必要はなく、加害者とされた者に支援措置の必要性の要件を満たす加害行為があったことを立証しなければならなかったのは、不交付処分をした熊本市の側である。山﨑広信、山内光博は当然のように、この熊本市の立証責任についても無視しているため、この審査請求人の主張が山﨑広信、山内光博にとって都合が悪いものだったのだろうという点で、審査請求人の主張は合理的理由をもって排斥することができない妥当なものだったということになる。
tips_9(Brad)
問:
特定の要件を満たすことを条件に特定の人物に不利益を被らせる制度をある市町村が適用した場合、その要件を満たしていることの立証責任はどこにあるか。
回答:
特定の要件を満たすことを条件に特定の人物に不利益を被らせる制度をある市町村が適用した場合、その要件を満たしていることの立証責任は、市町村にあります。これは、市町村が不利益を被らせる側であり、そのための合理的な理由を説明する義務があるためです。
例えば、市町村が「ある特定の人物に課税する」という制度を適用する場合、市町村は、その人物が課税の対象となる要件を満たしていることを立証する必要があります。この要件には、例えば「その人物が市町村内に住んでいる」「その人物が一定以上の所得を得ている」などがあります。
市町村がこれらの要件を立証できなかった場合、その制度は適用されないことになります。
(4) 本件で第三者機関による支援措置の必要性の確認が欠如していることについて
支援措置の申出書には支援措置の必要性の要件を満たすことを示す添付書類があるかのチェック欄や、「相談機関等の意見」として、「上記申出者の状況に相違ないものと認める。」や「上記併せて支援を求める者について、申出者を保護するため支援の必要性があるものと認める。」といった項目にチェックを入れる欄がある。しかしながら本件処分ではこれらのいずれにもチェックが入れられていない。つまり、本件では支援の必要性を示す書類はなく、相談機関等による支援の必要性の確認もされていなかった。
では当初受付市町村が支援の必要性を独自に確認していたのかとの疑問が生じるのが当然であるが、当初受付市町村がそのような確認をしたことを裏付ける根拠は何もない。そもそも、当初受付市町村に適切な事実確認をする調査権限があるかや、仮にそのような調査権限があったとしても本件でその調査権限が適切に行使されたのかといった問題も生じる。端的に言えば、本件処分の根拠となった支援措置決定が適切なものだったかについて熊本市は何ら立証していないのだから、合理性に欠けた本件処分が違法であるのは当然である。
そしてこのことについても当然のように山﨑広信、山内光博は無視することで、不当な恣意的判断に都合が悪い審査請求人の主張を無視していたことを疑わせる態度をとっているのだから、このことも本件処分の違法性を示す傍証といえるだろう。
(5) 地方自治体による住民基本台帳事務の実情について
「戸籍」997号(2021年6月号)には「第73回総会合同研修会協議問題審議結果及び要望事項の回答」が掲載されており、その95頁には、京都府による以下の要望が記載されている。
【[31] DV等支援措置について、必要な法整備を行うことを要望する。
(理由)
住民基本台帳事務におけるDV等支援措置(以下、「支援措置」という。)については、本人の申出を基に相談機関の意見を踏まえて行っているところであり、加害者が住民票の写し等の交付を請求又は申出した場合、不当な目的によるとして請求を拒否し、又は住民基本台帳法第12条の3第1項各号の掲げる者に該当しないとして申出を拒否することが住民基本台帳事務処理要領(以下「要領」という。)に明記されている。
過去には痛ましい事件も発生し、私たち自治体職員も支援措置の必要性は十分理解しているところであり、国においてもこれまで様々な通知を発出していることは承知している。
一方、支援措置は住民票の写し等の交付請求又は申出を行う者の権利を一定制限するものであることから、その措置の実施の判断は、客観性を持った相談機関の意見を踏まえて行うべきものであると考えられるところ、ある相談機関との懇談において、「あくまでも相談機関ですので、被害の事実確認はしない。相談者の訴えを基に意見を付す。」との見解が示されるなど、意見の中にはその客観性に疑いのあるものが含まれることが明らかとなっている。また、事実確認を行うことなく意見を付したとして賠償命令の判決が行われたこともあり、「相談の事実はあるが、支援措置の必要性は自治体で判断せよ。」とする相談機関の意見が増加傾向にある。
住民担当課は、DV等の相談部署ではないことから専門知識や調査権限も持っておらず、支援措置の必要性の実質的要件の判定は相談機関の意見に拠るほかないところ、各自治体においては、このような意見であっても、虚偽の措置申出である確証がない限りは支援措置をせざるを得ないのが実情である。
加えて法令の根拠なく行う判断に基づく不利益処分は、説明責任を果たすことが困難である実情も承知していただき、申出者・相談機関・交付申出を行う者及び自治体のそれぞれ遵守すべきことを法律により明らかにすることについて、前向きな検討を御願いしたい。
したがって、主文のとおり要望する。】
この京都府の要望から、支援措置制度に関する以下の実情が読み取れる。
① 相談機関の意見は、被害の事実確認をしていない、相談者の訴えを基にしたものにすぎないこと。
② そのような相談機関の意見は、客観性に疑いのあるものが含まれること。
③ 市区町村の住民担当課は、DVについての専門知識や調査権限を持っていないこと。
④ 虚偽の措置申出である確証がない限りは支援措置をせざるを得ないのが実情であること。
⑤ 支援措置決定を根拠とした不交付処分は、説明責任を果たすことが困難な、法令の根拠がない判断に基づく不利益処分であること。
このような実務の現場からの声に鑑みれば、虚偽の可能性が否定できない、事実確認をしていない客観性に疑いのある自称にすぎない被害の訴えは、加害者とされた者の加害行為を裏付ける根拠になりえない。
さて、上記のことも審査請求人は主張し、証拠となる「戸籍」997号の該当部分も提出している。京都府は「虚偽の措置申出である確証がない限りは支援措置をせざるを得ない」としているが、支援措置制度は加害者が判明していることが適用条件なのだから、本来であれば、「支援措置の必要性の要件を満たす確証がある場合でなければ支援措置を適用できない」としなければならないのである。
京都府が上記のような支援措置の運用の実情を述べているのだから、まともな倫理観を持つ者であれば、本件でも同じような不当な判断になっていないか、審査請求人は不当な冤罪で権利利益を侵害されているのではないかと疑い、本件での支援措置決定が要件を満たす適切なものであったかを確認しようとするのではないだろうか。冤罪の可能性を検証できる立場にありながらこれを怠ることは、冤罪に加担していることと同義である。
では山﨑広信、山内光博がどうかといえば、やはり上記した京都府の指摘は無視である。なるほど、さすがに「虚偽の措置申出である確証がない限りは支援措置を決定してもかまわない」とすることはできなかったため、山﨑広信、山内光博が審査請求人を加害者扱いした意見書を作成するのには、京都府の指摘やこれに関連する審査請求人の主張は都合が悪かったということだろう。
tips_11(Brad)
問:
特定の要件を満たすことを条件に特定の人物に不利益を被らせる制度において、その要件を満たす申し出がされた場合、事実確認をせずにその申し出が無条件に真実であることを前提にして制度を適用することが適切か。
回答:
特定の要件を満たすことを条件に特定の人物に不利益を被らせる制度において、その要件を満たす申し出がされた場合、事実確認をせずにその申し出が無条件に真実であることを前提にして制度を適用することは適切ではありません。その申し出が真実であるかどうかを事実確認することは、制度の公平性と正当性を担保するために重要です。
例えば、ある人が特定の犯罪を犯したとして、その人を有罪とするためには、裁判でその人が有罪であると認定されることが必要です。裁判では、検察官が被告人が犯罪を犯した証拠を提出しますが、弁護側は、その証拠が信用できないと主張したり、被告人が犯罪を犯していないと主張したりすることができます。裁判官は、両方の主張を聞いて、被告人が有罪かどうかを判断します。
この場合、裁判官は、被告人が有罪であると認定するために、被告人が犯罪を犯した証拠を事実確認する必要があります。もし、裁判官が事実確認をせずに、被告人が有罪であると認定した場合、裁判は公正ではなく、正当性も担保されません。
特定の要件を満たすことを条件に特定の人物に不利益を被らせる制度においても、同様のことが言えます。その制度を適用するかどうかを判断するためには、その人が要件を満たしているかどうかを事実確認する必要があります。もし、事実確認をせずに、その人が要件を満たしていると認定した場合、制度は公平ではなく、正当性も担保されません。
したがって、特定の要件を満たすことを条件に特定の人物に不利益を被らせる制度において、その要件を満たす申し出がされた場合、事実確認をせずにその申し出が無条件に真実であることを前提にして制度を適用することは適切ではありません。
(6) 加害者を判明させる手続きを経ずに支援措置決定をしなければならない緊急性は無いことについて
そもそも支援措置制度は加害者が判明しているときに適用できる制度なのだから、加害者が判明していない時点で支援措置制度を適用することは、支援措置制度にも反した運用になる。
また、居住地を知られると更なる被害を受ける蓋然性が高い場合、まず転居し、それと同じタイミングで保護命令等を申し立て、それが認められたことを根拠として支援措置を申し出て、その後に住所変更をすれば良いだけである。この手続きであれば加害者とされた者も保護命令の手続きによって主張の機会が保障されるし、保護命令と支援措置制度は要件が重複しているのだから、保護命令が認められた場合は支援措置の必要性の要件を満たしていることも担保される。なにより、これも山﨑広信、山内光博の悪質な無視が表れている部分だが、冤罪の可能性や、支援措置制度が加害者が判明していなければ適用できない制度であることを考慮すれば、上記のような手続きを踏まなければ加害者が判明している状態とはいえない。
なお、容認された保護命令の平均審理期間は12.6日(平成13年10月~平成29年10月、最高裁判所の統計資料より)である。これは平均値ではあるものの2週間もかかっていないのだから、保護命令の決定まで住所変更を一時的に保留にしたとしても、重大な不利益が生じることは想定し難い。
そうすると、そもそも支援措置制度は加害者が判明しているときに適用できる制度であり、その加害者の判明には加害者の主張の機会が保障されている裁判手続きを経る必要があり、支援措置の有無に関わらず転居の自由はあり、転居をしても支援措置の決定まで住所変更の手続を保留にしておくことも可能なのだから、加害者を判明させる手続きを経ることなく支援措置決定をしなければならない合理性は認められない。
tips_12(Brad)
問:
「判明」とはどのような意味か。また、虚偽の可能性が排除されていない主張は、その内容が事実であることが判明していることの根拠になるか。
回答:
判明とは、事実がはっきりすることです。虚偽の可能性が排除されていない主張は、その内容が事実であることが判明していることの根拠にはなりません。
なぜなら、虚偽の可能性が排除されていない主張は、事実であるかもしれないし、そうでないかもしれないからです。事実であるかどうかは、さらに調査や検証が必要になります。
例えば、「地球は平らだ」という主張は、虚偽の可能性が排除されていません。なぜなら、地球が平らであるという証拠は存在しないからです。そのため、「地球は平らだ」という主張は、その内容が事実であることが判明していることの根拠にはなりません。
(7) 山﨑広信、山内光博の判断が行政不服審査法に違反していることについて
行政不服審査法に基づく審査請求は、「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」(同法第1条)。
さて、処分の根拠となる事実認定に誤認があった場合、それでも処分は正しいと言えるのだろうか。また、誤った事実認定を前提にした処分は、行政不服審査法に基づく審査請求での救済対象にならないのだろうか。
Bardは以下のように回答している。
tips_13(Brad)
問:
行政不服審査法に基づく審査請求において、誤った事実認定を前提にした処分は救済の対象にならないか。
回答:
いいえ、行政不服審査法に基づく審査請求において、誤った事実認定を前提にした処分は救済の対象となります。行政不服審査法は、行政庁の処分が違法又は不当である場合に、その処分の取消し又は変更を求める手続を定めた法律です。行政庁の処分において、誤った事実認定がなされている場合、その処分は違法又は不当である可能性があります。そのため、行政不服審査法に基づく審査請求においては、誤った事実認定を前提にした処分も救済の対象となります。
誤った事実認定を前提にした処分の場合、その処分が誤りであるのは当然である。そして問題は、これがよほど高度な知性を持っていなければ理解できないような難解なことなのかであるが、当然、そのようなことはない。子どもであっても、自分がやっていないことで謝れと言われれば反発するだろう。
そうするとやはり、山﨑広信、山内光博は低脳であるために冤罪の可能性を放置したというより、意図的に冤罪の可能性を放置したと解するのが妥当だろう。
tips_14(ChatGPT)
問:
行政不服審査法に基づく審査請求において、審査請求人から処分の根拠となった事実に対する誤認の主張がされていた場合、事実認定に誤りがあったかを検証しないことは行政不服審査法に違反しているか。
回答:
行政不服審査法に基づく審査請求において、審査請求人から処分の根拠となった事実に対する誤認の主張がされていた場合、行政不服審査法は事実認定の検証を行うことを求めています。行政不服審査法は、行政処分に対する審査請求の手続きを定め、行政機関の処分が適法かつ適正であるかを確認するための制度です。
行政不服審査法では、審査請求人が処分の根拠となった事実に誤認があると主張した場合、審査機関はその主張を検証する義務があります。審査機関は事実関係を正確に把握し、誤認がある場合はそれを正す必要があります。
したがって、行政不服審査法において、審査請求人からの事実誤認の主張を検証せずに処分を維持することは、行政不服審査法に違反する可能性があります。審査機関は、適切な手続きと公正な判断を通じて、事実関係を明確にし、誤認があった場合には適切な是正措置を取るべきです。
5 大阪市令和4年度答申第7号について
大阪市で本件と類似した申し立てがされており、それに対して大阪市行政不服審査会総務第2部会は令和4年12月15日付けの答申で、申し立てを容認し不交付決定は取り消されるべきであるとしている。その答申の一部を以下に引用する。
【支援措置制度は、支援措置申出者の申出により「加害者」とされた者への意見を聴取することなく支援措置申出の可否が判断される制度であり、加害者と扱われる者に一定の不利益を与えるものである。
そうであるとすれば、処分庁は、支援措置申出者について 、配偶者からの暴力が、配偶者暴力防止法第1条第1項に規定する配偶者からの暴力(身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動)に該当するか、配偶者暴力防止法第1条第2項に規定する被害者(同条第1項にいう配偶者からの暴力を受けた者)に該当するかという点について、意見付与機関に対し聴取し、支援の必要性の判断をすべきであると言える。
そして、DV等について一定の知見を有する第三者の意見を踏まえるとしても、実際に請求があった際の戸籍の附票の写しの交付等の判断は処分庁の権限かつ責任でなされるものであることを考慮すると、処分庁が行うべき確認は、意見付与機関に対し、付された意見が間違いでないかのみを確認するような形式的な確認では足りず、意見付与機関が意見付与にあたり、支援措置申出者から聴取したDV等に関する事実関係を確認するなど、処分庁が意見付与機関に対して判断するに足りる根拠の提示を求め、これを確認することが必要であると考えられる。
この点、国家賠償請求事件の裁判例においても、支援措置の適法性については、①被害者要件と②危険性要件に分けて要件充足性の判断を行っていることが認められる(名古屋高裁平成30年(ネ)第453号同31年1月31日判決・判時2413・2414号41頁、その下級審判決である名古屋地裁平成28年(ワ)第3409号同30年4月25日判決・判時2413・2414号55頁参照)。
よって、少なくとも処分庁が上記意見付与機関に確認するに際しては、①被害者要件に該当する事実、②危険性要件に該当する事実を確認する必要がある。
そして、仮に警察等の意見付与機関が①被害者要件、②危険性要件を判断するに足りる十分な事実関係を把握していないことが判明した場合には、処分庁は、意見付与機関に対し、処分庁が判断するのに足りるだけの根拠を提示するよう求めるべきである(なお、意見付与機関に対する付言について、下記第9、2参照)。
そこで、本件において、支援措置決定者である処分庁が、意見付与機関に対してどのような確認を行ったかについて、審査会の職権により、処分庁陳述において調査したところ、「『相談機関等の意見』欄については、1および2に該当する旨、相談機関であるC´´に口頭で確認し、支援の必要性を判断した。」とのことであった。
しかし、このような当該意見が間違いでないかのみを確認するような形式的な確認では、処分庁は、支援措置申出者が過去どのようなDV等の被害を受け、また、申出時点においてどのような危険性があるのかについて、判断を行うに足りる十分な情報を把握できたとは考えられない。
よって、支援措置実施の可否に係る処分庁の行政調査は、不十分なものであったと言える。
(3)小括
そうであれば、処分庁の元配偶者及び子に対して支援措置を行うべきとの意思決定は、要件判断をするに足りるだけの十分な情報に基づき行われたとは言えず、法の趣旨に反する違法なものである。
そして、そのような不十分な情報をもとに行われた支援措置実施決定を理由として行われた本件処分は、法第20条第5項が準用する第12条第6項の「不当な目的によることが明らか」との要件を満たさず、取消事由たる瑕疵ある処分と言える。】
ここで重要なのは、当初受付市町村による支援措置の決定に誤りがあった場合に、行政不服審査法に基づく審査請求によって、その誤りによって侵害された権利の救済が可能となっているかである。この点に関する審査請求人の主張についても、もはや当然のように山﨑広信、山内光博は無視しているが、支援措置制度が行政不服審査法に基づく審査請求での権利救済を妨げるものであるならば、それも支援措置制度の不備を示すことになる。そして山﨑広信、山内光博による意見書は、事実上、当初受付市町村の支援措置決定を無条件に絶対的なものとして扱い、その決定に誤りがなかったかを行政不服審査法に基づく審査請求で検証しないという、職務上の怠慢を犯している。このことからも、山﨑広信、山内光博がいかに人権意識に欠如しているかが分かるだろう。つまり、山﨑広信、山内光博と大阪市行政不服審査会総務第2部会との結論の違いは、それぞれの人権意識の違いが表れたものではないだろうか。
そうすると、山﨑広信、山内光博による意見書よりも、大阪市行政不服審査会総務第2部会の答申のほうが、人権救済という行政不服審査法の趣旨に則っていることになるのだから、類似の事案である本件においても、処分の根拠となる審査請求人の具体的行為を熊本市が確認せずに決定された本件処分が違法であるのは明らかである。
なお、大阪市行政不服審査会総務第2部会は以下のようにも述べている。
【審査会において、審査庁を通じて、職権で、本件の意見付与機関であるCが意見付与の前提とした聴取記録を入手し、それを確認したところ、上記第7,2、(2)で述べたような支援措置の適否を判断するに足りるだけの情報は認められないものであった(少なくとも、②危険性要件を判断するに足りるだけの事情は記載されていなかった。)。】
支援措置制度は加害者が判明しているときに適用できる制度なのだから、真に加害者が判明していたのなら、その根拠も明確に判明しているはずである。しかし上記大阪の例ではそうなっていない。なぜか。支援措置制度の加害者判明機能に不備があり、支援措置の必要の要件を満たしていなくても支援措置決定がされている違法な実務がまかり通っているからである。このような実務の状況に対して、大阪市行政不服審査会総務第2部会は以下のように提言している。
【意見付与機関は、支援の必要性について独立した立場で判断することになるが、支援措置は、①被害者要件と②危険性要件に分けて検討を行い、両要件を充足する場合に適法となると考えられる(また、処分庁はその観点から意見付与機関に事実等の確認を行うことになる。)。
そうすると、意見付与機関としても、要件ごとに分けて、どういった事実から①被害者要件を満たす/満たさないのか、どういった事情から②危険性要件を満たす/満たさないのかを検討し、それぞれについて、支援措置申出者から聴取したどういった事実/事情から、要件充足を判断したのかがわかる文書を作成・保存することが望まれる。】
このような提言は目から鱗でそれまで誰も思いつくことができなかった画期的な発想なのだろうか。当然違う。冤罪を生み出さない慎重な行政事務にしていこうと思えば、当然に思いつく程度のことでしかない。だからこそ、支援措置制度の加害者判明機能には重大な欠陥があるのである。
ちなみに、仮に意見付与機関が聴取した内容が支援措置の必要性の要件を満たしていても、それが虚言である可能性を明確に否定する根拠がなければ、加害者が判明している状態にはならない。つまり①被害者要件と②危険性要件は、聴取内容のみならず、その聴取内容が虚言でないかの事実確認もした上で判断しなければならないが、そのような必要な手続きを怠っていても支援措置決定がされる実務がまかり通っているという点で、支援措置制度には重大な欠陥があるのである。
tips_15(Bard)
問:
過去の裁判例や専門家である第三者の答申で誤った事実認定をしていたことが事実認定されたことがある制度において、その制度で加害者と事実認定されたことは加害者であることが判明している根拠になるか。
回答:
過去の裁判例や専門家である第三者の答申で誤った事実認定をしていたことが事実認定されたことがある制度において、その制度で加害者と事実認定されたことは加害者であることが判明している根拠にはなりません。その制度が誤った事実認定をしていたことは、その制度が必ずしも正しく事実認定を行っているわけではないことを示しています。そのため、その制度で加害者と事実認定されたとしても、加害者であるとは限りません。
6 支援措置の必要性の要件を満たしていない支援措置決定の弊害
思考実験として、山﨑広信、山内光博に悪意がなかった場合を想定してみる。まあ山﨑広信、山内光博が審理員という立場にいた以上、山﨑広信、山内光博が審査請求人の主張を読み取ることができないほどの低能だった可能性は低いだろうし、まともな判断力や倫理観があれば、審査請求人の主張を無視しまくって冤罪の可能性を放置することは考え難い。それでも敢えて思考実験をしてみると、「DV被害者を守るためなら、審理の正当性や公平性を無視して、審査請求人の主張を無視しまくった意見書を作成することが正義だ」とでも思っていた可能性もあるかもしれない。
ただしこれならこれで、そもそも山﨑広信、山内光博は審査請求人を加害者扱いするのが適切なのかを検証するため、審査請求人に支援措置の必要性の要件を満たす具体的行為があったのかを確認しようとすることができる立場にあった。山﨑広信、山内光博がそれをせず、根拠なく審査請求人を加害者扱いしたばかりか、審査請求人が加害者として判明しているとまで断言しているのだから、その悪質性を否定することは困難だろう。山﨑広信、山内光博の態度からは「こいつが犯人に違いないのだから証拠が不十分でも有罪にすべきだ」といったことを連想させるが、このような偏見が数多くの冤罪事件でも原因になっているのではないだろうか。結局のところ、このような考えは証拠主義や法治国家の否定でもあるし、正義の味方どころか冤罪加害者の発想といえるだろう。つまり本件でも、審査請求人が支援措置の必要性の要件を満たす加害者である根拠がなければ、審査請求人を加害者扱いできないのである。
また、「共同養育支援法 全国連絡会」のウェブサイトには以下の記載があった。
(https://oyako-law.org/index.php?%E3%81%88%E3%82%93%E7%BD%AADV)
【保護命令を発令させるには、裁判所にDVの被害状況を証明しなければなりません。しかし、一時保護や住民票のブロックだけであれば、自己申告がそのまま通り、警察の捜査や特別な審査は何もありません。行政機関で申請書を提出しさえすれば、無条件で一時保護、住民票の開示拒否、国民健康保険の特別加入、子供の特別転校等の支援措置を受けることができます。
虚偽DV被害申告の増加と子供の連れ去り
虚偽DVの目的としては、「虚偽のDV被害を訴えて裁判所から保護命令を受け取る」というパターンの他に、「転居先を知られない為に、住民票の開示拒否等の無審査で適用できるDV支援措置だけを利用する」というパターンがあります。その中には、婚姻費用や養育費のみを受ける為に支援措置を悪用し、実際には、不倫相手と駆け落ちしていたり、連れ去った子供に虐待やネグレクトの実態が疑われるケースまであります。
無審査で通るDV支援措置
DVの特別支援措置は、配偶者からの暴力が発生している場合、被害者の緊急保護を実施する制度です。家庭内の問題であるので、警察の捜査は行われません。基本的には、被害者は、自己申告で被害状況を説明した書類を提出するだけで、支援措置を受けることができます。
