見出し画像

婆ちゃんと、壱万円。

病院の売店入り口で見覚えのある丸い背中を見つけた。粋な赤いポロシャツを着ているその人は今年米寿を迎える知り合いの元気な婆ちゃん。両祖母が他界している今、私にとっては自分の婆ちゃんみたいな存在だ。

婆ちゃん!私が声を掛けた。婆ちゃんはまさか、という顔で一瞬驚いた後、私と分かるとすぐ笑顔になった。

眉も目尻も下がって可愛い。

訊くと定期通院だと言う。バスで帰るがまだ午前中だ。さらにバスは13時過ぎにしか来ないらしい。私は間髪入れずにこう言った、婆ちゃん送ってくよ!

婆ちゃん家はこっから小1時間掛けた港町にある。婆ちゃんは最初は迷惑になるからいいと遠慮していたが、私が婆ちゃんと話したいし送りたいからと言ったらじゃあ乗っけて貰おって言ってくれた。婆ちゃんの娘さんに電話して私が連れて帰ると言い(最初は気を遣って断られた、さすが親子だ。)OKを貰い帰ることになった。

帰り道寄りたいとこはある?って聞いたら孫の顔が見たいっていってお孫さん家へ少し寄って、そっから婆ちゃん家まで演歌やら歌謡曲やら流しながらお喋りして帰った。テレサテンはいいねぇとか言いながらさ。

婆ちゃん家は港から少し小高いとこにある。細道だから車はギリギリ過ぎて私には無理だった。その事を忘れてたから婆ちゃん歩かせて御免って言ったら婆ちゃんたまには歩かんばけんよかったい!ってさ、ふぅ、ふぅ、言いながら
ゆっくり登ってった。婆ちゃん本当に偉い。登り終えたとこで少し一息して、婆ちゃん家に寄ってった。そこでも楽しく笑って過ごしたんだ。帰りにポンカンとノーソの湯引きば貰うてまた遊び来るけんねー!って言いながら車に戻ったら、

__車のタコメーターの辺りになんかヒラヒラしてた。一万円札だった。

もー!婆ちゃんったら!と思いながらそれ握りしめてまた逆戻りした!今度は私がふう、ふう、言う番になってしまった。

婆ちゃん!こんなん貰えんよ〜!

そしたら婆ちゃんの娘さんも婆ちゃんもまだおって、娘さんは“婆ちゃん使い道んなかとやけん貰っといて!”て言う、婆ちゃんは“私がせんば気の済まんけん貰うて!”ってほぼ同時に言われて、じゃあさ、今度ドライブに行った時に使おうで!火曜日以外ね!(笑)って私は言った。
なんで火曜日以外なのかというと、お喋りしてる時に婆ちゃんと今度あったかくなったらドライブして散歩して、海鮮の美味しいごはん屋さんに行く約束をしていたからだ。
もうお分かりだろうがその店は火曜定休なのだ。

そう私が言い終えると婆ちゃんは、あんたさっきおりてったとき道ば間違うちょったろ?毎回間違えよるもんな!心配じゃっけん見とったとよ!って言われて、

そうそう、私は何度も来てるのに何時も曲がるとこ間違えるんよ。不思議(笑)

また遊びこいよって婆ちゃんは言ったよ、ちょっと目が赤かった。なんか知らんけどアンタみたいな子はそうそうおらんとか言うてやけに褒めてくれる。そんなことなかよ!私は婆ちゃん好きなだけやっけん!

そうして

帰るよ〜って、今度こそ手をぶんぶん振り回しながら帰った。1~2回振り返ったらもう今度は振り返らずに走って降りた。婆ちゃん有り難うって心のなかで思ってた。また曲がり道間違えそうになったけどすぐ踵返して車に乗った。

帰り道、何となくそのまま演歌聴きよったら田んぼの向こう、山の合間にうっすら虹が出てた。

なんか、なんかわからんけど嬉しかった。

あったかくなったら婆ちゃん、ドライブ行って散歩して美味しいもんば一緒に食べようでね!

そんな1日だった。


おやすみ。、世界。。


【追記】ここまでお読みいただいた方有難うございます!誤字脱字、乱文ありますが脳内補完していただけると助かります。

では、どなた様もよきゆめを♬

いいなと思ったら応援しよう!