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情報システム部の問題と解決方法

DXコンサルとして多くの企業を支援してきていますが、結構な数の企業で「情報システム部門」の問題を抱えている企業が多いようです。
経営者に話を聞くと
・情シスにDXを依頼しているが、なかなか進まない。
・情シスに頼んでも、期待している回答が得られない。逆にどうしてほしいのかを聞かれる。
・結局、コンサル、ベンダーが出てくる。
等々

という話をよく聞きます。
今回は、この問題を紐解いていきたいと思います。
そして、その解決方法にまで迫っていきたいと思います。

情報システム部の生い立ち

そもそも「情報システム部」とはどうできたのか?という点から考えてみたいと思います。

PCが会社にやってきた?!

日本で最初の商用コンピュータの利用は1955年の野村證券でのUNIVAC導入だそうです。オフコンはそのころからの普及になります。このころは完全にベンダー任せですね。一般企業にPCが入り始めたのはNECのPC-9801が普及し始めたころだと思います。つまり1980年半ば以降。ただ、それでもせいぜい社内に数台ある状態だったと思います。なので、当時は総務で備品を購入するのと同じレベルだったかと。コピー機やワープロ専門機なども総務などで購入・管理されていたと思います。
会計ソフトや表計算ソフトなどの購入もされていましたが、まだ専任部署ができるほどではありませんでした。

要はこのころのシステムは「スタンドアローン」=独立したシステムだったわけです。単独で動くシステムですね。そのため、影響範囲が限られるわけです。特定業者に依頼していればよかった時代です。ソフトの管理なども備品管理同様、部署ごとで良かったわけです。なので、まだ専任部署的なものは見られなかった時代です。
問題はこの次位からです。

情報システム部門の登場

まず出てくるのが、ネットワーク化です。PCつないでプリンタ共有するレベルから、どんどん複雑化していきます。そしてインターネットの出現。イーサネット敷設、ルーター管理。この辺になるとさすがに備品管理レベルでは難しくなります。それぞれが繋がる=深く関係するからなのですね。ソフトウェアも増え、いろんなシステムを統合するようになってきます。部署間連係、ソフトウェアライセンス管理など、全社的に見ていく必要が出てきます。当然、ベンダと会話するためだけでもある程度の知識も必要となります。そのため専門部署が作られるようになりました。これが情報システム部門の登場となるわけです。
そして、自社の業務プロセスに合うようにシステムを組み合わせたり、カスタマイズしたりすることが出てきます。システムの統合化ですね。

この時点から欧米と日本では差異が生じ始め、今では大きな差異になってしまったと私は見ています。

日欧の相違

欧米では、この辺の統合化も自社内で行うという動きが出たのに対し、日本では「システム・インテグレータ(SIer)」なるものが登場します。これ、日本特有の「お任せサービス」ですね。そもそも日本はこのようなサービスが好き?で、商社、ハウスメーカなどもまさにお任せサービスです。
これらのお任せサービスは欧米には無いのです。
例えば家の場合、日本ではハウスメーカを使う方が多いと思いますが、米国の場合は、図面はプラン集として本屋で購入し、気に入った図面を設計会社から自分が購入、その図面をもって建材屋さんで部材を拾い出し、建築業者を見つけ、現場監督をアサインし、モーゲージ(住宅ローン)の手配も自分でやるわけです。一方、「ハウスメーカ」だと全部ひっくるめてやってくれます。便利なサービスなわけです。
様々なシステム系サービスをひっくるめてやってくれるSI会社があれば、楽なわけです。なのでほとんどの企業がそちらに流れたわけです。しかも、何か問題があればSI会社に責任押し付けてしまえば良いわけです。担当者は楽ですね。
基本人間の行動は「苦楽」で決まります。なので、楽できるのであれば、自然にそちらに流れてしまうわけです。
一方、そういうサービスが無ければ、自分でやるしかないわけです。専門知識を学び、企業内でシステム開発できる部署が出来、パッケージは当然外部から取り入れますが、統合は自分で行うわけです。(余談ですが、1990年代に米国出張した際、当時のStateStreet銀行にヒアリングに行ったことがあります。システム技術者はその時点で全社員の25%でした。また、証券トレーダがC言語でプログラムを書いていたりしていました。)
つまり、欧米ではこれらの作業は当たり前に「自分事」だったわけです。
この状態で30年ほど経過したわけなのです。欧米では自分事としてきちんとやる人間が出る一方、日本ではお任せ主義が蔓延し、大した技術スキルの無い人間が増えていったというわけです。
要は中にいるのは「手配師」「保守要員」だけというわけですね。
試しに、御社の情シスに聞いてみてください。「私はこういう考えです!」ではなく、「〇〇ベンダがこう言っています。」「〇〇ベンダのせいです。」「〇〇ベンダに聞いてみます。」というような言葉がすぐに出てきたとしたら、まず間違いないです。