無審査で適用される制度ですから、婚姻費用、慰謝料、養育費を増額させたり、子供を連れ去る為に、この制度を悪用する事案が一定数発生しても仕方がないかもしれません。また、行政機関の窓口の担当者や家事案件の相談を受けた弁護士も、この制度を積極的に紹介し、適用を奨励している実態もあります。最初からこの制度を悪用する気がなくても、周囲からの入れ知恵で、結果的にこの制度を悪用してしまっているケースもあるかと思われます。】
思考実験としては、偏ったものであれ山﨑広信、山内光博が何らかの正義に基づいて審査請求人の主張を無視しまくったという可能性も仮定できる。しかしそれは虚偽DVを容認し、子どもたちが犠牲になりかねないものであり、そこに一片の正義も認めることはできない。
つまり、思考実験として山﨑広信、山内光博に悪意がなかった場合を仮定しても、やはり山﨑広信、山内光博が審査請求人の主張を無視しまくったことはまともでないのである。
tips_16(Bard)
問:
一方の親が虚偽DVを主張することで支援措置制度を利用し、子と他方の親や、子とその兄弟との交流を断絶させることはまともか。
回答:
一方の親が虚偽DVを主張することで支援措置制度を利用し、子と他方の親や、子とその兄弟との交流を断絶させることは、まともではありません。これは、子どもの権利を侵害する行為です。子どもには、両親との交流をする権利があり、一方の親が虚偽のDVを主張することで、この権利を奪うことは許されません。また、子どもは、兄弟と交流する権利もあります。一方の親が虚偽のDVを主張することで、子どもと兄弟との交流を断絶させることも許されません。
DV被害者を支援するための制度を利用し、子どもの権利を侵害することは、許されるべきではありません。DV被害者を支援するための制度は、あくまでもDV被害者を守るためのものであり、子どもの権利を侵害するために利用されるべきではありません。
7 熊本市の不交付の理由が支援措置だけであること
念を押しておくと、今回の熊本市の不交付決定で重要なことは、その不交付決定の根拠が支援措置だけということである。つまり、支援措置が決定されていなければ審査請求人は交付を受けることができていたということになる。この単純な理由から、審査請求人が支援措置の必要性の要件を満たす加害者であったかが最大にして唯一の争点なのであり、だからこそ、この要件に関する事実確認を怠った山﨑広信、山内光博の悪質性が顕著に際立つのである。
このことからも、山﨑広信、山内光博による意見書がいかに重要な争点から逃げたことを誤魔化そうとしたものでしかないことが分かるだろう。
8 まともな審理員に必要なこと
審理員による意見書が行政不服審査法で定められている手続きで、その内容が最終的な決裁に影響を与える可能性が否定できない以上、その意見書はまともなものであることが求められる。そのためには少なくとも以下のことが必要だろう。
(1) まともな審理員の任命
まともな意見書のためには、まず審理員がまともでなければならない。冤罪の可能性があり、それを与えられた職権で検証することができる立場であっても、冤罪を放置するような者はまともとはいえないし、そもそも人間性自体に問題がある可能性が高い。
そのため、審理員にはまともな者の任命が必要不可欠である。
(2) 行政不服審査法の趣旨の理解
既に述べたように、行政不服審査法に基づく審査請求は、「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」(同法第1条)。
さすがに冤罪で不利益を被らせても「違法又は不当な処分」に該当しないという者はいないだろう。つまり行政不服審査法の趣旨をきちんと理解していれば、当然、冤罪の可能性を放置するような判断をすることはありえない。
そのため、まともな審理には行政不服審査法の趣旨を理解できている者が審理員に任命されることが必要不可欠である。
(3) 審理員による取捨選択の有無の検討
審査請求人の主張を無視した判断がまともでないことは、ChatGPTの回答で示したとおりである。審理員が意見書で言及している内容の検証も必要だが、それ以上に無視されて言及されていないもののほうに注意が必要である。なぜなら無視の場合、「審理員が恣意的判断をするため、説得力をもって潰すことができなかった主張や証拠を無視することで恣意的判断を強行した」との疑義が強く生じるからである。
そのため、審理員は審査請求人の主張を無視せず審理できるという、少なくともこの程度の最低限の常識や倫理観を持つ者であることが必要不可欠である。
(4) 理由の有無の検討
審理員が審査請求人の主張立証に言及していたとしても、ただ主張を紹介しただけで、その後は無視し、その主張立証を採用しなかった理由が何ら述べられていないこともあるかもしれない。当然、審理員がそのような態度をしてくれば姑息な誤魔化しであり、そこに検証可能性や合理性は皆無である。
そのため、審理員の判断には理由が示されていること必要不可欠である。
(5) 理由の合理性の検討
審査請求人の主張立証が無視されていないかや、言及されていても採用不採用の理由は示されていないかをクリアしたとしても、次は判断の合理性が検討されなければならない。それが屁理屈なものだったり、論理に飛躍があったりする場合は、当然、そのような意見書は理由と結果が矛盾したものとして、審理員の低能ぶりを自己紹介したものにはなっても、まともな意見書だとは到底言い難い。
そのため、審理員の判断の根拠となる理由が合理的なものであることが必要不可欠である。
(6) 対比表
山﨑広信、山内光博による意見書は文章がつらつらと書かれており、どれほど審査請求人の主張立証を無視していても、審査請求人が提出した書面と比較しなければそのことに気づけない。そのような無視の隠蔽を防ぐには、「審査請求の主張立証」を一つ一つ分けて書き、それとするに比較できるように「その主張立証に対する審理員の判断」と「その判断理由」を記載すれば、審理員の誤魔化しを軽減できることができる。仮に審理員が故意に無視や誤魔化しをしようと思っていなくても、対比表で記載することで記載漏れの防止にもなるのだから、不当な恣意的判断をしたい審理員以外にとっては、反対する理由はないはずである。
9 結語
tips_17(Bard)
問:
行政不服審査法に基づく審査請求において、審理員が審査請求人の主張を無視している場合、審理員が恣意的で不正な意見書を作成するために審査請求人の主張を無視した可能性は高いか。
回答:
行政不服審査法に基づく審査請求において、審理員が審査請求人の主張を無視している場合、審理員が恣意的で不正な意見書を作成するために審査請求人の主張を無視した可能性は高いと思います。
行政不服審査法は、行政庁の違法又は不当な処分に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めています。審理員は、この制度に基づいて、審査請求人の主張を十分に検討し、審査請求人の権利利益を救済するために意見書を作成する必要があります。
しかし、審理員が審査請求人の主張を無視している場合、審理員は審査請求人の権利利益を救済する意思がない可能性があります。また、審理員が審査請求人の主張を無視している場合、審理員は恣意的で不正な意見書を作成するために審査請求人の主張を無視した可能性があります。
tips_18(Bard)
問:
冤罪の可能性を放置する者はどのような人格特性であることが考えられるか。
回答:
冤罪の可能性を放置する人は、次の人格特性を持っている可能性があります。
●自分の主張を曲げたくない
●権力や権威に従順
●他人の痛みに無関心
●リスクを恐れる
●他人を信用できない
●自分の過ちを認めたくない
冤罪は、無実の人を罪に陥れる深刻な問題です。冤罪の可能性を放置することは、無実の人の人権を侵害し、社会に大きな損害を与える可能性があります。冤罪の可能性を放置する人は、自分の人格特性を振り返り、自分の行動を改める必要があります。
このように、山﨑広信、山内光博による意見書は、恣意的で不正な意見書である可能性が高いものとなっており、審査請求人が何度も主張した審査請求人が支援措置の必要性の要件を満たしていないことを執拗に無視した山﨑広信、山内光博は、どちらとも人格特性に問題があることが強く疑われる。
ここで本件処分に関してもう一度繰り返しておくと、熊本市の本件処分は支援措置決定のみを根拠としているのだから、審査請求人が支援措置の必要性の要件を満たした加害者だと判明している根拠を熊本市が立証しない以上、本件処分は根拠や合理性がないものとして違法である。
また、山﨑広信、山内光博が本件処分を違法でないというのなら、その根拠となる審査請求人の具体的な加害行為の内容と、それが事実であると確認した方法を熊本市や、熊本市を介して当初受付市町村に確認すれば良かった。審査請求人自身もそれをするように求めていた。それにもかかわらず、山﨑広信、山内光博はこの確認を怠っているのだから、その動機を推測すれば山﨑広信、山内光博は熊本市が審査請求人の加害行為を適切に確認せずに本件処分を決定した可能性が高いことを認識しながら、敢えて審査請求人を加害者扱いした意見書を作成したことが強く疑われる。冤罪は忌避すべきもののはずなのだが、山﨑広信、山内光博は審査請求人の主張を無視することで敢えて冤罪の可能性を検証することを怠っているのだから、その動機からは、山﨑広信、山内光博が冤罪等で人が苦しんだり、冤罪を放置することで世に害悪を増大させることで愉悦を感じるような人格特性であることも疑われる。
このような人格特性はどのように培われるのか。「三つ子の魂百までも」という格言からすれば、山﨑広信、山内光博の冤罪の可能性の放置というまともさの欠如は、その親もまともさが欠如していたために山﨑広信、山内光博がその影響を受けた可能性も考えられるし、山﨑広信、山内光博がその人格特性を自らの子や職業上の関係者にも影響を与えていることも考えられる。それはまともさ欠如の世代間連鎖と言えるだろう。
今回の山﨑広信、山内光博による意見書は、不正な意図で歪んだ結果を導き、それを誤魔化すための手口にどのようなものがあるのかが表れているのかもしれない。ただしその手口としては、単に都合が悪い主張を無視して言及しないというものなので、たいして知能犯と言えるレベルになってさえいないが、とりあえず形になっているのだから、その手口に気づかない人ならば、それなりの意見書に見えることも考えられる。だからこそ、その手口を公開することで山﨑広信、山内光博から悪質性を読み取れる人が多いようならば、そのような悪質な手口に対する抑止力になるだろう。また、山﨑広信、山内光博が本件の審査請求以外でも同様の手口を繰り返している可能性もあるのだから、山﨑広信、山内光博が関わっている全てについて、結果が不当に歪められていないかを検証すべきではないだろうか。
本書が行政の腐敗に対してわずかでも抑止力になることを願う。
付録1 山﨑広信、山内光博による意見書
付録2 審査請求人の提出書面
審査請求書
令和3年5月14日
熊本市長 宛
審査請求人 (審査請求人)
〒■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
電 話 ■■■■■■■■■■■■■■■■■
次のとおり審査請求をする。
第1 審査請求に係る処分の内容
熊本市が令和3年4月16日にした,住民基本台帳事務に関する処分(東区民発第37-2号)(以下,「本件処分」とする。)(資料1)。
第2 審査請求に係る処分があったことを知った年月日
令和3年4月20日頃。
第3 審査請求の趣旨
「第1記載の処分を取り消す。」との裁決を求める。
第4 処分庁の教示の有無及びその内容
次頁の資料1のとおり。
(資料1)
第5 本件審査請求の理由
本件処分には以下の違法性がある。
1 審査請求人に不当な目的がなかったことについて
住民基本台帳法20条1項は,「戸籍の附票に記録されている者又はその配偶者,直系尊属若しくは直系卑属は,これらの者が記録されている戸籍の附票を備える区市町村の区市町村長に対し,これらの者に係る戸籍の附票の写しの交付を請求することができる。」と規定している。ただし,戸籍の附票の写しの交付請求が「不当な目的によることが明らか」な場合は,これを拒むことができる(住民基本台帳法第12条6項)。
しかしながら,審査請求人に不当な目的はなかったのだから,熊本市が本件請求を拒否したことに正当な理由は認められない。
そのため,正当な理由なく本件請求を拒否した本件処分は取り消されなければならない。
2 支援措置は本件処分の根拠にならないことについて
(1) 申請者に支援措置の加害者に該当する行為がなかったことについて
総務省によるDV等支援措置に関連する一連の通知(以下,「総務省通知」とする。)において,以下のいずれかに該当する者を支援措置の支援対象としている。
ア 配偶者暴力防止法第1条第2項に規定する被害者であり,かつ,暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがある方。
イ ストーカー規制法第7条に規定するストーカー行為等の被害者であり,かつ,更に反復してつきまとい等をされるおそれがある方。
ウ 児童虐待防止法第2条に規定する児童虐待を受けた児童である被害者であり,かつ,再び児童虐待を受けるおそれがあるもの又は監護等を受けることに支障が生じるおそれがある方。
エ その他アからウまでに掲げる方に準ずる方。
しかしながら,審査請求人は上記3法の加害者に該当する行為を行っていない。審査請求人が裁判所によって上記3法のいずれかの加害者であると認定された事実もなく,審査請求人が上記3法における加害者であることを争っている事件が裁判所に係属中であるわけでもない。
また,支援措置では上記3法以外にも,上記3法の被害者に準ずるケースも支援の対象に含まれるが,上記3法の被害者が裁判所によって当事者双方に主張立証の手続保障をした上で判断されるものである以上,上記3法の被害者に準じたケースも,上記3法以外の法において裁判所によって被害者と認定された場合であると解するのが妥当である。そして,上記3法以外の法であっても審査請求人が加害者であると裁判所によって認定された事情もない。その意味で,審査請求人が支援措置における加害者であることを根拠とした本件処分に合理性があったとは認められない。
(2) 支援措置が法律上の委任がされていない制度であることについて
そもそも,支援措置制度自体が法律の根拠がない制度であり,更には法律上の委任もされていない制度である。その点で「支援措置で加害者とされていること」は,何ら本件不交付決定処分を正当化するものではない。そのため,支援措置を根拠として本件処分を行ったこと自体が違法なのだから,熊本市の本件処分は漫然と行われた違法な行為であった。
(3) 区市町村に配偶者暴力防止法等の被害者や加害者を認定する司法権や裁量権が存在しないことについて
審査請求人は,配偶者暴力防止法,ストーカー規制法,児童虐待防止法のいずれにおいても裁判所によって加害者であると認定された事実はない。そのため,本件事件において審査請求人が上記3法の加害者と判明していた事実はない。
また,区市町村が,上記3法やこれらに準じるケースの被害者や加害者を認定する司法権を有するとはいえない。そもそも,審査請求人に主張の機会を与えることなく,それどころか,このような被害者や加害者の認定が行われたことさえも審査請求人に知らせることなく,一方的に被害者や加害者を認定し,審査請求人の戸籍の附票全部の写しの交付を受ける権利を制限したことは,手続き保障の観点からも違法である。
更に,仮に警察の捜査等を元に検察が有罪性があると判断して起訴したとしても,必ずしも裁判所が検察と同じ判断をするとは限らない。その意味においても,仮に区市町村が相談機関や警察等からの情報提供を受けて支援措置の必要性を判断していたとしても,それが裁判所と同じ判断になるとは限らない以上,警察等からの情報提供は,上記3法やそれに準じるケースの加害者であることの根拠にはならない。
3 支援措置における加害者について
(1) 国の支援措置における加害者に関する通知について
国(総務省)は,総務省通知の1つである平成25年10月18日付けの「DV等被害者支援措置における「加害者」の考え方について」と題した通知の中で,以下のように記載している。
【申出書の「加害者」欄は,申出者が記載することとしており,その記載に当たっては,疎明資料等を求めることとしていません。したがって,保護命令決定を受けるなど,被害者と「加害者」の立場が明確である場合もありますが,申出者と「加害者欄に記載された者」の間の訴訟が係争中であり確定していない事例なども含まれています。これは,措置の必要性を判断するために事実関係の確定等を待つこととした場合,その間に申出者の住所が探索されてしまう懸念もあることから,支援措置は,申出内容について,相談機関の意見なども聞きながら,必要性を判断するスキームとしているものです。一般的には,「他人に危害や損害を加える人」という意味で,「被害者」の対義語として「加害者」という言葉が使われることがありますが,支援措置においては,上記のとおりこれと全て一致するものではありませんので,窓口における「加害者欄に記載された者」等へ対応する場合や事務処理要領第6-10-サに基づき,庁内で必要な情報共有等を行う場合などはご留意ください。】
上記通知は,保護命令決定等がある場合だけでなく,保護命令決定等で当事者間で訴訟が係争中であり確定していない事例についても,相談機関の意見なども聞きながら区市町村が支援措置の必要性を判断するように通知している。なるほど,たしかに被害者や加害者が裁判所によって確定していない場合でも被害者保護の観点は重要だろう。しかしながら,仮に転居して住所を知られたくない正当な理由がある場合,先に保護命令等を申し立てて被害者と加害者を確定させ,それに基づいて支援措置を申し出て,その確定後に住所変更をすれば良いだけである。そのため,当事者間で保護命令決定等の係争中の事件があったとしても,未だ被害者と加害者が裁判所によって確定していないにもかかわらず,支援措置の申出者によって一方的に加害者とされた者を支援措置における加害者とする不利益処分を決定することに合理性はない。更に,支援措置の申出者によって一方的に加害者とされた者に何ら主張の機会を与えることなく,支援措置における加害者とする不利益処分を決定することは,行政手続法13条「行政庁は,不利益処分をしようとする場合には,次の各号の区分に従い,この章の定めるところにより,当該不利益処分の名あて人となるべき者について,当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。」に反する手続き上の不備があるため,そのような処分は違法で無効である。
なお,容認された保護命令の平均審理期間は12.6日(平成13年10月~平成29年10月,最高裁判所の統計資料より)である。これは平均値ではあるものの2週間もかかっていないのだから,仮に保護命令が必要なケースであれば,緊急避難的に転居をしたとしても先に裁判所に保護命令を申し立てて被害者と加害者を確定させ,それに基づいて支援措置を申し出て,その確定後に住所変更の届け出をすることは十分に可能である。
あるいは,保護命令決定等で当事者間で係争中の事件がある場合,事件の確定によって加害者とされる可能性がある者からの住民票等の写しの交付請求に対する認否を,一時的に保留にするという方法もあるだろう。ただしその場合はあくまで一時的なものとして,裁判の結果として保護命令等が認められなかった場合,支援措置で加害者と申し出された者による住民票の写し等の交付請求が「不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)とする根拠は消失したのだから,住民票の写し等の交付請求をただちに認め,支援措置の申し出も速やかに却下しなければならない。更に,そもそもそのような係争中の事件がない場合は,尚更,区市町村が支援措置において,被害者,加害者の関係性を前提にした支援措置を決定することに合理性は認められない。
そうすると,上記のどちらの方法によっても被害者保護は可能なのだから,裁判所によって配偶者暴力防止法,ストーカー規制法,児童虐待防止法の加害者か,上記3法に準ずる加害者であることが確定していない者による住民票の写し等の交付請求を,係争中の事件がある場合に限りその確定まで一時的に保留とするのならともかく,「不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)として拒否することに合理性は認められない。
(2) 詭弁の一種であるECFについて
上記通知には,ECF(Extreme Case Formulation:極端な事例による構成)と言われる詭弁が見られる。ECFとは,極端な事例を一般化・普遍化する論点ずらしにより,その事例とは関係がないものにまで拡大解釈させて巻き込む手口である。
確かに,保護命令決定等が確定している場合は当然として,保護命令決定等の申し立てが係争中で未確定の場合でも被害者保護の観点は重要だろう。しかし,認められるべき保護命令決定等が係争中で未確定の場合と,保護命令等を申し立てても認められる事情がない場合,あるいは,そもそも保護命令等の申し立てがされていない場合は,事情が大きく異なるのだから区別しなければならない。保護命令等を申し立てても認められる事情がなかったり,保護命令等の申し立てがされていなかったりする場合の住民票等の写しの交付請求は,住民基本台帳法第12条6項における「請求が不当な目的によることが明らかなとき」に該当しないのは明らかである。
また,支援措置が法律上の委任を受けていないことをひとまず措くとしても,支援措置は,配偶者暴力防止法,ストーカー規制法,児童虐待防止法の被害者や,これら3法に準ずる被害者を対象としているのだから,これらの被害者を判明させることになる申し立てが裁判所にされていなかったり,そのような申し立てをしても認められる事情がなかったりする者までも加害者として取り扱うことは,加害者として申し出された者の権利を根拠なく不当に制限することになる。そして,本件処分がまさにこれに該当するのだから,本件処分の取り消しは免れない。
(3) ECFの有無によっても結論は変わらないことについて
上記通知にECF(Extreme Case Formulation:極端な事例による構成)との詭弁がないことを前提にしても,その場合,上記通知で加害者として扱うように通知しているのは,あくまで保護命令決定等が確定している場合か,保護命令決定等で当事者間で係争中の訴訟がある場合である。そのため,保護命令決定等やそのような係争中の裁判がない場合,支援措置の申出者によって一方的に加害者とされた者を,区市町村までもが一方的に加害者として扱い権利を制限することに合理性はない。保護命令決定等で被害者や加害者を認定する司法権が裁判所にある以上,仮に区市町村が相談機関等から意見を聞いたとしても,そのことにより区市町村に保護命令決定等の被害者や加害者を認定する司法権が生じるわけでもない。
つまるところ,国がECF(Extreme Case Formulation:極端な事例による構成)である詭弁により,本来は加害者とすることに合理性がない者までも加害者として扱うように通知しているのなら,住民基本台帳法第12条6項における「請求が不当な目的によることが明らかなとき」に該当しない者からの請求も拒否することになるのだから,法に反する上記通知は違法で無効であり,熊本市が漫然と総務省通知に従って審査請求人による戸籍附票全部の交付申請を拒否したことは,違法な処分であった。
また,国が加害者として扱う対象を,保護命令決定等が確定しているか,そのような訴訟が係属中である場合に限っているのなら,熊本市がその対象となっていない審査請求人による本件申請を拒否したことは違法な処分であった。
4 行政処分における理由付記について
行政手続法において,「行政庁は,申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は,申請者に対し,同時に,当該処分の理由を示さなければならない。」(行政手続法8条1項)と規定されている。更に,「前項本文に規定する処分を書面でするときは,同項の理由は,書面により示さなければならない。」(同条2項)。
また,不利益処分についても同様の規定があり,「行政庁は,不利益処分をする場合には,その名あて人に対し,同時に,当該不利益処分の理由を示さなければならない。」(同法14条1項)。この場合も,「不利益処分を書面でするときは,前二項の理由は,書面により示さなければならない。」(同条3項)。
最高裁判所第三小法廷判決昭和60年1月22日(民集第39巻1号1頁)は,旅行法14条について,単に根拠規定を示すだけで,基礎となった事実関係が具体的に示されていない場合,理由付記に不備があるため違法であるとしている。
この判例の補足意見では理由付記の不備が違法である理由として,拒否事由の有無について慎重さと公正さを担保してその恣意を抑制するとともに,拒否理由を申請者に告知することによって,不服申立てに便宜を与えるためとしている。本件処分においても,熊本市が本件処分の理由となる具体的な事実関係を示していないため,審査請求人は不服申立てにおいて決定の根拠となった具体的な審査請求人の行為の有無や評価を争うことができないものとなっている。その意味においても本件処分の違法性は明らかである。
