ただただ、私は。 私は、ずっとそうしたかったんだ。 /「BTS PERMISSION TO DANCE ON STAGE - LA」チケッティングで。
以前、ぼそりとツイッターでつぶやいたことがあるんだけれど、私には”BTS運”みたいなものがない。
さらにつけ加えると、推しである”JINくん運“が、特にない。
まず、私はペン(ファン)になってから、結構な円盤、グッズ数を購入しているが、噂の<自引き>をしたことがない。
BTSの商品はよくランダムでメンバーの中の一人の写真カード(トレーディングカード)が封入されていたりするのだけれど、<自引き>とは、自分の推し(私でいうとJIN)のカードが届くことだ。
我が部屋を見渡せば、サンパウロの「LOVE YOURSELF: SPEAK YOURSELF」を筆頭に、以後のさまざまなDVDや公式グッズが並んでる。並んでいるその商品とともに、我が推し殿のカードは一度も来てくれたことがない。
だからグッズの箱を開けるたび、わずかな期待を持っていた自分を自覚しては、「知ってたー!」とわざと言うようにしている。
知ってる。
私には”JINくん運”がない。
さかのぼるは、2015年のこと。仕事で私は、とあるフェス会場にいた。
夜まで会場に居なければならなかった私は、昼からフェスの各ステージ会場を徘徊していた(グリーンカレーを食べながら)。
夕方頃、RAINBOW STAGEに移動したとき、ファンの熱狂に包まれている7人組がステージで歌っていたのを見た。
ものすごい声援量だった。けれどフェス大好き、バンド命!だった当時の自分は、「あ~韓国の男性アイドルかあ」と斜めに構えては、後方で眺めていた。
<あのラップの金髪やべえ><帽子の子絶対かわいい顔でしょ>の声があったことを記憶していたこと、そして何より彼らがBTSであったこと、それを思い出したのは2020年夏のことだ。その夏にフェス運営がコロナ禍で過去映像を、無料配信していたから。
配信を見ていて私は、フラッシュバックするかのようにその記憶がよみがえっては、ちょっと震えた。震えながら昔からなんとなしに続けている、個人のツイッター上を検索したら、グリーンカレーの写真のツイートと同じ日に「KPOPのグループの子たちを見るために、ステージ前にすごい人並んでる、熱量すげえこわい」と書いていた。
……いや、お前、その数年後にそのこわいになるのだよ……。(そっと削除)
ちなみにその後の仕事関係においても「ニア」だったのに、がいくつかあった。
そのタイミングの間の悪さに気付くのは、2019年、彼らに夢中になってから。
やっぱりどこか、BTSに運がない。
そして2020年初頭のこと。BTSをJIN君を大好きになってしまった私は、はじめてBTSの公演のチケッティングに挑戦した。
2020年4月からスタートする「BTS MAP OF THE SOUL TOUR」。
日本公演も組み込まれていたのに、15公演ある北米ツアーのチケッティングをしようと思ったのは、周囲に誰もBTSのファンがいなかったからだ。
抽選制である日本公演が私に当たる気もしなかったし、当たったとしてもコンサートに一緒に行ってくれる人が見つからないと思った。日本でいい歳した大人がひとり、行くには肩身がせまい場所だと、その頃は考えていた。
だから朝3時にWi-Fiが強いと思われる会社に忍び込んで、待機しては初の「チケッティング」に挑んだ。
今現在のようにYouTubeに誰かがチケッティング動画をあげてくれてるわけでもなかったから、SNSで経験ある方にアクセスしては情報をたくさん教えて頂き、何度か失敗しながらも念願のフロアのチケットを2日間分ゲットした。チケットを手に入れては、ライブで見られるんだとめちゃくちゃ高揚した。
けれど、その後未知のウイルスに世の中は覆われ、公演は延期になった。
たまのファンクラブのプレゼント応募や、オンラインイベントにも、もれなく外れる。BTSのオンラインコンサートの日には、視聴料を払っているのに仕事で見られないことも多々ある。
そんなときどきで、やはり私にはBTS運がないんだな、と思う。
すぐさまぶんぶんと首を横に振っていたけれど、縁がないのでは?というチリみたいに小さい疑念が積み重なるたび、気持ちは萎えては凹んでいく。
そして今年、極め付きみたいに、<延期>になっていた「BTS MAP OF THE SOUL TOUR」ツアーが、今年いよいよ<キャンセル>とアナウンスされたとき、
「もうファンをやめようかな」との考えが頭をよぎった。close。ってやつって、こんな感じなんだろうか。
9月28日、朝。
「BTS PERMISSION TO DANCE ON STAGE 」LAでのオフライン公演が発表されたとき、この一年半グレーだった世界が、これからカラフルに色付いていく予感がした。
メールアプリを開くと、今回のコンサートのチケッティングには優先順位があって、「BTS MAP OF THE SOUL TOUR」チケットがキャンセルになった人には、2日間にわけてチケッティング優先時間とコードが与えられる、とのお知らせがきていて、
私の受信箱には、コードナンバーとともにそのメールが届いていた。
私にはないと思っていたBTS運みたいなの、まだあったんだ。
そうして10月7日、朝のこと。
優先コードに背中を押された私はLAに行こう!と決めて、始発に乗り朝からまた会社でチケッティング作業をしていた。
かなり、戦々恐々としながら。
前日、MOSTツアーでSC(サウンドチェック付き)をもぎ取ったVIPコードを持つ、初日のチケット時間に優先権を持つARMYたちが、めちゃくちゃに苦戦していたからだ。
これまで数々のチケットを取ってきた方たちから、スタンドしか取れなかった……など、ツイートが流れてくる。
このVIP優先コードを持つ方々が取られた上での残り席が、次の日私のチケッティング時にまわってくるんだろうか?