上記はかなり極端な例ですが、経営側が意識せずにやらせていた場合、このようになっても仕方ないと思います。理由は簡単です。「(現場としては)任せてしまえば楽」「責任はベンダ、オレじゃない。」だからです。
ここからわかるのは、日本のCIOも怪しいということです。(中にはちゃんとした方々もいますが「ベンダー使い」が圧倒的に多いです。二言目にはベンダーに「提案して!」と言ってくるのはそういう輩です。)

建築に例えてみる

こう書くと「情シスの連中が怠けてる!」「もっと勉強すればいいんだ!」と思われる経営者もいるかもしれません。が、そうではなく、これは「経営者の意識」の問題なわけです。経営のスタンスが原因です。
この状態がどのくらい違うのか、ピンとこない方もいるかもしれないので、別の表現で説明してみたいと思います。

私はよくシステムを「建築」に例えることがあります。この表現だとすぐに理解していただけるからです。
ビルを建てるには様々な機能、スキルを要します。
・ビルの設計
・ビルの施工
・ビルの施工管理
・土木設計
・土木工事
・水道、ガス配管
・ビル用備品購入管理
・ビル清掃
・・・・・
昔はどの建物も全く同じ構造で、差別化にもならなかったとします。
であれば、どこかの「既製品=パッケージ」を購入していればよかったのです。そしてそれ以外にやることはその維持管理。「備品管理、清掃」レベルなわけです。
しかし、もしフロア、内装を差別化することが始まり、徐々にビルそのものまで機能・差別化するような時代になったらどうなるでしょう?
当然、そこまで自分でやれるようなスキルが必要になるということになります。自分でやらないにしても、作業内容を完全理解しなければいけないはずです。
よく「システム屋」という言い方をする方々がいます。これ「建築屋」と言っているのと似たようなもの。建築だと上記のように様々なスキルが必要となるのがすぐに分かるはずです。同様にシステムでも同じ。一言でITと言ったとしても、インフラをやっている人と、上流設計をやっている人とではスキルは異なるのです。
つまり、言いたいことは何かというと、経営側が上記をきちんと理解していないため、人材採用も育成も何もしてこなかったということなのです。
それでいながら「これはお前たちの仕事だろう?」とか、「このデジタル系の業務はお前らに任せる。」という多くの経営者がいます。
これは、あたかもビルの備品管理・保守の方に「お前ら、ビルには詳しいはずだよな?であれば自社に合うようなビル設計くらいできるよな?」とかと言っているようなものです。そもそも備品管理の人はその人の適正で仕事をしているわけなのです。もし、設計者になれと言うのであれば、それなりの素養も必要でしょうし、さらに教育が必要なわけです。
要は乱暴な議論ということがご理解いただけたと思います。
未だに「システムの事はわからない。」「システムなんて、スイッチ入れれば動くんだろう!」程度の方々もいるのも事実です。

必要な業務定義とスキルをきちんと考える

早い話、30年以上もの空白時間によるツケが今になって出てきているわけです。
ではどうすれば良いのか?ということなになります。
1)今必要なことを列挙し、必要な機能を書き出す。そこに必要なスキルを洗い出す。
2)情シスの現在の作業を洗い出す。
3)情シスメンバーの素養、スキルを確認する。