より近年で右判例を踏襲したものとしては最高裁判所第三小法廷判決平成23年6月7日(民集第65巻4号2081頁)がある。この判例でも,行政手続法14条1項の規定は,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名あて人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという点にあり,同項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法な処分は取消しを免れないというべきであるとしている。この判例にも補足意見があり,その中で行政の許認可申請に対する拒否処分や不利益処分の判例法理を,以下のように整理している。
① 不利益処分に理由付記を要するのは,処分庁の判断の慎重,合理性を担保して,その恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせることにより,相手方の不服申立てに便宜を与えることにある。その理由の記載を欠く場合には,実体法上その処分の適法性が肯定されると否とにかかわらず,当該処分自体が違法となり,原則としてその取消事由となる(仮に,取り消した後に,再度,適正手続を経た上で,同様の処分がなされると見込まれる場合であっても同様である。)。
② 理由付記の程度は,処分の性質,理由付記を命じた法律の趣旨・目的に照らして決せられる。
③ 処分理由は,その記載自体から明らかでなければならず,単なる根拠法規の摘記は,理由記載に当たらない。
④ 理由付記は,相手方に処分の理由を示すことにとどまらず,処分の公正さを担保するものであるから,相手方がその理由を推知できるか否かにかかわらず,第三者においてもその記載自体からその処分理由が明らかとなるものでなければならない。
更にこの補足意見では,「処分対象行為の特定すら十分になされず,また,その提示された内容は具体性を欠き極めて不十分なものである」ことを,行政手続法14条が定める「理由の提示」の要件を欠く処分な違法として,取消しを免れないとしている。つまり,行政手続法8条1項及び同法14条1項が規定する理由提示には,処分対象行為の特定が必要なのである。
これらを踏まえて熊本市の本件処分の決定書を見るに,その決定理由の根拠として支援措置が記載されているが,法律の根拠がなく,さらには法律上の委任もされていない支援措置で加害者とされていることは,何ら本件処分を正当化するものではない。また,支援措置が法律上の委任がされていないことを措くにしても,その支援措置が誰による申請か,その申請を誰が認定したのか,その認定は審査請求人のいかなる行為を配偶者暴力防止法,ストーカー規制法,児童虐待防止法の加害者か,これら3法に準ずるケースの加害者と判断したものかが付記されていない。このよう不十分な記載では,審査請求人の処分対象行為の特定がされていないことから,事実上,審査請求人は本件処分に対して有効な不服申し立てをすることが不可能であるため,このような行政手続法8条1項及び同法14条1項の定める理由提示の要件を欠いた違法な本件処分は取消しを免れないというべきである。
なお,支援措置の決定が熊本市以外の区市町村だったとしても,行政手続法8条1項及び同法14条1項を根拠とした本件処分の理由提示義務は熊本市にあるのだから,熊本市が審査請求人のいかなる行為を根拠に本件処分をしたのかが具体的に明らかにされていない以上,本件処分の決定書は行政手続法14条1項の定める理由提示の要件を欠いていると言わざるを得ない。
仮に,不交付の根拠としているものが支援措置ではなく,裁判所によって被害者や加害者が確定したことであれば,その裁判過程において当事者双方の主張の機会は保障されているのが原則であり,裁判所の判断の理由も当事者双方が知ることができるが,審査請求人は自らに対する支援措置の決定について何ら知らされておらず,よって,その支援措置の決定理由を知ることができていない。そもそも,上記④で示したように,行政処分における理由付記は,被処分者がその理由を推知できるか否かにかかわらず,第三者においてもその記載自体からその処分理由が明らかとなるものでなければならないのだから,本件処分が審査請求人が支援措置を受けていることを根拠にするとしても,その支援措置が審査請求人のいかなる行為を根拠としてなされたものであるかの理由提示義務が,熊本市にあるのは明白である。審査請求人が本件請求をしたのは熊本市に対してなのだから,法律上(行政手続法8条1項及び同法14条1項),審査請求人に対して本件処分に関する処分対象行為を含めた具体的な理由提示義務があるのは熊本市なのである。
ところで,住民基本台帳事務処理要領等の一連の総務省通知がいかなるものであれ,それらに行政手続法8条1項及び同法14条1項を含めた法を無効化する法律効果はないのだから,熊本市の本件処分に対する具体的な理由付記の理由提示義務が免責される事情は存在しない。よって,理由提示の要件を欠いた違法な本件処分は取り消しを免れない。
そうすると,熊本市は審査請求人が支援措置を受けていることが熊本市住民基本台帳に係る個人情報の保護に関する条例第3条に該当するとしているが,法律の根拠がなく,さらには法律上の委任もされておらず,手続保障にも行政手続法14条1項に反する違法な不備がある支援措置で審査請求人が加害者とされていることは,何ら本件処分を正当化するものではない。また,熊本市住民基本台帳に係る個人情報の保護に関する条例第3条は,1項が(1)から(4),それ以外にも2項から5項があり,概括的,抽象的な規定であるため,本件処分の決定書に同条に該当する旨が記載されただけでは,審査請求人において本件処分の基因となった事実関係をその記載自体から知ることはできないといわざるをえない。したがって,熊本市長において熊本市住民基本台帳に係る個人情報の保護に関する条例第3条の規定を根拠に住民票等の交付請求を拒否する場合には,審査請求人に対する決定書に支援措置を根拠に同条に該当すると付記するのみでは足りず,審査請求人のいかなる行為を認定して,その行為が熊本市住民基本台帳に係る個人情報の保護に関する条例第3条のどの項目に該当すると判断したかを具体的に記載することを要すると解するのが相当である。そうであるとすれば,単に支援措置を根拠に「熊本市住民基本台帳に係る個人情報の保護に関する条例第3条に該当する」と付記されているにすぎない本件処分の決定書は,審査請求人が不服申立てをするために必要な情報が記載されておらず,行政手続法8条1項及び同法14条1項の定める理由付記の要件を欠くものというほかはなく,本件処分に右違法があることを理由としてその取消しを求める本件審査請求は,正当として認容すべきである。
なお,ここでは本件処分の理由付記における違法性について述べたが,そもそもそれ以前に,審査請求人に支援措置で加害者とされたり,本件処分を余儀なくされたりしなければならない行為自体がないことが,審査請求人の主張の1つである。
5 本件処分の理由付記の不備に違法性阻却事由は存在しないこと
仮に,真に被害者保護が必要な場合において,区市町村が判断の根拠となった処分対象行為を特定して決定書に記載したとしても,それによって被害者とされた者の所在地が特定される等,被害者保護に反する事情を生じさせるとは想定し難い。そのため,熊本市が行政手続法8条1項及び同法14条1項に反して理由付記の要件を欠いた処分をしたことに,違法性阻却事由は認められない。
6 本件処分の理由提示義務は熊本市にあること。
既に述べたように,本件処分において処分対象行為等の提示といった理由提示義務は熊本市にあるのだから,要件を欠く本件処分は違法なものとして取り消しを免れない。
7 法に反する総務省通知が違法であることについて
判例において,国会で定められた法律やその趣旨に反する省令は違法で無効とされている(最高裁判所第二小法廷民集第67巻1号1頁)。
この意味においても,省令ですらない総務省による住民基本台帳事務における支援措置に関する一連の通知は,住民基本台帳法第12条6項,行政手続法8条1項,同法13条,同法14条1項に反した内容になっているのだから,少なくともその違法な内容については無効である。当然,そのような違法な総務省通知に則った対応を漫然とした熊本市の審査請求人に対する処分も,違法で無効であるのだから,本件処分は取り消しを免れない。
8 本件請求の容認や,本件処分の取り消しが被害者保護に反する事情にならないこと
審査請求人は,配偶者暴力防止法,ストーカー規制法,児童虐待防止法のいずれにおいても加害者に該当する行為を行っていない。審査請求人が裁判所によって上記3法のいずれかの加害者であると認定された事実もなく,審査請求人が上記3法における加害者であることを争っている事件が裁判所で係属中であるわけでもない。
その意味において,そもそも,審査請求人が加害者であり,何者かがその被害者になっているという関係性自体が存在しないのだから,本件請求の容認や,本件処分の取り消しが,被害者保護に反する事情になることはありえない。
以 上
反論書
令和3年10月10日
審理員(総括) 西川公祐 宛
審査請求人 (審査請求人)
〒■■■■■■■■■■
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電 話 ■■■■■■■■■■■■■■■■■
住民基本台帳事務に関する処分に対する審査請求(令和3年市行審第9号)について,処分庁が令和3年8月10日付けで提出した弁明書に対し,次のとおり反論する。
第1 弁明書に対する審査請求人の主張
1 経緯の誤りについて
熊本市は,審査請求人が令和2年12月4日に「戸籍附票(全部事項)」を請求したとしているが,そのような事実はない。審査請求人は,自らが監護する長男の求めにより,長男が求めた「戸籍附票(全部事項)」を長男の代理人として令和2年12月4日に請求しているが,これは請求者が長男なのだから,本件審査請求とは請求者が異なる。
2 住民基本台帳事務処理要領が法源ではないことについて
熊本市は住民基本台帳事務処理要領に適合していることを根拠に,本件処分に違法性がないとの主張をしている。
しかしながら,住民基本台帳事務処理要領自体はいわゆる行政内部における通達であり,それ自体が法律ではない。通知はそれ自体が法源でないのだから,法的拘束力を有しない。本件審査請求のように行政処分の違法性が争われている場合に,処分が通知に適合していることを根拠として,その処分の適法性を主張することは認められない。通知が法源ではない以上,それを根拠として国民に不利益を課すことは許されないからである。最高裁判所昭和43年12月24日判決(民集第22巻13号3147頁)においても,通達そのものは行政機関内部で出される連絡文書であって,それそのものが法的拘束力を有しないことは認められているところである。
そうすると,本件処分に対する手続きが法源ではない住民基本台帳事務処理要領に適合していることを理由に,本件処分に違法性はないとしている熊本市の主張は,全て失当である。
3 支援措置決定が法源ではないことについて
住民基本台帳事務処理要は法源でないのだから,これに則った当初受付市区町村長による支援措置決定も,本件処分の違法性を否定する根拠になりえない。当初受付市区町村長による支援措置決定の連絡はいわゆる行政内部の連絡であり,それ自体が法源ではない。連絡は法源でないのだから,法的拘束力を有しない。行政処分の違法性が争われている場合に,処分が連絡に従っていることを根拠として,その処分の適法性を主張することは認められない。連絡が法源ではない以上,それを根拠として国民に不利益を課すことは許されないからである。
4 本件処分の法源について
(1) 住民基本台帳法について
熊本市の本件処分に対する法的根拠は,住民基本台帳法,および,熊本市住民基本台帳に係る個人情報の保護に関する条例(以下,「本件条例」とする)である。
まず,法文上,熊本市が本件原請求を拒否できるのは「不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)な場合だが,本件原請求において審査請求人に「不当な目的」(住民基本台帳法第12条6項)はなく,熊本市は審査請求人に「不当な目的」があったことを裏付ける具体的根拠も示していないのだから,熊本市の本件処分は違法なものであった。
(2) 本件条例について
ア 審査請求人に本件条例第3条1項に該当する行為がないことについて
本件条例第3条1項は,配偶者暴力防止法,ストーカー規制法,児童虐待防止法,そのほか生命,身体,財産その他の権利利益を害する行為における被害者に係る住民基本台帳法第11条の2等の請求を拒否するよう区長に求めることができるとされている。
しかしながら,審査請求人に本件条例第3条1項に該当する行為はなく,熊本市は審査請求人に右行為があったことを裏付ける具体的根拠も示していないのだから,熊本市の本件処分は違法なものであった。
イ 本件処分に本件条例第3条3項が適用できないことについて
支援措置制度に関連して,本件条例第3条3項では,「区長は,現に被害を受けていない住民等であっても,規則で定める関係機関からの通知により,生命,身体,財産その他の権利利益を著しく害する行為を受けるおそれがあると認められる者(以下「準被害者」という。)からの申出により,当該準被害者に当該行為を行うおそれがあると認められる者からの,当該準被害者及びその者と同一の住所を有する者に係る法第11条の2等の請求を期間を定めて拒否することができる。」とされている。
右条文にある「当該行為」とは,本件条例3条1項が掲げる行為を指しているが,審査請求人が右行為をした事実はなく,熊本市も審査請求人に右行為があったことを裏付ける根拠を示していない。そもそも,本件条例は本件条例3条1項が掲げる行為の被害者保護を趣旨としているのだから,本件条例3条1項が掲げる行為が存在しない事案に適用することはできない。そのため,審査請求人が「当該準被害者に当該行為を行うおそれがあると認められる者」とは認められないのだから,本件条例のいずれの条文に照らしても,熊本市の本件処分は違法なものであった。
ウ 決定書の理由不記について
熊本市は本件処分の決定書(資料1)において,審査請求人が支援措置を受けていることが本件条例第3条に該当するとしているが,法律の根拠がなく,さらには法律上の委任もされていない支援措置で審査請求人が加害者とされていることは,何ら本件処分を正当化するものではない。また,本件条例第3条は,1項が(1)から(4),それ以外にも2項から5項があり,概括的,抽象的な規定であるため,本件処分の決定書に同条に該当する旨が記載されただけでは,審査請求人において本件処分の基因となった事実関係をその記載自体から知ることはできないといわざるをえない。したがって,熊本市長において本件条例第3条の規定を根拠に住民票等の交付請求を拒否する場合には,審査請求人に対する決定書に支援措置を根拠に同条に該当すると付記するのみでは足りず,審査請求人のいかなる行為を認定して,その行為が本件条例第3条のどの項目に該当すると判断したかを具体的に記載することを要すると解するのが相当である。そうであるとすれば,単に支援措置を根拠に「本件条例第3条に該当する」と付記されているにすぎない本件処分の決定書は,審査請求人が不服申立てをするために必要な情報が記載されておらず,適正な理由提示の要件を欠くものというほかはなく,本件処分に右違法があることを理由としてその取消しを求める本件審査請求は,正当として認容すべきである。
5 本件原請求に「不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)であったかの立証責任は熊本市にあることについて
(1) 住民基本台帳法について
住民基本台帳法第20条1項において次のように規定されている。「市町村が備える戸籍の附票に記録されている者(当該戸籍の附票から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされ,かつ,当該記載が消除された者を除く。)を含む。次項において同じ。)又はその配偶者,直系尊属若しくは直系卑属は,当該市町村の市町村長に対し,これらの者に係る戸籍の附票の写し(第十六条第二項の規定により磁気ディスクをもつて戸籍の附票を調製している市町村にあつては,当該戸籍の附票に記録されている事項を記載した書類。次項及び第三項並びに第四十六条第二号において同じ。)の交付を請求することができる。」
このことから戸籍の附票の写しの交付請求において,審査請求人自身に「不当な目的」がないことの立証責任は負わされていない。
それに対して,住民基本台帳法第20条1項では次のように規定されている。「市町村長は,第一項の規定による請求が不当な目的によることが明らかなときは,これを拒むことができる。」
このことから,熊本市が戸籍の附票の写しの交付請求を拒むことができるのは「不当な目的によることが明らか」である場合に限られるのだから,熊本市が本件原請求を「不当な目的によることが明らか」として拒んでいる以上,本件原請求に「不当な目的によることが明らか」であることの立証責任は熊本市にあった。
(2) 本件条例について
本件条例においても,審査請求人に本件条例第3条1項に該当する行為がないことの立証責任は負わされていない。それに対して,熊本市が本権原請求を拒否できるのは,審査請求人に本件条例第3条1項に該当する行為があった場合に限られるのだから,熊本市が本件原請求を本件条例第3条に該当することを理由として拒んでいる以上,審査請求人に本件条例第3条1項に該当する行為があったのかについての立証責任は熊本市にあった。そして,熊本市は本件条例第3条1項が定めるどのような行為が審査請求人にあったのかや,それを裏付ける根拠を示していない以上,熊本市は審査請求人に本件条例第3条1項が定める行為があったのかを確認することなく漫然と本件処分を決定したと言わざるを得ないのだから,そのような手続き上の不備がある本件処分は違法なものであった。
また,本件条例第3条3項についても,そもそも本件条例第3条1項に該当する行為があることが前提になるのだから,審査請求人に本件条例第3条1項に該当する行為がなかった以上,本件原請求に本件条例第3条3項を適用することは違法である。
(3) 理由提示義務について
令和3年9月21日に次のニュース記事があった。
「森友学園問題を巡る財務省の決裁文書改ざんで2018年に自殺した近畿財務局の元職員赤木俊夫さん=当時(54)=の公務災害認定報告書に関し,赤木さんの業務内容などを不開示とした人事院の決定を,総務省情報公開・個人情報保護審査会が違法として取り消すべきだと人事院に答申していたことが21日,分かった。(中略)審査会は,不開示とした理由が詳しく記載されていないと指摘し,不開示によって雅子さん側が審査請求の手続きで『具体的,効果的な主張をすることを困難にさせている』とした。」(https://www.tokyo-np.co.jp/article/132292)。
さて,熊本市の本件処分の決定書や,本件審査請求の弁明書にも同様の違法がある。熊本市は本件処分の根拠となる審査請求人の具体的行為を明らかにしていないため,審査請求人は自らが支援措置における加害者とされていることに対して,具体的,効果的な主張をすることを困難にさせられている。
この適正な審査請求を困難にしていることが支援措置制度の不備であることは既に述べたとおりであり,法源でなく制度上の不備もある支援措置制度で加害者とされていることが,本件原請求に「不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)であることの根拠にならないことも,既に述べたとおりである。
6 熊本市は支援措置制度の不備を認識可能だったことについて
平成30年10月に開催された第71回全国連合戸籍住民基本台帳事務協議会総会において,住民基本台帳事務の実務者から,支援措置制度にはこの制度を逆手に取って悪用しているのではないかと推測されるケースも少なからず存在することが指摘されている。このことは令和元年6月に発行された「戸籍」969号にも記載されている(資料2)。
更に, 前記した第71回全国連合戸籍住民基本台帳事務協議会総会での指摘にも関係している,名古屋地方裁判所判決平成30年4月25日(事件番号:平成28年(ワ)3409)は,以下のように判示している。
「現在の支援措置制度は,加害者とされる者の手続保障がない上に,これに事実誤認があった場合の簡易迅速な救済制度もない(中略) 本来,制度としては,相当緩やかな認定判断に基づいて仮の支援措置を講じて被害者の安全をまず確保した上で,加害者とされる者の意見聴取をするなど加害者側の手続保障を図り,その結果に応じて簡易迅速な見直しをすることができる制度とすることが望ましいというべきであり,そのような制度設計であれば,現在,社会問題化しているような制度悪用の弊害も概ね防止することができるはずである(中略) DV被害者の安全を確保しつつ,加害者とされる者の手続保障にも配慮し,警察職員に過大な負担をかけないためには,より合理的な制度設計があるはずであり,制度の弊害も看過し得ない状態となってきている現在,制度改善に向けた検討が期待されるところである。」
さて,上記指摘では支援措置制度において事実誤認があった場合の簡易迅速な救済制度がないとしているが,更に支援措置制度は,行政不服審査法に基づく審査請求においても事実確認が妨げられる制度設計になっている。このような事実誤認を救済する手続保障がなく,行政不服審査法に基づいて救済を求める権利行使も妨げている支援措置制度は,その制度自体に著しい不備があるのは明らかである。
なお,上記判例は「より合理的な制度設計があるはず」とも指摘しており,これについては令和3年5月14日付けで提出した本件審査請求書第5の3の(1)で述べた方法もあるし,ストーカー規制法第5条3項で規定されているような手続保障の方法もあるのだから,被害者保護を口実にして,現状の著しい不備がある支援措置制度を合理的だとすることはできない。
そうすると,第71回全国連合戸籍住民基本台帳事務協議会総会が開催された平成30年10月以降,あるいは少なくとも「戸籍」969号が発行された令和元年6月以降において,熊本市は支援措置制度の不備を認識することが可能であったと解するのが妥当なのだから,熊本市は本件原請求について,当初受付市区町村長の支援措置決定がこの制度を逆手に取って悪用されたケースでないかを確認する必要があった。
また,熊本市は弁明書において,事務処理要領第5-10オにある,「原則として,当初受付市区町村長が支援の必要性があることを確認したことをもって,当該地の市町村長における支援の必要性もあることとする取扱いとして差し支えない。」と記載されていることを引用している。法源ではない事務処理要領に適合していることが本件処分の違法性を否定する根拠になりえないことは既に述べたとおりだが,それを措くにしても,原則はあくまで原則にすぎず,少なくとも令和元年6月以降において,熊本市は支援措置制度の不備を認識可能であったことに鑑みれば,熊本市が漫然と当初受付市区町村による支援措置決定に従い,当初受付市区町村長の支援措置決定がこの制度を逆手に取って悪用しているケースの可能性を検討することなく,本件原請求を拒否したことは,本件原請求に「不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)であると確認した上での処分であったとは到底言えない。そのため,熊本市が必要な事項の確認をしないままに決定した本件処分は取消しを免れない。
なお,前述の事務処理要領第5-10オの記載は,あくまで「原則的」なものとされているのだから,熊本市の本件原請求に関する処理手続きを拘束しておらず,熊本市が原則と異なる対応をすることを禁止しているものでもない。
7 支援措置制度は行政不服審査法に基づく適正な救済の手続保障を妨げる制度上の不備があることについて
本件審査請求は行政不服審査法に基づいてのものであるが,その第1条において次のように規定されている。
「この法律は,行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し,国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより,国民の権利利益の救済を図るとともに,行政の適正な運営を確保することを目的とする。
2 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下単に「処分」という。)に関する不服申立てについては,他の法律に特別の定めがある場合を除くほか,この法律の定めるところによる。」
さて,審査請求人は自らが配偶者暴力防止法,ストーカー規制法,児童虐待防止法の加害者や,これら3法に準ずる加害者でないことから,そもそも審査請求人は支援措置が対象にしている加害者ではなく,同様に,審査請求人は本件条例第3条1項が掲げる行為の加害者でもないと主張している。その意味において,審査請求人は当初受付市区町村長による支援措置決定にも異議を主張していることになるが,法源でない当初受付市区町村長による支援措置決定は,法文上,本件原請求や本件審査請求に対してなんら責任を負っていないただの行政内部の連絡に過ぎないのだから,「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政不服審査法第1条)に該当せず,行政不服審査法の対象ではない。そのため,熊本市が当初受付市区町村長による支援措置決定を受け入れて本件原請求の拒否を決定したのなら,その当初受付市区町村長による支援措置決定が適切であったのかを含めて,本件原請求では熊本市が立証責任が負っていることになる。
そうすると,熊本市は本件審査請求において,支援措置決定の根拠となった審査請求人の具体的加害行為や,その行為がどのような法に抵触するものであるのかの理由提示義務や立証責任を満たさなければならない。そして,その理由提示義務や立証責任を熊本市が果たしていないのは明らかであり,それは熊本市の本件処分に手続き上の不備があったことを示している。
