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忘れられない男とは

この歳まで生きてきて学んだことは、

・考え事は夜中にすべきではないこと
・病んでいる時こそ、部屋の掃除をしてじっくり湯船につかること
・寝たら大概のことは忘れられること

これでおおかた乗り越えられる。

それでも乗り越えられない、ずっと脳裏に焼き付いている人がいる。

喫茶店でコーヒーを飲んでいるとき、美容室でバッサリ髪を切ったとき、昔聞いていた曲を聴いたとき、ふとした時に思い返す人がいる。

その人は、7つ年上で6年付き合っている彼女がいた。
結婚願望はとても強くて、理想も高い人だった。
「結婚したら、奥さんには専業主婦になってもらい、毎日おいしいご飯を作って待ってて欲しい。」「会社を立てたばかりで毎日不安定だから、支えてほしい」「女の子は好きだし、浮気はしちゃうかもしれない」

今こうやって書きだしたら、なんて自分勝手な男なんだって思うけど、それでも当時の私は、彼に見合うように背伸びしちゃうぐらいには、酔ったふりをして電話をかけるぐらいには大好きだった。

この片思いの結末は、もちろん実ることはなかった。
人伝で聞いた話だと、6年付き合ってた彼女とも別れてフリーになっているらしい。

なぜ、この人のことを未だに思い出すのかについて考えたことがある。
彼のことがまだ好きだからとか、あの時こう言っていれば付き合えていたのかもしれないとかの後悔でもなく、その結論は至って簡単。

私が彼の一番になれなかった屈辱が残っているだけ。
所詮、私はプライドの塊のような人間なのだ。

6年付き合っている彼女とはどうして結婚しないの?と聞いたとき、「彼女とはだらだら続いているだけで、結婚相手としては考えられないから。」と言っていた。

私は、そんなだらだら続いている彼女と同じスタートラインにすらも立てていなかった。ただの都合のいい女の一人なだけだった。

その事実が私のプライドを傷つける。
それが、この男を未だに思い出す原因だと結論をだした。

この世には、恋愛における駆け引きの一つとして、トラウマを植え付けた方が勝ちである。そうすれば、別れても忘れられないから。みたいなものがある。

それでいうと私は勝手に敗北していたことになる。
でも、いまだに思い出すのだから、少し歪んでいるこの戦法はあながち間違いじゃないのかもしれない。

未練と執着は紙一重というけれども、未練と屈辱も紙一重であると思う。

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