2)はすぐにわかると思います。
3)現在のメンバーに確認すればできるでしょう。

問題は1)です。1)は本来行うべきであろう仕事です。
DXで言うのであれば、業務プロセスの構築・最適化というのも仕事の中に入ってきます。(というか、経営側がそもそもその「情報システム、DX推進部門」の業務定義ができないから、こんなことになっているとも言えますね。)そして、それを実現するために必要なスキルも確認します。
上述した「ビル建築」の例でいうのであれば、「設計」をできるようになるには、少なくとも「ビル」という機能を知っている必要があります。
「このビルは商業ビルで、複数の企業が入る。そのため間取りの自由度が必要。」
「エントランスは集中管理で・・・」
「各階にトイレ、給湯室を配備し・・」
・・・
というようなもの。

これはシステムで言うのであれば、「業務内容、目的」をきちんと理解しているということに当たります。その上で、それを実現するための技術を理解している必要があります。ビルでいうのであれば、「工法」とか理解してなければ机上の空論ですね。実際の現場も理解してなければ正しい設計できるはずもないのもすぐにわかると思います。
要はシステムの世界は「目で見えない」ためにわかりにくいということなわけです。ですが、建築のように置き換えてみると、自ずと業務内容も役目も必要なスキルもすぐにわかると思います。

そして1)2)3)のギャップを分析するわけです。当然1)と2)に大きな差があります。そしてそのまま実現しようとしても3)の壁にぶち当たるはずです。
こう書いてみるとわかると思いますが、ほとんどが社内のことになります。社内におけるプロセス、データの取り扱い、社内でないとわからないことだらけです。それもそのはず、時代はもう差別化の時代に入っているわけです。なので、外部コンサルに丸投げして出来るはずもないことはすぐにご理解いただけると思います。

差別化の仕事か?それとも?

こう書くと、業務範囲かなり広範囲になりますが、全部書き並べたうえで、それを実行できるためのスキルまで整理してみてください。
すると気が付くと思います。。特に旧来の情シスの仕事:ライセンス管理、システム機器管理などを考えてみると、別に社員でなくても出来るのではないか?というものです。差別化要因でもなんでもないですね。これはもっとコスト下げられるはず。
重要なのは、上流工程(業務設計、データ設計など、会社を差別化するための「設計業務=エンタープライズ・アーキテクチャ」となるはずです。

どう人材を確保するのか?アサインするのか?

このように書くと、次のような言葉をよく聞きます。
・そんなこと言っても、うちにはそのようなことができる人材はいない。
・なので外部からIT系人材を採用したいが非常に大変。採用すらできない。
・仮に採用したとしてもすぐに辞めてしまう。
これらについても見ていきましょう。

社内に人材がいない

すぐにこういう話が出ます。ですが、本当にそうでしょうか?
確かにIT知識は足りないケースはありますが、数十社以上見てきた経験から言いますと、業務プロセスを抽象化し、最適プロセスを考える能力を持っている人は必ずいます。
実際、ITは単に「決めごと=定義」なので、物事をきちんと「定義づけ」でき、かつ業務プロセスをモデルとして捉えられる人であれば、設計をさせることは可能なわけです。この人にIT知見を持っている人や外部支援と組ませればよいわけです。
#この人材選抜は簡単な方法で出来ます。詳しくは直接お問い合わせください。