また,熊本市が審査請求人の具体的な加害行為に対する理由提示義務や立証責任を果たしていないことよって,審査請求人は自らが加害者とされている根拠に対して事実の有無や評価を争うことが困難になっており,これは行政不服審査法の趣旨である,「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し,国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすること」に反している。
つまるところ,支援措置制度は,法源でないことや,行政不服審査法に基づく適正な審査をするための事実の提示を困難にしていることからも,その制度設計に著しい不備があると言わざるを得ない。
そのため,支援措置制度自体の適合性や,当初受付市区町村長による支援措置決定の適合性は,どちらも単体で行政不服審査法の対象にできないが,熊本市がこれらに基づいて本件処分を決定したという意味において,支援措置制度自体の適合性や,当初受付市区町村長による支援措置決定の適合性も,本件審査請求での審査対象に含まれている。なぜならば,「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政不服審査法第1条)は,法源のない不当な通知や連絡に適合していることを理由にその違法性や不当性が免責されるものではなく,また,本件処分が根拠としている他の行政庁による通知や連絡が違法又は不当なものであれば,それらを根拠として決定された本件処分もまた,違法又は不当なものだからである。
なお,仮に当初受付市区町村長による支援措置決定に対して,行政不服審査法に基づく審査請求が可能だとしても,熊本市は審査請求人に対して当初受付市区町村がどこであるかを明らかにしていないため,審査請求人はどこの市区町村に支援措置決定に対する審査請求を申し立てればよいのかが分からず,事実上,当初受付市区町村に支援措置決定に対する審査請求をすることは困難である。その意味において,支援措置制度は国会で立法化された行政不服審査法に基づく救済の手続保障を妨げているのだから,支援措置制度の不備は明らかである。
8 熊本市の審査請求人に対する人格権の侵害について
支援措置制度上,熊本市は審査請求人の具体的な加害行為を確認しておらず,当初受付市区町村長による支援措置決定という「結果」のみをもって本件処分を決定したという意味において,熊本市は審査請求人の加害行為について「不知」のはずである。しかしながら,熊本市は弁明書2頁27行目において,審査請求人が「しかしながら,審査請求人は上記3法の加害者に該当する行為を行っていない。」と主張したことを「否認」している。
この熊本市の「否認」が当初受付市区町村長による支援措置決定を根拠にしてのものだとしても,支援措置制度自体に不備がある以上,当初受付市区町村長による支援措置決定をもって,審査請求人を加害者と認定することはできない。それにもかかわらず,熊本市が正当な根拠なく審査請求人を加害者扱いして本件請求を拒否したのみならず,本件審査請求においても審査請求人が加害者である旨の記載を繰り返している。このように審査請求人を事実に反して加害者扱いする行為は,いかなる者によるものであれ,審査請求人に不利益を被らせるとともに,審査請求人の人格権を侵害する著しく不適切なものとして不法行為になる可能性も否定できない。事実,愛知県半田市は虚偽によるDVを認定したとして提訴され,その後,半田市が謝罪することで和解した事案も存在する(資料3)。
9 支援措置制度による被害者保護は身体的暴力と身体的暴力をふるう旨の脅迫に限られるべきについて
支援措置制度が被害者とされた者の住所を秘匿する趣旨は,DV加害者に住所が分かることで警察に通報する暇なく暴力被害を受ける危険性があるためだが,このような制度趣旨からすれば,支援措置制度の対象となる過去の加害行為は,「身体的暴力」に限られるか,どれだけ広く考えても,「殺すぞ」「殴るぞ」等身体的暴力をふるう旨の脅迫に限られるはずであり,それ以外については,加害者がその住所に押しかけてきても警察を呼べば被害を防止することができるはずなので,身体的暴力と脅迫以外を理由とする支援措置は,そもそも不必要で過剰な対応として人権侵害(法律上認められた住民票等請求権侵害)にあたる(資料3)。
そうすると,仮に熊本市が審査請求人を加害者扱いする根拠として審査請求人の具体的加害行為を示したとしても,それが身体的暴力と身体的暴力をふるう旨の脅迫以外を理由にしている場合,それは不必要で過剰な対応として人権侵害にあたるため違法である。
第2 争点整理
熊本市の弁明にはつまるところ,大きく分けて3つの瑕疵がある。
① 熊本市は法源ではない住民基本台帳事務処理要領を根拠に本件処分の違法性を否定する瑕疵を犯している。
② 熊本市は審査請求人を加害者扱いしながらも,本件審査請求においてそれが正当な判断であるかを審査するに必要な,審査請求人の具体的加害行為を明らかにしていない瑕疵を犯している。
③ 熊本市は審査請求人が本件処分を違法と主張している理由の一部にしか反論をしていない瑕疵を犯している。
これらの都合が悪い主張を無視することや,法源ではないものを根拠にすることでしか弁明ができていないことは,当然に合理的な弁明になりえていない。そもそも本件審査請求において,審査請求人が述べた理由の1つでも反論が不可能なものであれば,それは本件処分の違法性が示されることになる。
そのため本件審査請求では,審査請求人の以下の全ての主張に対して熊本市が合理的な弁明をしているかが争点となる。
1 本件原請求に「不正な目的」はなかったことについて
住民基本台帳法第12条6項からすれば,熊本市が本件原請求を拒むことができるのは本件原請求に「不正な目的によることが明らか」といえる根拠がある場合に限られるが,本件原請求に「不正な目的」はなかったのだから,熊本市が本件原請求を拒んだことは違法な処分であった。
2 本件原請求に「不当な目的」があったかの立証責任は熊本市にあることについて
住民基本台帳法や本件条例は,本件原請求に関して,審査請求人に自らが配偶者暴力防止法,ストーカー規制法,児童虐待防止法の加害者や,これら3法に準ずる加害者でないことの立証責任を負わせていない。
それに対して,熊本市が本件原請求を拒むことができるのは「不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)な場合に限られるのだから,熊本市が本件原請求を拒んだ以上,熊本市は本件審査請求において,本件原請求に「不当な目的」が存在したことの立証責任を負っている。なお,当初受付市区町村長による支援措置決定は,行政の内部決定であり,何ら法源がなく,単体で本件のような審査請求の対象にもならない。審査請求人が上記3法の加害者に該当する行為を行っていないとの主張に対して,熊本市は否認をしており,それは熊本市が当初受付市区町村長による支援措置決定が正当であると主張しているのと同義なのだから,熊本市が当初受付市区町村長による支援措置決定を根拠に審査請求人に「不当な目的」があると判断したという意味において,その当初受付市区町村長による支援措置決定が正当であることの立証責任も熊本市にある。
しかしながら熊本市は依然として,本件原請求に「不当な目的」があるとした根拠となる,審査請求人の具体的加害行為や,審査請求人が本件条例第3条1項のいずれに該当する行為をしたのかについて明らかにしていない。これは熊本市が本件原請求に「不当な目的」が存在するかを確認することなく,漫然と本件処分をしたことを示すものなのだから,熊本市が「不当な目的によることが明らか」であるかを確認することなく決定された本件処分は違法であった。
3 住民基本台帳事務処理要領や支援措置決定は法源でないことについて
住民基本台帳事務処理要領自体はいわゆる行政内部における通達であり,当初受付市区町村町による支援措置決定自体はいわゆる行政内部の連絡であり,どちらもそれ自体が法律ではなく,法源でもなく,法的拘束力を有しない。そのため,行政処分の違法性が争われている場合に,処分が行政内部の通知や連絡に適合していることを根拠として,その処分の適法性を主張することは認められない。
4 支援措置制度が対象としている配偶者暴力防止法,ストーカー規制法,児童虐待防止法の加害者や,これら3法に準ずる加害者に審査請求人が該当していないことについて
とりあえず住民基本台帳事務処理要領が法源でないことや,支援措置制度に不備があることを措くにしても,支援措置制度は配偶者暴力防止法,ストーカー規制法,児童虐待防止法の加害者や,これら3法に準ずる加害者を対象にした制度である。名古屋高等裁判所平成31年1月31日(事件番号:平成30年(ネ)453)も,「支援措置を定めた住民基本台帳法及び住民基本台帳事務処理要領の趣旨は,DV防止法1条1項に規定する配偶者からの暴力及びこれに準ずる行為の被害者の保護のため,加害者が,住民基本台帳の閲覧等の制度を不当に利用してそれらの行為の被害者の住所を探索することを防止し,もって被害者の保護を図ること」と判示している。
そうすると,熊本市がこれらの加害者ではない審査請求人の本件原請求を拒否したことは,支援措置制度の趣旨に反したものであったし,審査請求人がこれらの加害者でない以上,本件原請求に「不当な目的」があったとする根拠はないのだから,熊本市が明らかな根拠なく本件原請求を拒否したことは,住民基本台帳法第12条6項に反した違法な処分であった。
なお,既に述べたように,熊本市が審査請求人のことを支援措置の対象である上記3法等の加害者であるとするならば,当初受付市区町村長による支援措置決定の適合性も含めて,その立証責任は熊本市にあるし,住民基本台帳事務処理要領が行政内部での通知であり,当初受付市区町村長による支援措置決定が行政内部の連絡であることから,これらの通知や決定の違法性や不当性も,本件審査請求の審査対象に含まれる。
5 審査請求人に本件条例第3条1項に該当する行為がないことについて
本件条例第3条3項は,同条1項が掲げた配偶者暴力防止法,ストーカー規制法,児童虐待防止法の加害行為をした者からの請求を拒否できるとしているが,審査請求人が右行為をした事実はなく,熊本市も審査請求人に右行為があったことを裏付ける根拠を示していない。そのため,審査請求人が当該準被害者に当該行為を行うおそれがある者とは認められないのだから,本件条例のいずれの条文に照らしても,熊本市の本件処分は違法なものであった。
なお,審査請求人を事実に反して加害者扱いする行為は,いかなる者によるものであれ,審査請求人の人格権を侵害する著しく不適切なものとして不法行為になる可能性も否定できない。
6 支援措置制度は不備があることについて
とりあえず住民基本台帳事務処理要領が法源ではないことを措くにしても,平成30年10月に開催された第71回全国連合戸籍住民基本台帳事務協議会総会において,支援措置制度にはこの制度を逆手に取って悪用しているのではないかと推測されるケースも少なからず存在することが指摘されており,このことは令和元年6月に発行された「戸籍」969号にも記載されている。
そうすると,熊本市は平成30年10月以降,あるいは少なくとも令和元年6月以降において,支援措置制度の不備を認識することが可能であったと解するのが妥当である。そのため,令和2年12月4日の本件原請求に対して,熊本市は支援措置制度が悪用されている可能性も考慮して判断をする必要があったのだから,熊本市がこれを怠り,漫然と事実誤認を基礎とした本件処分をしたことは違法であった。
なお,名古屋地方裁判所判決平成30年4月25日(事件番号:平成28年(ワ)3409)でも,支援措置制度は事実誤認があった場合の救済制度がないことが指摘されているし,熊本市の本件審査請求での弁明書が示すように,支援措置制度は戸籍附票の写し等の不交付決定に対しての審査請求がされた場合でさえ,右不交付の基礎となる認定事実(審査請求人の具体的な違法行為や,具体的な加害行為)が明らかにされないという制度上の不備がある。これは前記したように,本件原請求に「不当な目的」があったかの立証責任を熊本市が果たしておらず,支援措置制度は本件のような審査請求においてであっても「不当な目的」の根拠となる事実の有無や評価を争えない制度設計になっているのだから,この点においても行政不服審査法に基づく適正な審査を不可能にしている支援措置制度の不備は明らかである。
7 審査請求人を加害者とする具体的根拠を示していない熊本市の弁明は,合理的な弁明になりえていないことについて
とりあえず住民基本台帳事務処理要領が法源でないことや,支援措置制度に不備があることを措くにしても,支援措置制度は配偶者暴力防止法,ストーカー規制法,児童虐待防止法の加害者や,これら3法に準ずる加害者を対象にした制度であるが,熊本市は弁明書においても,審査請求人がどのような法に抵触する加害者であるかや,その根拠となる審査請求人の行為について明らかにしていない。そのため,審査請求人は自らが加害者とされていることについて,その根拠となる事実の有無や評価について主張立証ができない状態のままである。つまるところ,熊本市は支援措置制度を審査請求人に適用する前提となる,審査請求人が上記3法の加害者であることについて,具体的な主張立証を全くしていない。
そうすると,熊本市は審査請求人を加害者とする具体的根拠を示していないのだから,熊本市が具体的根拠に基づかずに漫然と本件処分をしたことは明らかであり,そのような「不当な目的によることが明らか」であるかを確認していない本件処分は,住民基本台帳法第12条6項に反した違法な処分であった。
なお,当初受付市区町村長による支援措置決定があったにしても,それは法源でないし,審査請求人に主張の機会を保障した上で公正に判断されたものでもない。また,審査請求人は自らが配偶者暴力防止法,ストーカー規制法,児童虐待防止法の加害者や,これら3法に準ずる加害者でないと主張している。その意味において,本件審査請求は当初受付市区町村長による支援措置決定にも異議を主張していることになるが,法源でない当初受付市区町村長による支援措置決定は,法文上,本件原請求や本件審査請求に対してなんら責任を負っていないただの行政内部の連絡に過ぎず,本件のような審査請求の対象にもならないのだから,熊本市が当初受付市区町村長による支援措置決定が正当であると判断したのなら,その支援措置決定の根拠となった審査請求人の具体的加害行為や,その行為がどのような法に抵触するかの理由提示義務や立証責任は熊本市が負っている。そして,その理由提示義務や立証責任を満たしていない熊本市の弁明の不備は明らかである。
8 支援措置制度自体の適法性と,当初受付市区町村長による支援措置決定の適合性も本件審査請求での審査対象に含まれることについて
支援措置制度自体の適合性と,当初受付市区町村長による支援措置決定の適合性は,どちらも単体で行政不服審査法の対象にできず,これらはどちらも法源ではない行政庁による通知や決定であり,熊本市はこれらに基づいて本件処分を決定したという意味において,支援措置制度自体の適合性と,当初受付市区町村長による支援措置決定の適合性も,本件審査請求での審査対象に含まれている。
仮に当初受付市区町村長に支援措置決定に対する行政不服審査法に基づく審査請求が可能だとしても,熊本市は審査請求人に対して当初受付市区町村がどこであるかを明らかにしていないため,審査請求人はどこの市区町村に支援措置決定に対する審査請求を申し立てればよいのかが分からず,事実上,行政不服審査法に基づく権利行使ができない状態を余儀なくされている。その意味においても,行政庁の通知でしかない支援措置制度は,国会で立法化された行政不服審査法に基づく救済の手続保障を妨げているのだから,この支援措置制度の不備についても本件審査請求での審査対象に含まれている。また,このような制度上の不備がある支援措置制度で審査請求人が加害者とされていても,それは審査請求人に加害行為があったとの事実を裏付ける根拠になりえない。
9 支援措置制度よりも行政不服審査法に基づく救済の手続保障が優先されることについて
前記したように,支援措置制度自体が行政庁である総務省による通知であり,また,本件処分に強い関連性があるという意味において,支援措置制度自体の適合性も本件審査請求での審査対象に含まれる。
更に,行政不服審査法に基づく救済申立てにおいて,事実誤認が主張されている場合,支援措置制度に適合していることを理由に,事実誤認に対する審査を怠ることは許されない。なぜならば,行政庁の通知に過ぎない支援措置制度よりも,国会により立法化された行政不服審査法に基づく救済の手続保障を優先しなければならないのは明らかであるし,事実誤認の主張に対する弁明に,その事実誤認の結果である支援措置決定を持ち出しても,事実の有無や評価についての証明力を有していないからである。
熊本市の弁明をたとえれば,誤認逮捕が疑われているときに,逮捕された事実をもって逮捕が正当であったと弁明し,そもそもの逮捕の理由については何ら明らかにしないようなものであり,その論理的矛盾や不当性は明らかである。
10 被害者保護を口実に「不当な目的によることが明らか」でない場合にまで戸籍附票の写しの交付請求を拒むことに合理性はないことについて
DV等の被害者が転居して住所を知られたくない正当な理由がある場合,先に保護命令等を申し立てて被害者と加害者を確定させ,それに基づいて支援措置を申し出て,その確定後に住所変更をすれば良いだけである。また,保護命令決定等で当事者間で係争中の事件がある場合であっても,事件の確定によって加害者とされる可能性がある者からの住民票等の写しの交付請求に対する判断を,一時的に保留にすることで被害者の保護は可能である。
更に,ストーカー規制法第5条3項で規定されているような迅速な手続保障の方法もある。
その意味において,DV等の加害者であることが裁判によって明らかになっていない者からの住民票等の写しの交付請求を何ら主張の機会なく拒むことに,正当な理由はない。また,DV等の加害者であることが裁判によって明らかになっていない以上,「不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)とも言えないのだから,DV等の加害者ではない審査請求人からの本件原請求を拒んだ本件処分の違法性は明らかである。
第3 結語
1 本件審査請求において審査請求人は,本件処分の違法性を主張しているのだから,その審査は法を根拠に,その法に適合したものであるのかが判断されなければならない。そうすると,本件処分の違法性は,熊本市が審査請求人のどのような具体的行為を根拠に本件原請求が「不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)であると判断したのかや,審査請求人に本件条例第3条1項に該当する行為があったのかが争点であるが,熊本市はその審査請求人の加害行為を明らかにしていないのだから,そのような熊本市の弁明は本件審査請求を審査する上で必要な立証を満たしていない。そのため,熊本市は本件処分の正当性を適切に主張立証できていないのだから,本件処分は取り消されなければならない。
2 本来,本件のような審査請求は,Aという事実を根拠とする,Bという処分が適切だったのかが審査されなければならないが,熊本市はAの部分,つまり審査請求人のどのような具体的行為を,どのような法に基づく加害者であると判断したのかについて明らかにしていない。熊本市は,当初受付市区町村長による支援措置決定をもって審査請求人の加害行為を確認済みとする立場をとっているが,それならば当初受付市区町村長が審査請求人を加害者と判断した審査請求人の具体的加害行為を熊本市が当初受付市区町村長に問い合わせ,それを弁明書で明らかにすれば済むだけことであるにもかかわらず,熊本市はこれを明らかにしない態度に固執している。このような熊本市による事実の隠蔽行為ないしは情報開示の不作為は,審査請求人に加害行為がなかったことを示している。
あるいは,支援措置制度上,熊本市が当初受付市区町村長に対して,審査請求人の具体的加害行為を確認することができないようになっている場合,それは支援措置制度が行政不服審査法に基づく事実に照らした適正な審査を不可能にしているということであり,単に行政庁の通知に過ぎない支援措置制度が,国会で立法化された行政不服審査法に基づく救済の手続保障を妨げることは許されないのだから,そのような制度上の不備がある支援措置制度で審査請求人が事実確認が不可能な状態で加害者とされていても,それは審査請求人に加害行為があったとの事実を裏付ける根拠になりえない。
また,当初受付市区町村長による支援措置決定自体が誤っていれば,それを根拠とする本件処分も誤りということになる。そして,当初受付市区町村長による支援措置決定自体を行政不服審査法に基づく審査対象にすることができないが,その決定が本件処分の内容をも決定づけているという意味において,本件審査請求では,当初受付市区町村長による支援措置決定の適合性も審査対象に含まれる。
仮に,当初受付市区町村長による支援措置決定が本件審査請求において審査対象外とする場合,当初受付市区町村長による支援措置決定に誤りがあったことが起因となっている不当な処分に対して,行政不服審査法に基づく審査請求手段が存在しないということになるのだから,そのこと自体が支援措置制度の不備を立証することになる。なぜならば,法源でない支援措置制度が,国会により立法化された行政不服審査法に基づく救済の手続保障を妨げることは許されないからである。
3 つまるところ,本件審査請求の争点は,本件条例第3条1項等が定める行為をしていない審査請求人による本件原請求を熊本市が拒否したことが違法だったとする審査請求人の主張を,熊本市が裏付けが確かな根拠を示すことで排斥することができるのかである。なぜならば,仮に熊本市の本件処分が住民基本台帳事務処理要領に適合していたとしても,審査請求人が本件条例第3条1項等が定める加害行為をしていなければ,審査請求人を加害者扱いしていること自体が誤りだからである。
そうすると,本件審査請求においては,以下の5つの争点について,漏れなく公正に審査されなければならない。
① 審査請求人の本件条例第3条1項が定める行為の有無。
② 更に,法源でないことを仮に措けば,審査請求人の支援措置制度が対象としている加害行為の有無。
③ 仮に熊本市が審査請求人の具体的加害行為を明らかにした場合,その事実を裏付ける根拠の有無や評価(その加害行為は本件条例第3条1項が定める行為に該当し,且つ,審査請求人が将来的にも被害者とされる者の生命,身体,財産その他の権利利益を著しく害する行為を受けるおそれがあると認められるか)。
④ 住民基本台帳事務処理要領の違法性や不当性(たとえば,支援措置制度は,処分に事実誤認があることを理由に行政不服審査法に基づく審査請求が申し立てられた場合であっても,その処分の根拠となった事実の有無や評価を審査できなくしているという,行政不服審査法に基づく救済の手続保障を妨げる制度上の不備があること等)。
⑤ 当初受付市区町村長による本件処分に関する支援措置決定の違法性や不当性(たとえば,当初受付市区町村長は審査請求人にDV防止法等の加害行為がないにもかかわらず,審査請求人を加害者扱いすることで,審査請求人に不利益を被らせるとともに,審査請求人の人格権を侵害していること等)。
以 上
再反論書
令和4年1月29日
審理員(総括) 西川公祐 宛
審査請求人 (審査請求人)
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電 話 ■■■■■■■■■■■■■■■■■
住民基本台帳事務に関する処分に対する審査請求(令和3年市行審第9号)について、処分庁が令和3年12月23日付けで提出した再弁明書に対し、次のとおり再反論する。
第1 再弁明書に対する審査請求人の主張
1 経緯の誤りについて
審査請求人の反論書「1 経緯の誤り」において、令和2年12月4日としたのは、令和2年12月24日の誤りである。熊本市は、審査請求人が令和2年12月24日に「戸籍附票(全部事項)」を請求したとしているが、そのような事実はない。令和2年12月4日に審査請求人は本件審査請求の元となる本件原請求をしているが、令和2年12月24日については、審査請求人は自らが監護する長男の求めにより、長男が求めた「戸籍附票(全部事項)」を長男の代理人として請求している。しかしこれは請求者が長男なのだから、本件審査請求とは請求者が異なる。
そもそも、令和2年12月24日の長男の請求において、戸籍関係請求書には「窓口に来た方」に審査請求人の名前が記載され、「戸籍を使う方との続柄」に「父」と明記することで、審査請求人は自らが「戸籍を使う方」ではないことを明らかにしている。また「窓口に来た方」の上の欄には「請求者(戸籍を使う方)」と印刷されているように、戸籍関係請求書において、請求者とは戸籍を使う者を意味している。そうすると、令和2年12月24日の請求について、本件審査請求の審査請求人を請求者であると解する余地はない。
2 加害行為の開示の必要性、および、加害行為の開示が被害者保護に反する事情にならないこと
(1) 熊本市は、当初受付市町村の支援対象者の居所や行動範囲等の特定又は推認につながりうる情報は、支援措置の実施に支障があるため明らかにすることはできないとして、支援措置決定が適切なものであったかを確認するための、審査請求人が加害者とされている理由の開示を拒否している。
しかしながら、支援措置の要件の1つである配偶者暴力防止法では以下のように定められている。
「第十九条 保護命令に関する手続について、当事者は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。ただし、相手方にあっては、保護命令の申立てに関し口頭弁論若しくは相手方を呼び出す審尋の期日の指定があり、又は相手方に対する保護命令の送達があるまでの間は、この限りでない。」