そう考えると、もはや残っているのかすら不安になった。
そして実際、優先コードチケッティング2日目は熾烈だった。
チケットマスターからの急な変更項目(メールには1時間前にはWaiting roomに入れとあったが、急に30分前に変更になったり、VIPのチケットはありませんと表示されたり)や、queueルームでは2000+以降から固まる人、優先コードが認識されずキックアウトされる人……。世界中で数々のアクシデントに見舞われていた。
とにかく数字が進まない。前回とは違い、まるで遅い。
はたして残席はあるのか?と不安と焦燥感が募る。(この日はファン会員時にはあったらしい「まだ残ってますよ!」の表示もなかった)
以前15公演あっては、そのチケッティングを経験している猛者たちが一斉に4公演にアクセスしているのだから、システムの不具合等は仕方ないと思ったが、結果あっという間に「完売」となった。
私も朝から冷や汗をかきながら頑張ったけれど、2日間とりたかったのに、1日しか取れなかった。
ただ、グローバル会員にも応募していたので、その次の日にもチャンスがあるかと意識していたら、抽選制でコードが配布されたらしく私は参加できなかった。
ふと、疑問に思った。
MOTSツアーの優先コードを所持していても1枚も購入できていない方も多々いるように窺えた。それなのにファンクラブ会員用にはチケットは残されているんだろうか?と。
結果次の日、蓋をあければ「優先コードって何だったの?」くらいに、席数がそちらのために確保され用意されていたらしいことが、何度となくツイート上に流れてきた。私にはチャンスすらなかったSC付き席もあったそうだ。
基本、ファンでいることは受け身でしかいられない。だから私はいつも与えられるものに、期待はしない。そのためファンとして怒りの沸点は低い人のはずだった。
でも、今回ばかりは「なんなんだろう」と正直腹がたった。何より結局その一番しんどいチケッティングの日に、私は作業をする人の枠になっていたらしい。
腹が立っては、「ああ、やっぱりBTS運がないんだな」と思った。
そこで、BTSへの好きのボルテージみたいなものが、どんどんどんどん下がっていく感覚を初めて味わった。
いやお前チケット取れてるじゃん、て話なのだけれど、そういうことじゃない。そういうことじゃなくて、組織やシステムにがっかりしたのだと思う。
別界隈でも「運営にがっかりしたのでファンをやめた」なんてツイートを読んでは、それは都市伝説みたいなものだろう、とか勝手に期待しすぎ、とか思っていた奴なのに、それを見事に食らっていたのだ。
でも、どうしようもない。
販売サイトや公式アカウントには、英語での怒りのリプが並んでいたけれど、私は性格上こんなふうに公式に何かを残したりはできない。
だから、せめてこの悲しみを、文字で残そうと思った。
私には”BTS運”みたいなものがないと思うことが、多々ある。今も思っているし、ただそのない分は別の我が人生の他の部分にまわっているんだと、信じている。
でも私の周囲に、いつの間にか同じARMYである友人ができた。とても尊敬している仕事仲間も、いつもお世話になっている男性も、ARMYになっていた。
またブログを書き始めて、ツイッターを始めてからたくさんのフォロワーさんと、お話できたりするようになれた。年齢も住んでる場所も違う皆々様と、ツイートの言葉で、たまにスペースで交流させていただいている。
私が一昨日前朝、チケッティングのさなかに「(2000+から)進まない」と何度か焦りのツイートしてしまっていたら、しーんとしていた我がTLは、チケットとれました!と報告するとたくさんのいいね!とリプをもらえた。
やばい……気を使ってもらってたのかもしれない、と思うと胸がぎゅっとした。
さらにメールやLINEを開くと周囲のアミ友さんたちから「どうだった?」と、多数の質問と心配の言葉が並んでいては、笑った。
”BTS運”みたいなものはないかもだけれど、ありがたいかな、私には”ARMY運”はあるのかもしれない。
仕事の移動で新幹線に乗りながら、先程まで国連の「Permission to Dance」のパフォーマンス映像を見ていた。
黒スーツに前髪をあげてバッキバキに決まっているJIN君が、NYの晴れた空の下、芝生の上センターで笑顔で歌って踊っている。
ああ、好きだな、と改めて思う。
そうだよ、私が好きなのは、事務所でも組織でもシステムでもなく、彼らじゃないか。運がないと嘆きながらも、しがみつくように好きを離さなかったのは、私自身じゃないか。
「BTS MAP OF THE SOUL TOUR」延期以後、コロナ禍でJIN君はバーンアウトし、そして立ち上がっている。私は鬱屈とした日々にそんな彼の姿に共感して、励まされては、また彼を好きになった。
ああ泣くんだろうな、私は。
君にLAで、声援を贈れたら。
そうだった。
雑念に、見失うところだった。
ただただ、私は。
私は、ずっとそうしたかったんだ。