外部からIT人材を採用

昨今外部からのIT人材の採用は非常に難しいです。技術者は引っ張りだこですので、その通りですね。
ですが、そもそもどういったスキルを持った人材を獲得したいのでしょうか?まずはそこからです。このためには、上述したように「必要としている素養」を明確にする必要があります。
業務プロセスを最適化ができるような人が欲しいのに、PMをとるとなると、建築の例でいうのであれば、設計士が欲しいのに現場監督を雇ってしまうようなものです。こうなるとお互い不幸です。
ただ、彼らのレジメを読み取れるか?というのも重要だったりします。「〇〇プロジェクトを実施」とあっても、どういう立場で何をしたのか?という確認が大事になります。
特によくあるのが「アレオレ詐欺」ですね。
つまり、「アレはオレがやった!」というヤツです。レジメを見ると素晴らしい実績が並んでいます。いかにも全部やったように見えるのですが、本当でしょうか?
これ、特に大手企業とかの元情シスの部長とかに見られますね。
「〇〇プロジェクトを統制し、△の実績を上げる。」
でも、よくよく聞いてみると、やったのはベンダー。彼は単に「手配師」だったということが往々にしてあります。
#これもある質問をすれば一発で見破れます。

また、IT人材はある意味「職人」です。単に金で動かない人たちもいます。特に優秀であればあるほどその傾向が高いです。
なので、どれだけ魅力的な仕事を任せるか?というも重要だったりします。
逆に魅力的なオファーがだせれば、優秀な人材も確保できます。

IT人材を採用しても定着しない

このようにおっしゃる経営者も多いです。せっかくコストをかけて採用したのにも関わらず、ものの数か月でやめてしまうというケースです。

例えばですが、もしビルの設計までできる人に対して、備品管理をやっておけと言ったらどうなるでしょうか?
普通、すぐに辞めますよね?
つまり、すぐに辞めるというのは、これに似たことをやっているケースが多いということなのです。
特に、旧来の情シスであれば、管理系、保守系が多いです。そうなると、「基幹系システムの保守をやってくれ!」と言ってしまうケースがあるのです。
これはほとんどが受入側の問題と言えます。直属の上司=情シスのトップの問題ですね。ですが、その人をアサインしている経営側の責任とも言えます。
「上が全く理解してくれない。ここにいても自分のキャリアを考えると無駄だから辞める。」
こう考える技術者は多いのです。
特に、腕に職を持つ人であればあるほど、その傾向は高くなります。彼らは他でも十分にやっていけるからです。

組織の在り方としてどうすべきか?

情シスの部門長クラスに技術を理解できる人がいないとなると、かなり重症です。この場合もどうするかについてお話しします。

1)自身で足りないことを自覚している、変わろうとしている部門長の場合

この場合であれば、誰か片腕をつけてあげれば良いのです。要は参謀ですね。社内にいればベストですが、社外に依頼することも可能です。
昔の話ですが、NRIは「情報主幹事」という言葉を使っていました。証券ビジネスでの主幹事証券会社のように、相手企業のために動くということです。長く付き合うのを想定しているのであれば、この方法もあります。
もう一つの方法が技術系顧問にサポート依頼することです。これは私のケースとなります。実際の打ち合わせなどにも参加し、その説明、解釈するとともに、リスクを事前に察知し提案する役目です。

2)自分のやり方を変えようとしない部門長の場合

実際はこちらのケースの方が多く感じます。理由は、自分のポジションを維持したい。否定されたくない。今までの自分を変えたくないからです。今更新しいことをやりたくないというケース。
この場合は、この「情シス」をそれこそ「ビルメンテナンス業社」に押し込んでしまうという方法があります。彼らがやるのは今まで通りの作業となります。しかしながら、そこに高コストの人間を置くわけにはいきませんので、一般職や派遣社員、あるいはアウトソースで対応することになります。
そして、代わり新たに経営企画などにその「考える」ミッションを持たせるという方法になります。この場合も1)同様に外部支援としての参謀を付けることになります。

早い話、単に既存の「情シス」にミッション与えたとしても、その通りにならないのですね。時間はかかるし、何も進まない・・・という状況になります。あるいはコンサル、ベンダ依存となり、どんどんしゃぶりつくされることになりかねません。(実際、そういう企業が多いのです。)

最後に

そもそもDXは「人間系」もまで制御する必要があります。社内人員も、ひいては顧客の行動までもが制御・統制できなければDXでも何も無いということなのです。
そして、そこまで考慮できなければDXコンサルではないということです。
そもそも単なるシステム、ITコンサルとは次元が異なるのです。私の業務範囲はここまで及びます。


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