このように支援措置の要件の1つである配偶者暴力防止法での保護命令は、当事者が事件の記録を閲覧することができ、そもそも保護命令の申立書は相手方に送達される。これは保護命令の申立てに対して相手方の主張の機会を保障するためである。そうすると、行政不服審査法に基づく本件審査請求においても当然、審査請求人が加害者とされていることについての反論の機会は保障されなければならなず、そのためには熊本市が本件不交付決定処分の理由となった、審査請求人を加害者としている根拠となった審査請求人の具体的行為を明らかにする必要がある。
(2) そもそも、審査請求人が加害者とされている理由を開示することは、支援対象者の居所や行動範囲等の特定又は推認につながることになりえない。審査請求人が加害者とされている理由が事実であれば、それは審査請求人自身の行為として、審査請求人が既知のことなのだから、審査請求人が既知である審査請求人の行為を熊本市が明らかにしても、それが被害者保護に反する事情なることはありえない。また、審査請求人が加害者とされている理由が虚偽や不当であれば、被害者は存在せず、審査請求人を加害者とすることも誤りなのだから、審査請求人が加害者とされている理由となる審査請求人の具体的行為を熊本市が明らかにしても、それが被害者保護に反する事情になることはありえない。
なお、仮に支援措置決定に関する文書に被害者とされる者の居所や行動範囲等の特定又は推認につながる情報があったとしても、その部分をマスキングをして開示すれば済むことであり、審査請求人が加害者とされている理由を含めて全てを非開示にしなければならない合理性は存在しない。なお、開示されるべき情報は漫然と審査請求人の行為を述べたものではなく、審査請求人のどのような行為が、支援措置制度におけるどのような加害者に該当すると認定されたのかが特定されたものでなければならない。
また、審査請求人が支援措置制度における加害者とされている根拠(審査請求人の具体的行為)の開示は、本件審査請求において、支援措置制度が適正に運用されていたかの確認のために必要であり、事実誤認といった冤罪によって生じた権利利益の侵害は救済されなければならない。支援措置制度が適正に運用されていなければ、支援措置制度の不正な運用に基づく本件不交付決定処分は取り消されなければならないし、それは行政不服審査法の立法趣旨からも当然に求められる、審査請求人の権利利益の救済のために必要な措置である。
そうすると、熊本市は支障のない情報さえも不合理に開示せず、本件不交付処分に必要となる「合理的な根拠」があったかを述べていないのだから、本件不交付処分が違法であることは明白である。
3 支援措置で加害者とされた者からの請求が全て「不当な目的」に該当するとは判断できないこと
「戸籍」997号(2021年6月号)(資料4)には「第73回総会合同研修会協議問題審議結果及び要望事項の回答」が掲載されており、その43頁等には、法務省民事局による以下の回答が記載されている。
「DV被害者等が記載されている戸籍について、加害者からの請求が全て戸籍法第10条第2項の「不当な目的」に該当すると判断できるとはいえず、個別判断を要すると考えられる一方、取扱いを明確にすべきであるとの御要望の趣旨は十分に理解しているところであり、今後、令和2年4月3日付け法務省民事局民事第一課補佐官事務連絡で示した参考事例の更なる充実を図るなど、取扱いの更なる明確化に資する取組を検討してまいりたい。」
上記で法務省民事局が回答しているように、支援措置で加害者とされている者からの請求であっても、それだけで戸籍法第10条第2項の「不当な目的」に該当すると判断することはできない。
更に、「戸籍」997号(資料4)43頁の香川県の要望では、令和2年4月3日付け法務省民事局民事第一課補佐官事務連絡において、「加害者から戸籍謄本等の請求があった際、加害者に対し請求の理由を詳細に聞き取り、「不当な目的」によるものか否かを判断して対応する」とされていることが記載されている。
そうすると、熊本市が本件原請求に不当な目的があるかを個別判断することなく、審査請求人に対し請求の理由を詳細に聞き取り、「不当な目的」によるものか否かを判断して対応することもなく、漫然と本件請求を拒否したことは、手続き上の不備がある違法なものであった。
4 支援措置制度が住民基本台帳法に基づくものとはいえないこと
(1) まず、住民基本台帳法は支援措置制度について何ら記載がされていない。そのため、住民基本台帳法は支援措置制度の根拠法になりえない。
また、支援措置制度は国会や地方議会といった立法機関によって立法化されたものではない。そのため、支援措置を条例等を含む法と同様の法律効果があるものとして扱うことはできない。
(2) 「戸籍」969号(2019年6月号)(資料2)には「第71回総会合同研修会協議問題審議結果及び要望事項の回答」が掲載されており、その中で和歌山県からは以下の要望が記載されている。
「[4]住民基本台帳事務におけるDV等支援対象者の住民票の写し等の交付請求において、統一した交付基準を含めた法整備を要望する。
(理由)
平成26年7月、加害者を依頼者とした特定事務受任者からDV等支援対象者の戸籍の附票の写しの請求を受けたが、本市はこれを不交付とした。理由は、住民基本台帳法第20条4項において「受任している事件又は事務の依頼者が前項各号に掲げる者に該当することを・・・」とあるところ、当該特定事務受任者は加害者を依頼者としているため理由としての正当性はなく、各項中の「当該申出を相当と認めるとき」には該当しないと判断したためである。
この処分に対し、当該特定事務受任者から同年8月異議申立がなされ、その後、和歌山県に対する審査請求を経て、平成27年6月、裁判となり、平成29年6月、和歌山地裁において、本市の処分を取り消す旨の判決があり、本市が大阪高裁へ控訴、平成30年1月、大阪高裁にて、原判決(和歌山地裁判決)を取り消し、当該特定事務受任者の請求を棄却する旨の判決が下された。また、平成30年3月28日付け総行住第58号において、「DV等支援措置に関し、住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)第12条の3第1項の規定により、特定事務受任者から加害者の代理人として住民票の写し等の交付の申出があった場合、又は、住民基本台帳法第12条の3第2項の規定により、受任している事件又は事務の依頼者が加害者である特定事務受任者からの住民票の写し等の交付の申出があった場合、加害者本人から当該申出があったものと同視し、住民基本台帳事務処理要領第5-10-コ-(イ)-(A)により対応すること」の通知がされているが、住民基本台帳事務におけるDV等支援対象者の住民票の写し等の交付請求における各市区町村の対応については、いまだ明確に法的な根拠は示されていない。各市区町村の対応は様々であり、対応に苦慮している。国(総務省)においては、当該裁判の判決も踏まえつつ、今後、統一した交付基準を含めた法整備を要望する。」
この和歌山県の要望には、「住民基本台帳事務におけるDV等支援対象者の住民票の写し等の交付請求における各市区町村の対応については、いまだ明確に法的な根拠は示されていない。」と記載されている。つまり、「支援措置制度」には「明確に法的な根拠は存在しない。」のであり、だからこそ、「法整備」が求められているのである。そのため支援措置制度に「法的な根拠が存在しない。」のであるから、本件不交付処分も「法的な根拠が存在しない」にも拘わらず行われた違法なものであることは明白である。和歌山県の支援措置には法的根拠がないのだから、熊本市の支援措置にも法的根拠が存在するはずがない。
5 事務処理要領第5-10は本件不交付処分の合理的根拠になりえないこと
(1) 熊本市は以下のように述べている。
「事務処理要領5-10においては、「エの転送を受けた他の市町村は、当初受付市町村長を経由して申出がなされたものとして、イの例により、支援の必要性を確認する。なお、この場合、当該他の市町村長においては、原則として、当初受付市町村長が支援の必要性があることを確認したことをもって、当該他の市町村長における支援の必要性もあることとする取扱いとして差し支えない。」と規定されている。
そのうえで、事務処理要領第5-10コ(イ)(A)において、「加害者が判明しており、加害者から請求又は申出がなされた場合には、不当な目的があるものとして請求を拒否し、又は法第12条の3第1項各号に掲げる者に該当しないとして申出を拒否する。」こととされている。」。
「本件戸籍の附票の一部の写しの不交付処分については事務処理要領に定める手続きにより把握された加害者とされている者から被害者に係る請求であるため、事務処理要領に沿って、不当な目的によることが明らかとして拒んだものである」。
しかしながら、前記した法務省民事局の回答のとおり、加害者からの請求が全て戸籍法第10条第2項の「不当な目的」に該当すると判断できるとはいえない。これは住民基本台帳法第12条第6項における「不当な目的」についても同様である。そうすると、熊本市は本件原請求に「不当な目的」があったかを個別判断せず、漫然と拒否しているのだから、熊本市の本件不交付処分の違法性は明らかである。
(2) 「戸籍」997号(2021年6月号)(資料4)には「第73回総会合同研修会協議問題審議結果及び要望事項の回答」が掲載されており、その95頁には、京都府による以下の要望が記載されている。
「[31] DV等支援措置について、必要な法整備を行うことを要望する。
(理由)
住民基本台帳事務におけるDV等支援措置(以下、「支援措置」という。)については、本人の申出を基に相談機関の意見を踏まえて行っているところであり、加害者が住民票の写し等の交付を請求又は申出した場合、不当な目的によるとして請求を拒否し、又は住民基本台帳法第12条の3第1項各号の掲げる者に該当しないとして申出を拒否することが住民基本台帳事務処理要領(以下「要領」という。)に明記されている。
過去には痛ましい事件も発生し、私たち自治体職員も支援措置の必要性は十分理解しているところであり、国においてもこれまで様々な通知を発出していることは承知している。
一方、支援措置は住民票の写し等の交付請求又は申出を行う者の権利を一定制限するものであることから、その措置の実施の判断は、客観性を持った相談機関の意見を踏まえて行うべきものであると考えられるところ、ある相談機関との懇談において、「あくまでも相談機関ですので、被害の事実確認はしない。相談者の訴えを基に意見を付す。」との見解が示されるなど、意見の中にはその客観性に疑いのあるものが含まれることが明らかとなっている。また、事実確認を行うことなく意見を付したとして賠償命令の判決が行われたこともあり、「相談の事実はあるが、支援措置の必要性は自治体で判断せよ。」とする相談機関の意見が増加傾向にある。
住民担当課は、DV等の相談部署ではないことから専門知識や調査権限も持っておらず、支援措置の必要性の実質的要件の判定は相談機関の意見に拠るほかないところ、各自治体においては、このような意見であっても、虚偽の措置申出である確証がない限りは支援措置をせざるを得ないのが実情である。
加えて法令の根拠なく行う判断に基づく不利益処分は、説明責任を果たすことが困難である実情も承知していただき、申出者・相談機関・交付申出を行う者及び自治体のそれぞれ遵守すべきことを法律により明らかにすることについて、前向きな検討を御願いしたい。
したがって、主文のとおり要望する。」
この京都府の要望から、支援措置制度に関する以下の実情が読み取れる。
① 相談機関の意見は、被害の事実確認をしていない、相談者の訴えを基にしたものにすぎないこと。
② そのような相談機関の意見は、客観性に疑いのあるものが含まれること。
③ 市区町村の住民担当課は、DVについての専門知識や調査権限を持っていないこと。
④ 虚偽の措置申出である確証がない限りは支援措置をせざるを得ないのが実情であること。
⑤ 支援措置決定を根拠とした不交付処分は、説明責任を果たすことが困難な、法令の根拠がない判断に基づく不利益処分であること。
このような実務の現場からの声に鑑みれば、虚偽の可能性が否定できない、事実確認をしていない客観性に疑いのある自称にすぎない被害の訴えは、被害者・加害者の関係を裏付ける根拠になりえないのだから、このような支援措置制度で加害者とされていたとしても、その者の申請が「不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)であると判断することはできない。
また、「虚偽の措置申出である確証がない限りは支援措置をしなければならない」とする法的根拠は存在しない。そもそも支援措置制度自体が行政組織内部での通知にすぎないのだから、そこに法的根拠が存在しないのは当然である。あるいは、このような行政組織内部での通知に則って支援措置決定がされたとしても、法文上、住民票の写し等の交付請求を拒否することができるのは、あくまで「不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)な場合であることに変わりはない。そして、「不当な目的によることが明らか」であることと、「虚偽の措置申出である確証がない」ことは大きく異なるのだから、これらを同義として扱うことはできない。この意味において、「虚偽の措置申出である確証がない」ことを理由に申請を拒否することは、住民基本台帳法第12条6項を逸脱した処分である。そのため、審査請求人に対する支援措置決定も上記と同様、単に措置申出が虚偽であるという確証がないという理由で決定された可能性が排除できない以上、本件不交付処分に合理的な根拠があったとはいえない。
そうすると、熊本市は本件原請求について、以下を確認する必要があった。
⑥ 支援措置決定に関する相談機関の意見等は事実確認を経たものであったか。
⑦ 支援措置決定に関する相談機関の意見等は審査請求人を加害者と認めたものであったか。
⑧ 支援措置決定に関する相談機関の意見等は支援措置の必要性を認めたものであったか。
⑨ 支援措置決定に関する相談機関の意見等は客観性に疑いのないものであったか。
⑩ 当初受付市区町村は単に措置申出が虚偽であるという確証がないという理由だけで支援措置を決定していなかったか。
⑪ そもそも事務処理要領5-10にある「原則」の対応で、審査請求人が加害者であることや、本件原請求に「不当な目的」があったことは確認できていたか。
それにも拘らず、熊本市は本件不交付決定処分において、上記についての確認を経ていないのだから、審査請求人が加害者であることや、本件原請求に「不当な目的」があったことを明らかな事実だとすることはできない。
以上の点から、支援措置制度が「申出者の被害申告の話が真実であるかの確認」について不完全であることは明白である。つまり、支援措置制度は、加害者とされる者からの請求を拒否できるのが「請求が不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)な場合と定めている法に違反することが明白である。当然、このような不完全な制度に則って審査請求人を加害者扱いして、漫然と本件不交付処分をした熊本市の違法性も明らかである。
なお、本来、上記の京都府の指摘を持ち出すまでもなく、どのような制度であってもその運用に人為的過誤が生じる可能性は常に存在する。そのため、審査請求人を加害者とした支援措置決定に人為的過誤がなかったことを立証できていない熊本市は、本件原決定においても、本件審査請求においても、手続き上の不備があると言わざるを得ないのだから、本件不交付決定処分は速やかに取り消されなければならない。
(3) 住民基本台帳法第12条第6項が不交付にできる理由としているのは、あくまで「不当な目的によることが明らか」なときである。また、支援措置制度において戸籍の写しなどの交付請求を拒否できるのは、住民基本台帳事務処理要領第5-10-コ-(イ)-(A)に基づき、「加害者が判明しており、加害者から請求又は申出がなされた場合」である。
では、加害者が「判明」するとは何か。たとえば警察等に疑われたときか? それは一般に言う容疑者や被疑者でしかない。では警察に逮捕されたときか? それでも加害者や加害行為が確定(判明)したとは言えない。では起訴されたときか? それは被告人であるが、推定無罪の原則があり、検察が起訴を判断したからといって100%有罪になるわけではないことからすれば、この段階でもまだ加害者であると判明しているとはいえず、被告人の段階の者を加害者だと確定した扱いをすることは人権侵害にもなりうる。支援措置制度は、加害者が判明しているときに適用するものであるのだから、仮に警察に逮捕されて起訴までされていたとしても、裁判の確定前に加害者が「判明」しているとの表現を使うことが不適切であるのは言うまでもない。
また、「判明」とは「明瞭によくわかること。はっきりわかること」(広辞苑第七版、2018年、岩波書店)なのだから、この日本語の意味からも、疑いや争いの余地が残っている場合に対して、加害者が「判明」しているとは言えない。
そうすると結局のところ、加害者とされた者にも主張立証の機会を保障した裁判の確定を経なければ、加害者が判明した状態だとは言えない。裁判の確定で加害者が判明している場合であれば、その者を支援措置における加害者とすることにも一定の合理性が認められる(ただし法務省民事局が回答しているように、支援措置における加害者であることと、「不当な目的」があることが、必ずしも同一であるとはいえないが、このことはひとまず措く)。
具体的には、支援措置制度が配偶者暴力防止法を要件に含んでいることからも、保護命令が確定していることを根拠として「加害者が判明」しているとすれば良い。
しかしながら、支援措置は加害者であることが確定していない者までをも対象者に含んでいる。加害者であることが確定していないということは、その加害者とされた者が不当な目的で申請したことが確定していないということでもある。支援措置制度は、「申出者の被害申告の話が真実であるかの確認」について不完全であるにも拘らず、加害者が「判明」していることを適用の条件にしているのだから、その制度内において内部矛盾があると言わざるを得ない。
そうすると、公正な裁判といった手続保障を経た上で加害者が確定している場合であれば、その加害者とされた者からの申請に「不当な目的」があるとすることに一定の合理性があるかもしれないが、加害者が確定していない場合、「不当な目的」があると断言できる明らかな根拠はないのだから、加害者であることが確定していない者にまで「不当な目的」があるとした対応をすることは、住民基本台帳法第12条第6項に反することになるし、加害者と「判明」していない者にまで支援措置を適用することは、住民基本台帳事務処理要領第5-10-コ-(イ)-(A)に反することになる。
なお、住民基本台帳法第12条第6項が申請を拒否できるとしているのは、あくまで「不当な目的によることが明らか」であり、仮にそれでは被害者保護に支障が生じるというのであれば、法改正によって改善すべき事項である。少なくとも現行法において、「不当な目的が疑われる」場合にまで、申請を拒否できるとする法的根拠は存在しない。住民基本台帳事務処理要領第5-10-コ-(イ)-(A)も同様、「加害者であることが疑われている」場合にまで、申請を拒否するとなっていない。
その意味において、加害者であることが「判明」している場合以外にも支援措置を適用することは、支援措置制度の運用上の誤りとなる。
以上により、本件原請求において、熊本市が加害者であることが判明していない審査請求人を加害者扱いして本件原請求を不交付にしたことは違法である。
(4) 支援措置制度には、加害者認定に事実誤認があった場合について何ら救済の手続保障が存在しない。これはつまり、支援措置制度は加害者が「判明」していることに疑いの余地がない場合にしか適用できない制度ということである。加害者が「判明」している場合にしか適用しないから救済の手続保障をする必要がないのであり、仮に加害者の「疑い」がかけられた者にまで権利利益の制限しながら、それが事実誤認だった場合の迅速な救済措置がないのなら、そのような制度は人権侵害に抵触するものとして違法である。
そうすると、審査請求人は自らが支援措置制度における加害者に該当することを否定しており、熊本市も審査請求人が加害者であると「判明」している根拠を示していないのだから、審査請求人が加害者であると「判明」しているとは言えない。審査請求人が加害者であると「判明」していないのだから、加害者が「判明」していることを要件とする支援措置で、審査請求人を加害者とすることは支援措置制度に反する違法なものであった。
(5) そもそも、事務処理要領5-10は「原則」としての対応が示されているにすぎない。そして、支援措置制度にはこの制度を逆手に取って悪用しているのではないかと推測されるケース(資料2)や、支援対象者の認定の客観性に疑いのあるケース(資料4)が指摘されているのだから、審査請求人が加害者とされていることがこれらに該当する可能性を排除できない以上、審査請求人が加害者だと「判明」していたとか、審査請求人の本件原請求に「不当な目的」が明らかだったとはいえない。
(6) つまるところ、熊本市の主張は事実上、審査請求人を加害者とする支援措置決定に事実誤認があったことで審査請求人の権利が侵害されていたとしても、事務処理要領に定める手続きに適合してさえいれば、行政不服審査法に基づく審査請求で審査請求人の権利利益を救済する必要はないということになる。
しかしながら、行政不服審査法に基づく審査請求にそのような例外規定を定めた法令は存在しない。また、本件審査請求は行政不服審査法に基づく適法なものであるが、支援措置制度に法規の性質はないのだから、支援措置制度には“適法”な手続自体が存在しない。そのため、審査請求人が事実誤認によって支援措置制度における加害者とされたことを根拠として本件不交付決定処分になっているのだから、その取り消しは、行政不服審査法に基づく本件審査請求での救済の範囲に含まれる。つまり、本件不交付決定処分が法規の性質がない支援措置制度に基づく手続きに適合していたか否かに拘らず、行政不服審査法に基づく権利利益の救済が優先される。このことは、行政組織内部の通知でしかない事務処理要領よりも、国会で定められた行政不服審査法が上位にあるのだから当然である。
また、審査請求人を加害者とする支援措置決定は行政不服審査法の対象となる「処分」ではないが、熊本市がその支援措置決定に基づいて本件不交付決定処分をしたという意味において、審査請求人を加害者とする支援措置制度自体の妥当性も本件審査請求での審査対象に含まれている。なぜならば、「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政不服審査法第1条)は、法規の性質のない不当な通知や連絡に適合していることを理由にその違法性や不当性が免責されるものではなく、また、熊本市が本件不交付決定処分の根拠としている他の行政庁による通知や連絡が違法又は不当なものであれば、それらを根拠として決定された本件不交付決定処分もまた、違法又は不当なものだからである。
要するに、熊本市による本件不交付決定処分が事務処理要領の手続きに適合していることは、審査請求人の行政不服審査法に基づく審査請求で救済を受ける権利を失わせるといった、そのような法律効果を生じさせるのかということであるが、当然そのような法律効果を規定する法令は存在しないのだから、本件不交付決定処分が事務処理要領の手続きに適合していることを基礎とする熊本市の主張は、いずれも失当である。
6 市区町村長はその請求が不当な目的によるものであるか否かがはっきりしないような場合にはその請求を拒絶することは許されないこと
前記で法務省民事局が言及している戸籍法10条2項は、以下のように定められている。
「市町村長は、前項の請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。」
これについて、「新版戸籍法逐条解説[改訂二版]」(日本加除出版株式会社、昭和56年)66~68頁において、以下のように記載されている。
「(1) 請求事由の明示
(中略)
請求事由の明示に関連して、もし請求者が請求の事由を偽って請求した場合にこれをいかにして阻止するかという問題がある。戸籍事務管掌者たる市町村長には、一般に戸籍上の請求ないし申請を受理するか否かを決定するに際しては、形式的審査権を有するだけで実質的審査権はないと解されている。そうすると、市町村長としては、この場合にも請求の事由として記載されているところから判断するほかはなく、また請求者にはその請求の事由が真実であることの証明を必要としていない。このような虚偽の請求の事由によって謄本等の交付を受けた者に対しては過料の制裁があり(戸籍法121条(審査請求人注:現行法の135条))、間接的に阻止する機能はあるが、事前に虚偽の請求をチェックすることは期待できない。このように解するとすれば、法が請求の事由の明示を求めてみても、果たして不当な目的による謄本等の交付請求を抑止しうるか疑問だとする批判がある。
市町村長は、戸籍上の届出ないし申請に対して形式的審査権をもつほかに、少なくとも経験則ないし職務上知りえた知識に基づく実質的審査権を有するものと解される。したがって、明示された請求の事由が虚偽であると疑うに足りる相当な事情がある場合には、その審査権を行使して調査し、もしそれが虚偽であり、かつ、その不当なことが明らかであれば、申請を拒絶することができる。市町村長はそれ以上に調査をする権限もなく、その必要もないので、その調査にもかかわらず後日その申請が虚偽にして不当な目的に出たものであったことが判明しても、その責めに任ずる必要はない。
(2) 不当な目的による請求の拒否
(中略)
前述したとおり市町村長は経験則ないし職務上知り得た知識にもとづく実質的審査権を有するのであるから、その権限を行使した結果、その請求が不当であるか否かを判断し、その「請求が不当な目的によることが明らかなとき」は請求を拒絶すべきである。これに反して、その請求が不当な目的によるものであるか否かがはっきりしないような場合にはその請求を拒絶することは許されない。」
さて、審査請求人の本件原請求にどのような「不当な目的」があったのか、熊本市は何ら主張をしていない。また、支援措置制度にはこの制度を逆手に取って悪用しているのではないかと推測されるケース(資料2)や、事実認定の客観性に疑いのあるケース(資料4)も指摘されており、そもそもどのような制度であっても人為的過誤の可能性は常にあるのだから、審査請求人を加害者とする支援措置決定がこれらに該当していないことが明らかでないかぎり、本件原請求が「不当な目的によることが明らか」であったとすることはできない。
また、熊本市は以下についても確認していない。
① 支援措置決定に関する相談機関の意見等は事実確認を経たものであったか。
② 支援措置決定に関する相談機関の意見等は審査請求人を加害者と認めたものであったか。
③ 支援措置決定に関する相談機関の意見等は支援措置の必要性を認めたものであったか。
④ 支援措置決定に関する相談機関の意見等は客観性に疑いのないものであったか。
⑤ 当初受付市区町村は単に措置申出が虚偽であるという確証がないという理由だけで支援措置を決定していなかったか。
⑥ そもそも事務処理要領5-10にある「原則」の対応で、審査請求人が加害者であることや、本件原請求に「不当な目的」があったことは確認できていたか。
そうすると、熊本市は本件原請求が不当な目的によるものであるか否かをはっきりさせておらず、その場合にはその請求を拒絶することは許されないのだから、熊本市の本件不交付決定処分の違法性は明らかである。
7 上級行政機関による通知は法令ではないこと
最高裁判所昭和43年12月24日(民集第22巻13号3147頁)は以下のように判示している。
「元来、通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであり、このような通達は右機関および職員に対する行政組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されることはあつても、一般の国民は直接これに拘束されるものではなく、このことは、通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合においても別段異なるところはない。このように、通達は、元来、法規の性質をもつものではないから、行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではない。また、裁判所がこれらの通達に拘束されることのないことはもちろんで、裁判所は、法令の解釈適用にあたつては、通達に示された法令の解釈とは異なる独自の解釈をすることができ、通達に定める取扱いが法の趣旨に反するときは独自にその違法を判定することもできる筋合である。」
支援措置制度は国会や地方議会といった立法機関によって立法化されたものではない。そのため、支援措置制度に法規の性質は存在せず、そのことは上記判例でも示されているとおりである。また、上記判例が示すように、処分が通達に反していたとしても、その処分の効力が左右されるものではなく、これを換言すれば、処分が通達に適合していたとしても、その違法性が左右されるものではないということでもある。つまるところ、行政庁の処分の適法性は、法規の性質がない支援措置制度等の通達に適合しているかではなく、法令に適合しているかで判断されなければならない。
そうすると、本件審査請求において、本件不交付決定処分の違法性を審査するにあたって、法規の性質がない支援措置制度に適合していることを根拠として、その処分が適法であるとすることはできない。
更に、支援措置制度に法規の性質がないことを措くとしても、支援措置制度の悪用(資料2)や、事実認定の客観性に疑いのあるケースが指摘され(資料4)、審査請求人が加害者とされていることに人為的過誤があった可能性も否定できない以上、審査請求人が支援措置制度で加害者とされていることだけをもって、本件原請求に「不正な目的」があったと判断をすることはできない。
8 大阪高裁平成30年1月26日判決について
(1) 熊本市は以下のように主張している。
「後述のとおり、事務処理要領における支援措置制度の位置づけについて、大阪高等裁判所平成30年1月26日判決(平成29年(行コ)第158号)【証3】は「住民に関する記録の適正な管理を図り、住民のプライバシー保護に配慮するという住基法の目的に合致するとともに、国及び地方公共団体は、配偶者暴力防止法に基づきDV被害者の適切な保護を図る責務を果たす(同法二条、九条)という観点からも合理性を有するものであるから、住基法の解釈を誤ったものということはできない。」としており、事務処理要領における支援措置制度が適法であることを前提に、事務処理要領に則って行われた戸籍の附票の写しの交付申出を拒否した処分を適法と判示している。」
さて、審査請求人は自らが支援措置制度での加害者に該当しないと主張している。仮に支援措置制度自体が住基法の解釈を誤ったものではないことを前提にしても、審査請求人を加害者としたことは支援措置制度の運用を誤ったものであった。つまり、支援措置制度自体の適法性と、その制度の個別の運用が適正であったかは別問題である。熊本市の主張をたとえれば、「道路交通法には合理性があるから、違反運転をする者はいない」と言っているようなものであり、制度と運用を混同することの非合理性は明らかである。右判決にしても、事実誤認という支援措置制度の運用上の誤りがある場合の処分まで適法と述べているわけではないし、加害者とされていることに事実誤認であることで不交付決定処分を受けた場合にその取り消しが行政不服審査法に基づく審査請求での救済の範囲であることを否定しているものでもない。つまり右判決は、加害者の事実認定に誤りがある場合には言及しておらず、加害者認定に争いがなく加害者が明らかに「判明」していることを前提にできる事案において、その場合の支援措置制度の手続きに則った不交付に対して合理性があると判示したにすぎない。つまり、右判決は本件審査請求と事情が異なる。そもそも、右判決のように加害者認定について事実誤認が主張されていない事件であればともかく、どのような制度の運用であれ、人為的過誤の可能性を無条件に排除すること自体が誤りである。
そうすると、審査請求人は自らの加害行為を否定しているにも拘らず、本件不交付決定処分の合理的根拠について立証責任がある熊本市は、審査請求人に支援措置制度における加害者に該当する行為があったのかについて根拠を示していない。このことは、審査請求人が加害者であると「判明」していないことを示しているのだから、熊本市による本件不交付処分決定は違法であり、審査請求人の権利利益は本件審査請求によって救済されなければならない。
ちなみに、支援措置制度自体の適法性は措くとしても、愛知県半田市は虚偽によるDVを認定したとして提訴され、その後、半田市は住民基本台帳事務処理要領に照らして不適正な取り扱いを行ったことを認めて和解している(資料3)。その意味においても、支援措置制度自体の適法性と、支援措置制度の個別の運用の適正性は別問題であり、本件審査請求でも当然、当初受付市区町村が住民基本台帳事務処理要領に照らして不適正な取り扱いを行ったことで、審査請求人が加害者とされていないかを審査する必要があったが、熊本市が審査請求人が加害者とされている合理的根拠を立証していない以上、本件審査請求で審査請求人が加害者だと「判明」していることを前提にした判断をすることはできない。
(2) そもそも、右判決は支援措置制度に基づいて、加害者が戸籍の附票を請求したことと同視して、住民基本台帳法20条3項各号に掲げる者には該当しないと判断して、訴訟当事者であった弁護士の請求を棄却したものである。その意味でも、右判決と本件審査請求は事情が異なる。
(3) 要するに熊本市は、大阪高裁平成30年1月26日判決を都合よく切り取り、加害者認定に事実誤認があったか否かに拘らず、本件不交付決定処分は適法であるとの主張していると考えられる。
しかしながら、上記熊本市の主張を是とするためには、加害者認定に事実誤認がなく、審査請求人が加害者とされていない場合も、本件不交付決定が適法であったといえる根拠があるかについて、熊本市は具体的に立証する必要がある。
更に、上記熊本市の主張を是とするためには、事実誤認によって審査請求人が加害者とされたことを根拠に本件不交付決定処分になっていても、その取り消しは行政不服審査法に基づく審査請求での救済の範囲に含まれないことを、熊本市は具体的に立証する必要がある。
上記2点について熊本市が具体的な主張と立証に成功しないかぎり、熊本市の大阪高裁平成30年1月26日判決に関する主張は失当である。
第2 結語
1 熊本市は、本件不交付決定処分で違法な決定をしたのみならず、行政不服審査法に基づく本件審査請求においても違法を繰り返そうとしている可能性が否定できない。熊本市が本件不交付決定処分を違法又は不当なものでないというのならば、本件原請求にどのような「不当な目的」があったかや、少なくとも審査請求人のどのような行為が支援措置制度における加害者に該当するかを明らかにする必要があったが、熊本市がそれらを怠り、本件原請求の「不当な目的」や審査請求人の支援措置制度の加害者に該当する加害行為が明らかになっていないにも拘らず、審査請求人が加害者であることを前提にした判断で、本件審査請求を棄却するならば、審査請求人の行政不服審査法に基づく公正な審査を受ける権利を侵害することになる。
また、審査請求人が加害者とされていることが事実誤認であることで本件不交付決定処分になっているのだから、行政不服審査法に基づく審査請求での救済の範囲内として、その処分は取り消されなければならない。それにも拘らず、熊本市が行政不服審査法に基づく救済の範囲を不当に制限し、事実上、事実誤認によって生じた審査請求人の権利利益の侵害を放置する判断をするならば、熊本市の本件審査請求に対する違法は明らかである。
この違法は、「審査請求人が加害者とされていることが事実誤認であることで本件不交付決定処分になっていることは、行政不服審査法に基づく審査請求での救済の範囲内である」との審査請求人の主張に熊本市が何ら判断を示さず、要するに無視(請求の理由で主張されたことに対する故意による審理不尽)をする場合、その悪質性は極めて顕著だと言えるだろう。このことは審査請求人の他の主張に対して無視等がある場合も同様である。都合が悪いことを無視した判断が、行政不服審査法の趣旨を蔑ろにするものであることは言うまでもない。
2 支援措置制度は立法機関において立法化されたものではないのだから、これを条例等の法規と同一視することはできず、法規の性質がない支援措置制度に適合していることを根拠として、本件不交付決定処分が適法であるとすることはできない。
また、行政不服審査法は「国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする」(同法1条)とされており、審査請求人を加害者とする支援措置決定に事実誤認があったことで審査請求人の権利利益が侵害されたのだから、審査請求人の権利利益は本件審査請求で救済されなければならない。なお、この場合の審査請求人の救済を受ける権利は、本件不交付決定処分が事務処理要領の手続きに適合していたか否かによって左右されるものではない。
また、支援措置制度はあくまで加害者が「判明」しているときに適用できるものであるのだから、加害者の認定に疑いや争いの余地が残っている本件審査請求において、審査請求人が加害者だと「判明」していることを前提にした判断をすることはできない。
また、支援措置制度にはこの制度を逆手に取って悪用しているのではないかと推測されるケース(資料2)や、事実認定の客観性等に疑いがあるケース(資料4)が指摘されており、そもそもどのような制度であっても人為的過誤の可能性は常にあるのだから、審査請求人が加害者とされていることがこれらに該当しない合理的根拠を熊本市が示さないかぎり、審査請求人が支援措置制度で加害者とされていることのみ理由に、本件原請求が「不当な目的によることが明らか」であったとすることはできない。
また、支援措置制度は原則的な対応を示しているにすぎず、市区町村に原則以外の対応を禁止しているものでないのだから、その原則的な対応で交付申請者に「不当な目的」があると「判明」できていない場合、その請求を拒絶することは許されない。
つまるところ、本件原請求のような戸籍の写し等の交付請求において、法文上、「疑わしきは罰せよ(疑わしきは不交付にせよ)」とはなっておらず、むしろ、疑いがあったとしてもその請求に「不当な目的」があることが明瞭に、はっきりとわかっていなければ、その請求を拒絶することは許されない。それにも拘らず、熊本市は審査請求人を加害者とする合理的な理由(審査請求人の具体的行為)を不合理に明らかにしていないのである。
よって、本件不交付決定処分は取り消されなければならない。
第
3 請求の理由の要旨(裁決書における審査請求人の主張の不当な切り取り予防、および、不当な切り取りがあった場合の立証用)
右の画像はマスコミの切り取り報道に対する風刺画であるが、本件審査請求においても同様の不当な切り取りで、審査請求人の主張全般に切り取りがあってはならない。本件審査請求においては、以下の審査請求人の主張に対して漏れなく審査し、仮にこれらの中に採用しないものがあれば、その合理的理由を漏れなく明記することで、行政不服審査法に基づく本件審査請求が適正に審査されたか否を明らかにしなければならない。
① 熊本市が本件不交付決定処分の根拠としている審査請求人を加害者とした支援措置決定(法規の性質のない通知や連絡)は、事実誤認がある違法又は不当なものなのだから、それらを根拠として決定された本件不交付決定処分もまた、違法又は不当なものとして取り消されなければならない。
② 本件原請求に「不当な目的」があったかや、審査請求人に加害行為があったかの立証責任は、本件原請求を不交付にした熊本市が負っている。
③ 支援措置制度は加害者が「判明」(住民基本台帳事務処理要領第5-10-コ-(イ)-(A))している場合に請求を拒否できる制度なのだから、加害者認定に疑いや争いがある本件原請求や本件審査請求において、支援措置制度を理由として熊本市の処分が適法だったとすることはできない。
④ 熊本市は審査請求人が支援措置制度における加害者であることが「判明」していたといえる合理的根拠(審査請求人の具体的行為)を何ら示しておらず、審査請求人が支援措置制度における加害者だと「判明」していたとはいえないのだから、熊本市が本件原請求を住民基本台帳事務処理要領第5-10-コ-(イ)-(A)に基づいて拒否をしたことは不当であった。
⑤ 熊本市が審査請求人が支援措置制度における加害者とされている根拠(審査請求人の具体的行為)を開示したとしても、それが事実であれば審査請求人自身の行為として、審査請求人が既知のことなのだから、その開示が被害者保護に反する事情なることはありえず、審査請求人が加害者とされている理由が虚偽や不当であれば、被害者は存在せず、審査請求人を加害者とすることも誤りなのだから、審査請求人が加害者とされている理由の開示が被害者保護に反する事情になることはありえない。
⑥ 審査請求人が支援措置制度における加害者とされている根拠(審査請求人の具体的行為)の開示は、本件審査請求において支援措置制度が適正に運用されていたかの確認や、事実誤認といった冤罪に対する権利利益の救済のためにも不可欠であるが、熊本市がこの開示を拒否している以上、本件審査請求において審査請求人が加害者だと「判明」していることを前提にした判断をすることはできない。
⑦ 支援措置制度にはこの制度を逆手に取って悪用しているのではないかと推測されるケース(資料2)や、支援対象者の認定の客観性に疑いのあるケース(資料4)の指摘や、愛知県半田市のように支援措置制度の不適切な運用を認めたケース(資料3)もあるのだから、審査請求人が加害者とされていることがこれらに該当する可能性を排除できない以上、審査請求人が加害者だと「判明」していたとはいえず、熊本市の本件不交付決定処分は、住民基本台帳法第12条第6項にも、住民基本台帳事務処理要領第5-10-コ-(イ)-(A)にも反したものであった。
⑧ 戸籍法10条2項は、その請求が不当な目的によるものであるか否かがはっきりしないような場合にはその請求を拒絶することは許されないものであり、住民基本台帳法第12条第6項も同趣旨であると解されるのだから、熊本市が本件原請求の「不当な目的」や、審査請求人が加害者と「判明」している根拠をはっきりさせていない以上、熊本市が本件原請求を不交付にしたことは違法であった。
⑨ 法規の性質がない支援措置制度は、本件不交付決定処分の違法性を判断する根拠になりえないのだから、本件審査請求では住民基本台帳法第12条第6項に基づき、熊本市が本件不交付決定処分に対して、どのような「不当な目的」が、どのような根拠をもって「明らか」だと認定したのかの妥当性が本来の審査対象であるが、熊本市がこれについての立証を怠っているのだから、本件原請求に「不当な目的」があったとすることはできない。
⑩ 大阪高等裁判所平成30年1月26日判決(平成29年(行コ)第158号)は本件審査請求と事情が異なる事件であるし、右判決は事実誤認という支援措置制度の運用上の誤りがある場合の処分まで適法と判示しているわけではない。
⑪ 支援措置決定は、法規の性質のない行政組織内部での連絡にすぎず、また、行政不服審査法に基づく審査請求の対象となる「処分」でもないが、本件不交付決定処分の処分庁は熊本市であり、審査請求人は事実誤認によって支援措置制度における加害者とされたことで本件不交付決定処分を受けたのだから、事実誤認を理由とする右処分の取り消しは、行政不服審査法に基づく熊本市に対する本件審査請求での救済の範囲に含まれる。
⑫ 加害者からの請求が全て戸籍法第10条第2項の「不当な目的」に該当すると判断できるとはいえず、個別判断を要するにも拘らず、熊本市はこの手続きに反して本件原請求に「不当な目的」があったかを個別判断せず、審査請求人に対し請求の理由を詳細に聞き取り、「不当な目的」によるものか否かを判断して対応することもせず、漫然と本件原請求を不交付にしたのだから、手続き上の不備がある本件不交付決定処分は違法である。
⑬ 本件審査請求においては、本件不交付決定処分が法規の性質がない支援措置制度に基づく手続きに適合していたか否かに拘らず、国会で定められた法規である行政不服審査法に基づく権利利益の救済が優先される。
⑭ 熊本市が支援措置制度において審査請求人が加害者とされている根拠(審査請求人の具体的行為)を明らかにしていないことで、審査請求人は本件審査請求において、自らが加害者とされていることについてその事実の有無や評価を争うことができず、これは行政不服審査法に基づく権利利益の救済の手続保障を法規の性質がない支援措置制度が阻害しているという意味において、支援措置制度は違法であり、熊本市が審査請求人が加害者とされている根拠を示さないことで、審査請求人が加害者でないことを具体的に主張立証するために必要な、行政不服審査法に基づく審査請求の手続きを阻害していることも違法であり、そのような違法な制度によって審査請求人が加害者とされていたとしても、本件不交付決定処分の適合性の根拠とはならない。
⑮ 支援措置制度は、「申出者の被害申告の話が真実であるかの確認」が不完全であり、事実誤認によって加害者とされた者が何ら「不当な目的」がなく交付請求した場合も拒否されるおそれがあるという意味において、支援措置制度は住民基本台帳法第12条第6項に反した違法な制度であり、その違法な制度に基づく熊本市の本件不交付決定処分も違法である。
⑯ 支援措置制度や支援措置決定は法規の性質を持つものではない、行政組織内部の通知や連絡にすぎないものであり、住民基本台帳法第12条第6項からすれば、本件不交付決定処分の最終判断責任が熊本市にあったことは明白であるのだから、熊本市が支援措置制度や支援措置決定を受け入れて本件不交付決定処分をしたという意味において、支援措置制度や支援措置決定の適合性や妥当性も本件審査請求の審査対象に含まれる。
⑰ 本件審査請求において、以上のいずれか1つにでも無視や審理不尽や具体性のない抽象的誤魔化しがあれば、行政不服審査法に基づく救済の手続保障を不当に阻害したものとして、その違法性は明らかである。
以 上
再々反論書
令和4年4月17日
審理員(総括) 山﨑広信 宛
審査請求人 (審査請求人)
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電 話 ■■■■■■■■■■■■■■■■■
住民基本台帳事務に関する処分に対する審査請求(令和3年市行審第9号)について、処分庁が令和4年4月14日付けで提出した再々弁明書に対し、次のとおり再々反論する。
なお、熊本市の再々弁明書のほとんどは以前と同じ主張で、審査請求人が既に反論済みのことを蒸し返しているにすぎない。
第1 再々弁明書に対する審査請求人の主張
1 熊本市は、本件審査請求は令和2年12月4日に関する内容のため、同月24日の戸籍附票請求は無関係だとしている(1頁)。
さて、熊本市はこの24日の請求も審査請求人による請求であったと誤った弁明をしていた。このことは行政庁が誤ることがあることを示しており、行政庁が誤るおそれがあるからこそ、本件のような審査請求の制度があるのである。そもそも、行政庁というよりも、人間は誤ることがある存在である。
そうすると、審査請求人が支援措置制度における加害者とされていることも誤りであるおそれが否定できず、審査請求人は自らに支援措置の必要性の要件に該当する行為がないと主張し、熊本市も審査請求人に支援措置の必要性の要件に該当する行為があることを立証していないのだから、本件審査請求において審査請求人を支援措置における加害者とすることはできないという意味において、本件不交付決定処分は速やかに取り消されなければならない。
2 熊本市は、支援対象者の居所や行動範囲の特定又は推認につながりうる情報を明らかにすることはできないとしている(2頁)。
これについては既に再反論書で述べたとおり、審査請求人が加害者とされている理由(審査請求人の具体的加害行為、および、それが支援措置の必要性の要件のいずれに該当するか)を開示しても、それが支援対象者の居所や行動範囲等の特定又は推認につながることになりえない。そして、熊本市は審査請求人の右主張に対して何ら具体的弁明をしていない。
そうすると、熊本市は支障のない情報さえも不合理に開示せず、本件不交付処分に必要であった「合理的な根拠」(審査請求人の具体的加害行為、および、それが支援措置の必要性の要件のいずれに該当したか)を述べていないのだから、本件審査請求は認められなければならない。
3 熊本市は、事務処理要領第5-10の規定に基づき、申出者及び併せて支援を求める者の戸籍の附票について支援措置を決定することを決定し、本件処分を行ったものであり、適法としている(2頁)。
これについても既に再反論書で述べたとおり、事務処理要領は法規の性質がないものなのだから、熊本市が事務処理要領の基づいた対応をしていたとしても、それは本件不交付決定処分が適法であったことを裏付けるものとはならず、また、審査請求人の本件原請求が「不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)であったことを裏付けるものともならない。
4 熊本市は、本件処分は住民基本台帳法に基づくものであり、戸籍法10条2項に関する審査請求人の主張は失当であるとしている(2頁)。
さて、住民基本台帳法第12条6項は、以下のように定められている。
「市町村長は、第一項の規定による請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。」
また、戸籍法10条2項は以下のように定められている。
「市町村長は、前項の請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。」
このように、住民基本台帳法第12条6項と戸籍法10条2項は法条文の構成がほぼ同じであることが分かる。つまりこの同一性から、住民基本台帳法第12条6項と戸籍法10条2項は、その適用条件が同じものであると解される。そうすると、熊本市は本件不交付決定処分の時点において、本件原請求が不当な目的によるものであるか否かをはっきりさせていなければならなかったが、熊本市はこれを怠っており(そもそも本件原請求に不当な目的など存在しないが)、その場合にはその請求を拒絶することは許されないのだから、本件不交付決定処分の違法性は明らかである。
なお、戸籍法10条2項を措くとしても、住民基本台帳法第12条6項を適用できるのは「不当な目的によることが明らかなとき」なのだから、本件原請求についても、不当な目的によるものであるか否かがはっきりしないような場合にはその請求を拒絶することは許されなかった。法文上、「不当な目的が疑われる」、「不当な目的のおそれがある」、「不当な目的が否定できない」といった事情で拒否することは許されておらず、同様に、「加害者であることが疑われる」、「加害者のおそれがある」、「加害者であることが否定できない」といった事情で拒否できるとする法的根拠も存在しない。
そうすると、熊本市は本件審査請求においても、本件不交付決定処分に必要であった「合理的な根拠」(審査請求人の具体的加害行為、および、それが支援措置の必要性の要件のいずれに該当したか)を述べていないのだから、本件不交付決定処分は違法なものとして本件審査請求は認められなければならない。
5 熊本市は、事務処理要領における支援措置制度の定めは、(中略)住民基本台帳法の目的からも合理性を有するとしている(3頁)。
しかしながら、既に再反論書で述べたとおり、仮に支援措置制度が住民基本台帳法の目的からも合理性を有するとしても、支援措置制度は支援措置の必要性の要件に該当する加害者からの申請を不交付にするというものなのだから、支援措置制度における加害者に該当しない審査請求人を加害者としたことは、支援措置制度の運用を誤ったものであった。このことは、住民基本台帳法第12条6項に反することを意味する。つまり、支援措置制度の合理性と、その制度が人為的過誤等がなく適正に運用されていたかは別問題である。そして、事実誤認等の支援措置制度の運用に誤りがあった処分は、住民基本台帳法第12条6項に反するものとして違法である。
6 熊本市は、審査請求人が引用している最高裁判所昭和43年12月24日(民集第22巻13号3147頁)はある事件における通達の一般的性質等を述べたものであり、今回の事案と直接関係はなく、住民基本台帳法に基づく事務処理要領により全国的に統一して行われている支援措置制度を否定するものではないとしている(3頁)。
しかしながら、既に再反論書で述べたとおり、上級行政機関の通達といえども法規の性質はないし、熊本市は支援措置制度に法規の性質がある根拠を示しておらず、熊本市は支援措置制度に法規の性質がないことを否定してもいない。更に、支援措置制度に関する通達が通達の一般的性質に該当しないという弁明も熊本市はしておらず、支援措置制度に関する通達が通達の一般的性質と異なることを裏付ける根拠もなく、支援措置制度が全国的に統一して行われているとしても、それによって支援措置制度に法規の性質が生じるわけでもない。つまり、支援措置制度に関する通達も、通達の一般的性質を逸脱したものではない。
そうすると、本件審査請求で本件不交付決定処分の違法性を審査するにあたって、法規の性質がない事務処理要領に適合していることを根拠として、その処分が適法であるとすることはできない。あくまで住民基本台帳法第12条6項に基づき、熊本市が本件原請求に対して、どのような「不当な目的」が、どのような根拠をもって「明らか」だと認定したのかが本件審査請求の審査対象であるが、熊本市がこれについての主張立証を怠っているのだから、本件審査請求は認められなければならない。
7 熊本市は、相変わらず大阪高裁平成30年1月26日判決を引用した弁明をしているが(4頁)、既に再反論書で述べたとおり、右判決は事実誤認という支援措置制度の運用上の誤りがある場合の処分まで適法と述べているわけではないし、加害者とされていることに事実誤認であることで不交付決定処分を受けた場合にその取り消しが行政不服審査法に基づく審査請求での救済の範囲であることを否定しているものでもない。そして、熊本市は審査請求人の右主張について何ら具体的弁明をしていない。そうすると、大阪高裁平成30年1月26日判決を都合よく切り取ったに過ぎない熊本市の主張は失当である。
8 熊本市は、審査請求人の再反論書第2及び第3について、認否反論した内容と重複するため認否反論の要をみないとしている(4頁)。
しかしながら、審査請求人が再反論書第2及び第3で記載した主張に対して、熊本市が具体的弁明をしていないものが多々あり、ここに熊本市の主張の不備がよく表れている。
3例ほど挙げる。1つ目。支援措置決定は、法規の性質のない行政組織内部での連絡にすぎず、また、行政不服審査法に基づく審査請求の対象となる「処分」でもないが、本件不交付決定処分の処分庁は熊本市であり、審査請求人は事実誤認によって支援措置制度における加害者とされたことで本件不交付決定処分を受けたのだから、事実誤認を理由とする右処分の取り消しは、行政不服審査法に基づく熊本市に対する本件審査請求での救済の範囲に含まれるとの審査請求人の主張に対して、熊本市は何ら認否や弁明を明らかにしていない。
2つ目。熊本市が審査請求人が支援措置制度における加害者とされている根拠(審査請求人の具体的行為)を開示したとしても、それが事実であれば審査請求人自身の行為として、審査請求人が既知のことなのだから、その開示が被害者保護に反する事情なることはありえず、審査請求人が加害者とされている理由が虚偽や不当であれば、被害者は存在せず、審査請求人を加害者とすることも誤りなのだから、審査請求人が加害者とされている理由の開示が被害者保護に反する事情になることはありえないとの審査請求人の主張に対しても、熊本市は何ら認否や弁明を明らかにせず、一方的に上記情報の開示が被害者保護に反するとの主張を不合理に繰り返している。
3つ目。支援措置制度にはこの制度を逆手に取って悪用しているのではないかと推測されるケース(資料2)や、支援対象者の認定の客観性に疑いのあるケース(資料4)の指摘や、愛知県半田市のように支援措置制度の不適切な運用を認めたケース(資料3)もあるのだから、審査請求人が加害者とされていることがこれらに該当する可能性を排除できない以上、審査請求人が加害者だと「判明」していたとはいえず、熊本市の本件不交付決定処分は、住民基本台帳法第12条第6項にも、住民基本台帳事務処理要領第5-10-コ-(イ)-(A)にも反したものであったとの審査請求人の主張に対して、熊本市は何ら認否や弁明を明らかにせずに、審査請求人の主張に弁明できずに誤魔化しや論点ずらしの態度を繰り返している。
これら3点を含む審査請求人の主張に対して熊本市が具体的弁明を怠ったものについては、これ以上の弁明はないものとして、審査請求人の主張が採用される必要がある。なお、審査請求人の主張に対して熊本市の具体的弁明がないにも拘わらず採用しないものがあれば、適正手続に反する攻撃防御の機会を保障していない不意打ちとなるのだから、違法である。
9 熊本市は、本件処分は事務処理要領に則った処理だとしている(5頁)。
しかしながら、既に再反論書で述べたとおり、事務処理要領に則った処理とは、支援措置の必要性の要件に該当する加害者からの申請を不交付にすることなのだから、支援措置制度における加害者に該当しない審査請求人からの本件原請求を拒否したことは、事務処理要領にも、住民基本台帳法第12条6項にも反した処理であった。
ところで、支援措置制度は加害者が「判明」している場合に適用できる制度であるが(住民基本台帳事務処理要領第5-10-コ-(イ)-(A))、審査請求人は支援措置制度が「申出者の被害申告の話が真実であるかの確認」に不完全であることを述べ、その根拠(資料2~4)も示している。
それにも拘わらず、熊本市東区長本田昌浩が本件不交付決定処分を事務処理要領に則った処理だとしていることは、本件不交付決定処分の時点で審査請求人が支援措置制度における加害者だと疑いの余地なく「判明」していたと主張していることと同義である。そのため、熊本市東区長本田昌浩が正当な根拠なく審査請求人が加害者であることを前提にした主張を繰り返しているのであれば、審査請求人に対する著しい人権侵害行為であり、また、行政不服審査法に基づく審査請求の適正手続きを不当に阻害する行為として、法的責任を問う必要性が生じる。
第2 審査請求人の主張
1 名古屋高等裁判所令和3年4月22日について
名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決(資料5)は、被控訴人が、元妻である控訴人から、ドメスティック・バイオレンス(以下「DV」という。)の加害者であるとして、ドメスティック・バイオレンス、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者保護のための住民基本台帳事務における支援措置(以下「支援措置」という。)の申出をされ、当該市町村において、被控訴人からの住民票等の写しの交付申請を拒否する措置が講じられ、その後も支援措置の延長が行われているところ、控訴人が、支援措置の要件を欠くことを認識し又は認識し得たにもかかわらず、平成30年5月31日までに3回目となる支援措置の延長の申出をし、令和元年5月31日までに4回目となる支援措置の延長の申出をしたことはそれぞれ不法行為に該当し、それにより、被控訴人の自尊感情及び社会的評価が毀損された旨を主張して、控訴人に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、220万円(慰謝料200万円、弁護士費用20万円)及びこれに対する平成30年8月20日(被控訴人に対し、控訴人との間の長女の戸籍の附票の写しの不交付決定がされた日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原審は、各延長申出時点で客観的に支援の必要性の要件を欠き、控訴人はこれを容易に知ることができたのにあえて延長の申出をしたことが不法行為に当たるとして、各申出につき被控訴人の自尊感情の損害による慰謝料5万円、弁護士費用5000円の計11万円及び遅延損害金の限度で請求を認容した。控訴審である名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決でも原決定が維持された。
この名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決では、以下の判示がされている。
「支援措置が実施されることにより、被控訴人は、市町村において、支援措置上のDVの加害者であって、その更なる暴力により被害者が生命又は身体に危害を受けるおそれがあるものとして扱われ、そのことを被控訴人自身の行為によっては容易に是正することができない状態に置かれていることになり、被控訴人は、自己に関する誤った情報を是正することができないことにより人格的利益を害されたものと認められる。」。
「支援措置が加害者と扱われる者に一定の不利益を与えるものであることが否定できない以上、DV被害者が主観的に恐怖心を有するからといって、客観的に支援の必要性の存在が認められるものと解することはできない。」。
また、この裁判例では「前件訴訟」として当事者が同じである名古屋地方裁判所平成29年6月22日判決を引用し、「被告が平成27年5月18日に支援措置の申出をしたことに関し、客観的には支援の必要性はなかった」としている。
この裁判例で注目すべきは、客観的に支援の必要性の存在が認められなくても、市区町村は支援措置の決定をしていることである。つまり加害者が「判明」しているとはいえず、客観的に支援の必要性が認められない場合も支援措置が決定されているのは、支援措置制度が加害者の「判明」機能に重大な不備があるからであり、右裁判例はそれを事実認定したものだといえる。しかも右裁判例では、支援措置の申出に加え、その後の4回の延長と、5回にわたって客観的に支援の必要性が認められない支援措置決定がされているのだから、支援措置制度における加害者「判明」機能の不備は深刻であると言わざるをえない。このような支援措置制度によって加害者とされたとしても、それは客観的な支援の必要性を担保していることにはならず、それは本件審査請求においても同様である。あるいは、上記裁判例と本件審査請求では事情が異なるとする場合であっても、既に述べたように不交付には明らかな合理的根拠が必要であるという意味において、審査請求人が支援措置の必要性の要件の加害者に該当していたかの立証責任は熊本市にあり、熊本市がその立証責任を果たしていない以上、審査請求人が支援措置における加害者だと「判明」していたとは言えないのだから、本件不交付決定処分は違法である。
2 法と事務処理要領の関係について
熊本市は法と事務処理要領の関係について、大阪高裁平成30年1月26日判決を引用して述べているが、前記の名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決は支援措置の違法性を、事務処理要領の則った処理であったかではなく、支援措置の必要性の要件を満たしていたかで判断している。本件審査請求においても、当然、審査請求人が支援措置の必要性の要件を満たしていたかで判断されなければならない。
ただし、本来、事務処理要領と支援措置の必要性の要件は区別すべきものではなく、支援措置は加害者が「判明」している、つまり加害者とされた者が支援措置の必要性の要件の加害者に該当することが明らかな場合に適用できるのだから、事務処理要領に則る(加害者が「判明」している場合に不交付にする)ことと、支援措置の必要性の要件を満たす場合に不交付にすることは、同じことを意味する。法との関係においても、住民基本台帳法第12条6項は「不当な目的によることが明らか」なときしか不交付にできないと規定しているのだから、やはり加害者が疑いの余地なくはっきりと「判明」している場合でなければ、不交付にすることは許されない。
そのため、大阪高裁平成30年1月26日判決と名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決は矛盾しない。事務処理要領に則った処理とは、支援措置の必要性の要件の加害者に該当する者からの請求を不交付にすることであり、名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決もそれを基準に判断している。
そうすると、審査請求人は自らに支援措置の必要性の要件に該当する行為がないと主張し、熊本市も審査請求人に支援措置の必要性の要件に該当する行為があることを立証していないのだから、本件審査請求において審査請求人を支援措置における加害者とすることはできないという意味において、本件不交付決定処分は速やかに取り消されなければならない。
3 支援措置の必要性の要件
前記した名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決は、支援措置の必要性の要件として以下を判示している。
(ア) 申出者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第1条第2項に規定する被害者であること
(イ) 申出者が、加害者からの更なる暴力により生命又は身体に危害を受けるおそれがあること
(ウ) 加害者が、被害者の住所を探索する目的で、住民基本台帳の閲覧等を行うおそれがあること
そうすると、本件審査請求においても審査請求人が上記要件の加害者に該当していたかが審査対象である。
それにもかかわらず、 熊本市がこれについての具体的主張立証をしない以上、本件原請求が支援措置の必要性の要件に該当していたとは言えず、加害者が「判明」していなかったという意味において加害者認定を含む本件不交付決定処分にかかる一連の処理が事務処理要領に則っていたとも言えないのだから、本件不交付処分は違法なものとして速やかに取り消されなければならない。
第3 結語
1 名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決では、行政庁がどのような手続き不交付にしたのか、それが事務処理要領に則ったものであったかを含め、何ら検討されていない。このことは、行政庁がどのような手続きで処理をしたかとは無関係に(それが事務処理要領に則っていたとしても)、加害者とされた者が支援措置の必要性の要件の加害者に該当していなければ、客観的に支援の必要性がなかったとしてその支援措置決定は違法ということである。当然、違法な支援措置決定を基礎とした不交付決定処分も違法である。
そして、本件原請求について、熊本市は審査請求人が支援措置の必要性の要件の加害者に該当していたかや、客観的に支援の必要性があったかを主張立証できていないのだから、本件不交付決定処分は速やかに取り消されなければならない。
2 ところで本書面の冒頭で述べたように、熊本市の弁明のほとんどは既に審査請求人が反論済みのものにすぎない。また、「事務処理要領に則る」とは、「支援措置の必要性の要件を満たす加害者からの請求を不交付にする」ことなのだから、審査請求人がこの要件を満たしていたかを主張立証していない熊本市の弁明は、不毛な審理の遅滞を生じさせていると言わざるをえない。熊本市が「争う」としていることについても、単にそう書かれているだけで、それについての具体的弁明が欠如していることも多い。これが今後も続くようであれば、熊本市東区長本田昌浩の人格的問題に疑義が生じるが、行政不服審査法第1条、28条、37条では迅速な審理が規定されている。そのため、審理員においては、不当な引き伸ばしに加担しない適正な手続きによる進行を求める。
なお、熊本市が再度の弁明をする場合、「事務処理要領に則る」とは「支援措置の必要性の要件を満たす加害者からの請求を不交付にする」ことだとする審査請求人の主張に対する認否や、仮に認めない場合は「事務処理要領に則る」ことの具体的内容について、明らかにされたい。また、熊本市が支援措置の必要性の要件を満たす必要性に言及しない場合、事実誤認によって支援措置制度における加害者とされたことで不交付決定処分を受けても事実誤認を理由とする右処分の取り消しは、行政不服審査法に基づく審査請求での救済の範囲に含まれないとする立場なのかや、その場合の法的根拠についても明らかにされたい。熊本市にこれらに真摯に弁明しない場合、本件審査請求に有効な弁明をしていないとして、不当な引き伸ばしに加担しない適正な手続きによる進行を求める。
3 支援措置はDV等の被害者保護のためのものだが、資料3に記載されているように、支援措置制度は不当な親子関係の制限に悪用されているおそれがあり、客観的に支援の必要性がない場合にも加害者とされるおそれがある制度である。更に本件では、審査請求人が監護する長男が、弟である二男と交流する機会を奪われ、審査請求人の父母も、孫である二男との交流の機会を奪われることにもなっている。二男にとっても、父親や父方祖父母からの愛情を受ける機会を奪われ、兄との交流の機会を奪われていることになる。
熊本市東区長本田昌浩が不毛な弁明で事実上、父子関係や兄弟関係等の断絶に加担する態度を執拗にとるのであれば、住民基本台帳法や行政不服審査法への法令遵守に反するものと言わざるをえない。
以 上
再々々反論書
令和4年5月26日
審理員(総括) 山﨑広信 宛
審査請求人 (審査請求人)
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電 話 ■■■■■■■■■■■■■■■■■
住民基本台帳事務に関する処分に対する審査請求(令和3年市行審第9号)について、処分庁が令和4年5月20日付けで提出した再々々弁明書に対し、次のとおり再々々反論する。
なお、熊本市が開示してきた証4と証5は時機に遅れた攻撃防御方法というべきもので、そもそも本件審査請求の結果を左右するような証明力も有しておらず、それ以外に関する熊本市の再々々弁明書の内容も審査請求人が既に反論済みのことを蒸し返しているにすぎない。
第1 再々々弁明書に対する審査請求人の主張
1 証4から証5について
(1) 熊本市は今更になって証4から証5を審査請求人に開示することで、支援措置申出者が令和2年10月28日の時点で夫(審査請求者)の暴力を主訴とする相談を行っていたとしている。
ここではなぜ、熊本市が再々々弁明書証に至るまで証4や証5を審査請求人に明らかにしなかったのかの心理を推測すると興味深い。審査請求人は既に資料2において三重県が、支援措置制度にはこの制度を逆手に取って悪用しているのではないかと推測されるケースも少なからず存在すると指摘していることを引用している。また資料4で示したように京都府が、「支援措置は住民票の写し等の交付請求又は申出を行う者の権利を一定制限するものであることから、その措置の実施の判断は、客観性を持った相談機関の意見を踏まえて行うべきものであると考えられるところ、ある相談機関との懇談において、『あくまでも相談機関ですので、被害の事実確認はしない。相談者の訴えを基に意見を付す。』との見解が示されるなど、意見の中にはその客観性に疑いのあるものが含まれることが明らかとなっている。」と指摘していることも引用している。
そうすると、熊本市は審査請求人が提出した資料2や資料4により、被害の事実確認をしていない単なる相談記録にすぎない証5が、審査請求人の加害行為を立証していないものだと認識できていたと解するのが妥当である。そのため熊本市は、どうにか審査請求人に証5を開示せずに口先で誤魔化せないかと足掻き、できることなら事実確認がされていない相談の記録でしかない証5の開示を避けたかったということだろう。
(2) 支援措置決定には客観的な支援の必要性がなければならず、その必要性は名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決で以下のように判示されている。
(ア) 申出者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第1条第2項に規定する被害者であること。
(イ) 申出者が、加害者からの更なる暴力により生命又は身体に危害を受けるおそれがあること。
(ウ) 加害者が、被害者の住所を探索する目的で、住民基本台帳の閲覧等を行うおそれがあること。
しかしながら、証5の2枚目に「相談を実施したことを証明する。」とあるように、証5は支援措置の申出者が相談行為をしたということしか立証していない。また、「配偶者暴力防止法に係る被害者を自称する者に相談行為があれば加害者とされた者の戸籍附票等の交付請求を拒否できる」とする法文上の根拠はないのだから、証5は本件不交付決定処分を正当化する根拠になりえていない。証4も審査請求人の具体的加害行為を立証しているものではない。
熊本市が証4や証5しか提出できていないことは、熊本市が審査請求人が支援措置の要件に該当する加害者であると「判明」している合理的根拠を確認することなく本件不交付決定処分をしたことを意味している。そのような本件不交付決定処分が速やかに取り消されなければならない。
(3) 総務省のウェブサイトにある「住民基本台帳事務における支援措置申出書」の標準書式は証5の1枚目と同じものであり、右申出書には「相談機関等の意見」として、「上記申出者の状況に相違ないものと認める。」や「上記併せて支援を求める者について、申出者を保護するため支援の必要性があるものと認める。」といった項目にチェックを入れる欄がある(証5ではこの部分がマスキングされている)。ここで名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決に鑑みれば、右事件の支援措置の申出書でもこれらにチェックが入れられ、支援の必要性があるものとされていたはずであり、そうでなければ手続き上、支援措置の申出は容認されない。それでも右裁判例はこのような事実確認を経たことになっている支援措置決定でも、客観的には支援の必要性はなかったと判断している。つまり、支援措置の決定過程において当初受付市区町村長や相談機関等が支援措置の必要性があると判断していても、それは必ずしも客観的な支援の必要性を担保することにはならないことを、右裁判例は判示しているのである。だからこそ、審査請求人は自らが支援措置における加害者とされていることが事実誤認であると主張しているし、熊本市の審査請求人の右主張に対して争うのであれば、審査請求人のどのような行為が支援措置の必要性の要件に該当していたかについては、本件不交付決定処分の処分庁である熊本市に立証責任がある。それにもかかわらず、熊本市は審査請求人に支援措置における加害行為があったのかについての主張立証から逃げ回っているのだから、審査請求人に支援措置の必要性の要件に該当する加害行為があったとする根拠は存在しない。
なお、資料4で示したように京都府は「虚偽の措置申出である確証がない限りは支援措置をせざるを得ない」と述べているが、本来、このような加害者が「判明」しているとは言えない事案では「支援の必要性があるものと認める」との項目にチェックを入れることはできず、支援措置を適用することが違法であるのは言うまでもない。その意味においても、本件事件が「虚偽の措置申出である確証がない」という理由だけで支援措置が決定されていないかを確認するため、審査請求人に支援措置の必要性の要件に該当する加害行為があったかを本件審査請求で審査対象にする必要があることは繰り返し述べているとおりである。
むしろ、熊本市は審査請求人の具体的加害行為についての主張立証を怠り続けているのだから、このような熊本市の態度は、審査請求人に支援措置の必要性の要件に該当する加害行為がなかったことを隠蔽し、審査請求人に不当な不利益を与え続けようとしているものと言わざるをえない。
2 本件支援措置において客観的な支援の必要性があったとする根拠が示されていないことについて
熊本市は再々々弁明書において以下のように述べている(1頁)。
「処分庁は、近接した時期に夫の暴力を主訴として相談機関に相談を行っている事実及び当初受付市町村長が支援措置の必要性を確認している事実から、支援措置の必要があるものと取り扱ったものである。」
あまりにも突っ込みどころが満載だが、まず、相談は相談に過ぎず、相談行為を客観的に支援措置の必要性の要件に裏付ける根拠とすることはできない。
また、資料4で示したように京都府は「住民担当課は、DV等の相談部署ではないことから専門知識や調査権限も持っておらず」と述べていることから、本件支援措置決定でも、専門知識や調査権限がない当初受付市町村長が支援措置の必要性を適正に確認できたのかについては、強い疑義があると言わざるをえない。これは相談機関等についても同様であり、専門知識や調査権限があったのか不明な相談機関等が適正な事実確認をできたのかついても、強い疑義があると言わざるをえない。そもそも、当初受付市町村長が支援措置の必要性をどのように確認したのか不明であるし、客観的な確認自体を本当にしたのかについても根拠が示されていない。つまり、熊本市の上記主張はいずれも審査請求人の支援措置制度における加害行為を裏付けるものとはなっていない。
熊本市の弁明は要するに、「当初受付市町村長が本当に支援措置の必要性を確認したかは何も根拠を示さないが、そんな根拠がなくても疑うことなく無条件に盲信しろ」というものであり、このような弁明に合理性がないのは明らかである。当然、行政不服審査法においても「根拠が示されていない処分庁の弁明であっても無条件に盲信して審理の前提にしても差し支えない」といった規定はない。
そのためやはり本件審査請求での争点は、審査請求人に支援措置の必要性の要件に該当する具体的加害行為があったかである。審査請求人に支援措置の必要性の要件に該当する具体的加害行為が確認できなければ、被害者を自称する者に相談行為があっても支援措置が必要だったとは認められないし、審査請求人に支援措置の必要性の要件に該当する具体的加害行為が確認できなければ、当初受付市町村長が支援措置の必要性を適正に確認していなかったことが明らかになる。そして現状、熊本市は審査請求人に支援措置の必要性の要件に該当する具体的加害行為があったかについて、何ら具体的立証をしていない。
3 大阪高裁平成30年1月26日判決や支援措置制度について
既に述べたように、審査請求人は自らが支援措置制度における加害者に該当しないと主張しているのだから、支援措置における加害行為の有無について争っていない大阪高裁平成30年1月26日判決は本件審査請求と事情が異なる。
また、法規の性質がない支援措置制度に従ったことが適法の根拠にならないことも既に述べているとおりである。
4 名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決について
熊本市は、本件審査請求と名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決は事情が異なるとしているが、右事件において5回にもわたって客観的な必要性のない支援措置決定がされていることが事実認定されているのだから、支援措置制度が加害者の「判明」機能において重大な不備があるのは明らかであり、これについて熊本市は何ら具体的弁明をしていない。そのため本件審査請求においても、事実確認の方法やそもそも事実確認をしたのかも不明である証5の1枚目や、相談の記録でしかない証5の2枚目を、審査請求人が支援措置制度における加害者である根拠にすることはできない。
また、名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決では、支援措置に関する違法の判断基準として、支援措置の必要性の要件が示されており、本件審査請求においても審査請求人が上記要件の加害者に該当していたかが最重要な審査対象である。つまり、審査請求人のどのような行為がこの要件に該当していたかについて具体的な主張立証をできていない熊本市は、合理的根拠なく本件不交付決定処分に及んでいることになるのだから、その違法性は明らかである。
第2 審査請求人の主張
1 通知・通達は自治体に対する拘束力を持たないこと
中央省庁からの通知・通達は自治体を拘束することができない(資料6)。そのため、通知・通達は法令に基づく事務執行に際しての根拠になり得ない。当然、支援措置制度に係る通知・通達にも拘束力がない以上、本件原請求の事務執行に際して支援措置制度は根拠になり得ない。
これを本件審査請求でいえば、事務処理要領第5-10オに「原則として,当初受付市区町村長が支援の必要性があることを確認したことをもって,当該地の市町村長における支援の必要性もあることとする取扱いとして差し支えない。」とあっても、このような通知に拘束力はないし、当初受付市区町村からの転送書類(証4と証5)も熊本市に対して拘束力を持つものではない。そうすると、法文上、本件不交付処分は熊本市がその裁量権で主体的に判断したものとなり、熊本市が当初受付市区町村長が支援の必要性を適正に確認したかを確認せず、審査請求人が支援措置の必要性の要件に該当していないにも拘わらず本件不交付決定処分をしたことは、法文上、熊本市の違法な処分となるとなるのだから、そのような違法な本件不交付決定は速やかに取り消されなければならない。
あるいは、熊本市が当初受付市区町村長が支援の必要性を適正に確認したと弁明するのであれば、その根拠となる確認の方法や、確認された内容となる審査請求人のどのような行為が支援措置の必要性の要件に該当していたのかを明らかにすることで、本件不交付決定処分の合理性を立証しなければならず、熊本市がそのような立証をしない(できない)場合、やはり当初受付市区町村長は支援の必要性を適正に確認した根拠はないとして、本件不交付処分は合理性が確認できない違法な処分として速やかに取り消されなければならない。
なお、既に述べたように、本件不交付決定処分の処分庁は熊本市である以上、本件不交付決定処分に合理性があったかの立証責任は熊本市にあるのだから、事実上、「当初受付市町村長が本当に支援措置の必要性を確認したかは何も根拠を示さないが、そんな根拠がなくても疑うことなく無条件に盲信しろ」となっている熊本市の弁明を無条件に盲信して採用することは、行政不服審査法に基づく審査請求の適正審査に反することになる。
2 通達に従った措置であっても違法になりうること
通達に従った措置であっても裁判所は違法と判断した事例もある(最高裁判所平成19年2月6日第三小法定判決)(資料6)。そのため、通達に従っていれば無条件に適法だとすることはできない。仮に熊本市が通知に従っていれば違法とはならないとの誤った認識を持つことで、審査請求人が支援措置の必要性の要件に該当していたかの確認を怠ったとしても、それはそのような誤った認識をした熊本市の責任であり、当然、熊本市の誤った認識に基づく本件不交付決定処分は違法なものとして速やかに取り消されなければならない。
3 本件審査請求では弁明の裏付けを確認する必要があること
本件のような審査請求では、当然、慎重かつ適正な根拠に基づく審査が必要である。さて、熊本市は「当初受付市町村長が支援措置の必要性を確認している」と弁明しているが、これが事実であるとの根拠は示されているだろうか。いや、ない。このように熊本市が根拠を示すことができていない事実は、裏付けのない熊本市の上記弁明は本件審査請求で採用することができないことを意味する。
なお、相談行為での被害の自称が、加害者とされた者の加害行為を立証していないのと同様、根拠が示されていない当初受付市区町村長や相談機関等の支援措置の必要性を確認したとの自称も、加害者とされた者の加害行為を立証することにはならない。
また、支援措置の必要性の確認は、審査請求人が支援措置の必要性の要件に該当する加害行為があったのかについて、客観的な事実に基づいて確認されたものでなければならず、そのような客観的な確認が適正に実施されたことを裏付ける根拠が示されないかぎり、本件不交付決定処分は違法なものとして速やかに取り消されなければならない。
4 過去にも違法な支援措置決定が発生していること
支援措置決定が必ずしも加害者とされた者の加害行為を証明するものとなっていないことは、既に引用した名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決(資料5)で示したとおりである。そしてこのような違法な人為的過誤があった可能性が本件不交付決定処分でも否定できない以上、本件審査請求においては、審査請求人が支援措置の必要性の要件に該当していたかが最重要となる審査対象である。
更に、行政不服審査法は第7条で適用除外を規定しているが、その中には「通知や通告に則った処分」は含まれていない。その意味においても、熊本市が法規の性質がない支援措置制度に則った処理であったことを理由に、本件不交付決定処分が適法であったと主張していることには、合理性も法的根拠も存在しない。
仮に本件審査請求において、本件不交付決定処分が審査請求人のどのような行為が、どのような事実確認を経て、支援措置の必要性の要件や「熊本市住民基本台帳に係る個人情報の保護に関する条例」第3条のどの項目に該当したと判断したものであるかが明らかになっていないにも拘わらず、漫然と審査請求人が加害者であることを前提にした判断をするならば、行政不服審査法の趣旨を蔑ろにした悪質な違法行為であると言わざるを得ない。
5 不利益を与える処分には個別の事情が必要なこと、および、専門的知見に基づかない判断には過誤、欠落があることについて
本件審査請求を適正に審理するにあたり、参考になりそうなニュース記事があったので引用する。
(1) 「時短命令」熊本県は従来の対応継続 東京地裁「違法」判決受け(熊本日日新聞 | 2022年05月17日)
(https://kumanichi.com/articles/659566)
「東京都が新型コロナウイルス対策で出した飲食店への営業時間短縮命令に対して、東京地裁が「違法」との判断を示したことについて、熊本県は17日、国の通知に基づき命令を出す従来の対応を継続する考えを示した。県は時短による感染拡大の防止効果を重視。これまで延べ62店に原則午後8時以降の営業停止を命令している。
新型コロナ対応の改正特別措置法は、命令の発出要件を「感染拡大防止のために特に必要があると認められる場合」と規定。東京地裁判決は、その運用は「慎重であるべき」で、「不利益処分がやむを得ないと言える個別の事情が必要」との判断基準を示した。」(令和4年5月26日閲覧)
さて、名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決は「支援措置が加害者と扱われる者に一定の不利益を与えるものであることが否定できない」としており、上記記事では東京地裁の「不利益処分がやむを得ないと言える個別の事情が必要」との判示が記載されている。
そうすると当然、本件不交付決定処分にも審査請求人に一定の不利益を与えることがやむを得ないと言える個別の事情があったかが争点であり、それは審査請求人に支援措置の必要性の要件に該当する加害行為があったかということだが、その根拠を熊本市が示さないままでいることは、繰り返し述べているとおりである。
審査請求人が加害者とされている根拠となる審査請求人の具体的行為について、その行為が事実であったことを裏付ける根拠はあるのか、また、審査請求人になんらかの行為があったとしてもそれは支援措置の必要性の要件に該当するものであるのかが本件審査請求での本来の審査対象であり、これらを審理するに値する主張立証を熊本市はしていないのだから、本件不交付決定処分は合理的根拠に欠ける違法なものとして速やかに取り消されなければならない。
(2) 生活保護引き下げは「違法」 熊本地裁、処分取り消し 全国2例目の原告勝訴(熊本日日新聞 | 2022年05月25日)
(https://kumanichi.com/articles/667813)
「生活保護費の基準額が引き下げられたのは、憲法が保障する生存権に違反するとして、熊本県内の受給者36人が、国から事務を受託する各自治体に減額処分の取り消しを求めた訴訟で、熊本地裁(中辻雄一朗裁判長)は25日、「厚生労働相の判断は裁量権の逸脱または乱用で、生活保護法に違反する」として、全員の減額処分を取り消す原告勝訴の判決を言い渡した。
(中略)
判決理由で、中辻裁判長は、所得が下位10%の消費実態に生活保護基準を合わせる「ゆがみ調整」の影響を半減させた判断と、物価下落率に応じて減額する「デフレ調整」について、いずれも「専門的知見に基づく適切な分析や検討を怠り、過誤、欠落がある」と述べた。」(令和4年5月26日閲覧)
さて、資料4で示したように京都府は「住民担当課は、DV等の相談部署ではないことから専門知識や調査権限も持っておらず」と述べていることから、本件支援措置決定でも、専門知識や調査権限がない当初受付市町村長による支援措置の必要性の確認は、専門的知見に基づく適切な分析や検討を怠るという過誤、欠落があることになる。
これについても熊本市は、無視するか、弁明をするとしても本件審査請求とは事情が異なるといった的はずれなことしか言うことができないように思われるが、ここでの争点は、本件支援措置決定の必要性の確認が専門的知見に基づいてのものであったかである。専門的知見に基づいていれば人為的過誤がないと必ずしも断言できるものではないが、専門的知見に基づいていなければ、尚更、本件支援措置決定は適正手続に欠けていたと言わざるを得ない。そして、熊本市は当初受付市区町村長や相談機関等が支援の必要性を確認するにあたり、専門的知見を持っていたのか、仮に専門的知見を持っていたとすればどのような経験や資格等の根拠に基づくものであるのかについて、何ら弁明をしていないのだから、本件支援措置決定が専門的知見に基づく適正な必要性の確認を経たものであったということはできず、そのような適正手続に過誤、欠落がある支援措置決定を前提にした本件不交付決定処分も、違法なものとして速やかに取り消されなければならない。
6 本件不交付決定処分による審査請求人の権利利益侵害は本件審査請求で救済されなければならないことについて
熊本市の弁明を換言すると、「支援措置決定に従っただけだから処分庁は悪くない。」というものだが、念のために繰り返し述べておくと、支援措置決定には何ら法的根拠や拘束力がないため、熊本市が当初受付市区町村長による支援措置決定を受け入れる判断をして本件不交付決定処分を決定したことは,法文上、その支援措置決定の受け入れの判断や、不交付決定処分の判断の責任は熊本市にある。例えて言えば、熊本市と当初受付市区町村長との関係は、熊本市が実行犯、当初受付市区町村長が教唆犯というものであり、教唆(支援措置決定)にも責任があるが、教唆(支援措置決定)に従わなければならない拘束力を規定する法的根拠がない以上、熊本市に本件不交付決定処分の最終判断責任があることに疑いの余地はない。
そして、熊本市が支援措置決定の合理的根拠(審査請求人の支援措置の必要性の要件に該当する具体的加害行為)を説明できず、よって本件不交付決定処分の合理的根拠を示せないことは、本件不交付決定処分が適正手続に反したものであることを示している。そうすると、熊本市が受け入れることを判断した当初受付市区町村長による支援措置決定や、本件不交付決定処分はどちらについても合理的根拠が認められないのだから、本件不交付決定処分で被った審査請求人の権利利益の侵害は、本件審査請求において救済されなければならない。
7 熊本市の遅延行為や蒸し返しについて
単なる相談行為が支援措置の客観的な必要性を立証するものでないことは、既に資料4での京都府の指摘を引用して述べており、熊本市が証5を開示せずに誤魔化そうとしていた心理については既に推測したとおりだが、今更になって熊本市が証4と証5を出してきたことは、本件審査請求に対する不当な遅延行為を言わざるをえない。
同様に、証4と証5に関することを除けば、熊本市の再々々弁明書は相変わらず審査請求人が反論済みのことを蒸し返し、都合が悪いと思われる審査請求人の主張は無視しているものに過ぎず、審査請求人が再々反論書第3の3で指摘した点についても熊本市東区長本田昌浩は弁明をしていないのだから、熊本市東区長本田昌浩は本件審査請求に有効な弁明をせずに不当な遅延行為を繰り返しているとして、本件審査請求では不当な引き伸ばしに加担しない適正な手続きによる進行を求める。
なお、審査請求人は本書面と同時に新たに資料6を提出したが、これは既に述べてきた、支援措置制度に法規の性質がないことや、支援措置制度が法的根拠にならないこと、支援措置決定に拘束力はないため本件不交付決定処分の最終判断責任が熊本市にあるといった主張の根拠を明確にしたものである。
第3 結語
熊本市は前回の再々弁明書において、支援措置制度が全国的に統一して行われていることを述べている。
そうすると、名古屋高等裁判所令和3年4月22日判決で違法とされた5回にもわたり繰り返された支援措置決定と同様の手続きが、本件支援措置決定でも統一的に行われたと解するのが妥当である。このように、支援措置制度が全国的に統一して行われているからこそ、客観的にも本件支援措置決定における適正な事実確認にも強い疑義が生じ、本件不交付決定処分の合理性について立証責任がある熊本市は、この疑義を否定する根拠を何ら示せていない。
これらのことからも、合理性を示せない本件支援措置決定を前提にした本件不交付決定処分は、違法なものとして速やかに取り消されなければならない。
以 上
再々々反論書(補足)
令和4年9月12日
審理員(総括) 山﨑広信 宛
審査請求人 (審査請求人)
〒■■■■■■■■■■
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電 話 ■■■■■■■■■■■■■■■■■
住民基本台帳事務に関する処分に対する審査請求(令和3年市行審第9号)について、審理員からの質問事項に対する処分庁からの令和4年8月26日等の回答を踏まえ、再度以下の主張をする。
1 これが最終書面になると思われるが、審査請求人としては当初、相談機関等による支援措置の必要性の確認に不備があることが争点だとの想定で主張をしていたのだが、それ以前の問題であったことはたまげたというほかない。
熊本市が回答で認めているように、本件支援措置申出書において相談機関等は、
1 上記申出者の状況に相違ないものと認める。
2 上記併せて支援を求める者について、申出者を保護するため支援の必要性があるものと認める。
3 1・2以外の場合に、相談機関等において、特に把握している状況(※一時保護の有無、相談時期等)がある場合。
のいずれの欄にもチェックを入れていない。また、それ以外に本件支援措置の必要性を認める添付書類もないし、当初受付市区町村が相談機関等とは別個に本件支援措置の必要性を確認したと認めるに足る裏付けもない。なお、資料4で京都府が述べているように、住民担当課はDV等についての専門知識や調査権限を持っておらず、当初受付市区町村の住民担当課は例外的にDV等についての専門知識や調査権限を持っていたとする根拠もないため、当初受付市区町村の住民担当課が支援措置の必要性の実質的要件の判定するのは困難であり、仮に本件において当初受付市区町村が相談機関等とは別個に支援措置の必要性の実質的要件の判定したとするのであれば、どのような専門知識や調査権限を持った者が、審査請求人のどのような具体的行為を支援措置の必要性の要件に該当したのかを明らかにした上で、本審査請求でその審査請求人の具体的行為が支援措置の必要性の要件を満たしていたかについて、審査請求人に攻撃防御の機会を保証しなければならなかったが、熊本市がそれをしていない以上、当初受付市区町村が相談機関等とは別個に審査請求人に支援措置の必要性の要件を満たす加害行為があったことを確認していたとすることはできない。というか、そもそも熊本市自体、当初受付市区町村がそのようなことをしたとの主張をしていないよね。
ちなみに、熊本市が本件支援措置決定とは別個に本件不交付の必要性を確認したと認めるに足る根拠もなく、これについてはそもそも、熊本市は本件支援措置決定のみを根拠として本件不交付決定処分をしたとの弁明をしている。
2 支援措置制度において戸籍の写し等の交付請求を拒否できるのは、住民基本台帳事務処理要領第5-10-コ-(イ)-(A)に基づき、「加害者が判明しており、加害者から請求又は申出がなされた場合」と明記されている。で、「判明」とは「明瞭によくわかること。はっきりわかること」(広辞苑第七版、2018年、岩波書店)なのだから、審査請求人が加害者であることが明瞭に疑いの余地なく分かっていることを裏付ける根拠が認められなければ、本件支援措置決定は支援措置制度に反した誤った運用をしたことになり、そのような誤った運用に基づく本件不交付決定処分も誤りで違法ということになる。
本件でどのような加害者が判明していた必要があったかは、本件支援措置申出書(資料7)で「A 配偶者暴力防止法」にチェックが入れられていることから、支援措置の必要性の要件に基づき、支援措置の申出人が「配偶者暴力防止法第1条第2項に規定する被害者であり,かつ,暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがある方。」との要件を満たしていたことが「判明」していたかが本件の争点である。
では加害者の判明方法だが、総務省自治行政局は以下のように回答している(資料10)。
「相談機関からの意見によって支援の必要性が確認できない場合など、市町村で支援措置の必要性に疑義が生じる場合は、当該意見を記載した相談機関等に問い合わせ、再度、意見を求めることが適当と考える。」
また、資料9で示したように熊本市自体、支援措置の要件を「相談機関から支援が必要と認められた方」としており、これが事実上の加害者の判明方法になっている。
そして言うまでもなく、本件では相談機関等から支援の必要性が認められていなかった(資料7ないし8)。つまり、本件支援措置決定は加害者が判明していないにもかかわらず決定されたものであり、そのような適正手続に反した本件支援措置決定を基礎とした本件不交付決定処分は違法なものであった。仮に支援措置制度自体が合理的なものだとしても、その制度の運用に誤りがあったのだから、本件が違法なものとして速やかに取り消されなければならないのは当然である。この制度自体の合理性と、運用の適正手続の区別も無視しないでね。
支援措置制度に合理性があるとしても、それは「加害者が判明」していた場合に、「不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)として申請を拒否できるとのロジックなのだから、本件がこれに該当しないのは当然だよね。
ちなみに審査請求人としては、適正手続の不備というモヤモヤが残る主張にならざるをえないのは不満であり、自らに支援措置の必要性の要件を満たす加害行為がなかったことをきっちりはっきりとさせたかったが、熊本市が「加害者が判明」していた根拠を示さない以上、審査請求人がその根拠に対して攻撃防御をすることも不可能であり、悪魔の証明である「加害行為が無かったこと」の証明が困難である以上、適正手続の不備しか主張できないのは残念である。ただし、熊本市が審査請求人の支援措置の必要性の要件を満たす加害行為を主張できていないことや、相談機関等が支援措置の必要性を確認していないこと、そして当初受付市区町村が適正手続を怠っているという複数の状況証拠自体が、審査請求人に支援措置の必要性の要件を満たす加害行為がなかったことを示していると言えるが。また、そもそも審査請求人に支援措置の必要性の要件を満たす加害行為があったかは、本件原請求を不交付決定にした熊本市に立証責任があるのだから、熊本市がその立証責任を果たしていない以上、本件は違法なものとせざるをえない。
3 熊本市は本件支援措置決定を鵜呑みにしただけ、だから本件支援措置決定に誤りがあったとしても熊本市の決定は違法ではないとした場合、支援措置決定が誤っているのにそれを基礎とした不交付決定は誤りではないとすることにどのような屁理屈をつけるのか、あるいは都合が悪いことには言及せずに無視するという態度に出るのかが注目すべき点だろう。これについては、
・ 支援措置制度に法規の性質があるのか、
・ 本件支援措置決定は熊本市に対して法的拘束力があったのか、あるいは、法文上、本件支援措置決定は法的拘束力がない判断材料の1つにすぎないものであるのか、
・ 支援措置制度自体の合理性と、支援措置制度の運用の適正手続を区別できていない態度になっていないか、
・ 適正手続等に誤りがあった支援措置決定を基礎とした不交付決定処分の取り消しが行政不服審査法に基づく再審請求の対象外とする法的根拠はあるのか、
ということが本件の争点である。
4 支援措置申出書に「5 支援措置は、厳格な審査の結果、不当な目的によるものでないこととされた請求まで拒否するものではありません。」と、“わざわざ”記載されていることも無視しないように。これは総務省がウェブサイトで公開している支援措置申出書の時点で記載されているものである。「こんなこと事務処理要領に書いていない」との反論を想定しても、じゃあその事務処理要領って法的にどのような位置づけなの? というと、法的拘束力のない技術的助言で、熊本市にはこれに従わなければならない法的根拠はない。だったら、この支援措置申出書の記載も従わなければならない法的根拠はないと言われそうだが、どちらにも拘束力がないのなら、「不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)の最終判断責任が熊本市(より正確には東区長か)にあるのは明らかであり、支援措置決定がされていても「不当な目的」がない場合には、法文上、その交付申請を拒否することはできないのだから、この支援措置申出書の記載は正しいことになる。
で、これについても、熊本市が本件原請求に「不当な目的」がないかを、支援措置とは別個に確認しなかったことは、上記の支援措置申出書の記載に反しているのだから、この意味においても熊本市による本件不交付決定処分は適正手続に欠いており違法である。
5 他にも念を押しておきたい点はあるが、既にこれまでの書面で主張していることでもあるので、これ以上は繰り返さない。本件はそもそも支援措置制度自体の不備によって生じた違法な処分といえるが、本件不交付決定処分の最終判断責任が熊本市にあるのは明らかであり、法文上、支援措置制度に熊本市に対する法的拘束力はなく、資料7や8を転送されていた熊本市は、本件支援措置決定が「加害者が判明」されないままに決定されたものであることを容易に認識することができる立場にあり、熊本市は本件支援措置決定がどのような経緯で「加害者が判明」されたのかを当初受付市区町村の問い合わせることもできたのだから、そのような本件原請求が「不当な目的によることが明らか」(住民基本台帳法第12条6項)であるかの確認を怠ったという意味では、熊本市の責任も免れない。
以上により、本件不交付決定処分は速やかに取り消されなければならない。
以 上